黄昏博物館へようこそ ー生命の欠片の物語ー   作:zenjima7

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みなと

『ででで、電池切れだよ……』

「ええーまたぁ!」

「ボス~!」

 

 腕にはめたレンズ状のもの、もともとはジャパリパークのガイドロボットだったラッキービーストのディスプレイ、それが青緑に点滅を繰り返している。

 波に揺られるジャパリバス改めジャパリボート。

 目的地はもうそこに見えているのに、バッテリーを動力源にしているこの乗り物はだいたいこういうタイミングで電池切れを起こす。

 それはもう狙ってやってるとしか思えないようなタイミングで。

 

「どーしようかばんちゃん?」

「いちおうプレーリーさんに作ってもらったオールがあるんだけど、もう目的地の島は見えてるし頑張ってみようか」

「うん、解った!」

 

 サーバルキャットのサーバルとヒトのかばん。

 かばんがジャパリパークのサバンナ地方で誕生して以来の相棒同士。二人は性格が違うにも関わらず、気が合った息ぴったりのサバンナコンビと言われてきたんだが……

 

 サーバルが右舷、かばんが左舷、それぞれオールを持って配置に付く。

 

「いくよサーバルちゃん!」

「任せてかばんちゃん」

「そ~れ……」

「ウミャアッ!」

「え、え、えええええ!」

 

 見事に息が合わず、ボートは左へ左へと流されていく。

 

「ちょっと、サーバルちゃん」

「ミャーミャミャミャミャミャミャアッ!」

「あわっ、合わせて、合わせないと…」

「任せてかばんちゃん、全力だから、ウミャアーッ!」

 

 かばんの話を全く聞かず、全力且つ高回転でオールを漕ぎ続けるサーバル。

 かばんも必死にオールを漕ぐが、そもそも身体能力の差は歴然。

 

 ボートはクルクルと海上を回転して丸い航跡を描くばかりで、目的地の島には近づいていない。

 

「もう、サーバルちゃんてば……」

 

 ゴンッ

 

「うぎゃっ!」

 

 ボート全体に走る衝撃、そして、確かに聞こえた悲鳴。

 二人は手を止めて顔を見合わせて、

 

「アレ、今何か……」

「かばんちゃん、悲鳴あげた?」

 

 フルフルと首を横に振るかばん、質問したサーバルももちろん悲鳴なんてあげてない。

 つまり……

 

 ボートの前、突然ザバーと盛り上がる海面、ビックリするサーバルとかばん。

 

「うわああぁー、なに~?」

「た、た、食べないでくだ……」

「わわ、私のこと食べないで~!」

「えっ!」

「ええ~?」

 

 自分が言うはずだった定番セリフを先に言われてしまったかばん。その状況に目を丸くするサーバルだったが、

 

「食べないよっ!」

 

 反射的にセリフは飛び出してきた。

 

 

 

 

 ……………

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい……」

「ごめんねー」

 

 ボートの中、サーバルとかばんは二人揃って正座して、謝罪の言葉を口にする。何か前にもこんなことがあったような?

 

「いいですいいです、ちょっとビックリしたけど大した怪我もしてないですから」

 

 海面から肩上を出して笑顔で話をするフレンズ。

 達者な立ち泳ぎから水生動物であるのは間違いない。パールグレイの髪の中に垂れ下がった耳が見えるのでクジラのフレンズでもなさそう、アシカかアザラシのフレンズかと推測されるが……

 かばんは彼女の容姿の中に少し気になる点があった。

 

 綺麗なブルーの瞳にはハイライトがなく、妙な影が……

 

(何かこの瞳に見覚えが?)

 

 記憶を辿ると一人のフレンズが思いあたる。

 

(あ、そうか、へいげん地方で会ったオーロックスさんも……)

 

 その瞳の色が意味することを、かばんはまだ知らない。知らないが妙に胸がざわつく。

 

「私はサーバルキャットのサーバル、こっちはかばんちゃんだよ!」

 

 サーバルの明るい声色が、かばんが胸に抱いた胸騒ぎを打ち消した。

 

「かばんです。ヒト、らしいです」

「ヒト? ふーん、私はステラーカイギュウのステラよ、よろしくね」

 

 彼女はアシカともアザラシとも違う、ステラーカイギュウという耳慣れない動物。

 かばんは腕に巻かれたラッキービーストに注目するが、

 

『ステラーカイギュウ、検索開始。……ネットワークエラー、該当データの保存なし』

「そ、そっかぁ」

「ボスでもわからなかったの?」

「ボス?」

「ああ、これラッキービーストなんです」

「ラッキービーストって……、ええ、ボスってあのボス!」

「こっちの地方にもボスがいるんだね」

「ていうか、ボスって喋れるの?」

「ああ、そうだったね。ボスって、ヒト、にはお喋りするんだよ」

「ふーん、ヒトね~」

 

 そういってあの瞳をかばんに向けてジッと見つめるステラ。

視線は敵意のあるもの、というわけでもないのに妙にかばんの胸を締め付けるような不安を掻き立てるもので、気がつくと手のひらに汗をかいている。

 

「それよりアナタたち」

「え?」

 

 

 

 ……………

 

 

 

「港が見えてきたよ、かばんちゃん!」

「ステラさん、本当にありがとうございます」

「いいっていいって、困った時はフレンズ同士助け合わないと」

 

 ウインクしながら茶目っ気のある笑顔をかばんに向けるステラ。ジャパリボートの後部に取り付き、押しながら泳ぐ。

 彼女、なかなかの怪力の持ち主でボートはスイスイと目的地の島の港へ向かっている。

 

「すごいよステラ、さすがカイジュウだね!」

「サーバルちゃん失礼だよ、カイジュウじゃなくてカイギュウだって……」

「え、そうだったっけ、ゴメンね~ステラ」

「ふふ、アナタたち二人って仲良しなのね」

 

 ステラのおかげで港まで辿りつけたカバンとサーバル。

陸に上がったステラは二人より頭一つ背が高く、改めてステラーカイギュウが大型の動物だと知る。

 そして彼女の体格や雰囲気が、以前にじゃんぐる地方で出会ったインドゾウに少しだけ似ていることにも気がついた。

 

「ありがとうね!」

「助かりました」

「いいのよ、で、アナタたちこれからどうするの?」

「私たち、ヒトを探してるの! ステラ、何か知ってる?」

「ヒト……私はよく知らないわ、でもミュージアムに行けば何かわかるかも知れないわね」

「みゅーじあむ?」

 

「そう、博物館(ミュージアム)……

 

ようこそ、ここは黄昏博物館(トワイライトミュージアム)!」

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