この素晴らしい世界に本物を!   作:気分屋トモ

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はい、どうも気分屋トモです。好きなものはラーメンです。(関係ない)
好印象(当社比)です、はい。
ここで言ってはネタバレになってしまいますのでとにかく見て頂きましょう。というか見て下さい。お願いします。
それではどうぞ。

~追記~
加筆修正しました


比企谷八幡は、意外にも異世界では好印象らしい

 転生を行ったことによって生じた、浮遊感とは少し違う何とも言えない感覚を味わっていると、急に地面が姿を現す。それに伴い、本来の平行感覚が復帰する。

 

「おっ、っと、っと」

 

 ふらつきながらも、何とか転ぶことなく俺はその場に降り立った。我が足着く感覚がここまで落ち着くのはこれっきりにしたいものだ。

 

 周囲の光景に目をやる前に、俺はすぐさま体のあちこちに手で触れる。

 

 手足がある。体はどこも痛くない。トラックに轢かれたはずの体には、どこにも支障がない。ご丁寧に、死ぬ直前に着ていた総武高校の制服がそのまま身に纏われていた。荷物はないが、あちらの物を持ち込む訳にはいかないのだろう。そう思うと自然と納得がいく。

 

 目が動く。鼻が利く。耳が聴こえる。腕や脚は思い通りに動いてくれる。頬を抓れば痛みを感じる。五感も万全だ。

 

 そこまで確認して、俺は改めて目の前の光景に目をやった。

 

 赤い屋根が特徴の石造りの家が立ち並び、道行く人はシーツのような布を縫い合わせたような服――恐らくローブと言われる服――を着ている。所々に剣や槍、杖を持っている人間が見られるが、きっとあれがこの世界における冒険者なのだろう。

 

 少し歩けば、馬車を見た。木造の四輪馬車は大きめの幌の屋根で覆われ、数人が乗るには申し分のない程度の大きさだ。

 

 また、綺麗に作られた石造りの道を道なりに進むと澄んだ川を跨ぐ橋も見られた。透明度が高く、あれを飲み水として差し出されても違和感なく飲むことが出来そうだ。生水は怖いらしいので遠慮すると思うが。

 

 こんな光景は絶対に日本では見られない。文字通り、世界が違う。価値観等も、恐らく噛み合わない程に違うだろう。

 

「……夢、じゃないんだよなぁ」

 

 夢ではなく、俺は現実としてこの世界に転生してきた。それを、改めて実感させられた。

 

 それは同時に、俺は本当に一度死んでいることを自覚させた。

 

 異世界転生。空想の類としてしか見ていなかったものを、俺はこの身で経験することになったのだ。

 

「……意外と、寂しいもんだな」

 

 小町はいない。戸塚もいない。雪ノ下や由比ヶ浜、一色に平塚先生もいない。憎らしい葉山も、その一行も、普段は鬱陶しく感じてきた材木座すらこの世界にはいない。

 

 思いの外、俺はその事実に喪失感を感じているようだ。それに気づき、思わず笑ってしまう。独りを望んでいたのは、どうやら口だけのようだったらしい。

 

 彼女達に言えば、一体何と言うのだろうか。

 

 話したかったこと、聞いて欲しいことが、今ではたくさんある。また、彼女達のことも話して欲しいと、聞きたいと、そう思っている。

 

 今はまだ、それは出来ない。どれだけ待たせるかは分からないが、それを叶える為に、俺はここに来たのだ。

 

 彼女達にもう一度会えるかもしれない。その機会があるだけ、俺は恵まれている。

 

 賽は投げられた。後は運任せだ。やるだけやるしかない。

 

 今まで色んなものを取りこぼした分、手に入れられるものは多いはずだ。しっかりと、その分拾っていくとしよう。

 

「そうと決まればまずは情報収集を……」

 

 自身を取りあえず納得させ、俺は今後の方針を考える。思えば、能力を与えられたが、詳細を聞くのを失念していたし、何から始めれば良いのかも聞いていない。だから、自力でどうにかするしかないだろう。

 

「おい、そこの変な服装の兄ちゃん」

 

「は、はい!?」

 

 そこに突然、低く野太い声が俺を呼ぶ男がきた。変な服装というのは多分制服のことだろう。合成繊維なんてものは、ここではオーバーテクノロジーにあたるものだろうし、旅人に見える格好でもないだろう。

 

 その呼び声に、何の準備もせずに振り向いたことに、俺は心底後悔した。

 

「見ねぇツラと服装だが、他所から来たのか」

 

「は、はい、そうでしゅ……」

 

 一目見て竦み上がりそうな程に(いか)つい顔と、それに似合ったモヒカンとスキンヘッドを合わせた髪型をしている。カーキ色のサスペンダーと、世紀末でも生きられそうな屈強な体に黒の肩パッドを装備しており、その威圧感は怒った平塚先生と同じくらいだ。あれ、そう考えると大したことないように感じるな……。

 

 男は俺の体を上から下まで見まわし、何かを考えた様子で顎に手をやる。もしかすると、カツアゲ出来そうかどうか考えているのだろうか。俺、あんま金持ってないはずだぞ?

 

「やっぱりな。冒険者志望だろ? この先にウチの街のギルドがある。これ持って冒険者登録してきな、新たな勇者よ」

 

 しかし、彼の行動は俺の予想とはかけ離れたものだった。

 

 彼はギルドのある方向へ指差しながら説明してくれると、何かが入った袋をこちらへ投げてくる。慌てて受け取ると、それが金銭の類であることが分かった。

 

「え……何で、俺に?」

 

「何、神託があったのさ。今日、世界を救う勇者が現れる。その門出を祝うべし、ってな。きっと、お前さんのことだろうと思ってな。金は冒険者登録料と、数日分の生活費くらいは入っている。何かしらの形で返してくれれば、それで良い」

 

 武運を祈ると、それだけ言うと彼は笑いながら去っていく。その後ろ姿を、俺はただ見ることしか出来なかった。

 

 神託と、彼はそう言った。これが、多分エリス様の言っていた餞別のことだろう。

 

 だとしても、俺みたいな見ず知らずの人間に無償で金を渡すというのは、まず出来ない。それを笑って出来る彼は、紛うことなき善人だ。

 

 そんな行為を受けたのは初めてだ。無償の善意が、これほどまでに嬉しかったことはない。思わず、泣きそうになる。

 

 しかし、そこはグッと堪えて、俺は彼から貰ったお金の袋をポケットに仕舞う。この金は、出来るだけ無駄遣いせず、大切に扱おう。そして、倍くらいして彼に返そう。名前は知らないが、この街に居ればきっとまた会える筈だ。

 

 そう決心し、俺は先程教えてもらったギルドがある方向へ歩き出す。

 

 そこにも良い人が居るのだろうか。気づけば俺は、密かにそんな期待を胸に抱いていた。

 

 

 

 

「し、失礼しまーす……」

 

 ギルドと思しき所に着いた俺は、そこにあるやけに大きい扉を押して中へと入る。

 

「あ?」

 

 そんな俺に、ガラの悪そうな人間、人の好さそうな人間、遠くからでも伝わる程に負のオーラをまき散らした人間。老若男女問わず、一斉にこちらへと視線を向ける。

 

 この瞬間、即座に帰りたくなったが、帰る場所もなければそもそも頼るあてがない。先程金をくれた人に頼るのも申し訳ないから、実質手詰まりだ。だから、その衝動を抑えて行くしかない。

 

 一心に浴びる視線を出来るだけ見ないようにしながら、俺は空いていた受付らしき所へ行く。

 

「すみません、冒険者登録をしたいのですが……」

 

「はい、冒険者登録をご希望ですね」

 

 俺はそこで気づく。その受付に居た人が、綺麗な女性だったのだ。それに気づいていた時には、主に男性陣からの視線がより鋭くなっていた頃だった。多分、ここで人気の人なんだろう。より居心地が悪くなった俺は、早急に終わらせるべく話を進める。

 

「登録料は千エリスになります」

 

「登録料ってこれで足りますか?」

 

「はい、金貨二枚で大丈夫ですよ」

 

 俺は先程の男性から貰った袋からエリスと呼ばれる硬貨を取り出した。どうやら、この世界の通貨単位は、あの女神様の名前らしい。ということは、宗教としても割と一般的ななのかもしれない。

 

「はい、確かに千エリス頂きました。それでは、こちらの紙に必要事項を記入して下さい」

 

 受付の女性は料金を確認すると手慣れた様子で進めてくれる。名前、年齢、性別、etc……。意外と記入事項は多かったが異世界から来たことがバレるようなものはなかった。

 

 ただ、自身の特徴も書くというのはどうなんだろうか。目が腐ってるとか書けばいいのか? ん? どうなんだ? 言ってて悲しくなるわ。

 

「はい、書き終わりました」

 

 結局俺は特徴に目の腐り、ついでに一子相伝のアホ毛も書いておいた。これで文句はないよな?

 

「はい、ヒキガヤハチマンさんですね。それでは、こちらのカードをご覧下さい」

 

 彼女はそう言うと何かのカードを取り出してきた。

 

「これは?」

 

「冒険者となる貴方へお渡しする冒険者カードです。自身の職業やステータスなども書かれていますので他の街へ行かれても身分証明などにも利用出来ます」

 

 ほう、意外と便利なもんなんだな。流石異世界。しかし職業はまだしもステータス?

 

「冒険者カードには選んだ職業やモンスターを倒すことによって得られる経験値などで上がるレベルなどに応じた様々な能力を数値化して表示します」

 

 どうやら、この世界ではステータスが数値化されるのが当たり前らしい。ゲームのようだとは思うが、それに何か言ったところで変な人扱いされるのがオチだろう。大人しくスルーしておこう。

 

「それではヒキガヤさん、こちらの機械に十秒程触れて下さい。このカードに、貴方のステータスを記述します」

 

 すると今度は、綺麗な青色をした機械を持ち出してきた。ステータスを読み取って反映する投影機のようなものらしい。初めて見る異世界感満載の機械に、内心心が躍るが、それは表に出さないように平静を装う。

 

「こうですか?」

 

 俺は言われた通りその機械に触れてみる。すると、直ぐに読み取りが始まったのか、機械は淡い光を出して動き出す。

 

「おお……!」

 

 その非現実的な光景に俺は驚きを隠せない。思わず感嘆の声が漏れる。

 

 そして、十秒程経つと機械は光を失って最初の状態に戻る。どうやらこれで終わりのようだ。

 

「はい、もう離しても大丈夫です。今のでこちらに……って、ええええ!?」

 

 俺にカードを見せようとしたところで、彼女は突然、声を上げる。その声で、再び俺に視線が集まってしまう。何もしてないんで取り合えず威嚇するの止めて頂けませんかねそこの冒険者さん。

 

「何ですかこのステータス!? どの数値も上級職レベルじゃないですか!? しかも、知力と魔力に関しては文字通り桁外れですよ!?」

 

 俺が周囲に気にしているのに気づくことなく、彼女は何故か俺のステータスを大声で読み上げていく。ちょっと? 目立つんで止めてくれない? というか、何人のステータス勝手にバラシてくれてんの? お陰で別の意味で注目され始めたじゃねぇか。

 

「あの……」

 

「あ、あぁ! 失礼致しました。その、あまりに異常なステータスでしたのでつい……」

 

 流石にどうにかしなければと思って声をかけると、彼女は我に返った。どうやら、気が動転してしまう程のステータスらしい。チートを授かっているから、当然っちゃ当然だが、イマイチ実感がないので何とも言えない。

 

「コホン。それでは、何の職業を選びますか? ヒキガヤさんのステータスであればクルセイダー、ルーンナイト、魔法剣士など、大抵の上級職にも就けます。オススメはやはり魔力量が高いので後方支援のアークプリーストか、攻撃重視のアークウィザードですね」

 

 調子を戻す為に軽く咳をして、彼女は話を戻して進める。その内容は、冒険者内での職業とやらだった。

 

 どうやら、一口に冒険者と言っても、それにはいくつか種類があるらしい。先程並べたものは全て上級職と言われる高ステータスの人間しか就けないもので、それ以外にも職業はあるらしく、どれでも自由に選べるらしい。

 

 ただ、現状どれが一番良いのか、というのは判断しかねるものだった。選択肢が増える分、選ぶのも難しいのだ。

 

 こういった時の為の能力があるんだが、生憎使い方が分からない。俺の記憶が正しければ、疑問と”思う”ことで答が出るはずなのだが……。

 

「……答えを出す者(アンサー・トーカー)

 

 試しに、呟いてみる。すると、直接脳内に答が浮かんできた。

 

 慣れるまではしばらくこの方法で使うとしよう。他の方法も思いつかないしな。

 

「アークウィザードでお願いします」

 

「はい、アークウィザードですね!」

 

 ”どの職業が俺に最適であるか”という疑問に、答はアークウィザードと出てきた。だが、それと同時にその”理由”も理解した。

 

 ステータスの内、高い知性と魔力量を要求されるのは先に勧められた二つだ。そして、俺は特典として貰った能力により、両方のステータスがぶっ飛んでいる。だから、選択するなら確かにこの二つの内のどちらかだろう。

 

 アークウィザードは支援魔法を習得できない。職業によって習得できるスキルに制限が設けられている為だ。だが、その分魔法での攻撃手として申し分のない威力を発揮するだろう。

 

 しかし、アークプリーストは基本的に支援が目的である為俺以外の誰か、つまり()()()()()()()でその真価を発揮するのだ。

 

 だが、俺にはその仲間を作れるだけの能力がないと出た。自分で言うのも何だが、事実なのでどうしようもない。

 

 加えて、俺は特典によって能力を得た()()()であるということを、この世界の人間に知られてはならないのだ。俺の他にも転生者は居るとは言っていたが、正直手を組める人間性があるとは思えないし、そもそもどこに居るのか分からない。俺のように前世(あっち)の服装をしているなら見つけられるかもしれないが、そんなのを探すより自分で実力をつけていった方が余程効率的だ。

 

 よって、仲間を作らなくても俺の能力を最大限活かせるのはアークウィザードという訳だ。我ながららしい理由だ。

 

「それでは、冒険者ギルドへようこそ、ヒキガヤさん! スタッフ一同、今後の活躍に期待しています!」

 

「おおおおおおおおおお!!」

 

 受付を終え、彼女の祝詞が俺に投げかけられたと共にギルド内の人間が大声を上げる。その様子に、思わず目を疑う。

 

 見れば、最初の余所者に対する警戒の目はもうない。あるのは、魔王を倒すかもしれないという存在に対する期待と喜びだ。その対象が俺であるというのは、何ともむず痒い。

 

 だが、これが新たな門出を祝うものであるのなら、それは素直に受け取るべきだろう。俺の冒険者人生は、確かにこの瞬間から始まるのだから、間違ってはいない。

 

 第二の人生は、世界を救うチート持ち勇者。一度目の人生より、随分と俺に優しい設定じゃないか。

 

 だから、サクッと終わらせて帰ろう。小町の待つ家へ。彼女達が居るあの場所へ。

 

 何だかんだで、大切に想う人間の居る、あの世界へ。

 

「あ、そういえば宿についてですが、馬小屋であれば無料でご利用出来ますのでどうぞお使い下さい」

 

 ……そのための、俺の馬小屋生活が、今始まる。




どうでしたでしょうか?
八幡、頑張ってもいいこと少ないからこの世界(作者の妄想の世界)では良いことあってもいいと思うんだ。
あと、これは完全に作者の落ち度なんですが、私はガッシュ、俺ガイルはアニメ、原作共に所有しているのですが、このすばだけはアニメで得た知識以外は基本他の投稿者様達を参考にさせて頂いていますので、「これ違う!」みたいな指摘がありましたらどうぞ忌憚なく送って下さい。
また、投稿ペースは亀の進行速度より遅い可能性が非常に高いです。期待はせず、たまに見たら「あ、コイツ投稿してる」くらいの感覚で見て頂けると幸いです。
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