ソードアート・オンライン 緑の何でも屋   作:カエル帽子

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vs剣虎 白と黒と共闘

 

「おおおおぉぉぉおおお!!!!!」

 

「グルアアアアアアア!!!!!!」

 

ホークアイが転移してから、俺はただひたすらに槍を振り続けている。

剣虎の動きは、俺の予想通り速くて重かった。もし刀装備で挑んでいたら、おそらくこの重い一撃を捌くのは厳しかっただろう。

通常攻撃ならパリングで弾き、ソードスキルがくるなら同じくソードスキルをぶつけて相殺。大技だったら回避に徹する。

倒すことは考えない、ホークアイが助けを呼ぶまでとにかく生き残るのみ。

なぜこんな作戦をとるのか、それはこのボスの厄介な能力にある。

剣虎はHPバーが一本減るごとに敏捷値が上がっていくのだ。

そしてこいつのHPバーは三本。つまり二段階アップするわけだ。

今こんだけ苦戦してる以上、バーを一本減らすのも命取り。これに勝った攻略組には脱帽だよホント。

 

「・・・ちぃ。これでどうよっ!」

 

何度目かもわからないソードスキルの相殺。その衝撃で剣虎とまた距離が空き、スキル硬直が課せられる。

これでまた一拍置いて仕切り直しだ。

 

そして、この一拍が油断だった。

 

「グオぉぉぉぉ!!!!」

 

「しまっ!?ぐっ!」

 

スキル硬直を無視した剣虎の咆哮は俺をスタン状態にし、先ほどよりも速くて重い一撃をぶつけられた俺はぶっとばされる。

 

「ぐっ。なんで・・・っ!?」

 

スキル硬直は敵にもプレイヤーと差異はあれど無いなんてことは無い。ならば何故というところで、今の奴の体力バーが一本消えていたことに気づく。

剣虎は体力バーが一本消えると能力アップされるようプログラムされている。

つまり、スキル硬直中でバーが減った場合は硬直を無視して動くようになっているということ。

 

「・・・ついてねぇな。」

 

いつの間にやら剣虎が俺を見下ろしていた。何か言い残すことはないか、とか言ってそうだ。

そうだな、言うとするなら、

 

「最後まで、俺は負けるつもりは・・・ねぇんだよ・・・!」

 

まださっきの衝撃で体が動いてくれないが、俺は剣虎を睨み続ける。

絶望や恐怖の顔が見られなかったからか、いらついたように見える剣虎。

そして振りあがる腕に赤い光を纏う。

それでも俺は目を離さない。もしこれが今までしてきた事への罰だってんなら、受け入れよう。

でも、それは最後の最後ですることだ。俺にはまだやるべきことが、やりたいことが、守るべき約束があるんだっ!命ある限り、全力であがいてみせてやるっ!

起き上がろうと体に力をこめること俺はをやめない。もちろん剣虎から目をそらさない。

 

だからこそ、視覚できた。降り下ろされるはずの腕剣に白い一撃がぶち当たり、怯んだ剣虎の側面から黒い一撃が叩き込まれ、剣虎が何メートルかふっとんでいたのを。

 

 

「アスナ!回復頼む!俺がしばらく引き受ける!」

 

「わかった、すぐ合流する!無茶しないでね!」

 

言葉を交わすと全身黒い格好のプレイヤーは1人剣虎へと向かっていき、白いプレイヤーは俺の方へ駆けてくる。

そのプレイヤーの格好を見て、少なからず驚いた。白地の衣装に赤の十字の装飾、それは間違いなく攻略組最強ギルド、血盟騎士団の制服だったから。

 

「だいじょうぶですか!」

「あ、あぁ。おかげさまでどうにか..,!?」

 

声をかけられてから気づいた。

情報屋が作る新聞とかで何度か見た顔だ。閃光のアスナ...さんに間違いない。

俺が驚いている間に治癒結晶を使ってくれていた。

 

「立てますか?」

 

「ああ、問題無い。もう動ける。」

 

不快感はまだあるが、さっきよりかは遥かにマシだ。

 

「ならすぐに転移を。ここは私達が引き受けます!」

 

「いや、俺も戦う。あいつに二人で挑むのは攻略組でも厳しいだろ?」

 

全身黒づくめのプレイヤーが剣虎を引き付けているが、1段階敏捷がアップした剣虎相手に善戦しているが、押しきれないでいる。いや、1人で戦えていること事態が凄いことなんだがな。

あの集中がいつまで続くかが問題だ。

 

「でもっ!」

 

「アイテムならまだある。サポートは任せろ。武器もまだ2つほどあるしな。」

 

渋る閃光様にそう言って、俺はクイックチェンジのスキルを使って愛用の刀を取り出す。

クイックチェンジはショートカットアイコンに登録している装備と現在装備している装備を即座に入れ換えるスキルだ。前線で戦ったり、ソロで戦う連中には必須スキルだと俺は思っている。

 

「...わかりました。私と彼で攻撃を引き付けます。貴方は側面から遊撃を。無理そうなら結晶アイテムでサポートに徹してください。」

 

「りょーかい!」

 

少し悩んだのち、俺に指示をくれる閃光様。さすが副団長、様になってるというか堂にはいってるというか。あのアホとは大違いだな。

っと、パーティ申請のウィンドウが目の前に。戦闘中とはいえ、こういう手間を省かない辺り、1年以上攻略組をやってないってわけか。

もちろんOKボタンを押す。そして左上に表れた2つの体力バーと名前。すでに黒い人ともパーティ組んでたのか、そして名前を確認。して三回目のびっくり。

表れた2つの名前はasuna。それとkirito。

 

「まじかよ。」

 

助けにきてくれたのは攻略組のトップクラス二人という事実に、思わずそう呟いてしまった。

 

 

「アスナ!スイッチ!」

 

「まかせてっ!」

 

攻略組の二人が加わった剣虎討伐戦は順調に進む。

攻略組の二人が、ほぼ剣虎の攻撃を無力化してくれるおかげで、俺の体力バーは一ミリ足りとも減っていない。というか、

 

「俺、いらない子じゃね?」

 

うん、あまりにも二人のコンビネーションが良くて、俺の割り込む余地が無い。

二人だけでも倒せそうで、さっきの台詞撤回というか謝罪しないといけないかもしれない。

 

「ま、今できる最善のサポートはするけどなっ!」

 

「ぐぉぉぉ!!」

 

スキルの予備動作に入った瞬間に側面から刀スキル辻風を叩き込む。こいつには確率で短時間だがスタン効果が付くことがある。

1人ではあまり意味を成さないが、こういう時には大活躍できる。

 

「ナイスっ!」

 

もちろん二人が、この隙を逃すはずが無く、上位スキルを叩き込む。

これで剣虎の体力バーは後一本。

 

「ラスト一本!ハウルくるぞ!耳塞げ!」

 

スキル硬直が解けた瞬間に瞬時に距離をとった俺たちはキリトさんの声で耳を塞ぐ。瞬間、剣虎の咆哮が響く。

 

くぅ!さっきは直に食らったけど、塞いでも効くなぁ!

 

剣虎のラストの敏捷アップ。ただし、この最後のパワーアップは剣虎の防御が下がることがわかっている。つまり、取るべき戦法は、短期決戦のみ。

 

「グォォォ!!!」

動き出す剣虎。そのスピードはあまりにも速い。今の俺でも始めの数回は反応こそできる、が、それ以上を受け続けるのは無理だろう。セオリーは壁役の盾持ちがガードしてるうちに横から叩き込む。

のだが、自分たちは全員ダメージディーラー。攻略組とはいえ、一撃でもダメージを受けたら大惨事だ。

 

だがそんな心配は杞憂に終わる。

剣虎のおそるべき速い連撃をキリトさんは的確に受け流していた。これが攻略組の実力か...。

 

「あわせてっ!マナスさん!」

 

っと、剣虎とキリトさんの剣撃を見ていたらアスナさんから声がかかる。いけない、今は剣虎を倒さなきゃな。

 

「おっけー!いくぜっ!」

 

かけ声とアイコンタクトで同時に動き出す。剣虎の左右を挟み込むようにポジショニングし、同時にソードスキルを叩き込む!

もちろん俺が使うのは辻風。そして今回もスタンが付与された。

 

「ガァァァ!!!」

 

左右からの一撃で怯む剣虎。体力バーはちょうど半分といったところ。防御が下がってる今ならいけるっ!

 

「やれっキリト!」

 

「キリトくんっ!」

 

「任されたっ!」

 

俺たちの声が届くよりも前にスキルの予備動作に入っていたキリトさんは、黒い片手剣を赤く煌めかせ、片手剣最上位スキルを顔面に叩き込む。

どんどん減っていく体力ゲージ。

 

「これで、どうだぁ!」

 

そしてキリトさんの最後の一撃が決まる!

 

「ガァァァ!!!」

 

苦痛の叫びと共に倒れる剣虎。その体が地面に倒れるより早くにポリゴン片へと変わり、消えていった。そして現れたのは、congratulations!の文字。

 

「終わった、のか?」

 

そう思った瞬間、体から力が抜けて、急に視界が真っ暗に。誰かが何か言ってる声も、もう聞こえなかった。

 

 

 

「...す、マナス!」

 

声が聞こえる。周りは真っ暗で上下左右の感覚すらもあやふやな暗い世界に響いたそれは忘れもしない、師匠の声。

 

「マナス!」

 

今度は俺と同じぐらいの歳相応の無邪気で元気な声。

 

「どこだっ!?どこにいるっ!?」

 

姿が見えず、無我夢中で二人の姿を探す俺。やがて、目の前に二人の姿が浮かび上がる。

1人は背が高く、大人なのにどこか子供っぽい笑顔をする赤い着物の男性、1人は俺と同い年でパッと見で元気印とわかってしまう、青い服の男の子。

どちらも、俺の大事な元パートナー。

なんで、どうして?頭のなかで疑問が浮かび上がってくる

二人は一度俺に微笑むと、俺に背中を向けて歩き出す。

 

「待って!待ってくれ!行かないでくれっ!俺はっ!俺はまだ二人にっ!」

 

去っていく二人をどうにか止めようと走る俺。けれど、追いつくことはなく、むしろ離され、そして闇に溶けるように消えた。

 

「待ってくれよ!まだ礼の1つもっ!?」

 

そう言い終わる前に突然、背中を何かに捕まれる。振り向いた瞬間、白い光りが俺を包み込んで...。

 

 

 

「う、ん...?」

 

気がつくと目の前に青い空が。さっきまで真っ暗だったはず。あれ?ゆめ?

 

「あ、よかった。目が覚めたのね。」

 

「俺達がわかるか?」

 

左右から声がかかる。左には栗色の髪の女の子。右に黒髪の男の子がいて、何故か手を握られている、と。両手とも。

 

 

「...まぁ一応。閃光様と黒の剣士様だろ?でーその、どういう状況で?」

 

いきなり見ず知らずの人に手を繋がれてるってのは恥ずかしい、とかの前に戸惑いがくる。閃光様に手を握られてるのはラッキーではあるが。

というかカイトにばれたら呪殺される。間違いなく。

 

「うなされてたんだよ。それで何かを必死に掴もうとしてたからな、手を掴もうととしたらこうなった。」

 

「そうか...もう無くなったと思ったんだがな。一人になった途端にこれとは。ダメだなぁ。」

 

「いつもうなされてるんですか?」

 

「いや、そーだったのは半年も前の話さ。1人で色々と荒んでた時期にね。ま、とりあえずっと。」

 

そう言いながら立ち上がる。つられて二人も立ち上がった。

 

「知ってるかもとは思うけど、俺はマナスだ。助けてくれてありがとう。」

 

「俺はキリトだ。間に合ってよかった。」

 

「血盟騎士団のアスナです、体調は大丈夫ですか?」

 

「んー問題無し、かな。こーいうの前は日常茶飯事だったし。あ、敬語とかいらないから、呼びたいように呼んで、話したいように話してくれ。俺はどうにも敬語とか苦手でな。」

 

「ああ、じゃあそうする。しかし日常茶飯事って一体何してたんだ?」

 

「ソロで...ま、いろいろな。」

 

いろいろあったなぁ。主に周りに迷惑ばかりかけてた気がする。

 

「キリトくん、話は後にしよ?とりあえずここから離れませんか?」

 

「それもそうだな...どっかNPCレストランにでもいこうか。」

 

「待った、それならいい店知ってるんだ。味は俺が保証する。助けてくれた礼もしたいし、どうだ?」

 

俺の提案に少し考える二人。

 

「俺は構わないが..,アスナはどうする?」

 

「んーっと、お言葉に甘えようかしら、いいですか?」

 

「もちろん、んーっと。」

 

カノンにメールを打ってっと、これでよし。

 

「そんじゃ帰るとするかぁ。」

 

俺は森の入り口に向かって歩きだす。転移結晶は馬鹿高いからな、歩いて帰れるならその方が懐にはやさしいのだ。

 

「あ、待ってくれ!前には俺達が立つよ。さっき起きたばかりだろ?」

 

「いや、これぐらい...わかった。前を頼むよ。」

 

「ああ、任せてくれ。」

 

ホントは自分が街まで戦うつもりだったが、キリトさんの目は有無を言わさない何かを感じて、思わず頷く俺。

 

「じゃ、アスナもそれで頼む。...アスナ?」

 

「...え?ごめん聞いてなかった、どうしたの?」

 

「何か気になることでもあったのか?」

 

「ううん!なんでもないよ!」

 

「疲れたなら俺が一人で戦うから無理はしないでくれ。」

 

「ううん、そういうのじゃないから大丈夫。それじゃいきましょうか。」

 

歩きだす二人についていく。その時に

 

「マナスって名前どこかで?」

 

というアスナの小さな呟きが聞こえたが、聞かなかったことにした。

 

 

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