とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第十三話

 オーベルシュタイン総参謀長がリヒテンラーデ公を排除する策略を考えてくれている。

 さしあたり今は僕はすることはない・・・わけではない。貴族連合軍が結成以前に瓦解したことで大量の余剰艦艇が生まれた。それをいかに配分するかという作業をやっていた。

 僕とジークフリード、ミッターマイヤー、ロイエンタールの四人でやっている。

 「各艦隊に配分するとしても、多すぎる。かといって貴族どもに渡したら好き勝手に使われるからな。予備艦艇にもできない」ロイエンタールが言った。

 ミッターマイヤーが頷いた。「やつらに渡したら、反乱の温床を自ら作ることになるな。だが、いかがしたものか。副司令官のお考えは?」

 ここでいう「副司令官」とは二人の人物をさす。ジークフリード・キルヒアイス上級大将とルートヴィヒ・フォン・ヒルシュフェルト上級大将である。この二人ともが宇宙艦隊副司令長官だった。なんかこっちが帝国の双璧みたいだ。

 「新たに艦隊を作るとか?」僕が先に発言した。

 「いや。それはできない。そもそもローエングラム侯の配下にいるものを除いて、中将以上の者がいない。いるとすれば中立派の貴族のみだ」ロイエンタールが反論した。

 「それもそうですね」ジークフリードが同意する。

 いくらなんでも貴族どもに艦隊を渡すわけにはいかない。

 議論は続けられたが、まとまることはなかった。これは全員が不仲ゆえなのではなく、本当に妙案が浮かばないだけだった。

 

 状況を打破するために、僕は別の策に出た。

 僕は軍刑務所を訪れた。

 「こちらです」兵士が案内した部屋の中には、一人の老将が座っていた。

 ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将。今回の一件では貴族側に属したが、いまだ処分は決定せず、拘禁されたままだ。

 「メルカッツ上級大将。自分は、ルートヴィヒ・フォン・ヒルシュフェルト上級大将です。閣下にお願いがあってうかがいました」

 「ほう。ローエングラム侯の腹心と聞く若い勇将か」メルカッツは僕のことを知っていた。

 「閣下は、この後いかがされるおつもりですか?」僕は聞いた。

 メルカッツは首を振った。「こんな老人などいなくとも、帝国はやっていけるだろう。処分を待つだけだ」

 「いえ。メルカッツ閣下は帝国に必要なお方です。一時は敵となったとはいえ、閣下が不本意であられたことは知っております。ぜひ、力をお貸し願いたく存じます」

 「わしのようなものに、なにを求めるのかね?」

 「閣下に、アムリッツア方面軍総司令官に就任していただきたく存じます。配下には艦艇43000隻が入ります。これには、アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト提督の艦隊も入っております。閣下もご存じの通り、イゼルローンが敵の手にある今、再び帝国領侵攻が予想されます。閣下には、その方面の防備を担当していただき、帝国の民を反乱軍から守っていただきたく存じます」

 「わしに、そんな権限を与えても良いのかね?もし反乱されたら?卿はどうする?」

 僕はかぶりを振った。「閣下のこれまでの生きざまからみて、そのようなことはあり得ないと存じます。閣下のような方は、帝国を探してもほとんどいないでしょう」

 メルカッツは笑みを見せた。「わかった。そこまでいっていただけるのなら、このメルカッツ、全身全霊でその任を承ろう」

 「はっ。有難うございます。つきましては、閣下は罪を許され、釈放されます」

 僕はそのあと、ファーレンハイト中将を訪ね、協力を取り付け、釈放した。

 こうしてこの二人のもとに余剰艦艇が送られ、貴族連合問題は解決を見た。


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