とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した 作:フェルディナント
僕は気がついた。
立ち上がったが、目の前に門がある以外は何もない。
門はアーチのような形をしている。
そこではっと僕は気がついた。
これは、ヴァルハラの門だと。
その時、声が聞こえた。正確には、僕の心のなかに響いた。
”あなたはあの世界にいる理由を失ったようですね”
「誰ですかあなたは!?」
”私は「ブリュンヒルト」”
ワルキューレだ!そして、ラインハルトの旗艦の名前だ!
”なぜあなたがこの世界にいるのか、分かりますか?”美しい声が僕の心に響く。
僕は10数年間忘れていたことを思い出した。
なぜ、僕はここにいるのか?
”あなたは前の世界で決して恵まれていなかった。だから、この世界に呼んだのです”
「あなたは、僕に何を望んでいるのですか?」
”歴史を変えること。本来の世界は、最終的にラインハルトという太陽を失ったことであのあと衰退してしまった。再び戦乱が起き、多くの人がヴァルハラに誘われてしまった。あなたは、それを変えることができた”
「でも・・・僕は・・・」
”あなたに罪はないのです。決してあなたが気に病むことではないのです。ヴェスターラントで亡くなったかたも、決してあなたを恨むことはしません。なぜなら、あなたは実行犯ではないし、止めようともした。最後はこれだけ反省の涙を流した”
「ですが!」
”この先の世界は、ヴァルハラです。あなたがもうあの世界に居てはならないと思うなら、あなたはここの門をくぐりなさい”
僕は迷った。そう、「銀河英雄伝説」は架空の世界であって、現実ではないのだ。なのに僕が多くの人を巻き込み、殺し、世界まで変えようとしている。むしろ、ここにいない方がいいんじゃないか?
そう思わせた何かが、僕を門へと一歩進ませた。
そこで思い出されたのは、ラインハルト、ジークフリードとの友情、自分が何を目的としてここまで来たのか、何のためにヴェスターラントを引き起こしたか、ということである。
”あなたはジークフリード・キルヒアイスを死から救いだした。ラインハルト・フォン・ローエングラムを今救おうとしている。あなたは太陽を崩壊から救いだした。なのに、ここを去るのですか?”
「・・・」
そうだ。僕はラインハルトやジークフリードと共に歩もうと決めたのだ。あの日、ミューゼル家の前の通りで。今ここで退いてどうする!僕なら、ラインハルトを救いだせるんだ!ジークフリードを救ったんだ!救った彼らと、銀河を駆けるんだ!それが僕の「銀河英雄伝説」だ!
「僕は・・・ラインハルトやジークフリードと共に行きます!」これが口から出たとき、もはや後ろめたさは微塵も感じられなかった。
あの少女、あの夫婦。彼らが命を捨てて手に入れたものが退廃でどうする!真に彼らに報いんとするなら、ここでヴァルハラの門をくぐるわけにはいかないんだ!
僕は一歩後退した。
”分かりました。あなたを先程までいた世界に戻しましょう。皆さんが待っていますよ”ブリュンヒルトの声も、優しげになった。
”後ろに進むのです。そうすれば、あなたはヴァルハラの門を出るでしょう”
「最後に教えてください。これは、ただの夢なのですか?それとも、現実なのですか?」僕は最後の質問をした。
”それは、あなた次第です”
次の瞬間、ヴァルハラの門は僕の眼前から消えた。
「・・・フェルト!ヒルシュフェルト!」僕を呼ぶ声がした。
「ルート!」
「ん・・・」僕は目を覚ました。輝く金髪が見える。あと赤毛も。
「はっ!ヒルシュフェルト!」ラインハルトは僕の手を握った。
「ライン・・・ハルト様・・・?」
僕の意識は正常に戻った。「ラインハルト様!」
そこには、二人の友人、ラインハルト・フォン・ローエングラムと、ジークフリード・キルヒアイスがいた。
「ヒルシュフェルト、すまない!」ラインハルトは頭を下げた。僕ら以外に誰もいないからこんなことができるのだ。
「キルヒアイスには説明した。苦労をかけた。すまなかった!」ラインハルトの陳謝は心からのものだった。これをみると、僕は本当に死の瀬戸際をさ迷っていたようだ。
「ラインハルト様。僕は、ラインハルト様のお役に立ちたいと思っていました。今もそうです。だから、あなたの元を去りかけた私を御許しください」
「ルート。僕はルートのためだったら協力を惜しまなかった。オーベルシュタイン参謀長の策も、容認していたよ。だから、そんなに自分を責めないで」ジークフリードが言った。
僕は涙を流した。僕のために、こんなことを言ってくれる人がいるなんて。やはり、僕は幸せ者だし、ここにいるべきなんだ。
「ラインハルト様。私は戻ってきました。ヴァルハラの門から。それはラインハルト様にお仕えしたい、いや、銀河に二人しかいない友でありたいと思ったからです。だから、ラインハルト様も私の・・・友であっていただけますか?」
ラインハルトは何度も頷いた。「ああ。ああ。もちろんだ。ヒルシュフェルト。キルヒアイスもな。俺たちは、友なんだ」
これだけで十分だった。ラインハルトのこの言葉だけで。僕には、ラインハルトを支え、歴史を変える役割があるんだ。それを自覚できた。
そして、ラインハルトの友であれた。ジークフリードの友であれた。二人の友であれた。
あとがき
どうも。こんなシーン書くのは初めてなので、いろいろおかしい点があると思いますが、ご容赦ください。