この世界では考えられない錬金術を使って何が悪い   作:ネオアームストロング少尉

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青春時代に鋼の錬金術師を見ていた自分にとって、こう言った作品を書きたくなってしまうのは必然であったかもしれない。



一話

 『魔術』とは一体何か? 

 

 この世界では魔術を当たり前のように使い、当たり前として存在している。皆、一度は考えたハズだ。上記のような疑問を。だが、それも“当たり前だから”と言う言葉で簡単に解決してしまう。

 在って当然なんだ、と生を受けた時から受け入れている。

 

 しかし、自分は違う。

 

 なぜなら、そんな当たり前が()()()()世界を知っているからだ。

 

 どうやら、自分はよく聞く『転生』と言うものをしたらしい。いや、もしかしたら『前世の記憶』と言うヤツかも知れない。とにかく、自分はこの世界の事を知っている。正確に言えば十五の時に思い出したのだが、あの時はとても驚いた。でも、なんとなくその現実に受け入れる事が出来た。

 だが、今の自分は昔の自分なのか? それとも、この世界で全くの違う自分なのか? 

 

 自分は自分で在って、自分では無い。

 

 そんな訳の分からない事で悩むぐらいなら受け入れた方がマシだし、この手の物はよく読んだり恥ずかしながらも想像した物だ。人と言うのは未知の世界を見たり読んだりすると、どうも旅心を募らせるものだ。それに、折角の第二の人生を楽しまなくてどうする。何分こっちの世界では憧れた事が再現できる可能性があるのだからやらなければ損と言うのだろう。

 

 しかし、やっていい事とわるい事があることぐらいは考えるべきだったと思う。

 

 何故、そんな事になったのか? どう言ったリスクがあるのか? 

 

 自分は知っていたと言うのに、なぜ過ちを犯してしまったのだろうか? 

 

 ジワリ、と血がカーペットに染み広がっていく。痛みで声を上げたくなるのを我慢して前を見れば、形容し難い何かがあった。失敗したのだろう。

 分かっていたのに……知っていたハズなのに実行してしまったんだろうか。

 

 …………いや、知っているからこそ過ちを犯してしまう事もあるのだろう。

 

 現にこうして()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 ~Ω~

 

 

 

 

 

 『アルザーノ帝国魔術学院』。創立およそ400年を誇る国営魔術師育成専門学校で、ここアルザーノ帝国の中でも最高峰の魔術を学べることで有名な学校である。そんな場所に自分は通っている。自分としてはそこらの町工場で働いて機械いじりをしていたかったのだが、実家が貴族な上に長男だった。しかし、それだけには留まらず、親が高級官僚と言う事もあり......まぁ、仕方ないと言えば仕方ない。この時代の当たり前だ。

 

 ともあれ、こう嫌々通っている訳でもあるがここ最近はとても楽しく通っている。ニコニコしながら行く自分を見て一歳違いの妹に気持ちワルがられ、母親にはガールフレンドが出来たのだと勘違いされる始末。お陰で父親に呼び出されるわで、面倒な事極まりない。

 少し脱線したが、楽しみになった理由は最近になってこの世界の事を思い出したのだ。

 

 読んでいたライトノベルの世界だと分かった時はとても興奮したし、今となっては転生できた事に嬉しく思う。だが、分かったのはいいが内容、話の筋書きなんかが殆ど思い出せない。

 確かに一回一通り読んだだけだが、こうも思い出せないのはおかしい。他の記憶は簡単に引っ張り出せると言うのに何故だろうか?

 .......考えられるとすれば、その記憶も持って行かれたかも知れない。

 

 まあ、先を知っていたら面白味が無いだろう。それに、今日から臨時講師が来るらしく、あのセリカ=アルフォネ教授が『優秀なヤツ』だと評価しているぐらいだ。妹が気に入っていたヒューイ先生と同じぐらいか上を行く人なのだろう。講師泣かせなんて呼ばれている妹のお眼鏡に適う人だと祈っておこう。

 

 ......。

 

 自習、と、でかでかと黒板に書かれた文字を見て、クラスの皆が唖然とする。流石に妹も何やら戸惑っているようで、その単語から別の意味を読み取ろうとしている。「え? じしゅ......え? じしゅ......う? え? ......え?」だが、自習は自習だ。それ以外に意味など無い。そんな中、講師のグレン先生はこう言った。

 

「えー、本日の一限目の授業は自習にしまーす」

 

 そして、その後に更に爆弾発言をした。

 

「......眠いから」

 

 と、ぼそりと呟いたのだった。その後に残るのは静寂である。沈黙とも言えるソレはこの空間を支配した。しかし、自分は笑いを堪えるのに必死だったが。そんな中、いびきをし出したグレン先生に妹が突進する様を見て我慢が出来なかった。

 

 

 

 

 実際、その授業は最悪の一言であったが日頃から余り真面目に受けていない自分にとってはとても嬉しい事であった。聞いても何も得られないもので時間の無駄なら他の事をすればいい。

 

 ようは、自分にとって好きな事が出来ると言う事で、絶賛ランランとした気分でノートに錬成陣を書いて行く。今自分はある錬成陣を研究していて、ちょうど、後もう少しで上手く行きそうなのだ。これが、出来れば誰しもが憧れ、そして、一度は真似したあの『指パッチン』が出来るかも知れない。

 

 そう思うと楽しみで堪らない。

 

 と、意気揚々とノートに考えを纏めていたら射殺すばかりの視線が前から突き刺さるのを感じて、顔を上げて見たら妹──システィーナが睨み付けていた。横を見ればルミアが苦笑いをしているのが見え、ふと、周りを見ればみんな唖然としていた。

 

 簡単に言えば『自習』をしていたのは自分だけだったようで、それをシスティーナは怒っているようだ。コレは、後から死ぬほど罵声を言って来るだろう。ただでさえ、日ごろから事あるごとに罵声を言ってくると言うのに.......。

 

 ならば、といっその事開き直って作業を続けた。勿論、火に油を注いだことになったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、もうっ!! 何なのアイツ!?」

 

「あはは.......まぁまぁ」

 

 ルミアが曖昧に笑いながらシスティーナを宥めるが、怒りが収まる気配が無い。

 

「やる気なさすぎでしょう!? なんであんなヤツが非常勤とは言え、この学院の講師なんてやってるのよ!? しかも、フォル(・・・)に限っては素直に自習するし、ああ、もう!!」

 

 思い出すのは、あの自習と言われすぐさま行動に移った愚兄だ。何の疑問も待たず当然のようにやり始めた事に理解できない。そもそも、小さい頃から理解出来なかった。自分の兄は『変人』だ。少なからず大貴族としてのプライドぐらいは持って欲しい、そのせいで親や自分がバカにされるなど迷惑極まりない。

 それに、ルミアもいるのだから少しは自覚のある行動をして欲しいものだ。

 

「そうやって勉強するから、いつも一位取るんじゃないかな?」

 

「何であんな......魔術を何とも思ってないヤツに負けるんだろう」

 

 ルミアが言ったことは正しいと言えば正しいが、システィーナは認めたくは無かった。変人で、訳の分からない研究みたいな事をして、魔術の事だってちゃんと考えていない。あの講師と似たようなヤツなんて──

 

「──本当に大っ嫌い」

 

「システィ......」

 

 表情を暗くしているシスティーナを見てルミアは居た堪れない気持ちになる。どうして、彼女がここまでして兄を嫌うかを理解した上でどう声を掛けていいか分からなかった。だが、システィーナは直ぐに気を取り直して、ほくそ笑んだ。

 

「これは、癒しが必要ね」

 

「システィ?」

 

 戸惑うルミアなんて気にせず背後に周り身体中をまさぐった。

 

「きゃっ!?」

 

「あー。やっぱりルミアの身体は気持ちがいいなー、肌は白くて綺麗で、きめ細やかで」

 

「ちょ、システィッ!? だ、だめだよッ!!」 

 

 と、それが起爆剤になったのか、女子更衣室ではあちらこちらで姦しく楽しく騒ぎ始めた。その後、グレンが更衣室の扉を開け、ひと悶着あったとの事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、と言うもの、とにかくグレン先生はやる気が無いようで黒魔術や白魔術、錬金術に召喚術から神話学、魔道学やら、色々な授業を担当したが、その殆どがいい加減で投げやりな授業であった。まあ、そのおかげで指パッチンの錬成陣は完成させることが出来た。

 

 理論上はこれで出来るハズだが、後は発火材となる、あの手袋を作らなければいけない。その材料を今考えているがこれがなかなか難しい。手に入るもので、尚且つ、簡単に加工できる物が無いか、と市場を探すがコレと言っていい物が無い。

 

 そんな事をしていたからか、日に日に妹の機嫌が悪くなる一方で、グレン先生に小言をぶつけては、自分にも八つ当たり気味に小言を言って来る。ルミアがいなければ一体、いつまで言われていただろう。お礼に何か甘い物でも買っておこう、そうしよう。

 

「いい加減にしてくださいッ!!」

 

 机を叩いて立ち上がるシスティーナ。とうとう、我慢の限界が来たのだろう。づかづかと近づき文句を言っている。だが、それを屁理屈だったり、挑発させるような言葉を言ったりしている。しかし、システィーナは文句を言うのを辞めない。寧ろ、ヒートアップしだした。

 

「私はこの学院にそれなりの影響力を持つ魔術の名門フィーベル家の娘です。私がお父様に進言すれば、あなたの進退を決することもできるでしょう」

 

「え?......マジで?」

 

 と、家まで出して授業に対する姿勢を改めるよう進言するシスティーナ。確かにお父様に言えばそれも可能だろうが、さすがに長男である自分は黙ってもいられない。

 

 もし、グレン先生が辞めてしまったら、まだ、錬成陣しか出来ていない通称『指パッチン』の錬金術への研究時間が大幅に減ってしまう。

 せめて、あと一週間ぐらいまで持ち越さなければ。

 

「システィ、ちょっとまっ──」

 

「──アンタは黙ってて!!」

 

 ......ふぅ、こうなると後が面倒なのでここまでにしよう。しかし、昔は………あれ? 昔は何だっけ? 記憶が薄れてる。

 

「痛ぇ!?」

 

 昔の事を思い出そうとしていると、どうやら、システィーナが手袋をグレン先生に投げつけたようだ。心臓に近い左手を覆う手袋を相手に投げつける行為は、魔術師による決闘を申し込む意思表示で、その手袋を相手が拾う事で決闘が成立する。自分もここまでするとは予想外だった。

 

「システィ! ダメ! 早くグレン先生に謝って、手袋を拾って!!」

 

 だが、システィーナは烈火の如くグレン先生を睨みつけている。そんな中、ルミアはこちらに振り返る。

 

「フォル義兄さんも何か言って下さい!!」

 

 いや、自分にすがられても困るんだが。それに、こうなったシスティーナはてこを使っても動かないだろう。自分は首を横に振る。自分には何も出来ないと言う意味だ。そのフォルティスの反応にルミアは青ざめた。そんな中、話はどんどん進んでいく。

 

「それでも、私は魔術の名門フィーベル家の次期当主(・・・・)として、貴方のような魔術をおとしめるような輩を看破することはできません!」

 

「あ、熱い......熱過ぎるよ、お前......だめだ......溶ける」

 

 クラスの何人かがこちらを見たが気にしないことにする。別に間違ったことをシスティーナは言っていない。自分は次期当主では無い、それは事実だ。それから結局、グレン先生は決闘を受けた。

 その決闘を見るためにみんなぞろぞろと中庭に向かっていく。そんな中、声を掛けられた。かけて来たのはカッシュと呼ばれる男子生徒だ。

 

「おい、フォルティス.......お前、行かないのか?」

 

 そう、誰もが席を立ったのに自分は座ったままだ。

 

「ああ......どうも、システィは俺のこと毛嫌いしててな。見てたら後々、言われそうだし」

 

 そう言って肩をすくめて見せる。

 

「おいおい、負けるかもしれないってのに......兄妹だろ?」

 

「大丈夫だって、アイツは天才だ。きっと勝つさ」

 

「はぁ? なんだその自信? って、みんなはやっ!?」

 

 そして、カッシュは慌てて後を追いかけていく。カッシュは自信と言ったが確信と言った方が正しいだろう。少なからず、精神年齢的に言えばここにいる誰よりも年長者だ。見る目は養えているつもりだし、何より、アレを見てから色々と知ってしまったのだから。

 

「それにしても、手袋の材料どうすっかなぁ......」

 

 

 




一応、アニメで進んだ所まで書くつもりですので、そこまで長くならないかと。
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