この世界では考えられない錬金術を使って何が悪い   作:ネオアームストロング少尉

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感想、評価、ありがとうございます。最近、忙しくて感想も流し読み程度にしか見れてません。出来る限り感想等で上がった疑問や不可解な点に触れていきたいと思っていますが、もしかしたら触れられないかも知れません。メッセージも溜まっています......。


六話

「兄さん!!」

 

 倒れていたフォルティスをシスティーナは優しく抱き寄せる。身体は酷く冷たく顔色は青い。一瞬、もう死んでいるのかと思い心の奥底から悲しみが噴き出てくる。だが、微かに息をしていて胸も上下していた。

 安心すると同時に先ほどから溢れでてくる涙を拭きながら、怪我を治す白魔【ライフ・アップ】の呪文を唱える。

 

 自分でも気休め程度にしかならないことぐらい分かっている。だけど、そうしなければ後悔に押しつぶされそうだったからだ。

 

 システィーナ自身、肉体と精神を扱う白魔法は得意ではない。しかし、意識を集中させ維持し続ける。ただただ、ひたすら目が覚めることを心の中で思いながら。

 

 .......ふと、昔のことを思い出す。

 

 小さいころ、転んで怪我した自分にフォルティスがこうして【ライフ・アップ】をかけてくれた事を。お爺様に教わったばっかりだったからか、何だか楽しそうに傷を癒してくれた。

 

 

『大丈夫。()()()()()に任せとけ』

 

 

 なぜ、今こんなことを思い出したのかは分からない。しかし、あれほど焦っていた自分はいつの間にか落ち着いていた。

 

「シス......ティ......?」

 

「ッ!? 兄さん!!」

 

 薄らと目を開け自分の名を呼ぶフォルティス。

 

「おい、白猫。今のところは安全だったが、いつ敵が戻ってくるとは限らん。今のうちに医務室に連れて行くぞ......聞かないといけないこともあるしな」

 

 そう言って、グレンはフォルティスを抱えると医務室のある校舎へと向かう。システィーナもその後に付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、これなら大丈夫だろう」

 

 フォルティスを医務室に連れて行き、グレンが手際よく手当をした。システィーナの【ライフ・アップ】のおかげか【ライトニング・ピアス】による傷は致命傷にならなかった。

 

「よかったぁ......」

 

 また、ポロポロと涙を流し始めるシスティーナ。しかし、グレンに気にしてる時間は無かった。

 

「白猫、教室に入ったのは二人組だったよな?」

 

「え? あ、はい」

 

 二人組。正門の近くにあった死体は一つだけ。となると、もう一人どこかにいるハズだ。フォルティスの傷を見る限り相手は剣のような鋭利な物を持っていると考えられる。そして、焼死体からはそんな物は無かった。

 

 自分とシスティーナが移動している間にもう一発似たような爆発音がした事を考えれば、フォルティスが使う『錬金術』で深手を負って逃げたのか。それとも、自分たちが来たから一旦退いたのか。

 

 もし、逃げたと言うことを仮説に考え、そして、自分たちの事も把握しているものとする......。

 

「......ッ! 白猫! 何があってもここから出るなよ」

 

「は、はい」

 

 グレンは急いで飛び出した。もし、もしヤツら側となって自分が真っ先に考えるのは、今の状況を少しでも有利にするための行動だ。そのために手札としてあるのはーー。

 

 廊下の途中で突然魔力の共鳴音が響き渡ったと思うと、グレンが向かう先の廊下の空間が波紋のように揺らめいた。そこから現れたのは無数の骸骨。二本の足で立ち、剣と盾を持っている。

 それらが、向かう先には教室。

 

「──人質だ!」

 

 召喚【コール・ファミリア】。本来なら、小動物などのちょっとした使い魔を呼んで使役する召喚魔術の基本術だが、この術者は自己生成したゴーレムを使い魔として使役し、しかも遠隔連続召喚するなどという、高度なことをやってのけている。

 これを考えるに、フォルティスによって負傷しているという仮説は無いと見える。

 

 グレンはゴーレムが竜の牙で出来ていると見抜く。驚異的な膂力、運動能力、頑丈さ、と三属耐性を持っている。

 

「随分と大盤振る舞いなこったな......!!」

 

 こちらに気が付いたボーンゴーレムに渾身の右ストレートを頭部に叩き込む。

......が。

 

「か、硬ぇ!?」

 

 少し仰け反らせただけで、ひび一つ入ってない。

 

「クソッ!! 【ウェポン・エンチャント】間に合うか!?」

 

 殴ったことで近くにいた他のボーンゴーレムも気が付いて、数で襲ってくる。一旦、距離を取って【ウェポン・エンチャント】を唱えようとするが、直ぐに距離を詰めてきて唱える隙を与えない。

 先の廊下を曲がって行けば生徒たちいる教室がある分焦る気持ちが高まってくる。数の暴力に手後招いていると。

 

「──《その剣に光在れ》ッ!」

 

「ッ!? お前──いや、助かった!!」

 

 システィーナが唱えた黒魔【ウェポン・エンチャント】でグレンの両拳が一瞬白く輝き、その拳に魔力が付呪された。

 何で出て来たと文句を言おうとしたが、今の状況を考え後にする。素早くステップを踏み、正面と左右から来るボーンゴーレムを今度こそ頭部を粉砕した。

 

 一直線の廊下に対して前には無数のボーンゴーレム。後ろに下がろうにもシスティーナがいる上に下手に下がれば医務室にいるフォルティスに被害があるかも知れない。自分の切り札である【愚者の世界】を使うと言っても、魔術の起動そのものシャットアウトするだけで、既に起動し現象として成り立っているものには効果が無い。

 

「正面突破しかないか......白猫。お前の得意な【ゲイル・ブロウ】を即興で改変しろ。威力を落として、広範囲に、そして持続時間を長くなるように」

 

 じりじり、と距離を詰めてくるボーンゴーレムをけん制しつつ、後ろにいるシスティーナに言う。

 

「え!? わ、私にそんな高度なことが......」

 

「俺がここ最近で教えたことを理解できるなら、それくらいできるはずだ。てか、できろ。できないなら単位を落としてやる」

 

「り、理不尽だ......」

 

「......少なくとも、お前の兄貴はやってたぞ」

 

「う、うそでしょ!?」

 

 衝撃の事実に驚きを隠せないでいるシスティーナ。結局、フォルティスはグレンが真面目に授業し始めても合間を縫って、自身の研究に力をいれていた。それに対して自分は真面目に受けていたと言うのに。

 

 これに関してはグレン自身もさっき気が付いたことだ。手当しているときに見えたフォルティスがしている手袋に書かれた魔法陣。今まで見た事の無い方陣であったが、一つだけ理解出来た術式。

 その方陣の中に組み込まれているであろう、変質と変換の性質を持った術式。

 

 それは、グレンですらやったことの無い改変だった。自分が授業をする前から改変していなければ、できないであろう長く、そして、高度な改変。

 優秀なことは少なからず分かっていた。しかし、ここまで来るといくら貴族とはいえ、実力が高すぎるとも言える。

 なら、その妹であるシスティーナも少なからずその才能はあるのではないか、と思い。グレンは命令した。 

 

「......分かりました、やります!!」

 

「よしっ、なら俺はこいつらの足止めだ」

 

 迫るのは感情を持たないゴーレムたち。多勢に無勢。

 

「──おおおッ!!」

 

 迫りくる攻撃の嵐を搔い潜り、隙を見ては拳を繰り出す。しかし、倒しきれないゴーレムたちによって少しずつグレンの身体は傷をつけていった。

 

 

 

 

 グレンが足止めしているうちに、即興で術の改変をする。グレンに教わった魔術文法と魔術公式を使って少しずつ望む魔術へと近づけていく。グレンが攻撃を捌ききれずバランスを崩すたびに心臓が締め付けられ、胸中では焦燥に焦がされる。

 

 そんな中でシスティーナは気が付いた。あの不退転の意思と立ち回りは自分を頑なに信じてくれなければ絶対にできない動きだ。口を開けば皮肉と憎まれ口ばかりでも、グレンは自分を信頼していたのだ。あの信頼を裏切るわけにはいかない。

 

「詠唱速度を二十五に落として......テンションを四十五とすれば......」

 

 自分でも強くないと分かっている。ただ、名門の名にふさわしくあるように強がって見せているだけで、小さいころから兄の後ろに隠れていて、本当は臆病で弱い。いつも兄が助けてくれると思っていたから。

 現に、兄がテロリストを倒してくれたときは、やっぱり助けてくれた、と思った。そして、足手纏いと言われたとき、悔しさとそして──

 

 ──安心した。

 

 兄さんが行くんだから、自分は行かなくても、わざわざ怖い思いなんてしなくても良いんだと思ってしまった。

 

 そんな自分が嫌になる。

 

 ルミアにも、グレンにも、そして、兄にも救われた。三人がいなかったら、今、自分はここに立っていることもできない。死んでいたか、心を壊していただろう。

 

 だから、だからこそ、今度は私が助ける!

 

 焦燥でパニック寸前だった脆い心を、システィーナは見事に御した。やがて、すとん、と腑に落ちるような閃きと共に最後のルーンを選び、呪文の改変が完成する。

 

「先生、できた!」

 

 システィーナが叫んだ瞬間、グレンは待ってましたと言わんばかりに、システィーナの方へ向かって駆け出した。当然、その後を追ってくるボーンゴーレム。

 

「何節詠唱だ!?」

 

「三節です!」

 

「よし、俺の合図に合わせて唱え始めろ! 奴らめがけてぶちかませ!」

 

 ゴーレムたちが迫ってくる。がその前にグレンがシスティーナの後ろに行く方が早い。

 

「今だ、やれ!」

 

「《拒み阻めよ・──」

 

 グレンとシスティーナの距離が詰まる。

 

「《──嵐の壁よ・──」

 

 距離、十足、五足、三足。

 

「──その下肢に安らぎを》──ッ」

 

 グレンが跳躍する。システィーナの背後に回った瞬間。呪文が完成しシスティーナの両手から爆発的な風が生まれた。廊下全体を埋め尽くすような広範囲にわたって吹き抜ける指向性のある嵐がゴーレムたちを襲う。

 それにより、ゴーレムたちの進行速度は劇的に落とした。

 

 しかし、即興ゆえ威力が足りなかったのか、ゴーレムたちは気流に逆らってにじり寄ってくる。

 

「だ、だめ......完全に足止めできない......ごめんなさい、先生......ッ!」

 

「いいや、上出来だ。助かる」

 

 荒い息をつきながらグレンは立ち上がる。ぴん、と小さな結晶のようなものを頭上で弾き飛ばし、落ちてくるそれを横に薙いだ左手で掴み取る。

 

「俺が今からやる魔術は何かの片手に唱えるのは無理なんで......しばらくそのまま耐えていろ」

 

 一呼吸置いて、グレンは目を閉じ、呪文を唱え始めた。ゆっくりと。ことさらゆっくりと。

 グレンの左拳を中心にリング状の円方陣が三つ、縦、横、水平に噛みあうように形成され、それぞれが徐々に速度を上げながら回転を始めた。

 

「え? 嘘.......?」

 

 システィーナはグレンが唱えようとしている呪文の正体に気が付いた。しかし、目の前に迫ってきているゴーレムたちの距離を見て間に合いそうにないと思った。

 

「くっぅ!! ......せ、先生!!」

 

 ダメ、間に合わないッ!!

 

 

 ──パチンッ

 

 

 指を鳴らす音が聞こえたと思ったら、システィーナの近くまで迫って来ていたボーンゴーレムの先頭辺りで小規模な爆炎が起こり炎の風となってゴーレムたちを押し返す。

 

「こ、これって!?」

 

 振り向けば、壁に凭れ掛かりながらもこっちをしっかりと見据えた兄、フォルティスの姿があった。

 

「兄さん!!」

 

 軽く手を上げて大丈夫なことをアピールしている。それと、同時にグレンの魔術が完成する。

 

「《其は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離するべし・いざ森羅の万象は須くここに散滅せよ・──」

 

 そして、グレンはシスティーナの前へと踊り出る。

 

「──遥かな虚無の果てに》──ッ!!」

 

 渾身の大呪文が完成する。

 

「ええい! ぶっ飛べ、有象無象! 黒魔改【イクスティンクション・レイ】──ッ!」

 

 グレンが前方に左掌を開いて突き出す。高速回転していたリング状の円法陣が前方に拡大しながら展開。次の瞬間、その三つ並んだリングの中心を貫くように発生した巨大な光の衝撃波が、前方に突き出されたグレンの左掌から放たれ、廊下の遥か向こうまで一直線に駆け抜けた。

 

 そして、その放射線状にあった物......ボーンゴーレムの群れはおろか、天井や壁まで、光の波動はえぐり取るように全てを飲み込み、一瞬にして粉みじんに消滅させた。

 

 

 

 




つ、疲れました。ちょっとずつ書いていたんですが、中途半端な所で終わってしまいました。息抜きを書いていたのが裏目にでたのかも......でも、やっぱり物語を書くって楽しいです。

それはそうと、感想であったのですが、矛盾しているのではないかという、指摘がありましたが、ちゃんとそれは本文で触れますので。

それと、あくまでも自己解釈と自分なりの考えなのでおかしいんじゃないか、と思われそうですが矛盾にならないような考えはしています。これは自分の伝え方というか、文才が無いせいですね。
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