とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント

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第三十八話

 ラインハルトは全ての兵力をガンダルヴァ星系に集結させた。

 このまま同盟首都へ直進してもいいが、敵艦隊戦力を残した状態だとやはり懸念が残る。

 取り敢えず、本国からの補給を待って作戦目標を決定することにした。

 だが、その補給船団が同盟軍によって壊滅させられたのだ。同盟軍は持てる兵力をかき集めて輸送船団を攻撃し、護衛に出撃していたレンネンカンプ艦隊を壊滅させた。

 史実ではゾンバルトが勤めていたこの役目を、僕の提案によりレンネンカンプに変えたのだが、その結果は悲惨なもので、輸送船は半分が轟沈し、基地設営資材の七割が失われ、レンネンカンプはヤンが仕掛けた囮にまんまと引っ掛かって後ろをとられて大損害を出し、ほうほうの体で帰還した。

 レンネンカンプに対しての処罰は重かった。まずレンネンカンプは前線から引き抜き、イゼルローン回廊帝国本土方面艦隊司令官に左遷。代わりにその役職にあったエルンスト・フォン・アイゼナッハ大将がイゼルローン回廊を経由してガンダルヴァに進出する。

 この提案を行ったのはオーベルシュタインではなく、僕だった。一罰百戒の効果を出すためと、レンネンカンプを前線から下げて後の不幸を遠ざけようとしたのだ。

 結局、レンネンカンプは僅な手勢を率いて本国に帰還することになった。

 史実と違って大戦力を張り付けていたお陰で輸送船の半分は守りきることに成功し、食糧、燃料に関しては不足することはなかった。

 これを受け、ラインハルトは新たな作戦として「ヤン艦隊の撃滅」を上げ、それに投入する戦力としてコルネリアス・ルッツ、アウグスト・ザムエル・ワーレン、そしてジークフリード・キルヒアイスの率いる合計三個艦隊を投入した。

 ジークフリードは前回のガンダルヴァ会戦でエルゴン会戦での敗北を補って余りある成果を上げ、彼に対する評価は再び上昇していた。

 僕自身が出撃できないことはやや不満だったが、僕もミッターマイヤーも艦隊の損害の再建ができなければ再出撃はできない。暫くの間、他の艦隊からの報告を待ちながら艦隊を再建する日々が続いた。

 

 トリプラ星系を航行していたキルヒアイス艦隊がヤン艦隊を発見したのは宇宙歴七九九年、帝国歴四九〇年の三月一日のことである。

 ヤン艦隊は総勢15000隻。それ以外の艦隊は全て同盟首都でビュコック元帥指揮の下展開している。

 キルヒアイス艦隊は14000隻。失った艦艇の補充はされていないため、ヤン艦隊よりやや劣性だった。

 「如何いたしますか、閣下?」参謀長ハンス・エドワルド・ベルゲングリューン中将が聞いた。

 「ここで撤退しても良いですが、すると補給線は常に危機にさらされることになります。ここは確実にヤン艦隊を撃破し、後顧の憂いを断ちましょう」ジークフリードの腹は決まっていた。

 「はっ!」

 「周辺を航行する全ての友軍艦隊に集結を命令!敵を包囲殲滅する!」

 

 キルヒアイス艦隊からの電文がラインハルトの耳に届くや、彼は決断を下した。

 全軍出撃。ヤン艦隊をここで確実に仕留めよ。

 同盟領に侵攻してから幾度となく戦った相手、ヤン・ウェンリー。勝っても負けても再び姿を表す彼に、引導を渡すのだ。

 キルヒアイス艦隊には、消極的に動いて時間を稼ぐことが命令された。

 当然、ガンダルヴァ星系を手薄にするわけにはいかない。シュタインメッツ提督、合流するアイゼナッハ提督の艦隊が防衛についた。

 それ以外の帝国全軍、十一万を越える大艦隊がガンダルヴァを出発し、先を争って決戦場へと向かった。

 これを受けてヤンも同盟全軍に出撃を要請。ビュコックの率いる残存艦隊14000が急ぎハイネセンを出撃した。

 最終局面への道は急角度をつけて下り始めていた。

 

 次回

 最終回パート1


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