【凶狼】が闇落ちしたのは間違っているだろうか。 作:ほしぞら
結局回収はしないんですけどね!()
分断された【ロキ・ファミリア】、その中の一つ。
黒髪をお下げに結わえた人間の少女は、顔を血で汚しながらも生を掴み取ろうと戦っていた。
「ロイド、右っ!!」
「っ、ああ!!」
叫び声を飛ばして、それを聞いた青年は右の通路から現れた『闇派閥』の人間を切り捨てる。
終わりが少々遠い戦いに熱が籠る中、治療師としても、冒険者としても、リーネは仲間を救おうと声を上げ続ける。
__こんな時に、何時も助けてくれるのは、あの人だった。
負傷した仲間に暖かな治癒の魔法光を当て、そのまま慣れない左の裏拳で、相手の鼻を砕いた。
そんな緊迫した状態で、ふっ、と思考に浮かぶ狼人の青年の姿。
私も、あの人のように__。
密かに心に芽生えた恋心。
隠し通したまま青年は【ファミリア】を去り、今日再会出来るか、等と淡い期待はもう消えた。
がむしゃらにはならぬよう、理性が裏付けするまま確実に敵を減らしていく。
仲間と敵の飛血が髪に張り付く中、張り詰める意識に浮かんだのは、彼の弱さを見た時だった。
▽▽▽
「……ごめんっす、リーネ、頼むっす……」
「大丈夫ですよ」
力無く布団にうずくまる黒髪の青年に苦笑を返し、渡された書類をしっかりと握った。
風邪を引いたラウルが寝込んで早3日だ。
今日駄目なら【ディアンケヒト・ファミリア】、もしくは【ミアハ・ファミリア】から薬を買って来なくてはならない。
それよりも困ったのは__
「ベートさん、かぁ」
一度もまともに話したことのない__大抵罵倒されて終わる__青年への連絡役のラウルが倒れてしまったことで、誰かが彼にこの書類を渡さなくてはならなくなった。
『ごめんね、リーネ!』
だが生憎、本来なら請け負うはずだった猫人の友人は団長に頼まれとあるお使いだ。
それでリーネに、白羽の矢がたったのだ。
若干、否かなり緊張しながら、カツカツと床を鳴らして青年の部屋へと向かう。
ダンジョンから帰ってきているのは確認済み、ついでにガレスに勝負を挑み返り討ちになったのもわかっている。
だから、部屋にいる。
いなければいなければで、そのまま置き手紙で済むのに、なんて弱気な言葉を落として、紙の束を持つ手に力を入れた。
「?……ベートさん?」
コンコン、とノックをすれば何か反応があると思っていたが、何も返ってこない。
いないのかな、と首をかしげてキィ、と蝶番がなるドアを開けた。
「……寝てる」
視界に飛び込んできた青年の顔は何時もの粗暴さが失せ、どこか子供を思わせる。
それは当たり前、何せ彼はラウルと同じ、もしくはそれより若いのだから。
はっきりとした確証を持てないまま、まぁいいか、と思考を停止させて起こさないよう、雑に置かれた机に書類を置こうと部屋に踏み込んだ。
「……!」
ごろり、と寝返りをうった青年に起きたか、と体を一瞬固くするも、安らかな寝息は聞こえ続けていて、ほ、と一息つく。
だが、彼女はすぐに目を見開き、有り得ないと言わんばかりに顔をひきつらせた。
気付かない程の微かな血の臭い。
その臭いのもとは、ベートの体からだった。
先程ガレスさんと戦った後、風呂に向かったと聞いたけど、と書類を机に投げ、眠る青年に近付いていく。
鋭さを掻き消す静かな寝息が途絶えぬよう、出来るだけ音を立てぬよう、だが確かに強くなる血の臭いに焦るように青年の腕に手を伸ばす。
何時もの戦闘衣とは違う、薄く腕が殆ど出る肌着だけで眠っていたから、『それ』を目にするのは早かった。
恐る恐ると抵抗がない左腕を掴み、見えずにいた手首を覗き込むように持ち上げた。
「な、なんですか……このキズ……!?」
__手首に幾筋も引かれた赤の斜線。
血は止まっているが、深く刻んだのだろう、生々しい肉の色が奥に見え隠れを繰り返す。
慌てるように、リーネは魔法を唱え、温かな治癒の光を腕にぶつけた。
やっとリーネたそとベートさんの絡みをかけたのです。
なんやかんや私はリーネが好きなんです。
『原作だと』死んじゃいますが。