とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント
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第二十六話

 イゼルローン要塞攻略作戦失敗。ガイエスブルグ機動要塞破壊。ウィウリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将戦死。

 これらの凶報が嵐のごとく帝都オーディンに流れ込み、ラインハルトは顔を一瞬真っ青にした。 

 「メルカッツは何をしていたのだ!私は奴にあれほどの戦力を与えていたのだぞ!」ラインハルトは手に持っていたワイングラスを床に叩きつけた。

 この時、そばにいたのがジークフリードと僕であったことは幸いと言えるだろう。

 「ラインハルト様、ミュラーやファーレンハイトを処罰されるおつもりですか!?」ジークフリードが聞く。

 「ああそうだ!奴ら自身の失敗だ。奴ら自身で償わせるしかない!」この時ラインハルトは冷静さを欠いていた。

 「ラインハルト様。確かにミュラーとファーレンハイトは失敗をおかしました。ですが、罪に報いさせるに必ずしも処断しかないと言うわけではありますまい!」

 ここで僕も加勢した。「そうです!それにミュラーは負傷するほどの苦境を生き残り、ファーレンハイトはメルカッツ提督亡き後も艦隊をまとめて完全崩壊を防いでいるではありませんか!」

 「だが、メルカッツが死んだあと、おめおめと生きて帰ったのだ!その罪を何者に帰すというのだ!」ラインハルトは怒ってそう言ったが、彼の怒りはミュラーやファーレンハイトではなく、また別のもの、あるいは自分自身に向けられているように見えた。

 「ラインハルト様。ラインハルト様はメルカッツやミュラー、ファーレンハイトではなく、ご自分にたいして怒っておられるのではないですか?」

 ラインハルトの大理石で彫刻されたような顔が赤みを帯びた。「何だと・・・?」

 「ラインハルト様はそもそもこの作戦を一番最初に発案されたラインハルト様自身にたいして怒っておられるように見えます!そうであれば、私も罪を免れることはできません!私が今回の作戦を計画したのですから!」

 「ヒルシュフェルト!」

 ここまで言ってしまった以上、もう止まることはできない。「自分を貶められることはありません!同盟軍が勝利したのはヤン・ウェンリーの智謀のお陰であって、決してメルカッツらが無能であったわけではありません!ラインハルト様は準備に最善を尽くされましたし、敗北したところで、その罪は次の成功によって補わさせればよいではありませんか!」

 「・・・」ラインハルトは顔を背けた。自分が間違っていると分かるとラインハルトはそういう仕草を取る。ラインハルトもやはり完全無欠な万能神ではなく、人間なのだ。

 「・・・分かった。俺が間違えていた。ミュラーとファーレンハイトには悪いようにはしない。それで良いだろう、キルヒアイス、ヒルシュフェルト」

 

 帝都オーディンに帰投した帝国軍の二人の敗将はラインハルトの前にひざまづいて敗北した罪を謝した。

 言い終わったところで砂色の髪の提督の包帯から赤い流れが出て頬を伝った。

 ラインハルトは数秒間無言だった。提督たちはミュラー、ファーレンハイトにどれだけの金髪の独裁者の怒りが降り注ぐかを想像して姿勢を固くした。

 だが、ラインハルトの口から紡ぎだされた言葉は諸将の思ったのとは違った。

 「卿らに罪はない。一度の失敗は一度の成功で償えば良いのだ。遠路の征旅、ご苦労であった」

 提督たちはまず意外に感じ、次いで安堵した。特にミッターマイヤーが体の緊張を解きほぐした。

 「閣下・・・」

 「私はすでにメルカッツ提督を失った。その上卿らまで失うことはできぬ。ミュラーは傷が全快するまで静養せよ。しかるのちに現役復帰を命じるであろう。ファーレンハイトは直ちに任務に当たれ。まずは卿の艦隊を再編し、再び訪れる戦いの時に備えよ」

 「はっ・・・!」

 次の瞬間、部屋にバタリと倒れる音がした。ミュラーが全身に重くのし掛かっていた緊張から解放された瞬間、意識を失ってしまったのだ。

 そのミュラーを見るラインハルトの瞳には冷淡さや苛烈さはなかった。「病院に連れていってやれ。それから、メルカッツは昇進だ。元帥の称号をくれてやれ」

 諸将たちはキスリング大佐の親衛隊に運ばれるミュラーを見送りながら彼らの主君が度量の広い人物であることを喜んだ。

 ファーレンハイトが提督の列に加わると、ラインハルトは冷淡な視線を一人の男にぶつけた。「弁解があったら聞こうか」

 シャフト科学技術総監は雪ダルマのようにも見える体を精一杯張った。「お言葉ながら閣下。私の提案にミスはございませんでした。作戦の失敗は統率及び指揮の任に当たったものの責任でございましょう」

 僕はここまで原作通りの展開になるとは思っていなかった。となれば、もうこの後も原作通りの展開になるのだろう。

 ラインハルトが嘲笑混じりに言う。「いたずらに舌を動かすな。誰が卿に対して敗戦の罪を問うと言ったか。ケスラー!ここに来てこいつに自分の罪状を教えてやれ!」

 歩みでたのは憲兵総監ウルリッヒ・ケスラー大将である。「シャフト技術大将。卿を収監する。罪状は、収賄及び公金横領、脱税、特別背任、軍事機密の漏洩だ」

 よくここまで調べられたな。僕はケスラーの捜査能力の高さを実感した。

 「証拠は・・・」

 「連れていけ!」ケスラーはシャフトに何も言わせずに連行させた。

 「クズが!」ラインハルトは吐き捨てた。

 

 フェザーン自治領。

 この戦争を背後から操ってきた第三勢力である。

 その自治領主補佐官、ルパート・ケッセルリンクはある家を訪れていた。

 戸を叩くと、中から壮年男性の声がした。「このような夜中に、どちら様ですか。名前を名乗っていただきたい」

 「フェザーン自治領主補佐官のルパート・ケッセルリンクと申します。元帝国軍所属のアンスバッハ准将でいらっしゃいますね?」

 アンスバッハ。元々ブラウンシュヴァイク公の腹心と言われた男。彼は即答しなかった。「・・・何か、ございますでしょうか?」

 「ご相談があります。閣下が、かつていた栄光の地位を回復することのできる・・・」

 








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