ガシャットよこせ
「変形出来る機体がいい。こう、ガシャっと変形して突っ込める感じのやつ」
檀に立つ少年の言葉に、空気が凍った。
それも数秒後。凍った空気が溶けたと思った途端にざわざわと日本語ではないどこかの国の言葉で場はざわついた。
『変形機だって?そんなの普通のISじゃ考えられない…』
『おい、翻訳間違いじゃないか?』
『oh…これが噂に聞くジャパニーズムチャブーリ……』
場のざわめきは止まらない。様々な国の人々の会話はある種の音楽とも言えそうな程に妙なリズムを生み出し、ホールを支配する。
『無理だ』
技術者数人が口を揃えて言うも
『そこをなんとかできないか』
と説得にかかる責任者。とある諸国のグループである。
『可能ではあるが前例が全く無い』
『だが貴重な男性操縦者だ、上手く出来れば…』
端末を囲み、相談するとある国のグループ。
『そもそもISが変形する意味があるのか?するにしてもパーツとの干渉や操縦者への負荷が…』
『国の性能が良いISで納得してもらえないだろうか…?』
『いや、あの目を見てみろ。アレが噂に聞くジャパニーズヲタクの目だ、蒼き鋼の意志を感じるぞ』
あーでもないこーでもないと話が纏まらない国。
『男の癖に…』
『生意気よ、あの子』
二次小説によくいるかませ。
インフィニットストラトスでは主に名前や細かな描写も無く女性権利主張団体者だったりただのキチガイおばさんだったり。
大体デート中のオリ主に絡んだ後オリ主にチートやら達者な口やら録音機でパパっと敗北する。その後大体捨て台詞を吐いて逃走したりする。特に意味は無い。
やがて痺れを切らしたのか、少年が再びマイクに声を通す。
「出来ないのですか?それともよくお聞こえにならなかったのでしょうか?私が望む機体は‘変形が可能な’ISです。メガ粒子砲ぶっ放したいとか量子化したいとか、バラバラになってオールレンジ攻撃したいとかそういう事は望みません。」
良く通る声が貸し切られた国際ホールに響く。
美形ではないが見た目優しそう、物静かそうな彼だが、言ってる事は中々に技術者をストレスで殺しそうな内容である。
現実を再認識したーーーーーこの日、彼を国家IS操縦者に迎え入れようとこぞって集まった技術者、代表者達は頭を抱えた。
ーーーーーなんだこのジャパニーズ、無茶苦茶言いやがる。
実際無茶苦茶な主張である。
元来ISは宇宙空間における活動のためのパワードスーツーーーである様で認識としてはハイスピードロボットアクション的な、なんか世界中でのスポーツみたいなものに使用されているものである。
ゲームなら
そんな
まずISを変形させた前例が無い、発想自体はあったかもしれないが色々あって無かったのだろう。
変形前、変形後における操縦者への負荷を考えたデザイン。
変形時の空気抵抗による機体及び操縦者への負荷。
よしんばこれらを満たすものが開発出来たとしても問題はまだまだある。
変形しなきゃいけないので変形に必要なパーツが戦闘時に破壊されたらどうする?
数えていたらキリが無い。
出来上がったとしても出来るのは間違いなく掠っただけで逝きそうな空飛ぶ棺桶である。
最早地雷以外の何物でもない、搭乗者にはファンメが飛んでくることは確定的に明らか。
しかし恐ろしいのは「これは絶対に譲れません」と口にせずともそのオリハルコンじみた意志が伝わってきそうな彼である。なんなのお前、何か各国の技術者に恨みでもあるの?
『我が国で開発出来る最上級のISをご用意します、なのでその希望のISはいつかに…』
どこかの国の言葉を、彼は翻訳者から聞き無言で首を振った。
織村一夏に続いてひょっこり現れた二人目のIS操縦者、適正クラスはなんとA!
顔は
加えて彼には
ウレシイヤッター!と勢いよく飛びつくも釣られたクマーである。
喉からどころか全身の穴という穴から手が出てきそうな人材ではあるが前約が厳しすぎる。
まぁ流石に諦めたのか、残念そうに彼がマイクに声を通そうとした途端
「やって、みせます!」
たどたどしい日本語で、ソプラノの声がホール内に響いた。
勿論、そんな空気の読めていない者にそのばの目が集まる。
やや華奢な体に白衣を着た、この場にそぐわぬ少女が手を挙げ立っていた。
ーーーー誰だ!
ーーーー出来るのか!
ーーーーどこの国だ?!
「貴方は……」
「エジプトの“ペルチェミス”、ワタシの名は“エルトナム”、デス」
彼は傍らにあるファイルに目を通し、パラパラと彼女、エジプト代表企業、“ペルチェミス”を確認する。
ペルチェミス
エジプトを代表する企業であり、ISコアの所有数は2つ。
ISの開発競争においては他に比べ熱心ではなく盛んではないが、パーツの新規開発やISの新たな飛行理論の成形が盛んである。
代表者は不在である。
企業の事が簡潔にまとめられた文の下には彼女、シエラ・エルトナム・ソカリアと銘打たれた顔つきの名刺がコピーされていた。
ふむ、と彼はページを一読にチラッと離れた彼女を見る。
周りの視線に気づいたのか、彼女はやや手持ち無沙汰に端末を叩いていた。
「変形するISデスガ…、今の時間で計算はした所 “理論上可能”デす。恐らく機体サイズは通常のモノに比べテ小さくなっテしまいますが……」
どわっ、と彼女の周りが驚愕で満たされた。
本当に可能なのか、嘘じゃないのか、なら我が国でも出来るのではないのか。等々反応は様々だが。
そんな喧騒の中、彼はたったっとやや駆け足で彼女の元へ急いで着く。
「あの!本当に、その、変形するISが……」
あっという間彼は彼女、エルトナムの目の前に着くと両肩を掴み、先程迄とは打って変わって興奮気味に喋りだした。若干呂律が回っていない。ついでに目がカッぴらいている。
慌てて彼の付き添いである翻訳者が駆けつけていた。
「え、エト……」
対するエルトナムは若干引いていた、ジャパニーズってこんなんだっけ?と改めて考え直す様だがここはチャンスである。端末に指を踊らせ、画面を彼に向け説明しだす。
「多分貴方の考エるISは“強襲型”。
今でハ基本的に一対一等、バランス等を考えた打鉄やラファールといっタ機体等とは違っテ単独での高速飛行、目標への特攻、強襲、離脱を主にシた機体だと思いマス。
中々素敵な考えデスね。“やってみせまス”。」
画面に記載されたのは数字と文字のみだが簡潔にまとめられている。
理想的な機体サイズ、重量、試行回数、推奨装備等々。素人の彼から見てもなんとなくわかった。
直後ーーーーー不意に彼は手を離し軽く離れ、“お辞儀”をした。
「お願いします」
「(こ、コれは……!!
かの有名なジャパニーズ・オジーギ!!!)」
周りの人々もこれには仰天した、中には
『セプク……ハラキーリ……アイツは命シラス!?』
と、中々意味のわからない事を呟いていた。
「(コノ90度では無い絶妙な角度…そして重ならズにいてアッピルしていない手!間違いありまセン……ニッポンジンがブシドーを通す時に使われるオジーギ………!!!)」
そして日本には昔からこんな言葉がある。
【武士道とは、死ぬ事と見つけたり】
その言葉の意味はエルトナムはあまりよく知らない。
知らないが、本質は理解出来た。
つまり
『オイオイオイ、死ぬわアイツ』
『なんて覚悟だ……俺には到底出来ない、鋼、いやオリハルコンの覚悟だ…!』
「(こンな子が……いえ、こノ子だから…!“例え死んででも良い”なんて覚悟を!!)」
※ただの行儀の良いお辞儀です※
「(多分、これから試行を重ねるウチに、彼への負荷も減るとは思うけどそれでも危険がある……。私ニその覚悟がある?)」
※本当にただの行儀の良いお辞儀です※
彼はお辞儀を辞めない、其処に
「(ううん、違う……彼には怪我なんテさせない!!このサムライはーーーー!!!)」
※何度でも言います、ただの行儀の良いお辞儀です※
藤色の髪をピンと指で弾き、エルトナムはオーキッドの瞳に彼を映す。
彼なら、いや、彼こそが、必要なのだろう。
「コチラコソ、よろしクお願いしますネ。」
ニコリと、花が咲いたかの様な笑顔を向ける。
バッと、お辞儀を解いた彼は呆けた表情をし。それは徐々に喜びへと変わりーーーー
季節は3月の冬。ここに一人のIS男性操縦者、エジプト代表生が誕生した。
(特に)ないです