この世界では考えられない錬金術を使って何が悪い   作:ネオアームストロング少尉

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大変申し訳ありません。指摘を受けて修正した十話になります。もしかしたらまた多少不可解な点や設定がおかしい部分があるかもしれません。ですが、次話の前書きで説明するよりも再投稿した方がいいと思いました。主に、魔力回復の部分になります。他の部分はほぼ変わってませんのでそこだけ読んでいただいても結構です。

指摘して下さった方、文章の部分でアドバイスを下さった方。本当にありがとうございました。それと読者様の皆様に多大な迷惑をお掛け致しました。




十話 

 ついにこの日がやってきた。

 

 自分も何時もの学院制服姿に加えて、腰に革の剣帯を巻き、曲線状の鍔を持つ『スウェプト・ヒルト』と言う柄の美しい細剣(レイピア)を帯剣するという、魔術師が決闘する時の伝統的な決闘礼装だ。

 正直に言って、こんな格好しなくていいのだがシスティーナと母が強く推して来るものだから仕方なくといった具合で礼装にした。勿論、システィーナも着ている。その恰好を見たルミアが「二人ともお揃いだね」と言って少し小っ恥ずかしくなったのは胸の中に仕舞った。

 

 そんな朝の出来事があったのだが、ある意味この礼装をしてなくとも注目を浴びていた。何故なら、グレン先生がハーレイ先生に喧嘩を売って、お互いの三か月分の給料を賭けているという噂が出回っており、その他にもクラス全員が競技に参加しているのもあってか奇異の目を集めていた。

 

 面倒だ、と思いながらも式が始まり、開会の言葉に国歌斉唱。関係者各自の式辞、生徒代表による選手宣誓。地味にこれ自分だったりする。通例として学年トップがすることになっていた。こんな事なら取るんじゃなかった、と思うが学年トップだと色々とメリットもある分どっこいどっこいだ。

 しかし、何か......何か忘れているような気がする。例えば何か起きる前触れのような感覚だ。しかし、その喉元に刺さった魚の骨のような違和感を拭えないまま、女王陛下の激励の言葉と共に、とうとう魔術競技が開催されるのであった。

 

 

 

 

 

 ~Ω~

 

 

 

 

 

 競技場の外周に等間隔で立てたポールの外側を飛行魔術を起動させた選手達が風を切って飛び翔る。一周を二人でバトンタッチしながら二十周もする『飛行競争』。

 そして、今はそのアンカーにバトンが渡されていた。その予想外の勝負の展開に歓声が上がる。

 

『どういうことだッ!!? 二組のフォルティス君がここに来てもの凄いスピードで追い上げているゥ!!? しかし、まだ距離があるが大丈夫かァァッ!!?』

 

 勿論、自分の魔力量は十周もすれば枯渇とまでは言わないが、失速していき一周するのに十分遅れをとる。

 

 では、何故最後の最後で加速させたのか? 確かにラストスパートと言うこともある。しかし、この外周を一周するのは今まで周回したぶん、魔力は明らかに足りない。しかし、フォルティスは加速させた。

 

 それは、とても簡単だ。簡単過ぎて欠伸が出るほどだ。

 

 ()()()()()すればいい。

 

 ただ、それだけのことだ。

 

 一応、『魔晶石』という予備魔力を貯めておける宝石がある。しかし、それは一流魔導師でもとにかく時間と手間をかけて作るものだ。

 

 だが、フォルティスはそれをいとも簡単に“創って”見せた。

 

 バトンを握った右手と左掌を前に突き出して魔術式を浮かべている。しかし、良く見ればその左掌のちょうど真ん中に、中指から糸を回して下げられた、角を丸く荒削りしたひし形の、紫色に光る透明な鉱石があった。

 

 本当は使いたく無かったが、あの今にも飢え死にしそうな表情で頭を下げられては仕方ない。

 

『──フォルティス頼む......どうにかして勝ってくれ。この際、お前の錬金術を大盤振る舞いしていいから』

 

 シロッテの枝を口に銜えたグレン先生を思い出す。とはいえ、ちょうど試したかったのも事実。ある意味、ちょうどよかった。

 

 自分が作ったのはただの『魔晶石』ではない。()()と自分の()()()を組み合わせた真新しい『魔晶石』だ。

 

 手を合わせる。少しバランスが崩れそうになったが直ぐに立て直す。

 

「《我が力の糧と成れ》」

 

 小さく紡がれた一節詠唱により、手合わせ錬成によって分解された魔力の塊が術式の中に吸い込まれていく。そして──

 

『──スゴイッ!! スゴイぞ、二組のフォルティス君!! そのまま二位の一組と差をつけて──ゴォオオオオオルッ!? なんとぉおおお!? 「飛行競争」は二組が一位!! あの二組が一位だぁッ!誰が、誰がこんな結果を予想したァアアア──ッ!?』

 

 洪水のような拍手と大歓声が上がった。その拍手の主な発生源は競技祭に参加できなかった生徒達からだ。しかし、中には学年トップがいるから勝って当たり前だ、という声もチラホラ聞こえてくる。

 しかし、一位が確定したような一組を抜いたこともあり、この拍手と驚きは至極当然と思われる。二組の奮闘ぶりに会場は注目したのだった。

 

 一方、競技祭参加クラス用の待機観客席にて。

 

「やったぁ、凄い! 先生、一位! フォル義兄さんとカイ君、一位ですよ!?」

 

 うそーん......。

 

 隣で手を打ち鳴らして大喜びするルミアをよそに、グレンは目を点にして呆然としていた。視線が向けられる先には、一段落付いたように何も無い、中指に糸が巻かれているだけの左掌を見て満足そうにするフォルティスとガッツポーズをとるカイがいた。

 

 ま、まさか、アイツが奥の手(アレ)を使うとは思いもしなかった。

 

 確かに、勝ってくれといったがせめて三位か四位ぐらいと腹を括っていたが目を開けて見れば何と一位ではないか。実の所、フォルティスはともかくカイでは地力が不足している所もあった。

 だが、しかし前半と後半、フォルティスが何か言ったのかカイは何とか上位陣に食らいついていた。とは言っても五位ぐらいまで落ちていたが、それでもグレンが言ったペース配分の練習の賜物ではあった。

 

 そこからフォルティスの独走になるのは当然の事だ。疲れ切った他の奴等と比べてこっちは全快したようなものだ。

 

 その奥の手とは、超高速魔力回復。

 

 簡単に言えばカラカラの身体に瓶に入った水を飲み干すのと似たような原理だ。それが、瓶が鉱石に、水が魔力に変わっただけ。

 しかし、それは誰にでもできるようなものではない。

 

 ()()()()()()だからこそできる秘策。

 

 錬金術を分解工程の部分で止め、そこからフォルティス自身の魔術特性である『力の吸収と吸着』の吸収を使って魔力を自身に文字通り吸収した。

 これは魔導師が使う『魔晶石』と根本的には同じでも作る行程が違う上に効果もまた違ってくる。

 

 グレン自身も、その師匠である第七階梯に至った大陸最高峰の魔術師セリカ=アルフォネアでも理解しがたい錬金術で創られたものだ。

 その錬金術を惜しみ無く使い、そして、フォルティス自身の魔術特性を生かすように細工された魔晶石。

 

 それ故に、本来の魔晶石とは違い、フォルティスしか作れないのと、フォルティスにしか使えないというデメリットがある。

 

 本来の魔晶石なら他の者にも使える。勿論、相性もあるが魔力を回復できる。しかし、この魔晶石は魔力回復を高めるために魔力と空気中にある魔素を分解して混ぜ合わせ、溜め込んだ魔力よりも多く回復することができる。

 

 つまり、使用するには錬金術の分解行程と、分解し混ぜ混んだモノを吸収する術式が必要になる。

 故に、フォルティスの扱う錬金術とフォルティスの魔術特性である『力の吸収と吸着』が無ければ、奥の手どころか実戦には使えない代物になってしまう。

 

 しかし、それは不死とまではいかないものの寿命を延ばす可能性を秘めている。魔導師が溜めている間に二つ三つ、と作れてしまう物を精神的、肉体的にも有り余るほどある若い時に溜めておけば可能性としては十分だろう。

 

 だからこそ、奥の手は錬金術でもなく魔術でもない。魔術戦において切っては切れないものである魔力消費を根底から覆す。それが、どれほどのアドバンテージを生むのか想像しなくても分かることだ。

 

 溜め込んだ魔力よりも回復できる魔晶石。

 

 空気中の魔素の量にもよるが、それはある意味魔力切れという概念を無くすことができる。

 

 しかも、それをテロリスト事件よりもさらに効率よく改良したものを使ったのだ。勝って当たり前だ。

 

 

「幸先いいですね、先生!」

 

 システィーナも顔を上気させ、興奮気味にグレンに話しかける。

 

「飛行速度の向上は無視してペース配分だけの練習しろって、どういうことかと思いましたけど......ひょっとして、この展開、先生の計算通りですか? それと、兄さんの最後の追い上げも魔力容量を把握していたんですか?」

 

「いや、フォルティスの場合は......ま、まあ、当然だな。ペース配分については」

 

 少し首を傾げたシスティーナだったが、そこから勝負の結果を見てようやく気が付いた勝負の裏に潜む落とし穴を、さも最初から説明するグレンに、思っていた疑問は片隅へと追いやった。それは、グレンが最初にいったフォルティスのことだ。

 

 どうやらシスティーナにはフォルティスが扱う錬金術を魔術の一環として説明しているらしく、余り詳しく説明していないようだ。そこは何やら個人的な理由があるようだが、フォルティス自身に黙っていて欲しいと言われてるぶん、口を滑らせるわけにはいかない。

 

 内心、冷や汗をかきつつも、表では余裕の表情を掌で隠し、指の隙間から不敵にほくそ笑む様子をしている。そこだけ見れば、いかにも優秀な策略家のような雰囲気を醸し出している。

 その姿と説明にすっかり勘違いした生徒達は、グレンに畏怖と尊敬の目を向け始める。

 

「ひょ、ひょっとして俺達......」

 

「ああ......まさか......とは思ったが、先生についていけば、ひょっとしたら」

 

 そんな期待に満ちた純粋な目を向けられ、心が痛むグレンであった。

 

 




一応、こういった形にしたのはどうしてもフォルティスの魔術特性を出したかったのと、奥の手だということもあり、少し無理やり気味な感じで書きました。少し説明不足ですがまたいつか触れたいと思っています。

それと、もう一度、原作をじっくりと読み直す必要がありそうなので次話は少し投稿が遅れるかもしれません。私の自身の時間と筆の走り具合といいますか、指の動き具合......ですかね。

タイトルの『※修正版』の部分は次話が出たら消す予定です。
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