【凶狼】が闇落ちしたのは間違っているだろうか。 作:ほしぞら
「……五年……いや、六年前だな」
すぐに教えられた技能を自分の物にし、同Lvとは言えステイタスで上回るベートを地に押し倒した、金色の少女。
あの訓練のあと、ロキに散々からかわれたのは中々嫌な思い出だ。
「……そろそろか」
あのバカでかい声から既に十分はたっている。
行動が早いアイツなら、もうついていても不思議ではないだろう。
そう考えて少しスピードをあげると、同時。
『【アルクス・レイ】!!』
「ッ!?」
目の前を大閃光が走り抜けた。
光と言うよりも、エネルギーを集めた弾丸のような威力。
曲がろうとしていた交差地点の右から二つの少女の声が聞こえてくる。
二つとも、知らない声音。
その事実に安心した心など見ぬふりで、そのまま角から姿を現してやった。
「……エルフ?」
リヴェリアに憧れて入ったのだろうか。
見たことねぇな、と小さく呟き、コキ、と気だるげに首に手を当て、鳴らした。
「っ……!!」
黒髪の少女が、腰の短剣と短杖に手を伸ばす中、山吹色の少女はベートの出現が意外だったようで動きを止めていた。
「……素顔を晒すなんてな。闇派閥の連中は、身バレを一番嫌がっていたようだが」
「……アァ?……ぁ」
やべ、と気の抜けた声を出し、苛ついたようにガシガシと頭を掻いた。
すっかり忘れてしまったローブ。
ヴァレッタに押し付けられた闇派閥の連中と同じローブは、どこにやってしまったのかも覚えていない。
いや、嫌々、どうせアイズとかには、ばれる。関係ねぇ。
そう無理矢理納得させて、二人のエルフを見やる。
白装束の少女__フィルヴィスは、あからさまな隙にも警戒して、とびかかっては来なかった。
「ふぃ、フィルヴィスさん……この人って……!」
「……わかっている。お前は、私が戦い始めたら出口を探して、逃げるんだ。いいな」
耳に届いてしまうその作戦に、ベートは小さく笑ってしまう。
なんて、愚かだろう。
自分の身を引き換えに、守ろうとするなんて。
そんな夢を信じてるなんて__。
「__つまんねぇんだよ」
「っは、__ッ!?」
小さな呟きが騎士のような少女に届いた、その直後。
「っ、フィルヴィスさんッ!?」
フィルヴィスの後ろに回り、手刀により彼女の意識を刈り取っていた青年は、思い出したかのように吹いた風に、うざったそうに目を細めた。
ぐら、と崩れる彼女の体を慌てて支え、声を上げたいのを堪えたまま山吹色の少女が怯えた視線をベートに向けた。
その視線を見て、鼻をわざとらしく鳴らして口を嘲笑に歪めた。
「雑魚は入んなって書いてただろうが?何入って来てんだよ、自分が弱くないとでも思ったのか?」
「……っ」
口を開き、何かを言おうとしたレフィーヤよりも早く、また罵倒を連ねる。
「馬鹿じゃねぇのか?自分が足手纏いになるなんて、わかりきってただろうが?嗚呼、こんな足手纏い連れてくるなんてフィンも、」
「__違いますっ!!」
ただ、この少女の心を折るつもりしか無かった。
その為に名前を出した【ロキ・ファミリア】団長の小人族の勇者。
それを聞いた瞬間、怯えたまま黙ることしか出来なかった少女が吠えた。
「ふざけないでください!!団長を、団長をっ!!貴方が貶める権利なんてない!!私なら、まだ許せます。私はまだ弱い。ですが、もし貴方が!!団長やリヴェリア様、ガレスさんやアイズさん達を悪く言うと言うならっ、私は貴方を許しません!!」
呆然と、その叫びを聞いた。
今もまだ、自分の力がわからず膝をガクガクと震わせている雑魚が。
何故、こうまで強く出られるのかが、わからない。
「……っは、笑わせんな、『雑魚』が。そんなこといってる暇あるかっての。さっさとその女連れて、どっか行きやがれ。邪魔だ」
だけど、どうにも出来ない歓喜と喜悦が振り払えなくて。
その感情に身を焦がされるより先に、少女を視界から追い出すことに決めた。
「……『雑魚』だから、見逃すんですか」
「思い上がってんじゃねぇーぞ、ガキエルフ。てめーに懸ける情なんぞ俺は持ってねぇよ。……自分よりも弱い奴をいたぶる屑になるのが、絶対ゴメンなだけだ」
そんな事を溢して、目的の部屋へと向かう。
そこに残されたレフィーヤは、困惑した視線だけを彼の背中に向けた。
【風】はまだ、聞こえない。
すごいネタが浮かんでるんですが全く持ってこの話には関係ないです。()