軽文ストレイドッグス 閑話   作:LUNARCLOWN

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 諸事情により、分割しました。よければ読んでください。




やはり亘航のサークル見学はまちがっている~わたるクラブ其ノ壹~

「サークル見学?」

 

 精一杯の不機嫌な表情を作って聞き返して見るが、俺の目の前にいる奴はキョトンとした顔を返してくるだけだった。だから、そういうのは女子がやるからいいんであって、男子がやるべきではないんだよ。しかもお前、設定年齢二十半ばだろ。なんで、そんなに違和感がねえんだよ……。おっと、設定とかいっちった、第四の壁を壊すのは俺の役目じゃねえのに。

 一人称とか話し方で気付いたとは思うが、語り部は西緒維新ではない。アイツの数少ない友だ………………知り合いの亘航である。他人事っぽく言ってみたが、まあ……俺のことだな。ちなみに俺の目の前で小首を傾げているのが俺と西緒の共通の知人である猪上堅二だ。

 ぼっち気質の俺や西緒と違い、リア充的な気質の持ち主である猪上は、ゼミの飲み会やサークル活動に積極的で、今も俺をサークルの見学に誘ってきている。……しかし、あれだな、何で俺らと一緒にいるんだ、コイツ? 正直、真反対な人種だと思うんだが。

 

「頼むよ、この時期は最低でも一人一名以上サークル見学者を連れてくることって決められててさ」

 

 手を合わせて頭を下げる猪上。元々の身長が俺より低い上に、頭を低くしている分、上目遣いみたいな形で俺を見てくる。だから、そういうのは男子じゃなくで女子がやるもんだと何度言えば。

 

「いや、だから何で俺なんだよ……お前なら他にも知り合いがいるだろ」

 

「……………………えーっと……その、あっ、僕の知り合いって殆どサークルに入ってる人ばっかりだからさ」

 

「『あっ』て言ったろ今」

 

 『あっ』て何だよ、誤魔化すの下手すぎるだろ……。もうこの時点で嫌な予感しかしない。俺の嫌な予感はよく当たるんだ。ミサトさんが使徒の落下地点を予測するくらい当たる。……当たるか外れるかよく分からんなこの例え。

 

「頼むよ……航が一番頼みやすいし、何より気が楽だしさ」

 

 そう言ってまた深く頭を下げる井上。ここまで言われると少し断り辛いものがある。小中高とぼっちを経験してきた俺は、こんな風に誰かに頼られることはなかった。すなわち、断るという経験値も不足している訳であって……だから、これから言うことは、けして情にほだされたとかそんなんじゃない。

 

「しょうがねえな……見学だけな」

 

 俺のそんな言葉に、猪上は心底嬉しそうな笑顔で頷くのだった。……だからそういうのは女子が……まあ、いいか。

 

 

 

 

 

 処変わって部室棟。その廊下を猪上と適当な事を駄弁りながら歩いていく。ズラリと並ぶ扉とその上にまたは横に、もしくは扉自体に書かれたサークル名を横目に見て、ふと、大事なことを聞き忘れていた事に気が付いた。

 

「そういや、お前の入ってるサークルって何なんだ?」

 

 こうやって部室棟に来ているって事は文化系のサークルなんだろうが、身体を使う奴だったら即却下だ。あと小難しい奴も却下な。部室入った瞬間、ロジカルシンキングで論理的な思考を行いシナジーを高めていこうとか言ってくる奴がいたらダッシュで逃げる自信がある。いや、コイツが入ってるくらいだからそれはないか。ロジカルシンキング(笑)出来そうにないしな。

 訊かれた猪上はちょっとだけ考えるような仕種をしたあと、ヘラッとした、しかし人好きのする笑顔を浮かべた。

 

「言うなれば総合ゲームサークルってとこかな。ゲームをしたり、ゲーム品評や紹介の小冊子を作ったり、簡単な奴だけど、たまにゲームも作るよ」

 

 ほう、意外と面白そうだな。SNS部とS.M.L.編集部を足して二で割ったみたいな感じか。初めの頃はまさか幸地さんと付き合うとは思わなかったな……実家帰ったときにでも読み返してみるか。

 そんな風にまだこっちに持ってきていない漫画と、愛しの妹が居る実家に想いを馳せていると、どうやら目的地に到着したらしく、猪上が一つの扉の前で立ち止まってこっちを見てきた。

 

「ようこそ、我らが『ぴーかぶー』へ!」

 

 そう言って怪しい発音でサークル名らしき名前を言った猪上の指す扉には、A4用紙が貼り付けられていた。書かれている言葉は実にシンプル。『総合ゲームサークル Peek a Boo』

 

「Peek a Boo……」

 

「そうそう! 日本語に直すと……何だっけ? サーチアンドデストロイ?」

 

「何で英語を英語にしちゃうんだよ……」

 

 なにコイツ、日本語の定義から怪しいの? よく大学入れたな。百周くらい回って感心するわ。

 

「あ、そっか、サーチアンドデストロイじゃあかくれんぼになっちゃうもんね」

 

「ならねえよ! どんな過酷な幼少期を送ったらかくれんぼがサーチアンドデストロイになるんだよ!」

 

 隠れている奴を見つけ出すまでは合っているのだが、いかんせんその後の行動が違いすぎる。ちなみにかくれんぼは英語でhide and seekだ。

 

「Peek a Booはいないいないばぁの意味だよ……」

 

「それそれ! 凄いね、航は何でも知ってるね」

 

「何でもは知らねえよ、お前が知らなすぎるだけだ……」

 

 何だかどっか巨乳委員長さんみたいな台詞になってしまったな。ちなみに俺は三つ編み眼鏡の頃の方が好きだったりする。しかし、相変わらずコイツは一般常識というものが欠如している。まあ、いないいないばぁの英訳が一般常識かどうかは置いといてだ。

 何やら抗議の声を上げている猪上を無視してドアノブに手をかける。ゲームサークルか……どうせ何とか木座くんみたいな太っちょ眼鏡のワナビ野郎が集まってるんだろうなあ……想像するだけで暑苦しそうだ……。まあいい、少し覗いて帰るだけだ。少し覗いて帰るだけ。

 そんな事を考えながらドアノブに軽く力を入れて押すと、中から野太い声が聞こえてきた。

 

「「アウトォ!! セーフッ!! よよいのッ

 

 パタン。

 気のせいかな? 屈強な狂戦士(ベルセルク)がいた気がしたけど……。何かヴァルハラか何処かに続く扉でも開いちゃったかな? いつの間にどこでもドアは実用化されちゃったのん?

 後ろにいる猪上は扉を開けて直ぐに閉めてしまった俺を、不思議そうな表情で小首を傾げながら見てくる。いや、そんな可愛い反応されても……あ、可愛いって言っちゃったよ。

 

「どうしたの?」

 

「いや、何か変なものが見えた気がしてな……」

 

 いや、見間違いだろ、見間違い。だって大学の文化系のサークルの部室で、屈強な野郎共が、

 ――ガチャリ。

 

「「よよいのよいっ!!!」」

 

 ――野球拳をしてるなんて。

 

「………………………………」

 

 見間違いじゃない……だと……!?

 

「改めて、ようこそ我らが総合ゲームサークル『ぴーかぶー』へ」

 

「いや、待て待て……なんでお前は平然としてるんだよ」

 

 何、何なの? もしかして俺にしか見えてないのこの地獄絵図(ヴァルハラ)は?

 

「え? あー、よく言われるよ」

 

 あ、良かった、俺にしか見えない新手の精神(スタンド)攻撃とかではなかったみたいだ。あれ? でも俺もスタンド使いじゃないから俺にも見えなくなっちゃうなこれ。見えなければ、良かったのになぁ……。

 

「文化系のサークルの身体つきじゃないよねみんな」

 

「そこじゃねえよ! いや、そこもかなりのツッコミ所なんだけど! なんでコイツら脱いでんだよ!」

 

 滅多に出さない大声で俺がツッコミを入れていると、俺の視界の端でじゃんけんに負けた金髪マッチョが最後の一枚を脱ぎ捨てていた。

 

「いつも通りだよ?」

 

 目の前が真っ暗になりそうだった。訳が分からない……いや、マジで何だよこれ、ゲームサークルってそういうアレな感じのゲームなん?

 

「みんなー、サークル見学者連れてきたよ!」

 

「待て猪上! 俺まだ状況の把握が済んでない!」

 

 しかし、俺の制止の声を無視して猪上は室内に入っていく。そして、猪上の声に反応して黒髪マッチョ(半裸)と金髪マッチョ(全裸)とイケメン細マッチョ(全裸)がこっちを向く。

 逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ。

 裸族共の視線に、本能的恐怖から沸き上がる危機感を覚えた俺は、某借金執事のように心中で唱えた。「逃げなきゃダメだ」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ! の精神である。つまりはどういうことかと言うと、

 

 全力で元来た道を走っていた。

 

 




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