【凶狼】が闇落ちしたのは間違っているだろうか。 作:ほしぞら
受験が終わりましたのでどうにかこうにか投稿です……ちゃ、ちゃんと受かりましたよ?()
これからもがんばります、よろしくお願いしますっ
はっきり言って入団後は針のむしろ__もとい孤独が続いた。
好戦的で凶暴な狼人。
そんな評価を付けられ、影でコソコソ言われてるのを聞いた。
当たり前だ、と思っていた。
毎日のようにクソジジィに勝負を挑み、『懲りん奴じゃ』と殴り飛ばされ、体が動かなくなるまで戦い続けた。
勝負の終わりは何時もベートが気絶する時。
よく気絶したまま、中庭の練習場に転がされてた。
怯えた表情を向ける団員が殆どで、決して良好な関係ではなく、それがようやく変わったのは過酷な遠征、それを経験してからだった。
あっさりとLv.4に突入した狼人は、そのきっかけの遠征中に多くの視線を集めた。
危険な迷宮でも相変わらず罵倒を吐くベートに、そして先陣を切るその背中に、尊敬の念を向ける団員が続出したのだった。
きっと、彼女もその一人だった。
リーネ・アルシェ。
一人の鈍臭い治療師だった。
大きな眼鏡で隠れ勝ちな綺麗な黒目が、よく此方を向いているのには気付いたが無視した。
入って数ヵ月した時に、色々厄介事がばれたが、その事も隠すように、そして何より__失いたくないと、そんな言葉を吐いて、その約束を破らないように縛った。
意図的に言ったのも事実だが、それは確かに本心だった。
終わったあとからそう思い返すのは、昔から変わらない癖だった。
何はともあれ、平穏な生活を続け、何より彼には生きる意味が確かに見つかった。
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。当時齢十歳の小さな少女。
並以上の強さは既に手にしていたが、それでも飽き足らずに自身を死地へと赴かせ、躊躇うことなくその剣を振るい続ける小さな剣。
そのひたむきな姿に、ベートは心配をすると同時、確かに自身を重ねた。
強く惹かれ、自分も同じように歩みたいと望み、次第にその成長を見届けたいと、強く願った。
囁かな願いだと思っていた。今まで不幸を見舞った分の、小さな、小さな願い事。重ねた言葉と零した雫の分の、些細な幸せ。
なのに。
「ガレスっ、多少の残りは良いつ!!押し返せェ!!」
この世に居る運命の神とやらは、随分と悪趣味な様だった。
5年前、【ロキ・ファミリア】遠征帰還時の事だった。
生まれでた大量のモンスターが、後続部隊の団員に喰らいつき、蹂躙していく。
「くそったれ……っ!!」
ベートもまた苦戦を強いられていた。
蹴り殺し、また蹴り飛ばし、何度繰り返してもモンスターの量は変わらない。
荒い息を吐き出し、ベートは強く唇を噛み、舌打ちを行った。
……今回のこれは戒めへの裏切りではない、救うために必要な、犠牲だ。
そう頭の中で囁いて。
「【戒められし、悪狼の王__】」
歌った。
誰も聞いたことのない狼の詠唱に、倒れた仲間に治療魔法をかけていた黒髪の少女が、はっ、として顔を振り上げた。
「【一傷、拘束。二傷、痛叫。三傷、打杭っ】」
不馴れな詠唱を、無理矢理紡いでいく。
ベートは、魔法について鍛えてはいない。
使わないものなのだから、魔力を極めることも、並行詠唱も出来やしない。
その証拠に、足元には何にも出てはいなかった。
「【飢えなる涎が唯一の希望。川を築き、血潮と混ざり、涙を洗え】」
精々、魔法を使う前衛が良いところだ。もしくはそれ以下か。
それでも、今はこれしかない。
「【癒せぬ傷よ、忘れるな。この怒りとこの憎悪、汝の惰弱と汝の烈火】」
何時、魔力暴発を起こすかもわからない、無謀な戦い方に、後ろから息を飲む気配が伝わってくる。
「【世界を憎み、摂理を認め、涙を枯らせ】」
それでもベートは歌を止めない。
最後の魔剣を銀靴に叩き込み、思いきりモンスターの頭部を蹴りあげた。
「【傷を牙に、慟哭を猛哮に__喪いし血肉を力に】」
身体の中で魔力がうねる。
集中を切らせば、すぐに焼ききれそうな脳に檄を飛ばし、また怪物を一匹、灰に変えた。
「【解き放たれる縛鎖、轟く天叫。怒りの系譜よ、この身に代わり月を喰らえ、数多を飲み干せ】」
再度蹴りあげると、火の恩恵が完全に消え失せ、怯んでいたモンスターが雄叫びをあげた。
「【その炎牙をもって__平らげろ】」
モンスターの爪が、ベートの腕に刺さるより早く、魔法が完成した。
「【ハティ】」
強く言い切ると同時、炎が四柱、上がる。
『ガァァアアアアアアアアアアッ!?』
何重にも悲鳴が上がり、狼はそれに掻き消されぬように力強く声をあげた。
二対四本の炎牙を振るい、モンスターを無理矢理に押し返した。
閲覧ありがとうございました。
……これからあとがきに何かやりたいなぁとは思ってます、()