剣豪将軍の孤独なグルメ   作:鳥辺野

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始まりはやっぱりここから。


001:千葉県某市ファミリーレストラン

「はいはい、分かった、分かった、読んどいてやるから。」

 

我が戦友、八幡は我が苦心して書き上げた新作ラノベのプロットを受け取ると、あのいつもの濁った眼を若干さらに濁らせながら面倒くさそうに答えた。八幡はいつも我のことをぞんざいに扱うが、きちんとプロットや原稿に目を通してくれ、アドバイスまでしてくれるなかなか頼もしい奴なのだ。クラスでは文化祭での一件以降八幡を悪く言う輩がいるが、我や戸塚殿は本当の八幡のを知っておるのだ。

 

「なんだよ材木座、まだ用があるのか。今日、俺は予定あるんだが。」

 

おっと、我としたことが人の前で隙を見せてしまった、気をつけねば。この後、サイゼにでも誘って、今季のアニメを談じようかと思っていたが、先約があるのでは致し方ないここは辞めよう。大方奉仕部の面々での約束なのだろう、ここは八幡をのためにも。気遣いの出来る男、剣豪将軍はクールに去るぜ。

 

「けぷこん、けぷこん。これは失敬。わが渾身の作品も渡すとしたし、われはこれにて去るとしよう。雪の下嬢と由比ガ浜嬢によろしく伝えておいてくれたまえ。それでは、諸君、サラダバー。」

 

八幡に別れを告げ、かっこよく我が学び舎を後にした後、我は目的もなく何気なしに歩く。

桜の花びらを躍らせて春の風が我に吹きすさび、我が愛用しているロングコートに花が当たり地面に落ちる。

落ちる桜に道路は瞬く間にピンクの洪水になった。嗚呼なんという風流、日本に生まれてよかった。

しかし、なんだか満たされぬ。落ち行く日の肌寒さに心に穴が開いたような虚無感を感じる。

むむっ、これは、次回の作品のネタになるやもしれぬ。風流に生きるもどこか、暗い過去を背負った主人公、ある日魔術結社に追われる美少女を助けて、戦闘中にどんな魔法をも打ち消す能力に目覚める、、、なんだか途中から他作品と混じった気がするが、今日の我は調子がいいぞ、早速目の前にあるサイゼで研究に勤しむとしよう。

どんな些細なひらめきも無駄にしない我、もう頑張り屋さんなんだから。

 

 

 

勝手知ったる我が家といっても過言ではない、このファミレスはその名の通り家族連れはもちろん、暇を持て余す学生たち、ひいては我や八幡のような孤高を愛し、また愛されたソロプレイヤーまでもを優しく迎え入れるのだ。

我はいつものごとく、ドリンクバー付近かつトイレに遠すぎず近すぎない(トイレ付近は意外と人往来が凄くて、我の思案を妨げる場なのだ。)ベストプレイスに腰を下ろす。席に座り店内の客やコンディションを確認してから、オーダーに思考を傾ける。ここで焦らずじっくり自然体で注文を考えるのが、我の剣豪将軍としてのポリシーもとい信条なのだ。

ふむぅ、ドリンクバーは確定として、今回は早めの夕餉としゃれこもうか。そういえば、いつか見た漫画の中で主人公の波紋戦士の好敵手と初めて出会うシーンでイカ墨パスタがでてきていたな。

ふむ、今日の夕餉はイカ墨パスタ、それとなんだかよくわからないがセットのふぉかっちょなるものも頼んでおこう。なかなかトレンディな夕餉になったな、まあ良きかな、良きかな、流行に敏感な男、それが我なのだ。

 

 

 

剣豪将軍流ディナー

・イカ墨パスタ:黒い、黒い、ただ黒い。量は見た目少な目。

・セットフォカッチョ;形の整ったナンのようなパン、いい匂い。

・セットドリンクバー:まず初めの一杯目は定番のコーラから。氷は入れずになみなみと。

 

 

いただきますと一言、そのあと眼前に置かれたブツと対面。

うーむ、頼んではみたものの、やはり黒い、分かりきってはいたが黒い、なんだか熱したプラスチックみたいだ。ちゃんと食えるのだろうか。いかんいかん、剣豪将軍たるもの自らの選択には責任を持たねば。まずは左手に緊急時用のコーラをスタンバイさせたままで、いざ一口、、、、、うん、なかなかいけるではないか、見た目が黒いだけで味は悪くない。むしろ、今まで食べてきたパスタ料理の中でも高位の味、先ほどの葛藤はとんだ無駄だった。

イカ墨で黒く染まったであろう口の中をコーラでリセットして、次はふぉかっちゃなるものに移ろう。

見た目は普通のパンだが、これは何かにつけて食べるものだったのだろうか、なんだかこれだけ食べるのも寂しい気がする。まあ、食べてみる、、、もっちり感とパンの甘さがいい、うまい、というか我が求めていた味だ。あっぱれ、ふぉかっちょ、その名に劣らぬ素朴な味見事なり。昨今の女子どものおしゃれランチなぞはけしからんと軽んじていた我だったが、これからは少しずつ試していくのもよいかもしれぬな。これは追加を頼むとしよう。

 

 

 

 

追加のふぉかっちょを平らげて満足した後、新作ラノベのアイディア出しをしていたら、結構な時間になってしまった。そろそろ、我が家に帰るとするか、、、、、、っむっ、八幡が通ったではないか。何やら落ち込んでいる様子、戦友の窮地をほおってはおけぬ、この剣豪将軍、材木座義輝、いざ参る。待って、無視しないで、こっちを向いてはちまーん。

 




読んでいただきありがとうございます。
クロスオーバーと銘打っておいて、出来なかった。なにはともあれ第一話、渡渡先生の「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」より某ファミリーレストランでした。なんだか、材木座の口調、あのキャラがぶれる感じが難しいです、書いていて楽しいですが。
昨今のファミレスは料理もおいしくて、店内もきれいで、なんだかグレードが高いレストランみたいですよね。だけど、値段はお手頃で今回の材木座みたいにちょっとした冒険が出来ちゃって、なんだか素敵だと思います。
おそらく次回からは、クロスオーバーしていく予定です、投稿はいつになるかわかりませんが、気が向いたらまた見によって来てください。
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