拙い文章ではありますがお楽しみいただけると幸いです。
ここはダイアゴン横丁にある紀元前382年創業高級杖メーカーのオリバンダーのお店。イギリス中の魔法使いならば一度は来たことある知らぬ人などいないお店だ。そんな由緒正しい、悪く言えば古臭いお店には似合わない少女が店内にいた。魔法学校のホグワーツの入学前で客としてなら違和感がないであろう。しかし少女はカウンター内に座っており書物を読んで時間を潰していた。ゴミゴミとした店中で肩まで届いている銀の髪を時折耳にかけページを捲るしぐさは一種の芸術品を思わせるものである。
本を読みふけっているとドアの鈴が鳴ったので名残惜しながら読んでいる本にしおりを挟みながら読むのを止め、とびっきりの営業スマイルをうかべお店に入ってきたお客さんを迎えるために奥にいるお父さんに声をかける。
「いらっしゃいませ! オリバンダーの杖店へようこそ。杖をお求めですよね? 今店主を呼びますので少々お待ちください……おとーさーん!! お客さんだよ!」
わたしがそう声をかけると壁にかかった梯子をスライドさせて奥からお父さんがやってくる。いつも思うのだけれど床にも杖箱が散乱して散らかってるのに一度もぶつかったり、踏んだりしないのが不思議なんだよね。
「エリサよ、呼んでくれてありがとう。気が付かないところじゃったよ。おぉ、これはブライアンさん、今は魔法局に勤めていると風の噂で聞いておるが達者かのう? そなたの杖はヒイラギにドラゴンの琴線、一見普通の材料なんじゃが癖があって頑固な杖でな。はてはて……今日はどういったご用件でしょう?」
楽しそうにお客さんと話すおとうさん。ここまでくれば分かると思うけれどおとうさんの名前はギャリック・オリバンダー。このダイアゴン横丁で杖を販売している杖職人だ。そしてわたしの名前はエリサ。エリサ・オリバンダー。名前の通りオリバンダーの娘だ。とある事情でちょっと変わった親子関係だけれども仲のいい親子だと思う。
ちなみにお父さんは売った杖とその人のことを全員覚えているらしいんだけれど凄いよね。私もお店に来たお客さんを覚えようと真似するけれど、とてもじゃないけどできなかった。
どうやらお客さんーーブライアンさんーーは職務中に同僚の呪文が暴走して杖が折れてしまったみたい。いい杖だったのに残念だと悲しそうに言い、お客さんに合う杖を探しに奥へと入っていった。取り残されたわたしとブライアンさん。彼がわたしのことをチラチラと見てきてそのまま本を読むのも居心地が悪いので声をかけようかな、店番の仕事もしないとだもんね。
「わたしの事、気になります?」
苦笑しながら問いかけると驚きながらも頷きこちらに向き直るブライアンさん。
「オリバンダー卿に娘がいるとは聞いたことがなくてね、気になって盗み見してしまったんだ。気に害したのなら謝るよ」
「気にしないでください。よくあることなんで慣れてます。娘といっても養子なんですわたし。お父さんが杖の材料を求めて旅してた時に赤ん坊のわたしをネムノキのそばに放置してあったのを見つけてくれたんです」
そう本当によくあることなんだ。このお店にくるのは多くても人生に数回しかなくて来るときも杖が折れたか子供が11歳になってホグワーツに入学するとき位、つまり凄い長い間お店に来てなくて久しぶりにきたら女の子が店番しているのだもの。珍しいの仕方ないと思う。そう思いながら答えると罰が悪そうに彼は頭をかいて謝罪してくる。
「それは……その……すまないことを聞いた……。申し訳ない」
「赤ん坊だった頃なんでこれっぽちも覚えてない時なんで、大丈夫ですよ」
ケラケラ笑いながらわたしは答え返す。覚えてないと言った実は嘘。本当を言うと大きな翼の生えた馬がお父さんに見つけてもらうまでそばにいたのを覚えている。けれど以前これを話したら怪訝な対応をされたので、それ以来そのことを言うのをやめたんだ。
「はてさてではこの杖を試していただけるかな? ――――――」
「ありがとうございましたー!! 」
新しい杖を手に入れたお客さんを見送り終え、オリバンダーから昼食のお使いを頼まれたエリサは数枚のガリオン金貨を握り締めダイアゴン横丁に駆けていく。父であるオリバンダーが難しい顔をその姿を見ている事に気が付かずに。
ブライアンさん、杖を同僚に折られたかわいそうな人。