とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント
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第二十四話

 帝国軍による第二次イゼルローン攻略戦が失敗して後、帝国、同盟両軍はイゼルローン回廊内部で膠着状態にあった。

 両軍とも少数の艦隊を繰り出して敵の出方をうかがう形で時が過ぎ、戦闘開始から4週間が過ぎた。

 その日、メルカッツ艦隊の一部、グリューネマン中将の率いる艦隊の偵察隊が接近しつつある多数の光点を捉えた。その数は5000隻を越えると言う。

 「何だと!?」報告を受けたグリューネマンは顔を青くした。

 彼はこの情報が何を示すかわかっていた。

 同盟軍の援軍。ヤンの知謀に加え、更なる武力が加わったのだ。

 

 「ヤン提督が帰ってきたぞ!」

 「ヤン提督万歳!」

 イゼルローン要塞は歓呼の嵐に包まれた。

 「そうか。やっとヤンが帰ってきたか」キャゼルヌは深いため息をついた。

 ヤン艦隊のイゼルローンへの帰投は同盟軍に希望をもたらした。

 すぐに回廊各所に展開する帝国軍はガイエスブルグ要塞に撤退し、メルカッツは艦隊を再編した。

 ミッターマイヤー、ロイエンタール艦隊が到着するまで、この状況を維持する必要があった。

 

 「・・・と言うことだ。だから、敵軍はしばらくこちらに攻撃をしては来ないだろうね」ヤンは会議室に幕僚を集めて自分の見解を説明した。

 「では、こちらも戦力の集結を行い、戦闘に備えますか、提督?」ムライ参謀長が聞いた。

 「いや。ここはあえて攻撃に出ようと思う」

 

 ガイエスブルグ要塞正面で待機する帝国軍艦隊右翼、マイフォーハー中将の艦隊が接近する数百隻の艦隊を発見した。

 「敵の数は少なく、簡単に殲滅できます。ここは全艦隊で出撃するべきかと存じます」と参謀長は提案したが、

 「いや。メルカッツ閣下は援軍の到着まで大規模な戦闘は控えるように命令された。ここは命令を守るべきだろう。アルトマイヤーに迎撃させろ」

 アルトマイヤー准将率いる800隻の巡航艦部隊が出撃し、敵部隊と交戦状態に入った。

 同盟軍は消耗戦の無意味さを悟ったのか、後退を開始した。

 アルトマイヤー准将はこのまま撤退するのを良しとせず、追撃を命じた。

 帝国軍は一斉に攻勢に移り、戦列が同盟軍は算を乱して敗走した。

 そして勢いにのって猪突猛進したアルトマイヤー艦隊は気がついたときには上下左右を4000隻の敵に囲まれ、破壊的な連続掃射で潰滅した。

 ヤンは敵の一部のみをアッテンボロー率いる小部隊で自軍の陣の中に引きずり込み、包囲殲滅したのである。ヤンの作戦も去ることながら、アッテンボローの「逃げるフリ」は神業と呼ぶに値した。

 ヤンはすかさず全艦隊に兵力減少したマイフォーハー艦隊への攻撃を命じ、予備兵力として待機していたモートン少将の艦隊3000がマイフォーハー艦隊に襲いかかった。

 マイフォーハー艦隊は突然の奇襲に慌て、2000隻の残存艦隊の内1200隻を2時間で失った。

 メルカッツは直ちにミュラー艦隊の生き残りである総司令部予備部隊をグリューネマン中将の指揮下に入れ、マイフォーハー艦隊の救援に向かわせた。だが、グリューネマン艦隊は救援に向かったところを側面からグエン・バン・ヒュー、フィッシャー両艦隊に攻撃され、ズルズルと乱戦に引き込まれた。

 メルカッツは突然敵が攻撃に出てきたことに驚かざるを得なかった。数の差が残っている以上、同盟軍は防御に徹するものと思っていたのだ。

 しかし、彼も無能ではない。ガイエスブルグ主砲ガイエスハーケンの射程に敵を引きずり込み、撃破する作戦にでた。

 だが、彼の手元に残された予備兵力はファーレンハイト艦隊しかなく、しかもその一部は新たに出現した同盟軍空戦部隊との戦闘に巻き込まれていた。

 メルカッツはファーレンハイト艦隊の一部を前線から引き抜き、それをグリューネマン艦隊の救援に差し向け、混戦状態を脱させようとした。

 だが、その間にヤンの率いる主力部隊がマイフォーハー艦隊を殲滅し、そのまま帝国軍本陣をつかんとする勢いを見せた。

 メルカッツはこれに対処すべくガイエスハーケンの発射準備を進め、ヤンが接近してきたら巨大砲で殲滅しようとした。

 「閣下。敵要塞が砲撃準備を整えつつあります」フレデリカ・グリーンヒル大尉が報告した。

 「予想道理だ。無人艦部隊を突撃させてくれ」

 ヤン艦隊の高速艦1600はメルカッツの旗艦部隊に向けて一気に突撃してきた。それ以外の部隊はグリューネマン、ファーレンハイト、フィッシャー、グエン・バン・ヒューが乱戦を繰り広げている戦域に向けて回頭しつつある。

 メルカッツの本陣を守るのはわずか600隻の艦艇だった。

 「ファイエル!」メルカッツの号令と共にガイエスハーケンが発射された。光に包まれた同盟軍艦艇は消滅した。

 その間メルカッツの部隊は後退し、ヤン艦隊主力との距離をとった。これでヤン艦隊が再反転しても接近してこれない。

 だが、破局はその直後に待ち構えていた。

 「右舷前方、敵艦隊!数、およそ1000!」

 最大速力で突っ込んできたのはアッテンボロー艦隊だった。

 「ネルトリンゲン」の周囲で次々と爆発の渦に巻き込まれる戦艦を見たとき、メルカッツは自分がヤンの二重三重の罠に陥れられたことを実感した。

 

 ・・・宇宙歴798年、帝国歴489年5月1日21時21分、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将は旗艦「ネルトリンゲン」と運命を共にした。

 総司令官を失ったことで帝国軍は大混乱に陥り、一挙に損害を拡大させ、ファーレンハイト大将が指揮統制を回復させたときには全軍の半分以上が失われていた。








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