手紙を読んでいたと思ったら私は異世界の、しかもはるか上空で放り出されていた。
「・・・は?」
思わず惚けてしまった私は悪くないと思いたい。いきなり上空で投げ出されて、冷静でいられるほど私は上等な思考回路をしていない。
とにかくどうにかして落下だけは避けなくてはと思った矢先
『ニャァァァァァァァァァァーーーーーーー!』
目の前で三毛猫が叫んでいた。
「・・・は?」
再び絶句。なんで猫?と思わなくも無いが取り敢えずその猫を抱き抱え、背中に影を纏わせる。
その後私は、湖に落下した。
背中に纏った影のおかげで濡れることも無く湖に浮く。そして先に上がって行った三人を追いかけるように陸に上がる。
「信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃ即ゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「・・・・・・いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう、身勝手なのね」
そう言って互いに服を絞る男女。知り合いなのかなと思うほど息があっているのだが、そんなことはどうでもいい。私は腕の中の三毛猫を見て
「・・・濡れなくてよかったね」
『おう、ねーちゃんのおかげや。ありがとな』
なんかニャーニャー言ってるけど怒られてはない、と思いたい。その時服の裾を引っ張られたのでそっちを向く。
「三毛猫を助けてくれてありがとう」
そう言って微笑む茶髪ショートヘアの女の子が居た。
「・・・猫、貴方の?」
「うん。友達」
そう言って愛おしそうに三毛猫を抱きしめる。そして
「所で誰か、ここが何処だかわかる?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいのが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
なんで世界の果て=亀の背中なのかわからないが、先程の男女、黒髪ロングに赤いリボン。スーツの様なものを着た女の子と、金髪ヘッドフォンに学ランと言うスタイルの男子。が喋っていた。
「さて、一応確認しておくがお前等も手紙を貰ったクチか?」
「そうだけどまずお前って呼び方を訂正して、私には久遠飛鳥って名前があるの」
そう言って再び突っかかるような姿勢を見せる久遠さん。それでも金髪の方は飄々と流している。
「ヤハハハハ、まあそう怒んなって。そっちの猫抱き抱えてるのは?」
「・・・・・・春日部耀。以下同文」
「そう、よろしく春日部さん。次にそこの貴方は?」
「・・・・・・椿冥影華です」
「宜しく椿冥さん。そして最後に野蛮で凶暴そうな貴方は?」
「ヤハハ、高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶暴で快楽主義と三拍子揃ったダメ人間なので要領用法守った上で適切に接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ十六夜君」
「マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけお嬢様」
何が楽しいのかケラケラ笑う十六夜君に傲慢そうに顔を背ける飛鳥さん。我関せずを貫く春日部さん。皆自由人だとしか思えない。
「で、呼び出されたはいいけどなんで何の説明も無いんだよ。この状況だと箱庭ってのを説明するヤツが現れるんじゃねえのか?」
「・・・私の世界ではある日突然国王に呼び出され魔王を倒して来い言われ説明もないままひのきのぼうと少しのお金を渡され旅に出させられるゲームがあったからそういう事なんじゃない?」
「お前それド〇ク〇の話か?いやでもあれは少しとはいえ説明があっただろ。あれ風に言うなら呼び出されて来てみたら王様がいませんってのが今の状況だろ」
「・・・春日部さん。何の話かわかる?」
「・・・知らない」
私と十六夜君の会話についてこれていない二人。まあ自分と同じ世界から来てるわけでは無いと思うから、十六夜君と話しが通じただけいいのかもしれない。
私との馬鹿話を切り上げるように十六夜君が向こうの草むらに意識だけ向け、わざとらしく大声で喋る。
「しょうがねえ、こうなったら
その瞬間に、草むらから驚いたような気配が伝わってくる。
「あら、十六夜君も気づいていたの?」
「当然。隠れんぼじゃ負け無しだぜ?二人も気づいてたんだろ?」
「・・・アレ隠れてたんだね」
「・・・風上に立たれたらいやでもわかる」
「へえ・・・、面白いなお前ら」
楽しそうに笑ってはいるが、私を含む全員の目が笑っていない。そして冷やかにその者が隠れているであろう草むらを睨む。
「や、やだなあ四人様。そんな狼みたいな目で見られたら黒ウサギは死んでしまいます。ええ、ええ、古来より孤独と狼は兎の天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に話を聞いて頂けると嬉しいのでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「・・・・・・話だけなら」
「取り尽くシマもないですねー。最後の方はありがとうございます」
何故かバンザイのポーズをし、ヤケになったような顔の自称黒ウサギ。と言ってもミニスカガーターウサ耳少女ではあるが。
「・・・・・・兎っていうか痴女だよね」
「だな」
そういった私と十六夜君の感想に目の前の黒ウサギが項垂れる。
「黒ウサギは痴女では無いのですよ!?」
「・・・・・・その格好で、言う?」
「こ、これには理由があって!」
「理由?その手の店で働いてるとかか?」
「違うのですよ!」
うさ耳を立ててウガーっと怒る姿は猫に見えなくもないが、やっぱり兎のコスプレとか言うのにしか見えない。
そんな黒ウサギの後ろに春日部さんが立ち、
「えい」
「ふぎゃあ!?」
ウサ耳を思いっきり引っ張った。黒ウサギから女の子とは思えない悲鳴が漏れる。
「ちょちょちょ、ちょっとお待ちを!?触るまでなら黙って受け入れますが初対面で黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとはどういう了見ですか!?」
「好奇心のなせる技」
そう言った春日部さんはなんか少しドヤ顔で自慢げだ。何に対してなのかはわからないけど。
「え、これ本物なの?」
「面白そうだな」
今度は右を久遠さんが、左を十六夜君が掴む。その後の未来が予測できた私は耳を塞ぎ、備える。
直後、大音量で黒ウサギの悲鳴が森中に響き渡った。
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