この世界では考えられない錬金術を使って何が悪い   作:ネオアームストロング少尉

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遅くなりました!!


十六話

 

 

 バンバン、とドアを強く叩く音に反応して鉛のように重たい体をベットから起き上がらせる。その間にも一定の間隔で叩かれている。

 

「......なんだい、こんな時間に」

 

 窓の外からみれば多少明るいものの、人が起きるには早すぎる時間帯だ。日が昇って数分ぐらいだろうか。このまま二度寝しようかと思ったが、どうやら出て来るまでやるつもりなのだろう。まだ、ドアを叩くことを止めていない。

 

「ああ、はいはい。出ればいいんだろう、出れば」

 

 寝起きで足元が覚束ないなか、アンティーク調の店の入り口に近づく。人の安眠を邪魔した本人に一つぐらい文句を言ってやろうと決め、開いてみれば。

 

「──フォルティス? 一体、なんでこんな時間帯に......?」

 

 そこには、お馴染みの制服ではなく、貴族らしい気品のある服装をしたお得意様が立っていた。いつも来るなら閉店間近の時間帯にくるはずなのに、今日に限っては開店もしていない時間帯に来た。

 

「すみません、少し急ぎの用事でお願いしたいことがあるんです」

 

「お願いって言っても......まあ、とにかく入りなさいな。立ち話もなんだしね」

 

 フォルティスを店の中に招き入れ、いつもの席へと座らせる。自分はその向かいの作業台に腰を下ろして、ポケットから煙草を取り出して口に銜える。そこで、マッチが無い事に気が付き身体をまさぐるが無い。

 仕方ないと煙草を諦めようとしたとき、パチン、と指を鳴らす音が聞こえた。

 

「どうぞ」

 

 見ればフォルティスの親指の先からちょうどいいぐらいの火が出ている。驚いた気はしたが、魔術師ならこのぐらい訳ないか、と頭の中で完結させる。煙草の先端を火に近づければチリチリと焼ける音がしたのを合図に火から遠ざける。

 

 馴染みある味と肺を満たす圧迫感。それを吐き出すときの開放感に、煙と一緒にストレスも消えていく。一息ついたところでフォルティスが訪れた理由を訪ねようと思ったが......。

 

「......考えるも何も、また壊したのかい?」

 

 フォルティスがここに来る理由などこれしかないだろう。現に店の入り口から椅子に座るまで歩き方に違和感を感じていた。顔を見ればそっと目を逸らしたので、図星なのだろう。

 

「はぁ、別に怒りはしないさ。ただ、こう何度も近いうちに壊されると、何だか私が悪いんじゃないかと思ってね」

 

 足の裾を上げて義足を見る。外傷は特に無い。となれば問題は内部。足首から順に触って行けば何箇所かおかしい部分が分かった。

 

「今年の魔術競技はそんなに激しかったのかい? 回路が焼き切れるなんて、そう滅多にあるもんじゃないよ」

 

 原因が分かった所で、直すために必要な物を棚から降ろす。

 

「......ええ、柄にもなく熱くなってしまって。まあ、優勝することが出来たので良かったです」

 

「そうかい、私がいたころはそうでも無かったけどね......さて、ぱぱっと直しちゃおうかね」

 

 フォルティスの義足を本格的に直しに入る。一度、義足を外して作業台の上へと持っていく。分解して良く点検するれば魔力を調整する中枢部分は特に問題ない。これなら魔力を通す回路を取り換えるだけで済むだろう。

 そんな時、いつもは作業中には話しかけてこないフォルティスが背中越しに珍しく話しかけてきた。

 

「......一つ、いいですか?」

 

「ん? なんだい?」

 

 作業しながら返事をしてみるが黙ったままだ。その事から考えるに大事なことらしい。面と向かって話したいようだ。

 

「ちょっと待ちなよ......よし」

 

 一旦、キリのいい所で作業の手を止めて、油や煤で汚れたタオルで手袋を拭く。振り返えって話を聞いてみれば──

 

「──なんだって?」

 

 

 

 

 

 

 ~Ω~

 

 

 

 

 

 

 まだ薄暗い時間帯に、システィーナは密かに屋敷を後にする。向かうのは約束の場所。そこは、フェジテのあちこちに点在する自然公園の一つだ。

 

 その区域は森林浴と散策を楽しむ憩いの場となっている。勿論、今は早朝のため人っ子一人おらず、閑散としており、静まり返っている。

 システィーナは落ち葉を踏み鳴らしながら約束していた場所へと辿り着く。

 

「今日は少し遅かったな。らしくもない」

 

 待ち人、グレンが少し不機嫌そうに、システィーナに声をかける。

 

「う......その、ごめんなさい。昨夜寝る前に......今日、先生と会うことを考えてたら、その......眠れなくて」

 

 微かに頬を赤らめ、システィーナは気まずそうに視線を外した。

 

「はは、期待してたってやつか? とんだマゾヒストだな、お前」

 

「ば、馬鹿! そ、そんなじゃないわよ......ッ!」

 

 意地の悪い笑みを浮かべてグレンに、システィーナは慌てて否定の言葉を返すが、その言葉尻にどうにも力がない。

 

「まぁ、いい。生憎、ここなら誰もいない。誰にもはばかることなく、心置きなくできる。さっそく始めるぞ」

 

「ま、待って......私まだ......心の準備......ッ!」

 

 システィーナはグレンから逃げるように後ずさるが、本気で逃げる気はないのか、その動きは緩慢のものだった。

 

「悪いな。俺はせっかちなんだ」

 

 誰もいない。たった二人だけの世界で。

 

 今日も誰にも言えない、二人だけの秘め事が始まる。

 

 

 .....と、本当はなんて事ない。ただ魔術戦の早朝特別訓練である。これが、最近できた二人だけの秘密だった。

 

 システィーナはルミアの事情を知る数少ない人間の一人だ。だが、今のシスティーナにグレンのように、それこそ、兄であるフォルティスのように守れる力などない。 

 

 魔術の素質は優れているが、誰かを守って戦うには、システィーナはまだ、あらゆる意味で未熟なのである。だからこそ、システィーナはいざという時に守れるように、グレンに魔術戦の手解きを求めだのだ。

 

 当初、グレンはシスティーナに請われても魔術戦の指南をすることを渋っていた。勿論、兄にも頼んでいた......が。

 

『いや、俺のはちょっと......、いや、結構特殊だし......それに、魔術戦においては先生の方が上手いと思う。システィーナも()()()の方が合ってるよ』

 

 

 と言われ、それでも何度も頼み込んでもやんわりと断られていた。それを聞いたグレンも「そうだよな」と言葉を溢していた。それが、効いたのか分からないが熱心に頼み込んで、ついにグレンが折れたのだった。

 

「まあ、お前がその『力』を振るわなければならない『いざという時』......そんな時が来ないのが一番いいんだがな」

 

「これからも......ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。先生」

 

 ぺこり、と。

 

 システィーナは背筋を正し、その頭を下げた。

 

 

 さくさく、と落ち葉を踏み鳴らす音が聞こえる。話に夢中になっていて、すぐそこに来るまで気が付かなかった。グレンとシスティーナは焦るが、当然間に合うはずもなく──

 

「──えっ」

 

「......」

 

「......」

 

 思わず声が出たシスティーナは、プルプルと震えながら現れた人物──兄であるフォルティスを指差す。しかし、本人はかというと、気まずそうに頬を掻いて──

 

「──まあ、うん。お父様達も似たような出会い方してるし、こういうことがあっても別にいいんじゃないか?」

 

 その時のフォルティスの表情はまるで旅立つ子供を見送る親のように、慈愛に満ちていた。

 

「ちょ、ちょっと待って兄さん!? こ、これには訳があって!?」

 

「そ、そうだぜ!! ちゃんと事情を聞けば、お前が勘違いしてるって分かるから!!」

 

 二人は必死になって説明しようとするが、フォルティスは手を前に出して二人を制する。分かってくれた、とシスティーナは安堵するがグレンはダラダラ、と汗を流していた。 

 実際、逢い引きのようにも見えなくもない現状。

 

「お、おい......その『全部、言わなくても分かってる』みたい表情やめろ。お前、絶対分かってないだろ」

 

 グレンの言葉にシスティーナは感づく。

 

 そうだ、人の話を聞かない兄さんの事だ。きっと、理解していないに決まってる。

 

「いえ、分かってますよ......少なからず自分は応援してます」

 

 そう言い残し颯爽と戻っていくフォルティス。一瞬だけ固まり現状を理解すべく、錆びたブリキのような動きで首を回し、グレンとシスティーナは見合せた。

 

 そして──

 

 

「──分かってねぇ!!? おい、待て! フォルティス!?」

 

 

「ま、待って兄さん!? 誤解っ!! 誤解してるから!?」

 

 それでも、何故か逃げていくフォルティス。そして、遂に我慢の限界を越えたシスティーナが【ショック・ボルト】を撃つことになったのは直ぐの事だった。

 

 

 

 

 ......そして。

 

 

 

 過去の去りし日を彷徨っていた胡乱な意識が、ゆっくりと現在に戻ってくる。

 

「......?」

 

 むくり、と身体を起こす。少し疲れた気がするが気分は悪くない。

 

「やあ、起きたかい? おはよう、お嬢ちゃん」

 

 開け放れたドアの向こうが見える。

 

「帝都オルランドからこのフェジテまで、遠路はるばるごくろうさん、お嬢ちゃん」

 

 これから、システィーナにとって......フォルティスにとって、人生を大きく変える事件が起きる。

 

 

 




一応、生存報告を兼ねて途中ですが投稿しました。 というか読んでる人っているのか? という疑問すら思うほど更新してませんでしたね......。

取り敢えず、今年が終わるまでには本作を終わらせたいですね......。
それと、次回の投稿は未定です。申し訳ありません。

※多分、今年は更新できそうにありません。理由としては当初の予定より長く書くことになったことと、設定のすり合いが上手く合わせれなかったことがありました。こちらも思っていた以上に私情が忙しくなったこととも関係があります。

ですが、こんな駄作を数多くの方が呼んでくれて大変感動しました。感想で応援や誤字脱字。間違いの指摘から作品の考察なんかもしてくれて頭が上がらないほどです。まだ楽しみにしている方のためにどうにか作品を終わらせるつもりです。未熟者ですがよろしくお願いします。
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