とある青年が銀河英雄伝説の世界に転生した   作:フェルディナント
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第八話

 大損害を受けた自由惑星同盟軍。

 ラザール・ロボス元帥はこの状況の中で生き残った第五、第八、第十三艦隊と第九、第十、第十二艦隊の残存部隊をアムリッツア恒星系に集結させた。

 帝国軍の司令官、ラインハルトもこの動きを察知し、手持ちの全軍をアムリッツアに向かわせる。その中にはルートヴィヒ・フォン・ヒルシュフェルト中将の艦隊もいた。

 

 同盟軍は恒星アムリッツア上空に布陣していた。

 右翼が第十三艦隊8900隻、中央が第八艦隊7600隻、左翼が第五艦隊8100隻、その後方に第九艦隊(ライオネル・モートン少将指揮)2900隻、第十艦隊(ダスティ・アッテンボロー准将指揮)4200隻、第十二艦隊(第八艦隊に編入されている)3400隻。合計して37100隻ほど。総指揮はアレクサンドル・ビュコック中将がとる。

 これに対する帝国軍はラインハルト・フォン・ローエングラム元帥指揮の艦隊11000隻、ミッターマイヤー艦隊14000隻、ロイエンタール艦隊13000隻、ケンプ艦隊12000隻、ビッテンフェルト艦隊10000隻、メックリンガー艦隊13000隻、そしてルートヴィヒ・フォン・ヒルシュフェルト中将の艦隊10200隻。

 別動隊としてキルヒアイス艦隊12000隻、ルッツ艦隊10000隻、ワーレン艦隊12000隻。

 合計すると主力だけで約70200、別動隊34000も含めると104200隻にもなる。同盟軍に対して三倍近い兵力だった。

 会戦に先立ち、ラインハルトは各艦隊の布陣を指示した。ラインハルト艦隊は第五艦隊と、メックリンガー艦隊、ケンプ艦隊が第八艦隊と、ミッターマイヤー、ビッテンフェルト、僕の艦隊は第十三艦隊と戦い、ロイエンタール艦隊は予備として待機する。

 ほとんど原作と同じ布陣だ。違うことがあるとするなら僕もヤンと戦えることか。ヤン・ウェンリーめ。待ってろよ。

 

 「敵艦隊、恒星に核融合弾を投下!」グリルパルツァーが報告してきた。

 「敵は一気にミッターマイヤー艦隊を叩く気だ。全艦、敵第十三艦隊が上昇し、ミッターマイヤー艦隊を攻撃し始めたタイミングで敵の横を攻撃しろ!」

 いやあ、原作知ってるっていいね。

 予想通り、ヤン艦隊はミッターマイヤー艦隊を攻撃し始めた。

 「左舷、損傷!」

 「ちっ。動きが早い。さすがにヤン・ウェンリーだな。一旦後退しろ。後退しつつ陣形を再編。敵が怯んだタイミングで攻勢にでる!」ミッターマイヤーは命じたが、

 「ヒルシュフェルト艦隊、敵の右翼を攻撃開始!」

 「敵艦隊の動き、止まりました!」

「いいぞ!そのまま確実に撃破しろ!ミッターマイヤー艦隊と半包囲体制を築く!」

 

 「閣下、いかがなさいますか?」ムライが聞いた。

 「装甲の厚い戦艦を並べ、その隙間から小型艦の主砲で砲撃しろ。砲撃しつつ後退するんだ」ヤンは命じた。

 

 「敵は戦艦を盾にしてきたようです。やりますな」グリルパルツァーが感嘆の息を漏らした。

 「なら敵の一角を突き崩せばよかろう!砲火を一点に集中!」

 あとで思ったが、僕は完全に冷静さを失っていたと思う。一度ならずヤンにやられたという思いは、僕の「転生者」というハンデを有効に利用する冷静さを失わしめていた。

 敵の一角に砲火を集中するが、敵戦艦はバリアの出力を最大にしているためなかなか撃破できず、逆に反撃で損害を受けている。

 だが、この攻撃は結果としてシュワルツ・ランツェンレイターの第八艦隊への突破口を開ける形になり、ビッテンフェルトは突撃を命じた。

 

 「進め進め!勝利の女神はお前らに下着をちらつかせているぞ!」

 黒い高速戦艦が一斉に砲撃を開始した。シュワルツ・ランツェンレイターの高速戦艦は普通の高速戦艦より攻撃力が上げられている。その効果は抜群で、第八艦隊は恐るべき勢いで撃破されていった。

 そのビームは戦艦「クリシュナ」にも命中した。

 「機関損傷!機動レベルを維持できません!」

 「総員退去!」司令官アップルトン中将は命じた。

 「閣下!」参謀長が彼を呼ぶ。

 「私はいい!」アップルトンは首を横に振った。

 乗員が脱出し終わるとすぐに「クリシュナ」は恒星に墜落していった。

 

 「第八艦隊旗艦「クリシュナ」撃沈。アップルトン中将も戦死の模様」

 「閣下。このままでは我が軍は分断されます」

 「だが、助けにいくことはできない。こちらもこれで精一杯だ」

 事実、ヤンの艦隊は一個艦隊でミッターマイヤー艦隊とヒルシュフェルト艦隊の二個艦隊を支えていた。

 

 「ようし!先ほど通過した第十三艦隊を背後から襲う!主砲を短距離に切り替え、ワルキューレを発進させろ!」

 直ちにシュワルツ・ランツェンレイターは回頭したが

 「今だ!予備艦隊全艦、背後で回頭する黒い艦隊を撃て!」

 ヤン艦隊の中で後ろを向ける艦と戦場後方で待機していたアッテンボロー、モートン艦隊が砲撃し、黒い高速戦艦は次々と轟沈していった。

 挟まれた形になったシュワルツ・ランツェンレイターの被害は甚大だった。

 

 「ビッテンフェルトは失敗した!ワルキューレを出すのが早すぎたのだ!」ラインハルトは立ち上がった。

 「ビッテンフェルト提督から増援要請です」通信兵が報告した。

 「増援!?増援だと!?私が艦隊のわき出る魔法の壺でも持っているというのか!?ビッテンフェルトに伝えよ。”我に余剰戦力なし。そこで死守し、武人の職責を全うせよ”とな。以降ビッテンフェルトからの通信を切れ。敵に傍受される」

そう言ってからラインハルトはモニターを見た。「どちらもよくやっているではないか・・・特にあの第十三艦隊。さすがはヤン・ウェンリーと言ったところだ」

 「ですが、このままですとこちらの損害も無視し得ないものになります」総参謀長パウル・フォン・オーベルシュタイン准将が言った。

 ラインハルトの脳裏に赤毛の親友の影が浮かび上がった。まだ戦場に到着していない、親友の影が。

 「キルヒアイスは、まだ到着していないのか?」ラインハルトは参謀長の方を振り向いた。

 オーベルシュタインはその言葉に反応した。「ご心配なのですか」

 オーベルシュタインのナンバー2不要論はラインハルトも知っている。キルヒアイスとヒルシュフェルト。この二人がナンバー2だった。

 「そうではない。ただ確認しただけだ」ラインハルトは再びモニターの方を向いた。

 

 第十三艦隊はロイエンタール艦隊を含めた数万隻の圧倒的大軍に押されながら、なお秩序を保って行動していた。

 「くっ!ヤン・ウェンリーめ、何て強さだ!」僕は舌打ちした。

 自分が不利になるとすぐ苛立ってくる。これは僕の欠点だった。子供の頃からそうだったな。それをふと思い出した僕は、自分の苛立ちを鎮め、戦場全体を見渡した。

 第十三艦隊の奮戦もむなしく、戦局は帝国軍の圧倒的有利に動いている。ビッテンフェルトも強引に敵艦隊を突破し、離脱に成功した。同盟軍は予備を使いきり、後方はがら空きになっている。

 (これは・・・いけるぞ・・・)僕の頭に描かれたのは、おそらくは今機雷原の前にいるだろう30000の艦隊。赤毛の提督の率いる艦隊だった。

 

 「閣下。前方に敵機雷群。数およそ4000万」ベルゲングリューンが報告した。

 「予想道理ですね。指向性ゼッフル粒子を」

 巨大な工作艦が前進し、新兵器指向性ゼッフル粒子を散布する。

 「発射!」ジークフリードの号令で、「バルバロッサ」の砲口から青白いビームが放たれた。そのビームは機雷原を突き抜け、ゼッフル粒子を引火させた。

 巨大な爆炎が踊り、みるみるうちに広がっていく。機雷は次々と炎の中に消えていった。

 ジークフリードは頷いた。「全艦前進!敵の背後を襲う!」

 戦艦「ヒューべリオン」艦橋に更なる凶報が舞い込んだ。

 「後方に敵!数、およそ30000!」

 「30000隻!?」パトリチェフが立ち上がった。

 「馬鹿な!機雷原はどうした!?」ムライが大声をあげる。

 「突破された模様!」

 フレデリカは黒髪の司令官の方を見た。

 ヤンはこの事を予測していたようだが、まさか30000も来るとは思ってなかったのだろう、厳しい表情を見せている。

 そして、ジークフリード・キルヒアイス、アウグスト・ザムエル・ワーレン、コルネリアス・ルッツ三中将の艦隊は攻撃を開始した。

 

 ・・・標準時10月14日、勝敗は決した。








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