注意!
オリキャラが主役含め多くでます。
基本的にオリ主側で話が進みます。原作介入はあるけど、大幅な改編にはならないようにするつもりです。
ただ、一部、出したいキャラのための設定変更はあります。
更新速度はわかりません。亀の子更新になる可能性大。
以上のことを踏まえてオーケーの方、先へ進んでください。
プロローグ
アラームを止め、ベッドから抜け出し大きく背伸び。窓からは陽の光が差し込み、
今日が晴れであることを教えてくれていた。
「さて、今日も頑張るとしようか。」
ウィンドウを開き、愛用の緑を基調とした服を装備。内訳は黄緑のズボンに黄色のシャツ、その上には膝ぐらいまである深緑のコートだ。
ファッションセンスってのはよくわからないが、皆何も言わない辺りおかしくはないのだろう。
今日もまた、アインクラッドでの一日が始まった。
2022年、世界初のヴァーチャルリアリティ(VR)技術を用いたゲーム世界に直接入り込む最新ゲーム機《ナーヴギア》が発表され、同時発売のVRMMORPG《ソードアート・オンライン》(SAO)と共にゲーマー達を興奮と熱狂の渦に包み込んだ。
この俺、音無葉月(おとなしはづき)(17才)も、そんなゲーマー達の一人だった。
だから、初回発売本数が一万本しかないSAOを買うことができた時には涙流しちゃったし、
弟にもめちゃくちゃ自慢した。ソフトが再販したら絶対買って見せる、とか言ってたっけ。
けど、弟がこのゲームを買うことはないだろうし、ましてやプレイすることはあり得ない。
なぜなら、このゲームは「ただのゲーム」から本物の「デスゲーム」となってしまったのだから。
SAOサービス開始と同時にログインした俺は初めてのVR世界に感動し、心の底から楽しんでいた。
ボタンやキーボードを打ち、自分の操るキャラを動かしてきた今までのゲームとはわけが違う。いや、次元が違うというべきか。
いつもなら画面の向こう側。でも、俺は確かにここにいる。
自分の手足を動かし、移動し、喋り、敵を倒す。
これまでやってきたゲームで足りなかった何かが、ここにはあって。満たされなかった何かを俺はここで得られるんだと、
始まりの街の広場に強制転移させられ、GM、茅場晶彦の言葉を聞かされるまでは、本気で思ってたんだ。
ナーヴギアがどうとかマイクロ波がどうとか言っていたが、小難しいことはわからないので置いておく。
とりあえず大事な部分を要約すればこうだ。
現在このゲームをプレイしている1万人のプレイヤーはログアウトできない。
ログアウトする方法はただ一つ。この浮遊城アインクラッドを100層まで登りつめ、ボスを倒しゲームをクリアすること。
そしてもう一つ、
このゲーム内で体力が0になった場合、現実世界の自分も死ぬということ。
また、ゲーム内に蘇生のアイテム等は存在しないということ。
プレゼントされた手鏡のせいで、現実の自分の姿にされたりしたがそれはどうでもいい。
最後に健闘を祈るとか言って茅場は消え、広場には沈黙が訪れた。が長くは続かない。
誰かの悲鳴が沈黙を破った瞬間、広場は阿鼻叫喚の渦に飲まれた。
これが、デスゲームと化したSAO(ソード・アート・オンライン)の本当の始まりだった。
っと回想が長すぎたか。2024年4月現在、今の最前線は第60層である。
そして、俺がいるのは第38層(アメール)だ。今はここを拠点として生活している。
なぜもっと上の層に拠点を構えないのかって?・・・まぁ理由はいろいろあるんだが。
俺は最前線でボスと戦う(攻略組)と呼ばれるトッププレイヤーではない。
このゲームがクリアされるまで、ゲームを楽しもうという考えで動いている(中層プレイヤー)と呼ばれるグループの一人なのだ。よってわざわざ上の層に拠点を構える必要が無い。これが理由のひとつだ。
さて、今俺がいるのは宿屋と店が一体と化した建物だ。一階の大体のフロアがお店のスペースで、二階が宿部屋となっている。宿の名前は(涼風亭)という。
「おっはよーございます!」
「おはよ~。今日も元気だねぇ。」
部屋をでて階段を降りると、朝に少し弱い俺には絶対真似できない笑顔とテンションで挨拶された。
彼女の名はkanon(カノン)たぶん年上かな。この一階の店を喫茶店として機能させている女の人だ。
ピンクのショートポニーに緑を基調としたエプロンドレスを普段は着ている。
今はいないがバイトの子がいて普段は二人で喫茶店をやっている。
SAOの料理はかなり簡略化されている。そのため材料さえ揃っていれば一品作るのに三分もあれば十分なのである。
まさに三分クッキング。2人だけで店を回せる理由もこれである。
店には4人席が2つと2人席が3つとカウンターに4席の計18席があるが、満席になったところをを見たことがない。
昼12時から喫茶店は開店しているが、午後でも人がいない場合、ここの居住者は4人席を占拠して遊んだりしている。
基本俺は昼から夕方まではいないんだけどね。
昼から始まるのに何故朝起きているかというと、本人の気分だそうだ。
ウチの店にいるのに朝から外にご飯を食べにいかせることに抵抗があるらしい。
とはいえ、ここを拠点としているプレイヤーの為に6時には起きて朝食のサービスをしてくれている辺り、この人の人柄の良さが伺えるというものである。
「今日はどうしますか~?」
「お任せで頼む。」
「了解です♪」
店の奥にある二人席に座る。ここが俺の指定席でもあり、新参の人でもない限り、この席は絶対に埋まらないから何の心配もない。
「どうぞ!今日は和食をイメージして作ってみました!」
席に着いてすぐに膳を持ってきてくれた。なるほど、確かに白米に魚の塩焼きと味噌汁に漬物だ。これを和と言わずになんというのか。
「いただきます。はむ。」
「・・・わくわく。」
・・・なるほど、普段よりもなぜかこっちを見てる理由はこれか。
「・・・新しく塩を調合したのか?」
「はい!お味のほどはどうでしょうか?」
「うん、いいんじゃないか。今までのよりも塩の味を感じられる。」
「やった!頑張った甲斐がありましたよ~♪」
鼻歌交じりに厨房に引っ込むカノン。完全に料理人だな、あれは。現実に戻ったら料理人を目指すのだろうか?
「おっはよ~さん、”マナス”。今日は和食か。」
そんなことを考えていると、目の前に俺より少し背が高い同い年ぐらいの青年が立っていた。
「おはよう、”カイト”。昨日はだいぶ忙しかったようだな?」
「まあな、まさかあんな時間まで仕事をやらされるとは思わなかったわ。あ、カノンちゃん!俺にも頼むわ。」
「りょうかいです~♪」
目の前の青年の名はカイト。少し軽いノリなやつだが、こんなのでも一応ギルド”稲妻の十字軍”(レビンクロス)の副団長である。
俺と同い年。今は紫のズボンに白いTシャツの上から五分袖の紫シャツを羽織っている。
「なんか失礼なこと考えてないか?」
「考えてねぇよ。今日は何をするか考えていたのさ。」
「ん?ああ、今日は休日にしたんだったか。」
「そういうこと。そっちこそ休みはもらえたのか?」
「あぁ、今日1日だけだがな。・・・もし昼までに何するか決まらなかったら一緒にダンジョンに行かないか?」
「ふむ・・・考えておく。とりあえず昨日の依頼でゲットした素材を売ってくる」
「あの人のところに行くのか、俺達のこともよろしく言っておいてくれよな。」
「あぁ、わかったよ。ちゃんと伝えておく・・・ごちそうさま。金はここにおいてくぜ。」
「は~い!お粗末さまでした~!」
厨房の中にいるカノンに一声かけてから、俺はいつもの店へと足を運ぶことにした。あっ、帽子を忘れるとこだった。これで良しっと。
これがないと視線が痛いんだよね。38層にいる人達とは顔見知りな関係だからいいんだが、他の中層プレイヤーとなると話が別だったり。
これから行く店は雑貨屋と呼ばれている店でプレイヤーが経営している。
NPCに売るよりかは高く買い取ってくれるんだが、ぼったくりをすることもあるため、金だけが欲しいなら別の店に行った方が断然いいだろう。
まぁ、事情を知っている俺たちはそんなことはしないがな。
転移門が見えてきた。店は50層のアルゲードにあるため、転移門を使わないといけないのだ。
さーて、あの阿漕な商売人に今日は何を言ってやろうか・・・。
なんて考えていたら、いつの間にか転移門の真ん前に立っていたらしい。
目の前で誰かが転移してきたと気づいた時にはぶつかってしまっていた。
「うわっと!?」
「ほわっ!?」
衝撃は思っていたよりも軽かったため、後ろに倒れる事なく受け止めることができた。
「っと、大丈夫か?」
「あっ、はい、大丈夫です!あの、ごめんなさい!前に人がいるのに気付かなくて・・・っ!」
赤を基調としたコートのような恰好に茶髪で短めのツインテールの女の子だった。一言で言えば可愛い女の子だった。
「いやいや、転移門の真ん前にいたこっちの責だ。こちらこそすまなかったな。」
そう言った時に、彼女の隣に青い仔竜が飛んでいることに気づいた。おそらくはテイムモンスターと呼ばれている存在だろう。
モンスターは基本的にプレイヤーに対しては敵意を持ち、近づくと襲い掛かってくる。
だが時々違う反応を見せることもある。俺達に興味を持ち、向こうから近づいて来たり、けがをして倒れているところに遭遇したり。
そのときに餌をやったり、薬草あげたりと、その時の行動によってはモンスターが懐いてテイムすることができる。
つまるところ、一緒に戦ってくれる仲間になってくれるのである。
この仔竜もそうなんだろう。ぶつかった主を気遣うように飛んでいた。
「君にも謝らないとな。ご主人にぶつかってすまんかった。」
俺の言葉に反応はしてくれないとは思うが謝った。デスゲームと化してしまったここでは、
一緒にいてくれるパートナーほど心の支えになるものはない。それはテイムモンスターも同じである。
きっと家族同然の仲なんだろう。二人の様子から、容易く見て取れた。なので自然と口から言葉がでてしまった。
しかし、返ってきた反応は予想とは反するものだった。女の子は俺が仔竜にまで謝るとは思わず驚いていた。
仔竜も同じようにこっちを見て驚いているように感じた。が、すぐに「きゅるる~♪」と返事が返ってきた。
どうやら許してくれたらしい。
「ありがとう、それじゃ俺は行くね・・・転移!アルゲード!」
そう高らかに叫び、俺はアルゲードに転移するのだった。
フェザーリドラをテイムしたビーストテイマーか・・・。心当たりは無くも無い。彼女がそうなのかもな。
side"???"
「・・・変わった人だったね、ピナ?」
「きゅる。」
今までいろんな人にあったけど、ピナにあんな風に話しかける人はキリトさんぐらいだった。
”キリト”さんは攻略組って呼ばれてるトッププレイヤーの人達の一人で、私がピナを死なせちゃった時に
使い魔蘇生用のアイテムを一緒に取りに行ってくれた人なんだ。私にとって、ううん、私達にとって命の恩人で、
それ以上に・・・///はっ!?いけないいけない。
中層の人達はこのゲームをゲームとして楽しんでる人達ばかりで、ピナのこともテイムモンスターとしか見てない人ばかりだったから、
ピナにも謝ってくれた時には呆気にとられちゃって、何にも言えなくなっちゃった。
「またあの人に会えるといいね、ピナ。」
「きゅるる~♪」
ピナもあの人のこと気に入ったみたい。今度はゆっくりお話してみたいな。
っと、いけない。早くあの人を探さなきゃ。確か8時半に噴水の広場辺りにいるはずなんだよね。
”緑の何でも屋さん”
噂じゃとっても怖い人みたいだけど・・・。でもこれだけお金もあるし、私のお願いも聞いてくれるはず!
誰かに先を越されないようにっ!そう思いながら、私は噴水広場を目指して走り出した。
「相変わらず、ごちゃごちゃしてるよなぁ。」
第50層アルゲード。ここは他の街とは比べ物にならないほど広く、人口も多い。
広場から大通り沿いには出店がずらりとならんでいて、プレイヤーショップも少なくない。
何故人が多いのか。その理由は建屋の物価が安いことにある。
ここはスラム街のようなところであるため、店をだしたり、寝泊まりするのには、お世辞にもいい物件とはいえない。
しかしその分安く買えるため、最低限の物があればいいと考えてる人達にとっては都合がいいのだ。
今、俺は大通りを歩いてはいない。狭く、迷路のようになっている路地を歩いている。
雑貨屋は、この迷路のように伸びている路地の一角にあるため、ここを歩くしかないのだ。
まあここは比較的、街の浅いところなのでまだ迷わないが、さらに奥へ行こうものなら迷って出られなくなる可能性もあると思う。
いや、洒落じゃないからね?
でも迷って出られなくなったときはNPCに頼むと10コルで広場まで案内してくれるらしい。
10コルなかった場合?・・・知らん。
「まいどあり~!」
お、店から誰かでてきたな。肩を落としてる辺り、あれはやられたっぽいな。ご愁傷さまっと。次は別の店をおススメするぜ。
っと俺も入るとするか。
からんころん。
「いらっしゃい!」
扉のベルが鳴ったことに気づいた店主が、カウンターからこっちを見る。
「邪魔するぜ、"エギル"。また阿漕な商売やったのか?」
「マナスじゃねえか。元気そうでなによりだ。さっきの取引はお互い了承してやったことだ、阿漕じゃねえ。それとまたとはなんだ。そっちこそ依頼の方はどうなんだ?」
「まあぼちぼちってところさ。」
黒のインナーシャツに鼠色のズボンを穿いているこの人はエギル。この雑貨屋の店主でかなり手練れの斧使いでもある。
背は高く180センチはあるんじゃないだろうか。筋骨隆々の体で黒い肌の大男。顔もスキンヘッドに髭面と、初対面の人には怖がられても仕方ないといえるルックスをしている。
が、接してみれば見た目に反して、物凄く優しい人である。
現実でも店を経営していたらしく、斧持ってる時より商売やってる方が似合っているように思う。
「どうせその顔で脅したんだろ。いつもの手じゃねえか。」
「ははっ。安く仕入れて安く提供する。それが俺のモットーだってのは知ってるだろう?それを実行してるだけだ。」
「そうだったな。後半は疑わしい限りだが。」
「それで今日はどうした?・・・レビンクロスの使いか?」
後半の言葉は少し声を抑えて言ってきた。
ここだけの話。実はこの人、周りの人には秘密にしているが、儲けのほとんどを中層プレイヤーの育成につぎ込んでいたりする。
個人では限界があるため、レビンクロスを通して武器や金をプレイヤーに流していたりなんてこともしていたり。
ぼったくりをする、とかいう噂の背景にはこういう事情がある。
なので、できる限り協力しよう、というカイトの提案の下、俺もこのことを知ってからはここに来ているのだ。
ただまぁ俺は根っからの善人じゃないし、生活もあるから無償で、とはいかないが。
「いや、違うぜ。よろしく伝えてくれとは言われてるがな。」
「じゃあ、これからもよろしく頼むと伝えてくれるか。」
「引き受けた。でだ、今日はこれを売りにきたんだ。」
そういいながら俺はウィンドウを呼び出し、エギル売るつもりのものをリストアップしていく。
「今回は素材だけか・・・ざっと3万コルってとこか。」
やはり安い。事前にチェックした額を考えても4万はなきゃおかしいんだけどな。試しに吹っかけてみる。
「安い、5万だ。」
「3万。」
「4万。」
「3万。」
「4万。」
「3万。」
「3万5千。」
「オーケー。取引成立だ。毎度あり!」
やっぱり駄目だったよ。ちなみにこれいつもの光景ね。もはや俺とエギルの恒例行事でもある。
「少しぐらいサービスしてくれよ~。」
「だから5千サービスしたじゃねえか。」
これがまぎれもないサービスなんだからなんとも言えないんだよね。俺は商売には向いてないかもな。
「やれやれ。ま、べつにいいんだけどさ。金には困ってないし。」
「また来いよな。お前らならいつでも歓迎するぜ?」
「あぁ、今度はカイトも連れてくるさ。じゃあな~。」
後ろ手に手を振って店を出る。扉が閉まる少しの間にエギルの言葉が聞こえた。
「・・・ホント変わったよな。アイツ。」
・・・それは俺が一番思うよ。あの時と比べたら恰好も言動も別人と言われてもおかしくはないからなぁ。
ぴろりん!
「っと?」
メールが届いたので開いてみる。
「なになに・・・。」
差出人はカイトだった。内容はこうだ。
「お前に依頼人が来てるぜ?帰しても良かったんだが、とりあえず話を聞くだけでもいいかと思ってな。
今、宿で待ってもらってるから、なるべく早く帰ってこいよな。」
珍しいな。依頼は噴水広場で受けるかどうかを決めてから、宿の喫茶店で細かい内容を詰める手順を踏んでいる。
これは宿の住居人全員の周知の事実。だから依頼人がいきなり宿に来ることはないはずだが。
それがいきなり宿で待ってもらってるとなると連れてきたと考えるべきか。
カイトが連れてきた依頼人、ね。一体どんなやつかな。
sideカイト
マナスがエギルの所に出かけた後、俺は昨日の仕事で消費したアイテムを補充しに街を歩いていた。
このゲーム内での回復アイテムの重要さは絶対だ。文字通り生命線といえるわけだ。所持限界数持っていても困ることはない。
ということで補充が終わり、とりあえず皆がそろそろ起きる時間なことだし一度宿に戻ることにした。
宿の住居人は現在7人いる。
まず店主のカノン、俺ことカイトとマナス、そして(レビンクロス)のメンバーの三人と、
ロミオというプレイヤーが一人で七人だ。
ロミオは大剣使いのプレイヤーでうちには所属こそしてはいないが、皆とは仲が良く、パーティを組むことも多々ある。
基本的に同じ宿で寝泊まりして毎日顔を合わせている分、皆仲が良い。現実ではルームシェアに
当たるのかもしれない。
宿に帰る途中、噴水広場を通る。噴水つっても申し訳程度の大きさで表現的には公園の方があってるかもしれないが。
ここはマナスが”緑の何でも屋”として依頼を受ける場となっている。
”緑の何でも屋”はとにかく気まぐれ。朝の九時までにマナスがここに来なければ、その日は依頼を受けないという暗黙のルールがある。
たとえ会えたとしても依頼を受けないこともあったり。
以前もとんでもない額を吹っかけて依頼人をおっぱらったりしたことが何度かあり、
しょーじきプレイヤー間ではあまりいい評判はない。それでも依頼人が現れるのは、彼が実力者であるからだろう。
ま、今日は休むようだから、マナスがここにくることはないんだけどなーとか思っていると。
「・・・ここで合ってると思うんだけどなぁ?」
「きゅるる?」
マナスがいつも座っているベンチに、フェザーリドラを連れたビーストテイマーの女の子が座っていた。
side???
「・・・ここで合ってると思うんだけどなぁ?」
「きゅるる?」
私たちは今、アメールの噴水広場にいます。緑の何でも屋さんは、いつもこの広場で依頼を待っているというので来てみたのはいいんだけど...。
「誰もいないね、ピナ?」
「きゅるる~。」
そう、まだ朝と呼べる時間帯とはいえ人がまったくいない。
中層プレイヤーのほとんどは35層を拠点としているけど、全員ってわけじゃない。他の街に拠点を構えてる人だってたくさんいるわけで。
この街だって居住性が悪いわけじゃない。むしろ揃ってるほうだと私は思う。
なのに誰もいない。
...やっぱり、あの噂のせいなのかな?
何でも屋さんの噂は中層で知らない人はほとんどいないと思う。内容はどれも悪いことばっかり。
全部が本当だとは思わないけど、プレイヤーの人達があまり関わりを持ちたくないと思う理由には十分すぎると私も思う。
ならどうして私がここにいるかってことになるんだけど・・・。
「ちょっとごめんね。君に聞きたいことがあるんだ。いいかな?」
「は、はい!なんでしょうか?」
わわ、突然声をかけられちゃった。もしかしてこの人が何でも屋さんかな?でも緑って聞いてたんだけどな?
「もしかして、緑の何でも屋に依頼をしにきたのかい?」
「え?どうしてわかるんですか?」
「ここはいつも、あいつが座ってるベンチだからな。そこに所在なさげに誰か座っていれば依頼人だと思うのが普通ってもんだろう?」
「もしかして、何でも屋さんの知り合いですか?」
「あぁ。マナスの知り合いであり、ギルド(レビンクロス)の副団長のカイトだ。よろしくね?」
「レ、レビンクロス!?レビンクロスって中層プレイヤーの皆に情報とかを流してくれたりしてるあの?」
「あぁそうだよ。ギルド本部は39層にあるけどね。」
まぁこれは知ってるか、あっはっは。と笑う副団長さん。
レビンクロスっていったら中層プレイヤーにダンジョンの危険な場所を教えてくれたり、
未発見のクエストの難易度を調査してくれたりしているギルドで、実質、中層最強のギルドって私たちの間じゃ言われてるんだ。
まさかこんなところで会えるなんて思わなかった。...でも思ってたよりその、軽い感じだし、
強いギルド=厳格っていうのは私の勝手な思い込みだったのかな?
「変なこと聞くんだけどさ?」
突然カイトさんが話をふってきた。
表情もさっきとは一変して真面目な感じに。
「どうしてアイツに依頼しようと思ったんだ。噂のことを知らないわけじゃないんだろう?君みたいな子なら尚更近づきたくない存在だと思うんだけどさ?」
も、ものすごいプレッシャーを感じます...!!!
確かにカイトさんの言うとおり、できれば関わりを持ちたくはないと思う。けど。
「何でも屋さんじゃなきゃ...マナスさんじゃなきゃ駄目なんです!」
「きゅるきゅる!」
私はカイトさんの目を見てそう言いました。
私たちがどれだけ真剣なのか伝えるために、目をそらすことはしません。
向き合うこと数秒。先に折れたのはカイトさんでした。
「ふぅ。君の真剣さはわかったよ。試すようなことをして悪かったね。」
表情を柔らかくしたカイトさん。同時に嫌なプレッシャーもなくなった。
こ、怖かった。すごく怖かったよぉ。
「きゅるるる...。」
ピナも怖かったよね、よしよし。
と、いつの間にか呼び出していたウィンドウを閉じるカイトさん。メールを打ってたのかな?
「...これでよしっと。今マナスは素材を売りに出かけてるんだ。戻ってくるまで別の場所で待とう。」
「え?そうなんですか?別の場所って?」
「近くに宿屋兼喫茶店があるのさ。マナスに宿に戻ってくるようメールを打っといたから、すぐ戻ってくるさ。さ、ついてきて、シリカちゃん。」
そういって歩きだすカイトさん。と、とにかくマナスさんに会えるみたいだし遅れないようついていこう.,.あれ?
「あ、あの!私まだ名前を言ってないはずなんですけど?」
「フェザーリドラを連れたビーストテイマーなんて竜使いシリカ以外にいないでしょ?」
どうやら、最初から全部わかっていたようです。
「きゅるきゅる。」
ピナはドンマイと言っているようです。