『No.47は無事に迅竜の遺伝子と適合したようだ。交配による遺伝については問題ないと判断して良いだろう。
母親から産み落とされてすぐに泣き出したし、容姿に関しても鱗が生えていたりと今までの失敗例のような特徴は見られない。
モンスターの遺伝子交配実験は成功だ。
No.47は齢5歳にして既に迅竜の特性の片鱗を見せている。気配を薄くすることにおいては誰も追いつけないほどだ。他にもしなやかな筋肉がつき始め、身体能力も格段に上がっている事が確認された。まさか遺伝子を埋めこんだ形ではなく、モンスターの遺伝子を持った者同士の交配によって産まれた者のほうがよりモンスターに近づくとはな。No.47は我々の研究結果の中でも最高傑作になる可能性がある。これからも経過を見守ろう。
研究員の一人がやけに興奮した様子で‘ある物’が手に入ったと言った。
ある物――それはナルガクルガ希少種の遺伝子だった。
No.47は迅竜の遺伝子を宿している。もし彼女の体に希少種のものも投与したらどうなるのだろうか。我々研究員は満場一致でこの疑問に答えを得るためにNo.47に再び実験をする準備を始めた。
準備を終えた我々は、村からNo.47を連れてきた。どうやら、彼女は最近姉にご執心らしい。そういった感情の変化も研究の糧となるので大いに人と関わってもらいたいものだ。
No.47を寝台に寝転がせ、手足を動かせないように拘束する。入念に不備がないか確認してから、我々は彼女に強力な睡眠麻酔薬をうった。この睡眠麻酔薬は大型モンスターにも効くものだ。もう彼女は人の域を超えている。
すぅすぅと幼い寝息をかき始めたNo.47の腕に注射針を刺し、まずは現時点の細胞や遺伝子サンプルを取っておく。次に全身に超極細の針を刺し、ゆっくりと均一になるようにナルガクルガ希少種の遺伝子を注入していく。突然異物を打ち込まれ、本人の意識とは関係なく拒否反応で暴れ狂うNo.47を研究員で押さえつける。それでも手足を拘束していると言うのにその膂力は凄まじく、研究員がおもちゃのように吹き飛んでいくが無事注入も終了した。今日のところは村へと帰すが、これから色々と実験しなければならない。忙しくなるな。
すごい……すごいぞ! 想像以上の結果だ。
7歳にしてここまでの身体能力を手に入れているとは。
気配操作も元々群を抜いていたのが、更に進化している。仕掛けられた相手側からすれば、見えないナニカに一方的に攻撃されているようなものだろう。関係のない我々だってよく目を凝らさないと見失ってしまうほどだ。これは予想外だ!
No.47の体液を調べたら、驚くべき事がわかった。
なんと、No.47の涙はあらゆる毒を解毒する性質をもっていたのだ。正確に記すならば、涙ではなく体液全般であるが。
我々の見解としては、希少種が毒の棘を有している事が関係しているのではと判断している。毒を有している希少種の遺伝子はNo.47の体を毒に強くして、さらに体液に解毒効果を持たせるよう細胞を変質させた。これは大発見だぞ。これだけで我々の研究は大成功と言える。
他にも、再生力や瞳にも変化が現れた。特に瞳に関しては我々の特に興味を引いたものだ。銀妖族の瞳が更に進化したのだ。これについても後々に研究を進めていこう。
あれから数ヶ月が経ち、No.47の体に起きた進化は大分把握することに成功した。
そんなある日のことである。以前取ったサンプルと現在のサンプルを見比べようとしたとある研究員が突然大声を上げたのだ。
何事だと研究員が皆集まり、件の研究員に事情を説明するように促す。すると、彼はいまだ驚愕の表情を浮かべながら、拙いながらもぽつぽつと話し出した。
曰く、希少種の遺伝子が原種の遺伝子を破壊していっているらしい。この破壊は恐らく阻止不可能であり、このまま続いていくと――No.47は約12年後に、その細胞や遺伝子を破壊しつくされ、希少種遺伝子にその身を侵され誰からの記憶からも消え去った状態で生命活動を停止する、と。
失敗だった。同種の遺伝子ならうまく交じり合い成功するものだと思っていた。が、それは間違いだった。希少種は優性遺伝子として、原種は劣性遺伝子となり、劣勢は優勢に徐々に飲み込まれ吸収されていく。逆だったのだ。種族が違うものであれば、互いを侵食することなく共存し、互いの効能を発揮する。No.47は……失敗作だ。
我々は落胆した。No.47は最高傑作だと思っていた。この先こんな研究成果を出せるのか。
心を入れ替える。我々はこれからの12年間でNo.47から更に研究材料を提供してもらう。体液もできる限り集め資金にして、彼女が死ぬまでにできる限り研究し続けるのだ。我々のために。
あれから6年後。終わった。NO.47のいる村が違法ハンターどもによって滅ぼされた。皆殺しだ。確認に行ったら地面が血で真っ赤だった。貴重な研究材料たちを失った我々はもう終わりだ……。
我々はここを離れることを決めた。もう二度とNo.47のような成果は出せないだろうが、これからの発展のために研究を続けると決意を胸にし、この研究所を後にしよう』