とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した 作:フェルディナント
イゼルローンへの攻撃を一旦中止したジークフリードは本国に「増援を要請した」。これを受けてラインハルトは即応体制で待機していたウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将の艦隊に対して出撃を命令した。
直ちにミッターマイヤー艦隊はイゼルローン回廊へ向けて進撃・・・するはずであった。
だが、
「このコースでいいのか?イゼルローン回廊とは別のほうに向かっていないか?」
「だが、他ならぬ司令官閣下のご命令だ。俺たちは黙って従うしかあるまい」
そしてミッターマイヤー艦隊はイゼルローン回廊へ向かうことのできる最後の分岐点に到達した。
その時、司令官ミッターマイヤーから訓示が発せられた。
「我らが向かう先はイゼルローン回廊にあらず。フェザーン回廊である」
惑星フェザーン。
駐在武官ユリアン・ミンツは夜闇を振り払うようにして降下してくるエンジンのバーナー炎を見た。
「帝国軍の侵攻だ!」
「降下してくるぞ!」
ユリアンは踵を返して弁務官事務所に向けて走り出した。
ミッターマイヤー艦隊の後をおって進撃するロイエンタール艦隊。
「閣下。ミッターマイヤー艦隊より入電。「我、奇襲に成功せり」以上です!」
ロイエンタールは頷いた。「よし。我らも急ぐぞ」
疾風との渾名を取るミッターマイヤーのことだ。フェザーン当局が対応できないうちに制圧してしまったのだろう。
(今回は俺の出番はなしか・・・まぁ構わん。いつかは戦うときも来るだろう)
ジークフリードはフェザーン占領さるとの報告を旗艦「バルバロッサ」艦橋で受けた。
「こうなればヤン提督はこのイゼルローンを放棄せざるを得ないでしょう」ジークフリードは各艦隊の司令官、参謀長を集めて説明した。
「フェザーンを突破されたのでもはやイゼルローン要塞はその意味を果たしません。彼はイゼルローンを放棄し、わが軍の主力艦隊との決戦に全力を注ぐでしょう」
「では、どうなさるのです?」ワーレンが聞いた。
「ヤン艦隊1000隻以上を自由に行動させると言うことは敵が好きな場所に投入できる予備兵力を確保したのと同じことになります。よって、わが艦隊はイゼルローン占領には最低限の兵力を割きつつ、全力をもってヤン艦隊を追撃します」
幕僚たちから感嘆の息が漏れた。
「必ずしも戦闘に突入する必要はありません。後ろにぴったり張り付いてついていくだけでヤン提督にとっては大変な脅威となります」
「ですが、我が艦隊がヤン艦隊にくっついていった場合、主力よりも行動の開始が早い分突出することになります。そこを敵の全軍をもって攻撃されたらどうなさるのです?」ルッツが聞いた。
ジークフリードは頷いた。「ルッツ提督のご指摘はもっともです。ですが、我々は必ずしも敵首都まで到達する必要はないのです。敵の主力を拘束することができればそれだけで十分目的を果たしたことになります。我々が単独で敵奥深くに入り込み、同盟軍の主力を拘束している間に主力が首都に侵攻できれば我々の勝利です」
「なるほど」
「向こう数日でヤン提督は離脱を開始するでしょう。戦闘にはならない距離を保って全力で追撃します」
ヤン艦隊はついにイゼルローン要塞の放棄を決定し、艦艇にまで避難民を収容して脱出作戦「方舟」を開始した。
ジークフリードは全戦力をもって追撃を開始した。それと同時に少数の制圧部隊がイゼルローンに突入した。
内部に入った部隊は直ちにもぬけの空となった要塞全区画を制圧。司令部を占領したが「罠」の存在には気づかなかった。
追撃を開始してから三十分後
「後方で爆発確認!」
「なんだと!?」
イゼルローン要塞表面で爆発の炎が踊っている。
「しまった!敵の置き土産には気づかなかった!」
「もし艦隊が接舷するタイミングで爆発していたら・・・」
ヤンは真の罠に気づかせないために爆薬を仕掛けていたのだが・・・史実で爆弾の存在に気づいたルッツが追撃に入っていたために意見具申をすることがなかったために要塞は爆発したのである。
爆発は収まることなく、イゼルローン全体を飲み込んで行く。
そして、三十分後、巨大な爆発光で周囲を照らしながら消滅した。
帝国軍の要衝として、同盟軍の絶対防衛ラインとして役目を果たしてきた巨大要塞はヤン・ウェンリーの壮大な策略を未完に終わらせながら銀河の歴史から退場したのである。
「閣下・・・」フレデリカは自分の司令官を見つめた。
ヤンは何も言わずにスクリーンで点滅する光を見つめた。そして無言のまま席を立ち、艦橋を去った。
この瞬間、ヤン・ウェンリーは生涯初めて敗北したのである。
あとがき
ついにヤンが負けました。
・・・・・はい。本当に更新遅れてごめんなさい。明日も投稿しますので、何でもしますので許してください!
動画製作のほうに本腰をいれてしまっていて・・・
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@admiral_fiel