剣豪将軍の孤独なグルメ   作:鳥辺野

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なんだかとっても期間が開いてしまいましたがどうぞごゆるりと。


003 :冬木市某家のお昼ご飯

寒くてつらい。冬になると何だか気分が沈んでいきがちだが、さりとて家に引きこもるのでは本当に鬱になってしまうと自らを叱咤激励して外に出ていく毎日である。

肉がある(世間一般では太っているとも云う)我を見ると、よく下賤の輩がやれ、「寒さに強そう」だの「ミートテック」だのとほざくがこれは全くの検討違いであって、我も人並みに寒さに肌を震わせる。寧ろ運動部の無駄に筋肉を育てることに日々を費やしている者どもに比べてみれば、発熱量の観点から見て我の方が寒さには弱いのではないかと思うのだ。

我ほどの人物ともなるとあくせくと汗水たらす肉体労働よりは、考えに考え抜く頭脳労働の方が多くなる故、此れも仕方ないのである。

そんなこんなで剣豪将軍たる我はとりとめもない考えに頭を動かしつつ、今日も今日とて昨日の雪がまだちらほらと残る道をいつものごとく散歩しているのであった。

 

 

ふらりふらりと歩いていたら知らない街へ出ていた。

見慣れぬ街というものはなんだか雰囲気が全く違う感じがするもので、どことなく人の顔やにおいまでもが珍しく、無性に焦燥感の様な孤独感と幼少期の様な遠足のワクワク感が入り混じった心境になる。今すれ違ったご婦人なんかは、外国人なのか紫の長髪が大変キレイで服装も季節外れのボディコンだ!武士としてあまりじろじろは見ないようには努めるが、それでも我も男、仕方なく目がいってしまったので謝罪も込めて軽く会釈をする。アイマスクの様なものをつけていたが、前は見えているのだろうか。

 

冬木市(電柱の標識で確認した)という町には、全くの縁がない。この知らない街を征服つもりで歩き回っているとどうしたことか先ほどまでの楽しさは立ち消え、寂しさの様なものが心の奥底から湧き上がってきた。男は孤独に生きるものとはいえ流石に休日を、花の高校生が一人で散歩し続けるのは客観視してみると哀愁漂う。

はちまんを呼べばよかったかな。と逡巡したが、即座に首を振る。真のおたくは群れぬものだ。それにラインとか事務連絡以外に使ったことないから使い方が若干わからない。以前はちまんに連絡を取った時は音ゲー中に通知を出させてしまい、ガチギレされたこともあるしな。

 

何だか気分が沈みに沈むが何とはなしに歩く。すると目の前にはちきれんばかりの大きなレジ袋をいくつも抱えた吾人がふらふらと歩いてくるのが目に入る。メトロノームの針のようにふらりふらりと道を左右に揺れる彼が、その袋の一つを落としかけたので、もののふとしてつい手を貸してしまった。

 

「あ、あ、あいやそこのお方。大丈夫かな」

 

「うおっ、びっくりした。卵割ったかと思ったぜ、どこの誰だか知らんがサンキューな」

 

多少噛んでしまったがっ格好よく救いの手を差し伸べた我は、荷物に視界をふさがれた彼の感謝に気分が乗ったので、他の荷物を受け取り彼の家まで送ることにした。

 

「へえ、お前、材木座っていうのか。剣豪将軍?セイバーみたいだな。後で遠坂に聞いてみるか」

 

「聖杯、ふむふむおぬしもなかなか大変なものに手を出しておるのだな」

 

道行く中で彼が話し言葉から同胞だと分かった我は、畳みかける様に中二トークに花を咲かせていった。最初は聖杯やら、魔法やらに我が理解を示したときに警戒を強めていたが、同じ業(中二病)を持つものとして最大限の共感をもって接したらすぐに意気投合した。

家まで荷物を運ぶと彼の好意で昼食をごちそうになることとなってしまった。我は彼にただならぬシンパシーを感じたためその申し出を受け入れることにした。

家につくと先ほど話していたセイバーといっていた金髪の少女が走り向かいに来たので軽く礼をした。彼に向かい入れられるままに、家にお邪魔して、炬燵で暖を取りつつ先ほどの少女と彼の料理を待つこととなった。

なんというか驚くほどの美少女であるが、先ほどから我を分析するように凝視するのでたまらず先ほど彼が言っていた話を持ち出した。

 

「おぬし聖杯の案件に巻き込まれておるとか聞いたが、、、」

 

「あなた何者ですか」

 

我の一言に警戒心を一層強くした彼女は、鋭い目で我を睨みつつ何かを突き立てるかのような動作で我に対峙した。

なるほど、彼女も同胞であったのかと納得して。安心した我も本領を発揮していくことにする。

 

「わが名は剣豪将軍義輝であるぞ、我には争う気はない、刀を納められよ」

 

ノリノリで言うと彼女は一瞬眼を丸くして驚いたものの、次の動作に移る矢先に赤髪の少年が素敵な品々を乗せたお盆を運んできたため、気を取り直し佇まいを直した。

 

「セイバーとも打ち解けたみたいでよかったよ、粗末なものだけど良かったら食べてくれ」

 

青年はそう笑顔で言って、炬燵はおいしそうな品々で埋め尽くされた。

 

 

 

・ごはん:炊き立てホカホカ。これがなくては始まらない。

・お味噌汁:ネギに豆腐。シンプルだが食卓を調和してくれる。

・かぼちゃの煮物;良く染みている。素朴でいい。

・生姜焼き:豚料理の不動の王様、家庭料理の定番。

 

 

頂きますときちんと一言。そして、まずはお味噌汁を一口。うむ、美味しい。

お味噌汁は地域性がとその家庭の味がもろに出るだけに料理人の腕を見る試金石になってしまう、しかしこのお味噌汁は出汁も味噌も素朴ながら丁寧な味がする。

これに気分がよくなって箸を進める先は、メインの前にかぼちゃの煮物。

口に入れるとじんわりと優しい甘みと塩っ辛さが広がる。我、個人的にはこれでご飯は食べないタイプだが、ごはんによく合うと即座に分かる逸品だ。

しばらくの間ごはんを残しつつ、こ奴らを食べ勧めていき。水でいったん口を直してから、今回のメーンに挑むとしよう。

生姜焼きを食べる。

生姜焼きとは何だろうか。和食かといわれれば、おそらく分類上そうであろうと思うが、この料理には分類なんかを超えたおいしさ、なつかしさがある。母の味というか家庭の味というか、もう絶対に美味しい、約束された満足の逸品であると思う。

ただ満たされるという幸福に浸っていると、隣の少女もすごい勢いではあるが同じく食事を楽しんでいるようだった。

 

 

 

ごちそうさまでしたといった後には、出されたほうじ茶茶で胃を落ち着ける。

嗚呼、日本に生まれてよかったと素朴な安堵に身をゆだね。しばし、リラックス。

しばらく後、長居は無用と切り出し彼らの家を後にした。

 

 

和食を食べた後の一種の安心感と充実感に幸せを感じながら、歩く帰り道には先ほどまでの寂しさは無かった

 

 




どうもこんにちは。和食を食べると落ち着きますよねという事で今回のお話でした。
スマホでもお世話になっている方も多いあのシリーズから二人に出てきていただきました。
クロスオーバーは、キャラ同士を極力接触させないという昔からの個人的信条を打ち破ってしまいましたがいかがでしたでしょうか?
今回は俺ガイル要素が少なかったですが、楽しんでいただけたら幸いです。
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