おとうさんは好きなほうを選んで良いと言ってくれた、箱の中で保存してても、杖をつくってもいいって。もしこの羽たちを取っておけば、いつかわたしの事が何か分かるのかもしれない。
そして杖にしないんだったら、わたしはこのお店の中の杖に選んでもらってそれをホグワーツで使えばいいんだと思う。おとうさんが作る杖はどれも最高のものばかりだから問題ないしね。けれどわたしは……。
「……うん。決めた。この羽たちで杖つくってくれる?」
「いいのじゃな?」
「このまま置いておいてもこの子達がかわいそうだしね」
「お前の手がかりになるのかもしれんのだぞ?……それでもいいのかい?」
「うん。大丈夫。それに、この子達と一緒にホグワーツに行きたくて仕方がないんだ」
「分かった。そしたら――」
「あ、一つだけお願いがあるの」
「ふむ、言ってごらんなさい」
「その杖を作るところを見せて欲しいの。……ダメかな?」
黙り込むおとうさん。沈黙がすごい怖い。実は言うと、おとうさんは私に杖を作るところを一度も見せてくれたことがない。よくおとうさんがお休みの日に、お店に降りるから工房がお店の中にあるのは分かるんだけど。どこにあるのかすら、知らないんだよね。
昔何度か見せてくれないかお願いしたことがあるけれど、どれも断られちゃった。
「作ったことを見たことも、作り方も誰にも言わないから! お願い! この子達が杖になるところをみたいの……」
おとうさんの杖の作り方は他の杖職人が羨むほど特殊。今でこそ多種多様な芯材と木材が使われているけど、大昔はケルピーの鱗茎の茎を包んだりしただけのものだったらしいんだ。
それを先代達のオリバンダーは変え、そしておとうさんは選別された木材と、芯材を選び今まで抜き杖を作ってる。そんな中、重要な事をわたしはお願いした。十中八九無理なことを。それにお願いしておきながら無理だろうな思って――
「わかった。見せよう」
「え? え?? いまなんて?」
わたしの聞き間違いだろうきっと。うん。そうに違いない。だってこんなにあっさりオーケーされるなんて――
「よいぞ、見せてあげよう」
あれ?聞き間違いじゃない?
「ほんとに?」
「本当じゃ」
「ほんとの本当に?」
「本当の本当じゃ。なんじゃ?不満なのか?せっかく見せてやろうというのに」
「だって杖作りの神秘だよ!? 企業秘密でしょ!? 商売道具なんだよ!?」
そんなに簡単に見せていいものなの!?
「そうじゃが、別に悪用したりするわけじゃないんだろう? かまわんさ」
「だって昔お願いした時にダメだっていったじゃん!? 今回もダメだと思ったのに!」
おとうさんは知らないだろうけど結構ショックだったんだよ!?
「工房は危ないものもあるからの、勝手に触って怪我したら危ないからダメだと言ったのじゃ」
「……秘密だから見せてくれないのかなって思ってた」
「確かに他業者には秘密じゃが、家族なんだし、見せるだけならかまわんさ」
絶句しているわたしを置いてきぼりにして、おとうさんはお店の奥――私には触らせてくれない戸棚の前――にドンドンと歩いていく。
「どうしたんじゃ? エリサ。ゆくぞ、ついておいで」
「ふぇ? え? もう作るの!? それにお店は!?」
「今日はもうお客さんこないだろうし、すでに閉店の看板をだしてあるか大丈夫じゃよ」
気のせいかもしれないけれど、おとうさんウキウキしてない?
「ほれ、エリサ。はよ来なさい」
やっぱりすごいウキウキしてる気がする。って、急がないと!
戸棚の前まで行くと、おとうさんは待ちきれないとばかり戸棚にある杖箱の1つを取り出した。
「その戸棚って強力で危険な杖が置いてるんじゃ?」
「確かにそういう杖も置いてあるよ。人を魅了し堕落させようとする杖や、使用者の命を魔力として削り魔法を使用する杖もある。だからこの戸棚は勝手には触ってはいけないよ?……けれど置いてあるのは杖だけじゃなくて、もうひとつ秘密があるのじゃ」
ニコニコしながらそう言うと、おとうさんは取り出した杖箱を別の場所にしまった。すると戸棚が震え出し、ゆっくりと地面に沈み、奥には地下へと進んでいる階段と壁に設置された明るい松明が見えた。所謂隠し扉ってやつだけど……お店にこんなギミックがあるだなんて。一体何を考えているのだろう。頭が痛くなってきたよ……。
「さ、行くとするかの」