男性転生者だらけのインフィニット・ストラトス   作:鋳型鉄男

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今回はから数回アンチ気味なので留意の上ご覧ください


4月中旬 その1

 

 遅咲きの桜が薫る4月中旬、そのとある早朝6時18分。クラス代表候補戦の縁でよく集まる様になった俺こと南路、北条、マリアーノ、幸島そして織斑の通称“織斑組”は、朝のランニングの為に男子寮(仮)“ストラトスフィア”前に集合していた

 

「ぃよっし、そんじゃぁ今日は30分のコースから行ってみっか」

「昨日部長に教わったコースだな。各女子寮の前を通るルートにされているのに恣意的なものを感じるが問題はないだろう」

「ヒッ…ルート替えない?俺朝から囲まれるとか嫌だぞ」

「聞いたところによると、この時間にランニングをしている子は色恋への興味が薄いみたいだから大丈夫じゃないかな」

「まぁ折角教えて貰った訳だし、一度試してみるても良いと思うぞ?」

 

 各々体を解しながら雑談を続ける。まだひやりと涼しい空気は運動するのに都合がよく、嫌そうな顔をする幸島も陸上部の血が騒ぐのか、入念なストレッチを止める気は無い様だ。

 天気は快晴、風も程好く吹いており中々幸先の良いものを感じている。

 

「良し。それじゃそろそろ行こうか。ペースはどうする?」

「陸上やってた俺が。女子寮の前で早くするんで付いて来て下さいね」

「了解だぜぇ。んじゃぁ織斑組の早朝トレーニング第一回、行ってみよう!」

「「「「おー!」」」」

 

 

 

 

 数分と立たず一年女子(ハンター)の集団に捕捉された。

「幸島が逃げた!待て、先走るんじゃない!」

「やっぱり居たじゃねぇか嫌だあああああ!こんなところに居られるか俺は先に行くぜ!」

「フラグ乙。まぁ追従して全力で逃げる俺らも同類だがなぁ!」

 

 

 

 

 さらに数分後道路脇で二年生に捕獲された幸島が発見された。腰を抜かして二年女子(上位ハンター)に囲まれている。

「彼の犠牲を無駄にしてはならない。このまま走り抜けるぞ」

「おう!……あれ、マリアーノは?」

「マリアーノはなぁ…マリアーノはなぁ…後ろから迫っかけてくる一年女子を食い止めるために…もう…っ!」

「そんな…この十分足らずで2人も犠牲になったっていうのかよ!」

「っ!二年女子に気付かれた!振り向くな、全力で進むんだ!」

 

 

 

 

「ありゃ三年女子(G級ハンター)じゃねえか!!くっ…仕方ねぇ。ここは俺が食い止めてやらぁ!」

「北条!……馬鹿野郎、何もお前一人で引き受けなくても良かったのに…」

「だが道は開けた。折り返しポイントまであと少しだ。せめて俺たちだけでもたどり着くぞ…!!」

「おう!」

 

 

 

 

「あ、ランニングですか?熱心ですね。先生も感心です」

「そんな……ここまで来て山田先生(超級ハンター)か……織斑、後をお前に託す。頼む、俺たちの望みを…未来を…」

「え……え…?ど、どうしたんですか南路君?そ…そんな朝からなんて…」

「すまねぇ皆!後は俺に任せろ!必ず達成して見せるからなあああああ!」

「あ、織斑君走って行っちゃいました…何だったんですか?」

「悪ノリです。少しだけ反省します」

 

 

 

 

「で、織斑一人で走り続けた挙句折り返し地点が分からなくてここまで来たと。さてはバカだなお前ら。最後の山田先生とか完全にただの巻き添えじゃん」

「ハァ……しょうがないだろ白旗……ハァ…ハァ…なんかもう途中から訳分かんなくなってたんだよ」

「まぁ何でも良いですけど。ところで織斑、ちょいと頼みごとがあるんで息整えながら聞いとくれ」

「ハァ……ハァ…ふぅ。頼み事?俺に出来る事なんて殆どないぞ?」

「正確には俺を仲介人にした依頼だな。悪い話ではないと思うぜ」

 

 

 

 

  ◇高慢なクラス代表 /  見下ろす者ども

 

「おい、デリック聞いたか?織斑vs一組代表の決闘の噂」

「一組代表というとセシリアか。イベントと言えば俺達(転生者)は分かるが強引過ぎないか?」

「それリコリン(岸里さん)にも聞いたぜ。何でもセシリアクラス代表が調子に乗ってるから一泡吹かせてやってもらおう!だってさ」

 

 ハーイ皆のアイドル、クルス・パラジオスだ。今は昼休み、いつもの三人組(アメリカ組)でメタ発言も交えながら複雑な学園事情について話してるところだな。

 話題は突如湧いてきた原作イベント、織斑vsセシリアの決闘イベントの話だ。世界の修正力ってあるんだな。無理矢理原作イベントを捻じ込んできたぜ!

 

「ほら、元々高飛車で勢いとはいえ見下し発言もするような娘だったじゃん?それが今、遺憾なく発揮されてるとか何とか」

「一組も災難だな。あれだけの暴言、スケープゴート無しに吐かれればまぁクラスも割れるか」

「しかしなぜ俺では無いのか。わざわざ純射撃型に純近接型を当てた所で普通勝ち目なんて無いというものだろう」

「お前負けたじゃん」

「〇ァッ〇!(小声)次は負けん」

 

 そこらへんはこの間のクラス代表候補戦の戦績に十代女子の欲望(イケメンかつ千冬様(孤高の花)の弟と接点を作りたい的な)をブレンドした結果だそうだ。

 更にセシリアはクラス代表候補戦を低レベルなサーカスだったと見下してやまないらしく、その中の一人にしてやられれば少しはこっちの話を聞くようになるだろうという算段があるとも聞いた。

 

「因みに敗者(リチャード)さんや。決闘が行われたとしてどっちが勝つと思う?」

「織斑だ。ブルーティアーズと同じ射撃機使いとして断言しよう」

 

 うわ断言したよ。こいつ原作セシリアの代わりに攻略されたんじゃないか?駄目だぞホモなんて腐女子の餌にしかならない。まぁそっち系女子に声かける釣り餌にするんだけどさ。

 

「あら、随分と失礼な事を仰る方ですわね。私が実働時間数時間のド素人に負けると断言するなんて。貴方の脳も見た目通り筋肉で出来ているようですわね」

「なるほどこのノリでクラス代表などされたら堪った物では無いな。一泡吹かせたくなるわけだ」

「お、セッシ―じゃん。遂に俺と遊んでくれる気になったの?」

「あなたに興味はありませんわ軽薄男。ただこの話題、当事者のわたくしも乗せてくださる?」

 

 ヒドイ振り方されたがこの程度でおれるクルス君じゃねぇぜ。だがここは俺の出番じゃないようだな今日はこれくらいで手を引くことにしてやるぜへへへ……

 

「問題は無い。何なら対織斑戦のアドバイスも付ける事が出来る。必要か?」

「いりませんわ。あなた方素人に思いつく程度の事などイギリス代表候補生のわたくしに思いつかないはずがないでしょうに」

「……セシリア・オルコット、今日の放課後は空いているか?」

「は?」

 

 お?リチャードもセシリア攻略に行くのか?成り代わり勢だもんな。性格がキツイ以外は想像の数倍カワイイし、攻略後のデレデレが楽しみになる逸材だが…

 

「模擬戦を申し込む。織斑がギリギリで乗り越えた射撃戦がどの程度か、見極めてみるのはどうだ?」

「レディを誘う文句としては完全に落第点ですわ。ですが良い機会、完膚なきまでに叩きのめして従順な犬にして差し上げますわ」

 

 あ、俺知ってる。これライバルを貶されてキレるツンデレ男キャラの目だ。これが原作主人公の力か。

 

 

 

 

キ〇グクリ〇ゾン!と言う事で放課後のアリーナである。アリーナの中に陣取るは我らがリチャード駆るサンダーボルト、そしてイギリスのヒロインセシリア・オルコット駆るブルー・ティアーズである。ついでに昼休みに隠すことなく宣戦布告したもんで観客も結構いる。

 

「あー、やっぱり一組割れてんねぇ。見てみろよデリック。あそこの集団がセシリアの腰巾着、入口二つ挟んで固まってるのがセシリア推薦後悔派だな」

「学園の人員を把握するという点でお前は本当に有効だな。ほかに特徴のある集団はあるか?」

「ちょっと待てよ……リチャードサイドにお前も知ってるアメリカ女子の集団、セシリアサイド…いやリチャードを正面に捉える場所にスレイマン含む新聞部、俺たちの左向こうに居るのが開発室で、後はそれぞれ仲のいい友達と集まってるって感じだな」

 

 指揮官殿の指示に従って観客を分析して見せたが、こう見ると如何に男性操縦者が客寄せパンダかを見せつけられた気分になるな。大体物見遊山といった風情だ。

 因みに今回の模擬戦は制限時間を15分、シールドエネルギーが最大の三分の一を下回った所で決着というお手軽バージョンだ。

 

『逃げずに来ましたのね。これだけの衆人環視の中で私の犬になる覚悟は出来ていまして?今ならまだ許して差し上げますわ』

『御託は良いから始めようぜ。長々とアリーナを占有するのも悪いしな』

『失礼を改める気も無し。では踊りなさい、わたくしとブルーティアーズの奏でる円舞曲で!』

 

 お、始まった。初撃は当然のように回避。原作でも長々見せつけるように射撃準備してたしなぁ。

 続く第二、第三射も回避。いつも思うがあの筋肉重装甲がギュンギュン飛び回る様は見てて違和感がすげぇ。訓練で俺も弾ばら撒かなきゃまともに当てられないし、当たっても硬いし。

 

『そんな分かりやすい射撃が正面から当たるわけがない。ご自慢の特殊兵装は使わないのか?』

『何事にも順序がありますわ。最初から手加減無しで落としてしまってはギャラリーからブーイングが出てしまいますもの』

『そうかよ。じゃあ先にギアを上げさせて貰う!Rock 'n' Roll!!』

 

 そう言い放つリチャードの両手のガトリング砲から弾幕が張られる。セシリアは余裕をもってこれを回避。僅かな隙を見て応射するのも流石は代表候補生ってとこだな。

 

 ……しばらく様子見の様な撃ち合いが続く。あられの如く降り注ぐ30㎜焼夷徹甲弾を優雅にかわすセシリア、時折天を穿つスターライトmkⅢの閃光を最小被害で受け止めるリチャードの両名は時間と共に段々とギアが上がって来たらしく、7分を過ぎた辺りで 戦況は次の段階へと進んだ。

 

『ISバトルはただ弾をばら撒けば良いというものでは無くってよ。場も温まったようですし、そろそろ見せて差し上げましょう。ブルーティアーズの真の力を!』

 

 お、ついにファンネルが飛んだ。原作決闘イベの時と同じくレーザービットの4つがカクカクした多角軌道でリチャードの周囲に陣取り、射撃体勢に入る。

 

『落ちなさい!』

『この程度で!』

 

 対するリチャードは包囲網自体を強引に突破する事で死線を抜ける。急加速で包囲網を抜けたリチャードもミサイルを呼び出し、2発連続で発射。2発は時間差をつけてセシリアに迫っていく。これ先に飛んでる方、避けて終わりだと油断すると後ろから帰ってくるから面倒なんだよなぁ。

 

『少しは頭を使ったようですが、その程度に嵌るわたくしではありませんわ!』

 

 だがそれも回避するしかなかった場合の話。かく言うセシリアはビットを操り2発とも同時に撃墜。まぁ軌道も単調だし、彼女ならそれくらいなら撃ち落とすよね。観客の方を見れば、単調な撃ち合いに変化が訪れた事でボルテージが上がり始めてるのが分かる。

 4つのビットによる全方位射撃と致命傷を狙う狙撃がアリーナを照らす。掻い潜るリチャードは反動抑制の為に射撃姿勢に入らざるを得ないガトリング砲を機体のハンガーに待機させ、取り回しの良いライフルとミサイルでの牽制に戦術を切り替えている。

 シールドに当たって爆ぜる炸裂徹甲弾の流れ弾が無くなった事で観客がホッとしてるのはまぁよくある事なので置いておく。

 

 攻勢交代、セシリアの射撃をリチャードが避けて避けて避けて、間にライフルを向けミサイルを放つ。高速でまっすぐ突撃するタイプ、速度を抑えしつこく追尾するタイプ、回り込むタイプといくつか試すが、尽く4つのビットに撃ち落とされている。

 サンダーボルトから放たれたミサイルを撃ち落とすたび、次はどの様に撃ち落とすか、それが如何に無駄な足搔きかを説くセシリアはまさに()()()()()()の様であった。

 

『そろそろ残弾も無いのではなくて?諦めてわたくしの犬になっては如何かしら?』

『なら次の一手で最後だ。託された男の意地、捌き切れるならやってみろ!』

 

 リチャードの最終手宣言。高速ミサイルが2発、遅れて回り込む高追尾型が2発、時間差で襲い掛かる垂直ミサイルが1発。ビットより僅かに多く発射されたミサイルを、セシリアはビットの射線を巧みに操り、全て同時に撃ち落とした。正直1発位は逃がすと思ってたわ。ただまぁ、

 

 ()()()()()。見栄張ってやっちまったな。

 

 リチャードの放ったミサイルは一度ロックオンしてしまえば発射後は自動的に目標に向かうから、セシリアのビットと異なり意識を集中する必要も無ければ武器の使用に制限が掛かるわけでもない。当然、ミサイルとガトリング砲のコンビネーションも可能な訳で、

 

『捉えた。支配者気取りで男を嘗めるなよ!』

『しまっ…』

 

 出た!リチャードさんのミサイルコンボだ!時間差をつけたミサイルを囮に使い、行動が制限された獲物を本命のガトリング砲で蜂の巣にする必殺コンビネーション!

 さらにえげつない事にガトリング砲の射撃中、セシリアが回避に専念しようとしている間もミサイルが発射され、()()()()()()()()()()()に襲い掛かる。社会人研修明けの様な指示待ちビット君は想定外の攻撃にあたふたする以上の事は出来ず爆発四散。

 セシリアに襲い来る毎分数千発の炸裂徹甲弾も情け容赦なくスターライトmkⅢを破壊し、更にブルーティアーズの装甲も容赦なく削る。

 

『ダメージがシールドエネルギーの2/3を超過したのを確認した。俺の、男の意地の勝ちだ』

 

 

 

 

(負けた……このわたくしが?あんな粗暴な男に?)

 

 戦闘終了後のピットの中。ブルーティアーズを解除したセシリアは、未だ先ほどの模擬戦の結果を受け止められずにいた。

 無論、敗因は分かる。以前からあった、ビット操作に集中するために本体の足が止まるという弱点、これを突かれた。それだけだ。それだけの筈だ。

 

(男の意地…?()()()()にわたくしが負けたと?)

 

 受け止められないのはただ一点。イギリス代表候補生たる女が、いつだって勝利への確信と向上への欲求を抱き続けたセシリア・オルコットが、ぽっと出の、他人に便乗してやっと舞台に上がるような()に負けた。

 そんな事はあって良い筈が無い。何か、何か他に敗北した理由は無かったか。機体は万全に整えた。入学早々体調を崩すような間抜けでは無い。邪魔が入らない環境は整えた。何か、何か、何か…

 

「もしか……セシ…………て()()…」

 

 僅かに耳に届いた囁きに顔を跳ね上げる。それは、それだけは認めてはならない。顔を上げた先には、ここ暫らく行動を共にしていた同級生が数人。

 

「……だってリチャード君って次戦う織斑君に負けたんでしょ?だったらそれに負けた彼女は、ねぇ?」

「あれだけ相手を見下してからのこれじゃ、ちょっと…」

 

 聞いていられなくなり、逃げるようにピットを出る。すれ違う瞳の全てが、己を見下している気がしてくる。()()()()()()を見つめている気がする。

 

(違う、違う、違う。ただ少し機体の相性が嚙み合わなかっただけ。ただ少し油断が過ぎただけ。まだ取り戻せる。そう、まだ挽回できますわ。次の試合、織斑一夏に打ち勝って…)

 

 途端、リチャード(今戦った男)の瞳を思い出す。

 降り頻る徹甲弾の雨の向こう、ハイパーセンサーで拡大されたその瞳。太陽を背負いこちらを見下す鷹の様な瞳を思い出し、背筋が凍る。

 

(………大丈夫、わたくし、セシリア・オルコットは、その程度で弱くなりは……)

 

 ……これ以上は良くない。熱いシャワーを浴びよう。一旦流して、次に備えるのだ。そうすればまだ、私は強いと証明できる筈なのだから。

 




対セシリア戦は浅い目論見に下心、油断慢心と不十分で設計されております。
今後数話は心理描写の方に力を入れてみる予定です。応援いただけるとありがたく存じます。

以上。感想・誤字脱字報告・ご意見・助言お待ちしております。
リアルの都合と作者の力量の為、次話、決闘前のあれこれについての更新はまた気長にお待ちください。
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