ソードアート・オンライン 緑の何でも屋   作:カエル帽子

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自分の知識は原作のマザーズ・ロザリオまでとアニメとゲームです。あと原作読んだのがもうだいぶ前の話なので細かな部分で違ってる部分があるかもしれません。
ご了承下さい。


竜使いの依頼

エギルの店の前でメールをもらってから20分弱。現在(涼風亭)の前である。

あれから20分もかかった理由はアルゲードが無駄に広いのとアイテムの補充をしていたからだ。

迷ったりなんかはしていない。出店を覗いたりはしたがそれだけだ。

 

さて、カイトのやつが連れてきた依頼人が中で待っているはずなんだろうが、一体全体何者なのだろう。

鬼が出るか蛇が出るか・・・さすがにこれは相手方に失礼か。

少し苦笑しながら、俺は宿の扉を開ける。

 

「今戻ったぞ~。カイトいるか・・・っ!!」

 

開いた扉の音と俺の声に、その場にいた宿の住居人+αがしていたであろう会話をやめ、全員がこっちを向いた。

う~ん、やっぱこれには慣れそうにないな。人見知りな性格で人前に出ることをあまりしなかったため、

どうにも多人数に視線を向けられるのは苦手なのだ。

被っていた帽子を目深にして周りを見る、と。

 

青い仔竜と目があった。

 

あいつは・・・、転移門のところで会ったやつか?ということは。

と考えていたら。

 

「きゅるる!」

 

と、一鳴きして、俺に向かって飛んできた。いや、突進してきた。それも顔面に。

もちろん避ける事なんてできなかったよ。

 

「はにゅあ!?」

 

我ながらなんともいえない奇声を吐きながら後ろに倒れ・・・ない!なんとか踏みとどまったものの、

仔竜は俺の顔面に引っ付いて離れようとしない。

 

「きゅるきゅる♪」

 

これは好かれたと喜ぶべきなのか。それにしても、ねぇこれどういう状況?誰か説明してくれないかな。

顔面に仔竜をひっつけた野郎の図がここにあるけど、誰一人、突然のことに反応できてないし。

このカオス空間どうすんの?

 

 

 

「うちのピナがホントにすいません!すいません!」

 

ピナの主がカオス空間を解いてくれたのはよかったんだが、今度は主がずっと謝ってる状態で話が進まない。

今は四人席のテーブルに俺と仔竜、ピナの主が向かい合うように席に着いている。

 

「・・・う~。」

 

俺の隣の席ではカイトがのびている。あのあとこいつが大笑いして全然黙ってくれなかったから制裁を加えました。

暴力じゃないよ?圏内じゃダメージ入らないし。ちょっとカノンに手伝ってもらっただけさ。内容は割愛ね。しかし参った。これ俺が女の子泣かしてるようにしか見えないよなぁ。

周りも「泣かしたな?」と言わんばかりの視線よこしてくるしっ!

 

「いやまぁ。わかったから、もう謝るの十分だから、ね。顔あげてくれないか?」

 

「いやほんとにごめんなさい!こんな依頼人嫌ですよね私帰りますね!?」

 

「待った待った!?とりあえず落ち着こう!カノン!」

 

これは本格的にやばいかも!?と思った俺はカノンを呼ぶ!こういう時はアレしかないからな!

 

「はい!持ってきましたよ!心休まる特製紅茶です!どうぞ、”シリカ”さん!」

 

「へ?えと、いただきます!」

 

差し出された紅茶を勢いよく飲み始めるシリカ。一回、二回と飲むたびに勢いが弱くなり、

飲み終えて一息ついた時には、さっきの慌てぶりが嘘のようだ。

 

「これ、すっごく美味しい・・・。」

 

カノン特製紅茶の効果は絶大だ。ちなみに俺は毎朝必ず一杯飲んでいる。

 

「落ち着いたか?」

 

「あ、はい。先ほどは恥ずかしいところをお見せしてすいませんでした。」

 

「きゅるる~・・・。」

 

そういって頭を下げるシリカ。ピナもそれに倣って頭を下げる。やはりピナとの間には確かな絆があるようだ。

 

 

 

「さて、改めて自己紹介だ。カイトや皆から聞いているだろうが、俺が”緑の何でも屋”のマナスだ。よろしくな、”竜使いのシリカ”。」

 

「あはは、やっぱり・・・シリカです。よろしくお願いします。」

 

”竜使いシリカ”は中層プレイヤー達にとってアイドル的存在にもなっている。中層で噂を知らない人はいないんじゃねえかな。

やっぱりという辺り、おそらくカイトに名前を当てられたんだろう。

 

「ん・・・じゃ早速だけど本題に入ろう、君は俺に何を依頼する?」

 

「私と・・・47層の(女神に供える花)というクエストに同行してほしいんです!」

 

頭の中でクエスト名を反芻してみる。(女神に供える花)?該当なし。

俺は”緑の何でも屋”としてレビンクロスの手伝いもよくしている。

なので、中層でのクエストもある程度は頭の中にあるのだが、その名前には心当たりがない。

 

「ふむ・・・ちょっと待ってて?」

 

「え?はい?」

 

というわけで隣の寝坊助野郎を起こすことにした。

 

「おーい、起きろー。」

 

体を揺らしてみる。が、ただの屍のようだ。仕方ないから高速往復ビンタで起こすことにした。

 

「で、(女神に供える花)か。俺が覚えてないんだから他の連中も知らないな。」

 

両頬は真っ赤であるが真面目に答えるカイト。シリカは愛想笑いを浮かべてどう反応していいのかわからないようだ。

 

「レビンクロスでも知らないってことは未発見クエストってことになるな。」

 

「でも47層なら俺達も何度か行ってるだろ?パーティだっていろいろなパターン組んでるはずだし、見つけられない理由は・・・そうか。」

 

「・・・条件はビーストテイマーってところか。」

「あの~・・・。」

 

「おっと、ごめんごめん。それでどんなクエストなのかはわかるか?」

 

「はい。一年に一度、女神様にお供えしている花を取ってくる、という内容でした。」

 

ただ、とシリカは続ける。

 

花はダンジョンの奥にあって、何故か最近、魔物が巣食い始めたから気をつけろ、とも言われた、とのこと。

 

「これを普通の謳い文句とみるか・・・それともボスの存在の警告とみるか、か。」

 

クエストには種類がある。討伐クエストは指定されたモンスターを倒せばいいし、採取クエストならフィールドにでて採取ポイントというところでアイテムをゲットし、指定された数分NPCに持っていけばいい。

だが、今回のは少し厄介だ。類としては物を持ってくる採取クエだが、最初からポイントが指定されている時ってのは、大体罠とかが仕掛けてあったり。下手すればフィールドボス級と戦闘なんてことも有り得るのだ。

 

「ちなみに報酬については何も触れてないのか?」

 

「ピナとの絆をさらに深めるアイテムをあげよう、と言われました。」

 

「・・・使い魔パワーアップアイテムの可能性、ね。」

 

大体話が見えてきた。使い魔パワーアップのクエスト?を偶然にも発見できたはいいが、場所は47層。

このゲームの安全マージンは層の数字+10。ただの中層プレイヤー達じゃ47層はレベル的に危ないラインだ。

そこで噂の”何でも屋”の出番となったわけか。確かに俺は自分で言うのもなんだが”ただの中層プレイヤー”ではないしな。

あ、あとこれも聞かないとな。

 

「大事なこと聞き忘れてた。シリカは今レベルいくつだ?」

 

このゲーム内でレベルを晒すことは自分のステータスを相手に教えることと同義だ。

人のステ情報を悪用するような輩はそうそういないだろうが、情報の漏洩は出来る限り避けるべきだろう。

だが、今回は内容が内容だ。判断材料の一つとして加味しなければならない。

それはシリカもわかっていたのだろう。なんの躊躇いもなく答えてくれた。

 

「今55レベルです。」

 

へぇ、思っていたより高かったのに驚いた。確かにこれだけのレベルがあるならこのクエストに挑戦しようと思うのにも納得できる。普段ならレベルを聞いた後は依頼を受けるかどうかの返事をするところだが、どうしても気になったので、シリカにもう一つ質問をぶつけてみた。

 

「じゃあ最後に、どうしてこのクエストをクリアしたいんだ?」

 

そう、シリカのレベルは中層ならば十分強いレベルだ。隣のカイトも同じように思っている事だろう。

順当なレべリングをしていけば、こんな危ないクエストをやらずとも上の層にいってもなんら問題ない。

なのにシリカはクエストで死ぬ可能性を上げてでもパワーアップをしたいという。そこがどうしても気になるのだ。

俺の質問に弧をつかれたのか、少し驚いた様子でこっちを見ていた。・・・まぁ依頼という形でやってきたのに

こんな質問されるなんて普通思わないよな、と思う。

少しして気を取り直したシリカはおずおずと話だしてくれた。

 

「実は、私、以前ピナを死なせてしまったことがあるんです。」

 

優しくピナの頭を撫でながら、シリカは語ってくれた。

 

35層の迷いの森で狩りをしていたところ、パーティメンバーと喧嘩別れしてしまったこと。

そこに迷いの森最強のドラゴンクエイプに運悪く遭遇。死にかけたところ、ピナが自分をかばって死んでしまった、と。

ピナの死がショックで動けなくなって今度こそ死ぬと思った時、一人のプレイヤーに助けてもらったこと。

さらにその人はピナが死んだことを聞くなり、使い魔蘇生アイテムを一緒に取りに行こうといい、

思い出の丘まで一緒に取りに行ってくれたこと。その帰りにオレンジギルドに襲われたけど、

その人が見事に返り討ちにしたこと。

 

「私、あの人の力になりたいんです!できることならすぐにでもあの人の所に行きたい!」

 

「でも、今の私じゃ最前線に行っても足手まとい。きっと守られるだけの存在になって迷惑をかけちゃいます。」

 

「だから、強くなりたい。いつかはあの人の隣で一緒に戦えるぐらいに強くなりたいんです!」

 

シリカの目には誰が見てもわかる強い意志がこめられていた。

恩人のために強くなりたい、か。

・・・少し前までは自分も強くなりたいと願い無茶なことをしてきた。

俺のは少し方向が違ったが、目の前の女の子の気持ちはわかる気がする。

ふと隣から視線を感じた。見ると、カイトが気遣うような目をしながら、

 

「どうするんだ?」と口には出さずとも言っていた。

 

俺は、正直言って乗り気では無かった。未確認クエストということもあり、シリカには悪いけど、

このクエストへの挑戦自体を諦めてもらうつもりだった。

どんなに俺が強いと自負しても、限界というものはある。

身に余る事象を根性論で通そうとしたって、文字通り身を滅ぼすだけ。

俺自身も経験がある。実際身を滅ぼした人がいることも・・・。

無茶な依頼はなるべく避けてきた。今回の依頼も俺の中じゃ無茶に分類されるものだ。

普段の俺なら断っただろう。だから。

 

「その依頼は受けられない。」

 

と答えた。

 

「ど、どうして「だが」え?」

 

「条件付きなら引き受けてもいい。」

 

となりで「またお前はそういうことをする。」とか呟きが聞こえたがスルーだ。そういう性格なんでね。

 

「一体どんな条件ですか?」

 

「パーティメンバーにカイトを入れる事、これが依頼を引き受ける条件だ。」

 

「カイトさんを・・・ですか?」

 

「腐ってもレビンクロスの副団長だ、戦力にはなる。どうする?」

 

「腐っても言うな!立派で頼れる男前副団長ぐらい言ってくれてもいい活躍してるよ俺!?」

 

「はいはい。」

 

こういうこと自分で言わなきゃ、残念系なんて言われないのにね。ほら、シリカにも若干引かれてるし。

またここに理想を砕かれた人が誕生したな。

 

「カイトさんは、その、ギルドの方は大丈夫なんですか?」

 

「今日は仕事なくてね、逆に時間を持て余してたぐらいだ。喜んでついてくぜ?」

 

その返答にシリカは顔を綻ばせる。

 

「あ、ありがとうございます!今日はよろしくお願いしますっ!」

 

「きゅるる~。」

 

椅子から立ち上がり頭を下げるシリカ。肩に乗ってるピナも頭を下げる。

 

「そんなにかしこまらなくていいさ。いつも通りに振る舞ってくれていい。」

 

「そうそう、むしろこっちがシリカを困らせることの方が多いかもしれないしね。」

 

そういいながら俺は右手を差し出す。少し戸惑いながらも右手を差し出してくれた。

 

「えと、よろしくお願いします、マナスさん!」

「あぁ。よろしくな、シリカ。」

 

俺との握手の後にカイトとも握手、「俺今日一日この手を洗わないんだっ!」と高らかに宣言したところで、

カノンに「不潔です!ちゃんと手を洗わないとご飯作りませんよっ!」と突っ込まれ、全力で謝っていた。

シリカは「レビンクロスのイメージが・・・。」とか言い始め、ピナは呆れているのか「きゅるる。」と一鳴き。

住居人が出払っててよかった。ロミオやレビンクロスの三馬鹿がまだここにいたら混沌化がさらに加速してただろう。

あれ?俺って常識人枠の人だっけ?

 

 

 

あの後、カオス空間をなんとか沈めて47層のデータを再確認、その後、即時出発ということになった。

カノンには「お気をつけて、いってらっしゃい。」と、笑顔で送り出された。

そして現在47層(フローリア)の花畑を俺たちは歩いている。

 

「いつ来ても、俺には居心地悪い場所だな。」

 

「同じく・・・景色は最高にいいんだけどね。」

 

周りにところどころあるベンチは、どこもかしこもカップルだらけ。

彼女いない歴=自分の年の俺らにとってはかなり辛い。

そんな居心地の悪さを払拭しようとカイトが喋りだす。

 

「シリカちゃんは彼氏とかはいないのか?」

 

「か、彼氏ぃ!?そんな私には、えと。」

 

「いないのか?・・・あーわかった、助けてもらったぷr」

 

「ち、違います!あの人とはまだ」

 

「まだ、ねぇ?やっぱりシリカちゃんも恋する乙女なんだねぇ。」

 

「ひうっ!///カイトさんの馬鹿ぁ!!!」

 

カイトのいじりに耐えきれなくなったシリカ。物凄い勢いで走って行ってしまった。

 

「恋する乙女は可愛いねぇ。」

 

「お前もそういうのやめろよな、嫌われる原因だぞ?」

 

「ちょっとやりすぎた感はある、が後悔はしていない・・・していないが。」

 

ん?いつの間にか俺より歩く速度が遅くなってる。

 

「シリカちゃんもお相手がいるんだなぁ・・・。」

 

うわっ!ガチでへこんでやがる!自分で言っておきながらこれかよ!?

 

「自業自得だバーカ。ほら、そこでのの字書いてんじゃねぇよ。周りのカップル共にさらに惨めに見られんぞ。」

 

「ぐすっ。あーい・・・。」

 

これが中層最強ギルドの副団長なんて信じられるか?最初に会った時のコイツはまだマシだったと・・・いや、同じだったな。

 

その後フィールドと街の境目でシリカと合流。いじられたことをカイトに言おうとしたところで様子がおかしいことに気づく。

 

「えと・・・何かあったんですか?」

 

「気にするな、聞くだけ無駄だ。」

 

「・・・ぐすっ。」

 

「あとカイトはこれでも平常運転だから問題ないぞ。」

 

「えぇ!?」

 

さらに理想が壊れた音がするな。レビンクロスって皆の理想とどれくらいかけ離れてるんだろうか?

ま、それは今度ゆっくり聞くとしよう。

 

「さて、戦闘準備といきますか。」

 

そう、まだ俺とカイトは武装していないのだ。俺は街中じゃいろいろと噂されるため、すこし洒落た緑のハットを被って変装?している。

まぁただの気休めにしかならんがな。

というわけでウィンドウを呼び出し武装ボタンを押して現在装備状態となっている武器と防具を呼び出した。

 

カイトは見るからに重そうな紫の甲冑に身を包み、背中には槍を背負っている。重槍戦士といったところか。

対して俺は胸当てと足にブーツ、手には滑り止めのような役割に見えるグローブ、そして腰には。いや背中?

 

「いっけね、そういえば槍のままだったっけ。」

 

装備欄から槍を外し、装備を変える。腰に感じるこの重さ、しっくりくるね。

俺が装備を変えたところでシリカから質問が飛んできた。

 

「マナスさんは槍と刀、両方使えるんですか?」

 

「ん、まぁね。でもメインは刀だ、今回は刀でいくよ。」

 

「ねぇ、俺にも何か質問ないかな?」

 

俺だけ不公平だと言わんばかりにカイトが発言してきた。やっと立ち直ったらしい。

 

「あれ?その装備で槍・・・なんですか?」

 

「よくぞ聞いてくれましたっ!実はですね。」

 

「こいつは壁(タンク)役なんだよ、いつもは左手に盾も持ってる。移動中は必要ないだろう。」

 

「ちょっと!ネタバレはよくないんだぜ!」

 

「そうだったんですか。私は短剣使いなので、バランスいい感じのパーティですね。」

 

シリカの発言に俺も同意する。武器がダブらず、なおかつ役割もわかれている。

即席で出来たパーティとしては上出来すぎるぐらいか。

 

「それじゃNPCの所までいこうじゃないのさ!」

 

「おー!」

 

「案内よろしくな。」

 

「お任せください!」

 

カイトの一言で動き始める俺達。やっぱりリーダーはカイトになった。腐っても副団長なのである。

 

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