この世界では考えられない錬金術を使って何が悪い   作:ネオアームストロング少尉

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少々、急ぎ足で進めていくつもりです。出来る限り捕捉等していくつもりですが、もしかしたら後々になるかも知れません。



十二話

 

「ごきげんよう、フォルティス・フィーベル様」

 

 スカートの両端を摘み上げ、軽くお辞儀をする。その姿はとても優雅でいて、完璧と称するものだった。

 

「あの謁見以来ですかね?」

 

 謁見とは、アルザーノ学院のテロリスト事件での功績とルミアの事について呼ばれたあの日のことだろう。

 

「それはそうでしょう。そもそも、何故アナタが......女王付き秘書である、シャーレットさんがどうしてここに?」

 

 『エレノア=シャーレット』黒髪黒眼の女性。物静かで奥ゆかしく、そして、何よりアルザーノ帝国大学経済学部を首席で卒業、剣術・魔術も超一流の才媛を買われ王室に女王付き侍女長兼秘書官として雇われた、正しくエリート中のエリートだ。

 

 そんな重鎮がなぜこんな場所に?

 

 確かに、今回の魔術競技祭に女王が来ているので居て当たり前のだが、女王の傍にいなくていいのだろうか? 

 

 しかし、答えは返ってこない。余り開かれていない目でこちらをジッと見てくる。その目はどこか危ういような、()()()な目をしていた。

 

「......アナタのような方がわざわざこんな所を散歩してるとは思えない。だと、すれば──自分、ですか?」

 

 そのフォルティスの返答にエレノアは口元を歪ませ、病的な表情をした。

 

「ふふっ......そうです。私はアナタに用が有って来ました。寧ろ、今回の目的と言っても過言ではありません。まぁ、それでもこれほどタイミングよく、一人になってくれるとは思っていませんでしたけど」

 

 そう上品に笑う目の前のエレノアにフォルティスは何か異様な物を感じた。虫唾が走る、とは違う。もっと違う何かが背中を這いずり回っている......兎に角、鳥肌が治まる事が無い。

 

「単刀直入に申します──私達『天の智慧研究会』と一緒に来ませんか?」

 

『天の智慧研究会』。言わずと知れた帝国政府と敵対する最古の魔術結社だ。魔術を極めるためなら何でもするような外道集団の集まりと聞いている。いや、そう()()していた。

 だが、今自分が思っていることはこれほどの人物がその外道集団に所属している、という事実だ。しかし、逆に考えれば帝国内部に入り込めるほどの力を有している。ただの外道集団の集まりではない。

 

 しかし、外道は外道。ましてや、あの学院の生徒であり、その『天の智慧研究会』の者達のことをこの身で感じていた事があるならその申し出は断るのが当たり前だろう。

 

 だが、フォルティスは違った。

 

「そうですね、興味はありますけど......何故、自分のような半人前に?」

 

 それが、素直に首を縦に振れない一つの要因だった。最も、今の段階では着いて行く気などおきそうにない。

 

「それは、簡単なことです。『大魔導師様』がアナタ様の力に大変興味を持ちまして。成績優秀で実技も優秀。その中でも特に()()()に関しては」

 

「......ただの錬金術ですけど?」

 

 その返答はクスクス、と笑うだけだった。つまり、自分の錬金術がただの錬金術ではない、とハッキリと分かっているのだろう。

 

「あ、そうでした」

 

 手を叩いて忘れていたのを思い出したように口にした。

 

「アナタ様の()()()()はとても素晴らしいものでしたよ。人の形を成してはいますが、形は酷い上に、死霊魔術に向いていない。お世辞でも人と言えないものでした。しかし()()()()()()不死性を持っていました......頭を無くしても動くとは」

 

「ッッ!?」

 

 

 何故だ!?

 

 何故、コイツが()()を知っている!?

 

 

 動揺を隠しきれていないフォルティスを見て、エレノアはどこか危険で艶を帯びた熱っぽい吐息を漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

 ~Ω~

 

 

 

 

 

 

「わけわかんねぇ......それに来いっつったって......俺一人でどうやって女王陛下の所までいけばいいんだよ......くそ!」

 

 状況が状況なだけにグレンは切羽詰まっていた。ルミアが女王暗殺を企んだ者として手討ちにされようとしていいた所を助け、王室親衛隊に追われることになった。何か、裏があると分かっているが今回、セリカが身を封じられている。

 逃げに徹すればあの手この手でどうにかできるが、セリカは女王陛下の前まで来い、といった。つまり、このまま逃げに徹しても事態は何も解決しないということだ。

 

 しかし、自ら攻め入ることになるなら、話は別だ。

 

 人数差に戦力差が絶望的な上に、女王陛下を最も近くで護衛しているのは王室親衛隊の総隊長ゼーロスだろう。その実力は四十年前の奉神戦争で、聖エリサレス教会聖堂騎士団総長『剣聖』のヨハネスと互角に渡り合ったとされる歴戦の古強者だ。他の者とはわけが違う。

 

 どう考えても自分の手に余る。仲間が......せめてあと一人か二人、仲間がいれば、と焦燥を露わにする。

 

 その時、ふと頭に浮かんだのは前に共闘したフォルティスだった。そうだ、アイツがいれば──。

 

 グレンは壁を殴りつける。

 

 何をバカなことを考えている!? アイツはまだ学生だぞ!? こんな危険なことに巻き込めるか!! 

 

 いくらフォルティスが戦えると言っても彼はまだ学生であり、自分の受け持つクラスの生徒だ。そして、何より自分が守るべき者の一人である。自分が何を血迷ったことを考えていたかと後悔している、その時だった。

 ぞくり、と。背中を駆け上がる、氷の刃で切り付けられてたような悪寒。

 

「──殺気!?」

 

 かつて慣れ親しんだ感覚に、グレンは脊髄反射で殺気が向けられた方向へ目を向けた。二人の男女が建物の屋根の上からグレンを見下ろしている。

 その身に纏う特徴的な衣装と、背格好には見覚えがあった。

 

「リィエル!? それにアルベルトまで!? まさか、王室親衛隊だけじゃなく、宮廷魔導士団まで動いていたのか!?」

 

 グレンが二人の存在を認識した瞬間。リィエルが弾かれたように屋根を蹴り、地面に着地し、それと同時に何事かを口走りながら両手を地面につく。

 すると魔力が紫電となって爆ぜると共に、リィエルの手には十字架型の大剣が瞬時に生み出され、代わりにその場にあった石畳がごっそりと消えた。

 

「ちぃ!? 錬金術──【形質変化法】と【元素配列変換】を応用した、お得意の高速武器錬成かよ!? しかも早ぇ!」

 

 フォルティスの錬成と引けを取らない速さの錬成だ。一度、フォルティスの錬金術を見たとき一瞬、リィエルと同じと思ったが、その本質は全く別物だった。

 リィエルの錬金術はまだ理解出来る。しかし、フォルティスの錬金術は魔術的に加わっている部分の他、少なくとも自分の知っている言語や文字では無いもので書かれていた。あのセリカですら分からないものだ。寧ろ、この世界のものかすら怪しい。

 

 そして、こんな状況だというのに、ふと思ってしまった。

 

 リィエルの錬金術は一歩でも下手をすれば、脳内演算処理がオーバーフローしてしまい、廃人になってしまう。

 

 なら、それに近い高速錬成をしているフォルティスは大丈夫なのだろうか? 

 

 気が付くのに遅すぎるが、そもそもあんな訳の分からない知識を一体どこで得た......?

 

「くそ、止まれ! 止まらねーなら、撃つ!」

 

 グレンは突進してくるリィエルに警告をしつつも、フォルティスの異常性をもう一度、感じてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 ~Ω~

 

 

 

 

 

 

 ──パチンッ!

 

 指を鳴らす音と同時に目の前に女性が声にもならない雄たけびを上げ首から上を燃やす。その周りには腕を吹き飛ばされた女性が地面にのたうち回っていたり、上半身を燃やされた女性が横たわていたりと、死屍累々していた。

 それもそうだろう。それはもう死んだ者達なのだから。

 

 近くから、笑い声が聞こえる。それが後ろからだと分かった瞬間、真後ろに向けて指を鳴らす。が、燃えたのはまた死体だ。

 

「流石にやりますね。全く、フィーベル様の錬金術は素晴らしい。だからこそ死体であったとしても欲しいですね」

 

 右から聞こえたと思ったら左から。左からと思ったら後ろから。燃やして、爆発させ、燃やして、爆発させ......その繰り返しだ。もういっそのことここ一面剣山のようにしてやろうかと、手を合わせたときだ。

 

「アナタならきっと簡単に『アルター・エーテル』を作れる......いえ、もっとスゴイ物を作れる。そう、あの日の()()が出来ますよ?」

 

 その甘い言葉に思わず手が止まった。

 

 

 

 




また、色々と修正する場合があるかもしれません。多分ですがこの次、リィエルの所で大きく悩みそうです。方向性としては当初考えていた通りですが、どうも私自身、ロクアカの魔術特性や錬金術、その他の記述に食い違いが多くあったので練り直す必要がありそうです。

あと、これは予告になりますが十三話を更新したあと少々時間を下さい。断言は出来ませんが二週間ほど更新をしません。また、詳しくは十三話の後書きでします。

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