とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した 作:フェルディナント
ヤン艦隊はキルヒアイス艦隊に猛攻撃をかけた。
ここでキルヒアイス艦隊を殲滅し、帝国軍の各個撃破がかなえばあるいは勝機も見えるかもしれない。
だが、ジークフリードは自分の任務をわきまえていた。ヤン艦隊が前進すればそれだけ下がり、速度を調節してヤンに撤退の隙すら与えない。
双方とも損害はほとんど出ず、帝国軍の援軍が来るまで戦闘は膠着状態だった。
帝国軍で最初に到着したのはミッターマイヤー艦隊だった。数が減っているとはいえ疲労したヤン艦隊に横から攻撃を加え、損害を与える。
「やはりキルヒアイスともなると無理があったな」ヤンは苦々しく呟いた。
それでも彼は勝つための算段を打った。一気に後退し、ミッターマイヤーの前進を誘う。
「待て、あれは罠だ」ミッターマイヤーははやる部下を制したが、バイエルライン中将の艦隊はヤンを追撃しようと躍起になった。
そして突出したところに側面からマリノ少将の艦隊が突っ込んだのである。
「撃て!」ビームが帝国軍艦隊に突き刺さり、爆発の光がバイエルライン艦隊を包み込む。
「陣形を再編しろ!密集体系を取って後退!」バイエルラインは崩壊を防ごうとしたがそれより早くマリノは帝国軍艦隊のなかに突っ込んだ。
ミッターマイヤーは入り乱れた両軍を見て舌打ちした。「これでは外から攻撃を加えられんな」
艦と艦が一騎討ちに近い形で乱れあって撃ち合い、質量が飽和状態に近づいた。
「待て!このままではエネルギーが暴発する!」バイエルラインが味方を制止しようとしたが通信回線は混乱し、指示は伝わらなかった。
至近距離で両軍が撃ちまくったためにエネルギーが飽和状態になった。至るところでエネルギー爆発が発生し、両軍の艦艇を押し飛ばす。
帝国軍艦隊はこの混乱で多いに陣形を乱した。味方同士で誤射を起こし、衝突する。
ミッターマイヤーほどの指揮官をもってしてもこの大混乱をすぐに鎮めることはできなかった。
「よし、全艦撃て!」ヤンは見逃さず攻撃を命じた。
輻輳する火線が帝国軍を捉え、爆発の光が宇宙を照らし出す。
「醜態を見せるな!同盟最後の艦隊を相手に逃げ出すか!」ミッターマイヤーは席から立ち上がり、狼狽する味方を叱咤した。
その間にもミッターマイヤー艦隊は一方的に撃ち減らされていく。
それでもミッターマイヤーは苦心して少数部隊を編成し、ドロイゼン中将に率いさせてヤン艦隊の右側面に打撃を加えた。
数こそ少なかったがこの攻撃でヤン艦隊の足は鈍った。フィッシャー提督を失った同盟軍は臨機応変に陣形を再編させるだけの艦隊行動力に欠けていたのである。
ヤンの表情は時間を追うにつれて険しいものとなっていった。
側にいたフレデリカは自分の将来の夫がここで死なないよう、祈り続けることしかできなかったのである。
さらにヤン艦隊の左側面にキルヒアイス艦隊が到着し、苛烈な砲火を浴びせかけた。
ヤンはなんとか陣形を維持しつつも、二十万キロに渡る後退を強いられた。
「キルヒアイスにミッターマイヤーか。全く、ローエングラム公は人材が湧き出す魔法の壺でも持っているのかな」その下手な冗談は、この状況下では空気を紛らわすことさえできなかった。
だが、ここでヤンに光明が訪れた。
ビュコック提督の援軍が到着したのである。それを聞いてヤンは表情を綻ばせた。
「これでどうにかなるかな」
陣形を再編したミッターマイヤーは舌打ちして旗艦ベイオウルフの床を蹴りつけた。「なかなかどうして、思い通りにことが運ばないな」
「このままでは増援を得た敵の方が有利です。後退しますか?」ジークフリードは聞いた。
ミッターマイヤーは蜂蜜色の髪を振った。「いや、交戦を続けよう。こちらはまだ援軍が向かっている」
事実、帝国軍はロイエンタール、ヒルシュフェルト、ラインハルト、ワーレン、ルッツ、ファーレンハイト、ビッテンフェルト等の艦隊が駆けつつあるのだ。ここは戦線を維持し、同盟軍を拘束し続けるべきである。
「分かりました」ジークフリードは頷いて通信を切った。
そこに同盟軍前進開始の報告が入る。
「流石はヤンとビュコック提督だ。あの二人が指揮しているとなればそう簡単にはいかないな」それを知りながら、ミッターマイヤーは高揚感を覚えていた。
あとがき
だいぶ期間が空いてしまい、申し訳ございません。次回か次次回で最終回となります。
二つ宣伝をさせてください。
一つは私が創設した動画実況者団体、ディスロドリーグループです。
荒野行動、Minecraft、銀河英雄伝説Ⅳなどを一人、あるいは数人で実況しています。もちろん私も参加しています。七月中旬より夏期動画集中攻勢作戦「ツィタデレ」を開始する予定になっています。
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銀河英雄伝説の動画も上げておりますので、是非ご覧ください。
もう一つは、「インペラトル」です。
こちらとなろう様、さらにpixivに投稿を開始したSF小説となります。
六つの国に分かれた人類の戦いを三人の主人公を中心に描く物語となっています。
是非そちらもお読みください!すでに第一幕第二場まで公開しております。
それでは、またお会いしましょう。