この素晴らしい世界に本物を!   作:気分屋トモ

9 / 13
やぁ。見事に(勝手に決めた)締め切りを破った作者です。すんません。
昨日投稿しようと考えていたのですが、部活の引退試合も相まってどうも寝落ちしたみたいでして、朝には充電がヤバイ携帯が横たわっていました。酷い言い訳だなこれ。
という訳で、遅れましたが、第九話をお届けします。
それでは、どうぞ。


比企谷八幡は、怒り狂った騎士を相手する

 ギルドの掲示板に高難易度依頼しか貼られなくなってから早くも一か月が経とうとしていた。

 

 俺はちょくちょく依頼に出て行っているためそれなりに懐も暖まってきた。なので、そろそろ馬小屋から出ようかと猫二匹と思案しながら寝ていたのだが、突如けたたましい警報が街中に鳴り響いてきた。

 

「緊急クエスト発令! 冒険者の皆さんは今すぐ街の門の所まで来てください! なお、サトウカズマさんのパーティーは必ず来てください!」

 

「緊急クエスト?」

 

 その慌ただしい様子からして只事ではなそうだが……何故和真のパーティが呼ばれるんだ?

 

「行かなくて良いのかい? 仲間が呼ばれてるんだろ?」

 

「いや、確かにそうなんだけどさ……」

 

 どうしよっかなぁ……。確実に面倒事なんだよなぁ……。最近一緒にいないし、行かなくてもバレない――。

 

「ハチマン! 一緒に来て下さい!」

 

 うん、駄目だ。逃げられないわこれ。

 

 俺の理想も空しく、めぐみんが馬小屋までご丁寧に呼び出しに来たことで俺は完全に退路を断たれてしまった。

 

「カズマが多分連れて来なきゃ来ないと言っていましたので一応来ましたが、そうなんですか?」

 

 あの野郎、自分の時は一目散に逃げる癖になんて仕打ちだ。今度死なない程度に凍らせてやろうか。

 

『おや、お仲間だね。ということは行くのかい?』

 

「あぁ、向かえに来られちゃ行くしかねぇよ」

 

 俺はそう言ってウィズさんから貰ったローブを羽織り、同じくウィズさんから貰った杖を手にする。

 

「行くか、めぐみん」

 

「はい、行きましょう」

 

『僕も行っていいー?』

 

『アタシも行こうかねぇ』

 

 どうやら猫二匹も来てくれるらしい。これなら大抵のものなら討伐出来そうだが、一体何が相手何だろうな?

 

 俺はわざわざ出かける羽目になった元凶に何の魔法をぶっ放してやろうかと考えながら馬小屋を出る。あわよくば、この事態が終わったら大金でも入らないかと、そんなことを夢見ながら。

 

 

 

 

「あ、ハチマンが来たぞ」

 

「本当か!?」

 

 俺が門に着いた頃には既に俺以外の冒険者は集まっていた。これほどの人数を集めて、一体何と対峙するんだ?

 

「何があったんだ? 和真、簡潔に説明してくれ」

 

「あぁ、何かがヤバそうなのが来てな。あれだよ」

 

 和真はそう言って指を差すのでそちらを見やると、そこには確かにヤバそうなのがいた。

 

 ドス黒いオーラをまとい、黒馬に跨るその騎士は頭を手に持ち佇んでいる。頭部がない、正確には首がなく頭を自身で持つあの姿は、恐らくゲームでも有名だったあのキャラだろう。

 

「首無し騎士、デュラハンか……? また何でそんなのがここにいる」

 

「分からん……ただ、何か怒っているのだけは分かる」

 

 和真はそう言って再びデュラハンを見る。確かに、あのドス黒いオーラの見るからに怒ってますよ感は半端ない。この街で誰かがアイツを怒らせたのだろうか。何て傍迷惑な野郎なんだ、ソイツは。

 

 俺がそんなことを思っているとデュラハンは静かに喋り出す。

 

「俺はつい先週、この近くの城に越してきた魔王の幹部の者だが……」

 

 そして、デュラハンは叫ぶ。

 

「……毎日毎日毎日毎日! お、俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法打ち込んでくる、ああ、頭のおかしい大馬鹿は誰だぁぁぁぁっ!?」

 

 最近、彼の身の周りで起きているらしい迷惑行為に対する怒りを。

 

「……は?」

 

「俺を魔王軍幹部のデュラハンだと知ってなら堂々と城に来いよ! そうでなければ黙って部屋の隅で怯えてろよ! ねぇ何で? 何でそんな陰湿なことするの? 修繕費だって馬鹿になんないんだぞ!?」

 

 どうやら、彼が住まう城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでいく奴がいるらしい。何それ、めっちゃ迷惑。俺だったら泣く。そんな陰湿な行為前世(あっち)でもなかったわ。というか、爆裂魔法って……。

 

 めぐみんの方を見ると見るからに動揺していた。恐らく、というか、ほぼ確実にコイツが犯人だろう。何してくれちゃってんの?

 

「おい、めぐみん。何でそんなことやったんだ。怒らないから言ってみなさい」

 

「うっ……それは……」

 

「八幡、それ教師が使うどのみち怒る時に使う手口じゃないか。やめてやれよ」

 

 おいバラすなよ。本当に怒れなくなるじゃないか。

 

 ……というか、何故お前が庇う? いつもなら面倒事が起こる度に真っ先にアクアとかに吐け吐け言ってるはずだが……。

 

「和真、ひょっとしてこの件、お前も関わってんじゃないのか?」

 

「……」

 

 和真は俺の質問に黙って他所の方向を向く。図星か、この休みの間に何をやってたんだコイツら?

 

 俺は能力を使って問う。コイツが休みの間にどうして爆裂魔法を撃ち込んでいたのか。

 

 ……なるほど、ただの廃城だと思ってポンポン撃ち込んでたのか。そりゃ遠慮がない訳だ。

 

 しかしどうしたものか。謝っても許してもらえるとは考えにくい。アンデッドだから普通の攻撃も効きにくいし……。

 

「……仕方ありません。元は私が撒いた種、素直に出ていきます」

 

 俺が一人どうしたものかと考えていると、めぐみんは一人、覚悟を決めたように顔を上げる。その手が震えていることから、めぐみんが内心怖がっているのがよく分かる。

 

 ……そうだ、本来なら出来ないあれをやってみるか。相手もきっと困惑するだろう。何より、一溜まりもないだろうしな。腹いせには丁度良い。

 

「おい、待てめぐみん。ちょっと俺が出てくるわ」

 

「え、ハ、ハチマン!? どうしたのですか!? ついに頭おかしくなったんですか!?」

 

「おい、いつから俺は頭がおかしい奴になってんだ。俺は別に勝てそうだから行ってこようと思っただけだ」

 

 俺の提案に群衆から出ようとしていためぐみんが止まり、俺の方へ来ると腕を持ってグワングワン揺らしてくる。多分、和真なら肩に届いていたのだろうが俺には届かない。だからアクアのように揺られはしない。

 

「任せとけ。俺にはあるんだよ、アイツを倒す方法がな……」

 

 そう言って俺は不敵に笑ってやる。和真達はそれを見てドン引きしているが、そんな酷いのか、この顔? あくどい顔をしている自覚はあるけどさ。

 

『悪人みたいな顔してるよー』

 

『アタシでも滅多に見ない極悪人みたいな顔だねぇ』

 

 ……もう良いよ、俺暴れるもん。好き放題暴れてやるもん。

 

「で、ですが、これは元々私の問題です。ハチマンに頼る訳には……」

 

 そう言ってめぐみんは俺が出ていくのを拒否する。ふむ、めぐみんは自分なりに責任を感じているらしい。まぁ、自分が原因だし感じるもんか。

 

「アホ抜かせ。一発爆裂魔法撃ったらお前倒れるだろうが。どうやって戦うんだよ」

 

「うっ……それはそうですが……」

 

 どうやら納得出来ないめぐみん。仕方ない、小町ではないが、やってやるか。

 

「良いから。お前はそこで見てな。後は俺に任せとけ」

 

 俺はそう言うとめぐみんの頭の帽子を取って頭を撫でてやる。

 

「え、ちょ!?」

 

「良いから、落ち着け。別に死に行く訳じゃないんだ」

 

 俺が死ぬ時は多分能力が切れるか、能力があってもどうしようもない敵が相手の時くらいだ。そうは簡単に死にはしねぇよ。

 

「……分かりました」

 

「よろしい」

 

 俺はめぐみんが納得してから頭を撫でるのをやめて帽子を戻してやる。めぐみんが名残惜しそうに見ているように見えたのはきっと気のせいだろう。

 

 俺は冒険者カードを取り出してとあるスキルを取得する。もしものことを考えてスキルポイントを残しておいて良かった。

 

 準備が済んだ俺は集団よりいくらか前に出て立ち止まる。それに気づいたデュラハンはより怒りの声を上げる。

 

「き、貴様かッ!? 俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿はぁぁぁぁッ!? どうせ雑魚しかいない街だと放置しておれば、調子に乗って毎日毎日ポンポンポンポンポンポンポンポン撃ち込みに来おってッ! 頭おかしいんじゃないのか貴様!?」

 

 いやその節に関しては本当申し訳ない。具体的には◯レンで城作る度に鬼が城壊しに来るレベルのウザさだと思う。え、分からない? あれ結構名作だと思うんだけどなぁ……。

 

 まぁそれはいい。今は目の前のコイツを倒すことを考えろ。

 

「残念ながら俺はソイツじゃない。だが、俺はそのパーティのメンバーだ」

 

「ほう? だとしたら何故、パーティメンバーのお前がソイツの代わりにこの俺の前に出てきたんだ?」

 

「何、ちょっと質問したくてな。お前、魔王軍幹部なんだろ?」

 

「俺か……俺は魔王軍幹部が一人、首無し騎士のデュラハンだ! それがどうした!」

 

「いや、確認だ。俺は冒険者、アークウィザードをやっている者だ」

 

「ふん、アークウィザードか……。こんな街に二人も居るとはな。それで、貴様はどうするのだ?」

 

「冒険者が魔王軍幹部に名乗る。なら、何が言いたいか分かるよな?」

 

 俺はそう言って杖を片手で構える。答えを出す者(アンサー・トーカー)は既に発動済みだ。何をしてきても対応出来るようにな。

 

「お前らも援護頼むぞ、セツ、ユキ」

 

『あいよ、ハチマン』

 

『分かったー!』

 

 俺が二人に呼びかけると二人は最初に会った時の大きさに戻った。この姿が一番力が出しやすいらしい。

 

「ほう? デビル・オブ・ディザスターか。それを従えているとは貴様、どうやらかなりの手練れのようだな」

 

 デュラハンはセツ達を見ると先程の怒りを沈めてこちらを見る。ウィズさんもそうだが、どうやら彼らは皆コイツらのことが分かるようだ。

 

「フフフ、面白い。良かろう、俺は仮にも元騎士だ。受けた挑戦には誠心誠意をもって相手しよう」

 

 デュラハンはそう言うと、デュラハンと同じく首の無い馬、コシュタ・ダワーだったかが竿立ちする。

 

「我が名はベルディアッ! 生前の騎士の誇りにかけて、貴様との決闘を受けよう!」

 

「俺の名は比企谷八幡ッ! セツとユキと共に、仲間に代わって貴様を倒させてもらうッ!」

 

「行くぞッ!」

 

 両者が名乗り、戦いは始まった。

 

「セツ、ユキ! 詠唱準備の間アイツの相手を頼む!」

 

『あいよ、帰ったら美味しい魚を頼むよ』

 

『僕の分もね!』

 

「良いのを気前よく買ってやるから楽しみにしとけ!」

 

 俺はセツとユキに指示すると飛び上がって杖を両手で構えて詠唱を始める。

 

『アースシェイカーッ!』

 

 セツは無詠唱でそう言うと地面を思いきり殴る。上級魔法であるが、セツ達は詠唱を必要としないらしい。冒険者もレベルが上がれば無詠唱で唱えられるらしいから俺も会得したいものだ。

 

 アースシェイカーによって周辺の地盤が隆起し始める。一度これに巻き込まれたことがあるが平衡感覚が確実にもっていかれる。対策として俺はセツから貰った飛行能力で逃げることにした。

 

「ウオッ!?」

 

 ベルディアにも地震は効いたようで、必死で馬にしがみつくが片手では難しかったようで落馬した。

 

『ほらほらいくよー!』

 

 そんなベルディアにユキは容赦なく魔法を唱える。

 

『ハリケーンミキサー!』

 

 風上級魔法のそれは竜巻と鎌鼬を同時に発生させ、相手を切り刻む。同じく風上級魔法のトルネードより魔力の消費が大きいが、その分威力は期待出来るだろう。

 

「えっ、ちょ、待ってァァァァ!?」

 

 ベルディアは為す術なく宙へ飛んでいく。頭を持ったままでいるのはきっとあれが急所だからなのだろうか、意外としぶとく持っている。

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に、我が深紅の金光を望み給う。覚醒の時来たれり、無謬の境界に落ちし理、無業の歪みとなりて現出せよ!」

 

 そんなベルディアに、俺は詠唱を終えた魔法を放つ。彼が、今最も食らいたくない魔法をな。

 

『逃げるよッ!』

 

『うん!』

 

「エクスプロージョンッ!」

 

 セツ達は俺が魔法を放つのを察知した後、その場から離れていく。頭が良い子は嫌いじゃないぞ。

 

「ギャァァァァッ!?」

 

 杖の前、自身の足下、ベルディアの真下。その他にも多くの魔方陣を展開し、禍々しくも幻想的な魔力の渦が、ベルディアに放たれ爆発する。直撃を食らったベルディアは悲鳴を上げて燃えていった。

 

「お、おぉ……結構魔力もってかれるな」

 

 魔力無限の恩恵があるとはいえ、俺だって魔力を使えば使う程疲れはする。上級魔法五発分は軽くあるであろう爆裂魔法の異常な消費具合に俺は少しよろめきそうになりながら驚く。

 

『相変わらず馬鹿げた魔力量だねぇ。本当どうなってんだい?』

 

『もうやっつけたのー?』

 

「どうなってんのかは知らん。あと、アイツはまだ生きてるぞ。これで終わるようなら、そもそもお前らを連れて来てないしな」

 

 しかし、それよりも驚くのはやはり爆裂魔法を食らっても普通に生きているベルディアだろう。タフだなおい。

 

「ハァ……ハァ……貴様、何故それが使えるッ!?」

 

「ん? スキル一覧にあったからな。覚えただけだ」

 

「な!? 本来それは何十年と研鑽と修行を重ね、大賢者と呼ばれる領域に達した者だけが取得出来るネタ魔法だぞ!? それを、しかもあったから取るとか、この街のアークウィザードは頭がおかしい奴しかいないのか!?」

 

 ぬ、何を言うか。俺はチートがあるから取っただけで普通ならこんな魔力消費の激しい魔法なんざ取らねぇよ。あ、その時点で頭おかしいのか? どちらにせよ許さん。

 

「頭がおかしいとは失礼だな。どうやらまだ食らい足りんらしいな」

 

 そう言って俺は再び杖を構えて魔力を溜める。そう、もう一度撃つ為にな。

 

「え!? ちょ、普通使ったら倒れるもんだろッ!? 何故倒れんッ!?」

 

 ベルディアはかなり焦っていた。当然か。仮にも爆裂魔法、威力だけなら魔法随一を誇るしな。一発だけでも一溜まりもないだろうな。

 

 だが、そんなん知らん。

 

「お前曰く頭がおかしいらしいからな。魔力量もおかしいんだろうよ」

 

 俺の周りに魔法陣が展開されていく。さぁ、戦いは始まったばかりだぜ?

 

「エクスプロージョンッ!」

 

「ギャァァァァ!?」

 

燃え盛る業火に焼かれるベルディアを見ながら、俺は宣言する。とびっきりに自己中な本音を。

 

「俺の睡眠時間を奪ったんだ。たっぷり腹いせさせてもらうぞ」

 

『わー悪い笑顔だー』

 

『アンタはああなっちゃ駄目よ?』

 

『はーい』

 

 コイツら……好き放題言いやがって。後で撫で回してやる。

 

「エクスプロージョンッ!」

 

「え、ちょま――」

 

「エクスプロージョンッ!」

 

「だからちょっとま――」

 

「エクスプロージョンッ!」

 

『トルネード!』

 

「うぉ、だから、待てと――」

 

『ハリケーンミキサー!』

 

『インフェルノ!』

 

「エクスプロージョンッ!」

 

「待てって言ってるだろうがぁぁぁぁッ!!」

 

 おぉ、凄いなコイツ。これだけ撃ち込んでも死にやしねぇ。もっと一発の威力上げようかな?

 

「どうした、普通戦いってこういうの待たないんじゃないのか」

 

「ハァ……確かに……ハァ……そうだが……限度ってもんがないのかッ!?」

 

「敵相手に何言ってんの?」

 

『本当だよねー』

 

「こんな爆裂魔法撃ち込んで平気でいる奴に言われたくないわッ! 何だお前!? 魔力が無限にでもあんのかクソッタレッ!」

 

「まぁ、間違いじゃないんだよな……」

 

 無尽蔵の魔力(エンドレス・マジック)があるからな、魔力が底を尽くことなんてことは今のところ一度もない。多分本当に無限なんだろう。

 

『あら、そうなのかい? だからあんなに魔法使っても平気なんだねぇ』

 

『ねぇねぇ、何でそんなに魔力があるの?』

 

「ちょっと色々あってな。まぁあんまし気にすんな」

 

 俺は興味津々なユキの顎を撫でてやって話題を逸らす。ユキのことだから多分これで誤魔化せるはず。

 

「もう許さんッ! 貴様にはこれを使ってくれようッ!」

 

 若干忘れられそうになっていたベルディアは怒りの声をあげると、鎧とかが熱で溶け始めた体を起こし、こちらに向けて指を差す。その手と周りには先程とは比べ物にならない邪悪なオーラがまとわれていた。

 

 何だ、あれを使うのか。

 

「汝に、死の宣告を!」

 

『マズイッ! 逃げなハチマンッ!』

 

「いや、大丈夫だセツ。この呪いは何とかなるからな」

 

「抜かせ……貴様は、一週間後に死ぬだろう!」

 

「ぐっ……」

 

 ベルディアの死の宣告は、俺の体に当たると何かをまとわせる。多分、発動までの期限的なものなのだろう。少し変な感じはしたがそれ以外で支障は特に見られない。

 

「ハチマンッ!」

 

「大丈夫か八幡!?」

 

「あぁ、特に問題ない」

 

 俺が死の宣告を食らったのを見て後ろにいたはずのめぐみん達が駆け寄ってくる。セツとユキも心配そうにこちらを見つめている。

 

「フフフ……貴様らがコイツの仲間か。どうだ、仲間が自分達の所為で死に直面しているというのは」

 

「あぁ……ハチマン」

 

 ベルディアの言葉にめぐみんは顔を青くしていた。多分、この中で一番自責の念が強いのは原因になったからだろう。

 

「これに懲りたら、お前らはもう爆裂魔法を使うな。それと、その呪いを解呪して欲しくばそこのアークウィザード一人で俺の城に――」

 

「なぁ、何勝手に話進めてんの? まだ終わってないだろ?」

 

 勝手に話を進めるベルディアに被せて俺はベルディアを威圧する。会話に置いていかれるのには慣れてるが、それで勝手に決められるのは些か癪に障る。

 

「ほぉ……死の宣告を受けてなお立ち向かおうとするか」

 

「言ったろ? 腹いせにするってな」

 

 俺はそう返すと後ろを向く。まぁ、とりあえずはコイツラを安心させないとな。

 

「めぐみん、そう気負うな。これはお前の所為じゃない」

 

「で、ですが、ハチマンは死の宣告を……」

 

「その辺も大丈夫だ。まぁ見てろ」

 

 俺はめぐみんにそう言って帽子をとって頭を撫でて落ち着かせてやる。小町にも昔やってやったことがあるが、意外とこれは効くらしいからな。小町じゃないが、特別だ。

 

「おいアクア! 後で何か奢ってやるからこの呪い解いてくれ!」

 

 俺はめぐみんを撫で終わった後、一人だけ群衆に隠れていたアクアに声をかける。多分、このまま関わりなく終わりたかったのだろうがそうはさせない。

 

「えー? 私そんなに安くないんですけどー? 明確にどれくらい奢ってくれるか言ってからにしなさいよー」

 

「これが終わった後の食事代は全部俺が持ってやる!」

 

「本当!? よーし、任せてなさい!」

 

 流石チョロイン、安い。見事に乗ってくれるな。後でシュワシュワも少しサービスしてやるか。

 

「アークプリーストか。ふっ、無駄だ。いくらアークプリーストといえど、俺の呪いを解くことなど――」

 

「セイクリッド・ブレイクスペルッ!」

 

「は?」

 

 アクアは俺に近づくなり高位の呪文を当たり前のように唱える。本来であればこの呪いは誰にも解けない仕様になっているようだが、残念だったな。仮にも女神、ステータスは既にカンスト済みのアクアの手にかかれば解けない呪いや結界などそうはない。ベルディアにとっては思いも寄らぬ状況だろうがな。

 

 頭に浮かんでいたドクロ的なものはアクアの魔法で空へと連れて行かれていった。心なしか、そのドクロが泣いているように見えたのは気のせいだろうか。

 

「え、いや、嘘だろ? 死の宣告だぞ!? 熟練のアークプリーストにも解けない呪いだぞ!?」

 

 見れば、ベルディアは予想通り混乱している。まぁ、これで数多のチート持ちを屠ったらしいし、そりゃ疑いたくもなるわな。

 

「な、大丈夫だろ」

 

「……何か心配して損した気分です」

 

 めぐみんはそう言って溜め息を吐く。えぇ何その反応。割と傷ついちゃう。俺のガラスのハートがブレイクしちゃう。

 

「お前ら本当に駆け出しかッ!? 駆け出しの冒険者しかいない街で、何でこんな――」

 

「うるさいわねアンデッド風情がッ! セイクリッド・ターンアンデッドッ!」

 

「ギャァァァァ!?」

 

 アクアはアンデッド死すべしとでも言うように、抗議を挙げるベルディアに浄化魔法を容赦なくぶち込む。おぉ、俺より攻撃が効いてんな。流石は元女神、その浄化力は伊達じゃないな。ベルディアもかなり苦しんでる。

 

『凄いねぇあのアークプリースト。死の宣告を解くなんて』

 

「まぁ、色々あるからな。ウチのパーティは妙に能力だけはあるぞ?」

 

 駄女神しかり、爆裂娘しかり、変態騎士しかり。ウチの上級職陣は特技だけは異常にずば抜けてるからな。それ以外は欠陥だらけだけどな。

 

「クソォッ! 本当何なんだよお前らッ!? 十分俺の城に来れる力があるじゃないか!? 何で普通に攻めて来ないんだよッ!?」

 

「ねぇカズマさんハチマンさん。おかしいんですけど。私の魔法効いてないっぽいんですけど」

 

「いや、ギャァァァァって言ってたし結構効いてると思うんだが」

 

「どう見ても効いてるよな」

 

 ベルディア今転げ回ってるけどあれ絶対効いてるよね? ギャァァァァとか言ってたし。

 

「そう? じゃあもう一回セイクリッド・ターンアンデッド!」

 

「え、嘘だろってヒョォォォォ!?」

 

「ねぇ、やっぱり効いてないッぽいんですけど!」

 

「いや、今ヒョォォォォ!?とか言ってたぞ? 凄く効いてると思うんだが」

 

「あと三回くらい食らわせれば浄化するっぽいぞ」

 

 あまりのタフさに思わず能力を使ってみたが、どうやらあと二回も耐えれるらしい。俺の爆裂魔法も食らってこれとかマジで強過ぎない? そりゃ普通倒せないわ。

 

『アタシらはどうしようかねぇ』

 

『暇ー』

 

「そうだなぁ……」

 

 ぶっちゃけコイツらだけでももう倒せそうだしなぁ。帰っても良いかな?

 

「駄目だ。今お前が帰るとまず間違いなく俺らが殺される。絶対に帰るな」

 

「いっそ清々しいほどに弱者宣言するな、お前は……

 

 俺はこっそり帰ろうと試みると和真に止められた。何だよ、何でバレたんだよ。俺のステルスヒッキーはどこいったんだよ。前世(あっち)じゃめちゃくちゃ使ってたのに全然機能してないじぇねぇか。つか帰るまで遠足みたいな理論はこっちにもあるのか。

 

「ハァ……じゃあさっさと片づけよう。アクア、街を壊さない程度で大量の水は出せるか?」

 

「私を誰だと思ってるの! 私はアクシズ教徒に崇められし水の女神、アクア様よ! そんなのお茶の子さいさいよ!」

 

「お茶の子さいさいとか今日日聞かんけどな……じゃあ用意してくれ。アイツの弱点は水だ。セツとユキも頼めるか?」

 

『分かったよ、ハチマン』

 

『いいよー』

 

「よし……」

 

 アクア達に指示すると俺はすぐに詠唱を始める。無詠唱スキルがないのはこういう時に煩わしいな。

 

「生に背きし屍よ、泉下(せんか)を拒みし背徳者よ。鼓腹撃壌の世に混乱を招きし災厄に、我は天魔覆滅の鉄槌を下さん。女神の涙たる聖水を以て、蔓延る悪を浄化せん」

 

 俺が詠唱している間に、アクア達は特攻して攻撃をしかけようとする。

 

「セイクリッド~」

 

『ホーリー・アクアレイン!』

 

『アクアウォーター!』

 

「させんッ! ぬぅんッ!」

 

 ベルディアは俺達の魔法を危険と判断したのか突然弱点の頭を空中へ(ほう)る。せめて頭だけもってか……?

 

 いや、何か来るッ!

 

死眼(デス・アイズ)ッ!」

 

 瞬間、ベルディアの動きが変わった。遅延魔法か、敏捷強化魔法の類だろう。ベルディアは先程とは比べられない程の速さで俺に向かって来る。セツとユキの魔法は先程ベルディアがいた場所へと無常にも放たれる。

 

「悪く思うなよ?」

 

「そっちこそな」

 

 俺は脳に意識を集中させ、感覚を研ぎ澄ませる。答えを出す者(アンサー・トーカー)を、より効果的に発揮するために。

 

「ゼアァァァァ!!」

 

 ベルディアは両手剣を扱っているとは思えない速度で剣を振るう。流石は元騎士、洗練された太刀筋だ。この能力がなければ八つ裂きになっていた自信があるぞ。

 

 俺は動きを全て能力で見切る。いくらか掠ってしまったが、これくらいなら許容範囲だ。

 

「くっ、流石だな……」

 

「馬鹿な!? 今の俺の剣を捌くだとッ!?」

 

 驚愕するベルディアを見て俺はニタリと笑い両手を前に構える。

 

「ホーリー・アクアレイン!」

 

「グガッ!?」

 

 俺の手から放たれたのはダムから排出されるような大量の水だった。そんな水を至近距離で浴びたベルディアは堪らず後ろへ流されていく。

 

 が、これだけでは終わらなかった。

 

「クリエイトウォーターッ!!」

 

 加減を知らない駄女神が、物凄い量の水を召還しやがった。

 

「え、嘘何これァァァァ!?」

 

 ベルディアには確かに効果があったようだが、今はそれどころではない。

 

 なんせ、その水がこちらへとやって来ているのだから。

 

「バッカ野郎ッ! 加減しろって言っただろうがッ!」

 

「だ、だってだって! 私最近コイツの所為でロクなクエスト受けられてないのよ!? 腹も立つじゃない!」

 

「クソッタレがッ! お前らッ、俺の後ろに逃げろッ!」

 

 ポンコツアクアに悪態を吐きながら俺は咄嗟に呪文を唱える。このままでは俺達がこの水に流された挙句後ろの壁が崩壊しちまう。そういう答が出た俺は魔力を最大限に高めながら詠唱を始める。

 

「闇を祓いし氷雪よ、光すら封印()ざす氷晶よ。極寒にして凛冽(りんれつ)なりし絶対零度の氷結魔法。我が呼び声に応え、我が許にて顕現せよ。仇為す全てを凍て尽くす、六花の加護をここに! カースド・クリスタルプリズン!」

 

「ガハッ……!?」

 

 体に負担をかけながらも咄嗟に放った氷結魔法。それは、今まで放ったものとは全くの別物だった。

 

 天高くまで出来上がったそれは、氷山と言われても信じられる程の大きさにまでなっていた。草木も何も見境なく辺り一面を全て凍り尽くして氷の海となり、ベルディアはその中へ完全に閉じ込められている。

 

「何だ、こりゃ……」

 

 誰かが呟く。俺も思う。予想外なんてもんじゃない。完全にマンガでしかの見ないような状況じゃねぇか。

 

「アイツ、もう死んだんじゃないのか?」

 

 普通ならまず死んでいる。というか、いくらタフなコイツでも死んでいる気がする。

 

「凄いわね……私、前こんなのに凍らされたんだ」

 

 その中でアクアだけは平常通り物珍しそうにその惨状を見ている。いや、元はと言えばお前が原因だからな? 何他人面してんのお前。

 

「おいアクア、一応浄化しとけ。流石にこのままは不憫過ぎる」

 

「それもそうね。セイクリッド・ターンアンデッド!」

 

 アクアが唱えたその呪文を最後に、ベルディアの姿は完全に消滅した。これで、街の危機は去っただろう。

 

「オォォォォ!!」

 

 その事実を皆が理解した瞬間、冒険者達は喜びの声を上げる。

 

「すげぇぞアイツ! ほぼ一人でデュラハンを倒しやがった!」

 

「何者だアイツ!?」

 

「これで安心して過ごせるぞ!」

 

「……何か、目立っちまったな」

 

「仕方ないですよ。なんせ魔王軍の幹部を倒したのですから」

 

 何だか戦ってる時より気が重い。俺はもうちょっとひっそりと暮らしたいんだけどな。

 

『お疲れさん』

 

『おつかれ!』

 

「おう、お前ら」

 

 いつの間にか小さくなって近くに来ていたセツ達は俺の肩に乗って俺を労ってくれる。何か、コイツらに頼らなくても良かった気がするな。

 

「じゃあ帰るかお前ら。飯買いに行くぞー」

 

『わーいご飯だー』

 

『アタシ今日はマグロの気分だよ』

 

「あぁ、分かった、マグロな。今日は手伝ってもらったからちゃんと奮発してやるよ」

 

 俺はそう言ってセツとユキを撫でてやる。帰ったら更に撫でまわしてやろう。

 

「和真達もありがとうな。多分初めて全力出せたわ」

 

「今まで全力出してなかったのかよ……いや、それよりもお礼を言うのはこっちだよ。俺らの代わりに戦ってくれてありがとうな」

 

「私からも、ありがとうなハチマン」

 

「あれ、お前今日居たっけ?」

 

ふと、今日あまり見た覚えがなかったダクネスを見てそんなことを思う。というか普通に声に出していた。

 

「い、居たは居たんだぞ!? ただ、出番がなくてな……」

 

 そう言ってダクネスは恥ずかしそうに俯いている。そういえば、コイツ攻撃出来ないしアイツも大した攻撃やってこなかったからコイツ出る幕なかったのか。

 

「ハチマン! 後でギルドでお酒を奢ってもらうわよ!」

 

「一回指示聞かなかったから二杯までな」

 

「なぁんでよぉぉぉぉ!?」

 

「いやお前の所為で今からあれ片付けなきゃなんないんだけど?」

 

 俺は胸ぐらを掴んでくるアクアを離しながら先程出来た氷山を指差す。一気に溶かしたらとんでもない爆発とか起きそうだからな、ゆっくり溶かしていくしかないのだ。

 

「あれを何とかしてくれるんなら何だって奢ってやる」

 

「……すみませんでした」

 

 まぁ無理だよな。そんな手間をかける奴に奮発する金はない。というか、むしろ俺に多大な迷惑をかけたのに奢ってもらえるだけありがたいと思って欲しい。

 

「あの、ハチマン」

 

「ん? どしためぐみん」

 

 声がした方を見てみれば、何やら浮かない顔をしためぐみんが立っていた。この空気の中で何故一人だけ浮かない顔をしているのだろうか。

 

「その……私の代わりに行ってくれてありがとうございます」

 

「あぁ、それね……」

 

 思えば、こちらの世界の人間から見れば俺の行動は褒められるものではないんだよな。

 

 どうも、俺はどこでも、誰かを心配させなきゃいけないみたいだな。

 

「別に、俺が腹いせしたかっただけだ。気にすんな」

 

「いえ、今回は完全に私の所為ですし……何かお礼をしたいのですが」

 

「いや、本当に気にしてないから」

 

「それでは私が納得出来ません!」

 

 そう言って詰め寄って来るめぐみん。全然そんなつもりなかったんだがなぁ。

 

「さぁ、何かないんですか? 一つだけ何でも言うこと聞くとかでも良いですよ」

 

「なんでお礼をする方がそんなに偉そうなの?」

 

 どうしよう、特に何もないんだけど……。あ、そうだ。

 

「じゃあめぐみん、一つ頼まれてくれないか?」

 

「何でしょうか? 何でもと言った後で何ですが、エッチぃのは無しですよ」

 

「俺を何だと思ってるんだよ……俺の頼みは――」

 

「ふむふむ……マジですか?」

 

 めぐみんは俺の要望を聞いて少し引いている。やっぱ駄目かな。駄目だろうな。俺でも引くわ。

 

「別に嫌なら別のを考えるが、多分セツ達の相手頼むくらいだぞ?」

 

「……分かりました。その頼み、聞き入れましょう」

 

 おぉ、マジか。駄目元でも言ってみるもんだな。こりゃ明日が楽しみだ。

 

「じゃあ、めぐみんの気もすんだことだし、ギルド行くぞ。折角だ。和真達も奢ってやる」

 

「え、良いのか!?」

 

「嫌なら良い。俺の気が変わらん内に早くしな」

 

「おうっ! おいお前ら、さっさと行くぞ!」

 

「良いのかハチマン? 私今日は本当に何もしてないんだが……」

 

「一人だけボッチで何も食べないで良いならどうぞご自由に」

 

「クゥ……悪くない! どうしよう、カズマ!」

 

「いや知らねぇよ……」

 

 こうして、俺達はその後ギルドへ向かい宴を開いた。魔王軍幹部を倒したとあって、今日はギルドで奢ってくれるらしく、俺の気遣いは無用となってしまったが。

 

「ほらよ」

 

『おぉ、こりゃ美味そうだね』

 

『これ食べて良いの?」

 

「あぁ、好きなだけ食べな」

 

 まぁ、コイツらの食費が浮いたのは、嬉しい誤算かもな。

 

『ちょっとハチマン、いい加減離しとくれ』

 

 嫌がるセツ達を撫で回しながら俺はそんなことを思う。

 

 ”緊急クエスト ベルディア討伐 成功”

 

 ”特別報酬 参加冒険者への臨時報酬”

 

 そういえば、どうやら俺にだけ何故か別の報酬が渡されるらしい。

 

『いい加減にしな!』

 

「いってぇ!?」

 

 コイツらが自由に食べれるくらいには、報酬が入って欲しいものだと、撫ですぎて噛まれた手をさすりながら、俺はそんなことを思う。

 

 ”比企谷八幡 ベルディア討伐の懸賞金 三億エリスの贈呈”




いかがでしたでしょうか?
個人的に八幡の喋り口調が変わってしまっている気がしてなりません。多分そのうち納得がいくものに修正するかもしれません。
あと、今回でストックが切れたのでもしかしたら一週間以内の投稿はキツイと思われます。待ってる方、本当にすいません。多分月一くらいしないと作者が倒れます。
出来るだけ早く、誤りのないように次話を作りますので、待っていて下さい。
感想等、お待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。