【凶狼】が闇落ちしたのは間違っているだろうか。 作:ほしぞら
ほんっとうにお久しぶりです。生き返りました。スランプってこういうことを言うんですね(違う)
すみませんんんん……!!
「は、」
思わずこぼれおちた一音、目の前で飛び散る真っ赤な血、頽れる少女の身体、驚いた表情から下卑た笑みを型どる女、間抜けなほど動こうとしない自分の脚。
「く、ふひっ、ひゃははははははははっ!?おいおい見たかよ【凶狼】ォ!こいつ、死んだ仲間を守ろうとして庇いやがった!?」
__その通り。リーネは大剣の届かない所にいた。なのに、自らその身を射線上に差し出した。ベートが、それに気付かなかっただけで。ヴァレッタにはリーネを切るつもりはなく、あくまで倒れかけていた仲間を切るつもりだった。
ベートが、気付かなかった。それだけ。
でかい肉声を放ち続けるヴァレッタと、臓物を撒き散らす少女の視線が、ベートに向いた。表情がピクリとも動かない青年に、ヴァレッタがつまらないというように目を細めてそっぽを向く。リーネが涙で濡れた瞳で、命の光が消えそうな目で、じっと見詰める。静かに、何かを待つように。
「……」
だけどベートは何も言えない。何も言わずにただ目の前の惨状を理解しようと、ただ見る。
「なんか言えよォ、【凶狼】?それともなんだ、この治療師の女に惚れてでもしてたのかよ?笑えねぇなぁ!迷宮で命をはって散々殺ってきたてめぇが、女1人に動揺かァ?」
「……」
「……おい、なんで黙ってんだよ?」
「……」
何も反応しないベートに、苛立った表情のヴァレッタが剣を倒れた男性団員にグリグリと突き立てる。死んでいるらしい、身動ぎ一つしない男の身体を蹴飛ばし、次は、というようにリーネの方を向いた。
「べー……さ、ん」
「ぁあ??まだ生きてたのかよォ、本っ当にしぶてぇなぁ、てめぇ等は」
腹から溢れ出た臓物を踏みつけ、楽しそうに嗤う。先程はつまらなかった、というように傷を抉るようにリーネの華奢な身体を蹴飛ばし、黙ったままの【凶狼】の側へ。
痛みに悲鳴を上げることすら出来ないらしい、命の灯火が消える寸前、そんな少女の無残な姿に、ベートの頭の中で幾つもの光景が鮮明に蘇った。
仲間の腕の中で、何も喋らない、真っ白な彼女と再開した瞬間。
竜の足に潰された無残な妹を、見つけた瞬間。
尊敬していた父母が、血反吐を吐いて息絶えた瞬間。
__幼馴染の下半身が、上半身を喰われ死に顔を見ることすら出来なかった瞬間が。
あまりに鮮明に。
「ぅ、ぁ"……!?」
吐き気が強く込み上げてくる。レーネの下半身から漏れ出た臓物と、目の前の少女のものが重なる。口元まで上がってくるのが手に取るように分かった。それを無理に押し込めて、ヴァレッタを睨み付ける。
「ぁあ?なんだよその顔は……まるで仲間が死んじまったときみてぇな顔しやがって?」
「っっ」
「こいつらはテメェの『元』お仲間だろうが。……なぁ【凶狼】ォ?お前はどうしてあたしら側についたんだったけか」
「は、」
「ま・さ・か、忘れたわけねぇよなあ!あたしは一文字も間違えないで覚えてるぜェ!?」
「おいっ」
「来世にの願いだったな、イケロスの口車に綺麗に乗っかって笑えたぜ!?」
「ヴァレッタっっ……!!」
「『来世はルーナとレーネ、そしてそばに居れなかったアイツと__』」
「やめろっっ!?」
「『戦いとは無縁な土地で、ただ生きていきたい』」
「__!?」
リーネの表情に微かな驚きが現れた。秘密をばらされた少年のように焦るベートは、ヴァレッタの口を止めようと手を伸ばす。
ゲラゲラと笑うヴァレッタがその手を避けて、ベートがまた追いかける。リーネを中心に円を描くように走りながら、憤怒で顔を赤くするベートにヴァレッタが嘲りの色を強くする。
「ぁあ、ああ、このクソよええ治療師にもあの時の様子を見せてやりてぇ!!惨めだったなぁ【凶狼】!」
喋んな。黙れ、黙れよ。怒りで体の制御ができていない。すれすれを逃げるヴァレッタに、ベートは顔をゆがませた。
ありがとうございました
次回は閑話 日常編~シリアスにギャグを混ぜられないからのんびりした日常で空気をかえよう~です(白目)