とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第二十八話

 僕はアムリッツア星系に到着した。これから星系各所の要塞を視察する。

 この時点でアムリッツアに展開していたのはアイヘンドルフ少将の指揮する3000の艦隊である。

 前回のイゼルローン攻略作戦の失敗のあと、同盟軍が回廊内部で再び展開し始めたとの情報もあり、気を抜くことはできなかった。

 だが、差し当たり僕がいる間に大規模な戦闘が起こることはないだろう。僕はミュラーにかわって参謀長になったアルフレット・グリルパルツァー中将や副司令官グリューネマン中将とともに視察を開始した。

 

 先の攻防戦の後、同盟軍イゼルローン駐留艦隊パイロットの養成のための訓練航海は規模を増やして開始された。

 このときはグエン・バン・ヒュー提督が指揮するおよそ4000隻の艦隊がイゼルローン回廊で航行していた。

 古今東西、遭遇戦と言われるものはどちらも予測しないうちに戦闘状況が作り上げられてゆくものである。そして、当人たちがその状況に気づくのは戦闘が開始され、避けようがなくなったときである。このときもそうだった。

 アイヘンドルフ提督の艦隊2000が索敵に当たっていたところを同盟軍艦艇200隻を発見した。

 アイヘンドルフはここで攻撃するかどうか迷ったが、いくらヤン・ウェンリーでもこの状況で罠を張り巡らせているとは考えられないと判断し、艦隊に攻撃を命じた。

 だが、同盟軍の200隻はグエン・バン・ヒュー艦隊の前衛偵察部隊であり、そのすぐ後ろから本隊が進撃していたのである。

 「何?敵がだと?」グエンは報告を受けて驚いた。「敵の規模は?」

 「およそ、2000隻です!このまま放置していては、前衛艦隊が撃破される恐れがあります!」

 「では、攻撃だ!全艦隊、最大速力!」

 「了解。最大速力」グエンの脇に座る女性の艦長が指示を下す。

 グエン艦隊はずるずると戦いののめり込んだ。そしてこれが、アムリッツア要塞の初陣であったことを知るものはこの時点ではいなかった。

 

 「同盟軍が!?」僕は報告を受けて振り返った。

 「はっ!アイヘンドルフ提督から報告です!「我、敵艦隊ト交戦状態ニ入レリ。敵ノ数、オヨソ4000」以上です!」

 僕は小さく舌打ちした。「何でまた遭遇戦になるんだ!直ちに近隣の艦艇を集結させろ!私の指揮下に一時的にいれてアイヘンドルフを救援する!」

 「はっ!」グリューネマン、グリルパルツァーが敬礼し、旗艦「ルーヴェ」の通信コンソールへと走っていった。

 「艦長」

 艦長ローザ・フォン・ラウエ中佐が立ち上がった。

 「直ちに出撃準備だ」

 「はい。既に準備は済んでおります」ローザは答えた。

 僕は目を丸くした。「早いな。どうしてだ?」

 「ここは前線です。いつ敵が来てもおかしくはないので、いつでも出港できるように整えてあります」

 この若い女性艦長はやはり優秀だな。「そうか。ありがとう」

 

 無秩序な撃ちあいを続けるのに飽きたグエンは全艦隊に突撃命令を下した。

 「突撃!」 

 「全艦隊、突撃!」

 グエン艦隊は突撃を開始した。全砲門を開き、火力を叩きつける。

 だが、グエン艦隊お得意の突撃もこの時は不発に終わった。アイヘンドルフは敵が前進すれば同じ速度で後退し、敵の接近を許さなかった。逆に先頭集団に砲撃を浴びせて動きを封じる。

 「よし、全艦隊、主砲斉射三連!しかる後一斉回頭してアムリッツア方面へ向かう!」

 直ちに命令が伝達され、帝国軍艦隊は主砲を一斉に射撃して敵艦隊の動きを一瞬だけ封じ、その間に一斉に回頭、アムリッツア方面に最大速力で向かった。

 そちらにはヒルシュフェルト元帥の増援兵力、そして要塞があった。

 

 「敵艦隊、敗走していきます!」

 「ふん、逃がすか!全艦隊追撃する!あの敵を必ずや補足撃滅するぞ!」グエンの指示は単純で、誤解のしようもなかった。

 新米をのせた空母を下がらせ、グエン艦隊は速力をあげ、帝国軍艦隊を追撃した。

 

 「アイヘンドルフ艦隊より入電。敵を釣りだし、もう少しでこちらに到着するとのことです!」

 あのあと二日間にもわたる追撃戦の末、アイヘンドルフ艦隊は同盟軍をアムリッツアまで引きずり出すことに成功した。

 その間に僕の下には4000隻の兵力が集結し、反撃開始の時を待っていた。

 「閣下。まもなくニブルヘイム要塞主砲射程に入ります」グリルパルツァーが報告した。

 アムリッツアにいくつか建設された要塞群のうち、もっとも大きいのがニブルヘイム要塞である。要塞主砲「レーヴァテイン」は通常艦砲の1、5倍の射程を持つ。

 「射程にはいりしだい砲撃開始。全艦隊、前進」僕は命じた。

 「はっ!」

 

 「閣下!すでにアムリッツア恒星系にまで達しています!物資が不足し始め、これ以上は戦闘続行不能です!」

 「くっ!撤退するしかないのか・・・」グエンは悔しそうに歯ぎしりしたが、彼は既に来すぎていた。

 「高熱源体接近!艦砲ではありません!」

 「何!?」

 そのつぎの瞬間、旗艦「マウリア」の脇を青白いビームが掠めた。そのビームはグエン艦隊の艦艇300隻を瞬時に撃沈してしまった。

 「全艦、直ちに後退しろ!」グエンはそう叫ぶしかなかった。

 

 「よし!全艦隊突撃!敵を一気に押し崩す!」僕は席を立って命じた。

 旗艦「ルーヴェ」を先頭に、帝国軍は一斉に突撃を開始した。主砲を全力で撃ちまくり、同盟軍艦艇を宇宙のチリに変えてゆく。

 グエンは撤退に入った瞬間にその精強さを失い、猟犬に追い回される羊の群れのごとき醜態を見せつけた。

 旗艦「マウリア」もミサイルの直撃を受けて木っ端微塵に消滅した。

 他の艦も散り散りになって逃走し、アッテンボロー艦隊が救援に駆けつけるまでにほとんど壊滅してしまった。

 

 フェザーン。ルパート・ケッセルリンクはあるひとつの暗号文を送信した。

 「フェンリルは鎖から放たれた」

 この暗号を受け取ったアンスバッハ元准将は宇宙港に向けて歩き始めた。

 フェザーンの陰謀を叶えるために。

 

 あとがき

 どうも。名前がポンポン変わるフェルディナントです。

 最近は寒いですねー。皆さん、お元気になされてますか?

 今度から、この小説を週一投稿にしようと思います。日曜日の夜にに投稿するようにする予定です。

 たくさんの感想、ありがとうございます。もし登場させたいキャラクターがおありでしたら、お早めにお申し付けください。

 では。眠いのでお風呂入って寝ます。

 


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