電車を1度乗り換えて進み、部活に向かう学生が増えてきたころになって神薙がここが今回の目的地だ、と降り立ったのは隣県の温泉が有名な街だった。
今回のメインスポットは決まっていると言いつつ、あちこちで適当な店を見つけてはふらっと立ち寄る神薙を追いかけながら歩いたり、バスに乗ったりを繰り返していると僕にも今回の目的地におおよその見当がついた。
多分、神薙は今度の遠足の目的地の自然公園に向かっている。
なぜ数週間後には行く場所をわざわざ選んだのかは分からないが、きっと遠足当日は自由に見回れない上に自由行動の時間に行ける場所も制限されているのでその時に行けない場所に事前に行って遊んでおきたい、みたいな適当な理由を思っておけば実際と大差ない具合だろう。
駅からまっすぐ行けば9時辺りには余裕で着く場所にもかかわらず実際にたどり着いたのは11時過ぎだったと言えば神薙の「ちょっと寄り道」の時間感覚が分かるだろう。
早速入場券を買い中へ入る。
この自然公園は大別して、植物園エリアと遊園地エリア、昼食スペースや土産物屋などのある休憩スペースの3つに分かれている。
神薙はすぐさま遊園地エリアへ向かうかと思っていたが、意外なことに植物園エリアへ向かうらしい。
植物園エリアは今度の遠足でのメインスポットとなっていて、情報の授業でここにある植物について調べてまとめるなどしているためおおよそどういった植物があるのかは分かっている。多くのサボテンの展示を行っているのが特徴と言えるこの植物園はそこそこに広い構造をしている。
「100%、遊びに来ただけだと思ってるでしょ。下見だよ下見。遠足のさ。」
生徒会長だとそんなことまでさせられるのか、意外と面倒なもんだと返すと、
「いや?別に頼まれてるわけじゃないよ?」
「てか下見って言っても遠足の最中にうまいこと抜け出すためのルート探索だし。」
圧倒的私用だった。
途中抜けしたら面倒なことになるんじゃないかと一応諫めると
「いいかい、行事なんてものは一番最初と一番最後ぐらいしか印象には残らないもんなの。つまり、最初に何かしらやって、最後に合流した後でまた適当に騒げば、オールisオッケー!」
正直言えば僕も、恐らくはメアも、まっとうに所定のルートで終えるつもりではいないため別段反論もしなかった。
園内はガラス屋根の建物を多く繋いだ様相で、湿度が高く暑く感じた。
実際に見る植物は写真で見るよりも迫力があり、細かい構造に機能美を感じられる...などといった感想が出るはずもなく、神薙は伸びたような表情で羽織っていた上着を腰に巻き付け少し薄着になった。
「暑いし、十分見たし、良いルート見つけたし、暑いし!お昼行こうお昼。」
僕としても異論はないので休憩スペースへ向かうことにした。
12時を少し過ぎたフードコート内は席につけないほど混んではいないが、それなりの賑わいがある。
僕が適当に昼食をオーダーしてくると神薙は席で園内マップを広げながらいかにも「悩んでます」といった表情の神薙が唸っていた。
「食べてからさぁ、閉園するまでさぁ、5時間位じゃん?さてはこれボクプレミしたな?午前中にも数か所遊ぶべきだったんだよ。んでそう、お昼も何か適当に作ってくれば移動時間まで削れた...はぁぁこれがthe無計画!」
......とのことらしい。
かつて効率厨として名を馳せたお姉さんもすっかり衰えちまったぜ、などと嘯く神薙の前にお盆を置き、僕もマップに目を向けてみる。
先ほど回ったエリアよりも広く取られている遊園地エリアにはジェットコースター、ホラーハウス、観覧車などのメジャーどころがざーっと並んでいた。
確かに全てを回るのにはそれなりの時間を要するだろうが、そこまで混んでいるわけでもないのでさすがに5時間もかかることはないだろう。疑問を抱きながらも食べたら何から行くのか尋ねるとさも当然と言った笑顔で
「まずジェットコースター7周は鉄板だよね」
死ぬる。
神薙の体力に合わせていたら酷いことになること必至だと判断し、5時間ゆっくり回れるルートで先導することにした。
体力と悪ノリするための実行力は高い神薙は不満を口にしながらも終始笑顔で居たし、僕自身も案外楽しかったのでこれで良かったんじゃないかなと思う。