とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第二話

 「敵艦隊、我が艦隊の左翼を圧迫してきます!」ダスティ・アッテンボローが報告した。

 「右翼を敵の後背に回し、中央と合わせて攻撃しろ」ヤン・ウェンリーは命じた。

 「はっ!」通信士が敬礼する。

 直ちに第二艦隊右翼が敵の後背に回り込むべく、運動を開始した。中央艦隊は敵左翼を攻撃すべく機動する。

 「敵右翼、運動を開始!我々を後背から攻撃する模様!」

 「敵中央、我が艦隊の左翼、エルラッハ艦隊を攻撃開始」

 「エルラッハ、フォーゲル艦隊は敵中央艦隊を迎撃せよ。右翼は放っておけ」ラインハルトが命じる。「それでいいよな、キルヒアイス、ヒルシュフェルト」二人の親友のほうを向く。

 「はい」二人は即答した。

 この時点で敵左翼は大損害を受けていた。無理もない、アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト少将とウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ中将の猛攻撃を受けていたのだから。

 だが、エルラッハ、フォーゲル艦隊の戦術の酷さはパストーレやムーアより格下だったかもしれない。

 相手がヤン・ウェンリーだったとはいえ、同数の艦隊を持ちながらここまでの醜態をさらせるものなのか。

 ラインハルトは音高く舌打ちした。「エルラッハとフォーゲルは何をやっているのか!戦線の維持すらまともにできんとは!」

 僕も同感だった。エルラッハ艦隊はすでに六割を失い、フォーゲル艦隊も四割を超える損害を受けている。

 こうなっては仕方ない。作戦を変えるとしよう。「閣下。ここは敵を一気に突破してさらに敵中央を攻撃すべきかと存じます。このままぐだぐだと交戦を続けていては敵の右翼に後背を衝かれかねません」

 「その作戦が成功すれば敵左翼は崩壊し、敵中央も壊滅させられましょう」ジークフリードも同調してくれた。

 「ヒルシュフェルト。卿の策を採ろう。全艦、突撃!」

 これまで砲撃戦を続けてきた帝国軍が一斉に攻勢に出た。先頭はファーレンハイト艦隊とメルカッツ艦隊、右翼はシュターデン艦隊、左翼はエルラッハ、フォーゲル艦隊。

 「砲火を一点に集中せよ!そこを一気に突破する!」ラインハルトの戦術に僕は感嘆するばかりだった。彼はやはり天才だな。

 だが、ファーレンハイトのようにラインハルトを信頼し、戦果をあげる提督もいれば、エルラッハのように人を見る目も戦術能力もない輩もいる。

 「若造めが!突撃なぞやるものか!金髪の若造めの言うことなど無視しろ!正面の艦隊に集中砲火!」

 だが、その瞬間旗艦の通信装置が壊れ、エルラッハ艦隊の艦がラインハルトの本隊に続き、ただ一隻回頭しなかったエルラッハの旗艦は数百本のビームに切り刻まれて轟沈した。

 「エルラッハ少将、戦死!」

 「自業自得だ!」

 え?エルラッハが命令無視したなんて報告、入ってないんだけど。まあ、偏見かな?

 そうこうしている間にも帝国軍は確実に敵に損害を与え、穴を穿ちつつある。

 「敵中央、我が艦隊の後背に移動!」

 「構わん!このまま突破しろ!」ラインハルトは動じない。

 そして、

 「敵中央を突破に成功!」

 「全艦回頭!しかる後砲撃開始!」

 

 


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