The beginning of a castle   作:里芋(夏)

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前話よりは変わってるかなぁって感触。
明日も17:00に投稿します。


前日に

曲のテンポに合わせて手を叩く音。

 

明日(・・)の本番に備え、第1レッスン場を貸し切って行ってきた練習も、このダンスが終われば一区切り。

 

 

 

 

「ーーワンツースリーフォー、ワンツースリーフォー、ワンツースリー、ハイ転、調!」

 

 

「…ワン、ツーハイッ!回転(ヘッドスプリング)からの跳ね!起き!(ネックスプリング)決、め、ポ、ー、ズ!」

 

 

 

 

 

 

「…どうだい、翼くんは?」

 

いつの間にか入って来た今西さんが俺にポカリを投げ渡しつつトレーナーさんへ一言。

 

 

「あー…まあまあ、ですかね?

でも翼くん、ヘッドスプリングも結構サクッと覚えてくれましたし、今週入ってからは全体通しても失敗は全然無いんで、ポーズ毎に身体をキチッと止められればまぁ…歌と合わせて及第点ってとこです」

 

「それは良かった、君の及第点は信用出来るからね」

 

 

「…こっちも新人なんですから、あまりプレッシャーかけんでください」

 

「その“新人”は346プロ社員としての新人だろう?

それを言ったら、僕だって新人プロデューサーだよ。アイドル部門としては」

 

 

「「ハハハハハ!」」

 

 

 

「…ありがとうございましたー」

 

楽しそうに話し込むおっさん二人を尻目にシャワールームへ。

 

 

 

 

明日のイベントは秋葉原の有名CDショップでのライブと握手会だ。

 

俺の初シングルは一昨日からそのCDショップ系列には全店並んでおり、売り上げも好調なんだそう。

 

 

…あ、当然だがその【好調】の前には“テレビに顔を出してない新人の売り上げとしては”ってのが付くけれども。

 

 

歌う曲は俺が入る(入社する)前からお抱えの作曲家さんにお願いしてあったようで、あの日からは歌にダンスにとレッスンの連続。

 

中学高校と運動部所属だったのもあって、体力だけは有るのが仇になった。

 

あのガチムチおっさんトレーナー、俺が筋肉痛だろうと何だろうとお構い無し、こっちがイグザスチョンするまでエンドレスでダンシングである。

しかも歌いながら。

 

クソッ、禿げろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャワールームから出たところで今西さんがスマホをいじっていた。

 

 

「翼くん、青木くん(トレーナーさん)から伝言だ。予定通りに合わせは17:00スタート。あと、腹が減っても軽いもので済ませろ…だって」

 

「時間以外ははいつも通りってことっすね?」

 

「うん、まぁそうだね。…はいどうぞ」

 

「お!ありがとうございます」

 

 

差し出されたのはあずきクリーム味のランチパック。

 

 

 

 

…貴様どこで俺の好みを知った!(完食後)

 

「いや、ウチの書類に全部書いてあるじゃないか」

 

 

「…そんな細かく書いてありましたっけ?」

 

「あ、これは特集誌用だったっけ?」

 

いや、だから何処でそれを知ったのかと

 

 

「…あぁ、そうそう。僕の方もあっち(前の部署)の引き継ぎと教導は終わったから、今日からはしっかり翼くんのプロデューサーとして働けるよ」

 

へー、それは良かった…のか?

 

 

「…そういや気になってたんですけど、プロデューサーってどんな仕事なんですか?」

 

担当アイドルの仕事持ってきて、スケジュール管理して、送り迎えして…くらいしか思い浮かばないんだけど。

担当に専念してくれる、っつってもメリットが見えないんじゃなんともなぁ…

 

 

「…まず担当アイドル“達”のスカウト、もしくは面接だろう?

それから、担当の子のプロフィールとか載っけたウェブページを346のサイト上に作って…

仕事を取ってきたり、来たのがヤバそうな仕事だったら断ったり。

後は、今後のレッスンの予定とかトレーナーさんとの打ち合わせ。

時間がある時は上の方々に新しい企画考えて出す…みたいな」

 

 

 

「…お、おおう…っていうか、今の話からして俺のプロフィールも既に載ってるんすか?」

 

「もちろん」

 

ほらこれ、と社員用スマホで見せられたのはそのページ。

写真とかも結構貼ってあるな。

 

 

「しかも、これからは俺以外にも担当するアイドルが増えたり?」

 

「お、気付いたのかい?」

 

 

「…まぁ、あんなに“アイドル達”って強調されたら流石に。」

 

今西さんって意味ないことはしないタイプだし。

 

 

 

「うんうん、喜びたまえ男子大学生。次に来るのは女の子の方が多いぞ」

 

「へー、そーなんすか」

 

 

「…あれ?何らかの方面では食いついてくると思ったんだけど、意外とドライだね」

 

 

 

「…いやまぁ、相手が女性の時点で俺とユニット組む可能性はほとんど無いわけですし、レッスンルームとかも結構部屋数あるから被らないしで、実際接点を持つことは少ないかなー…と」

 

「まぁ、僕もそうなるとは思うけど…

新しいプロジェクトで一緒になることだってあるかもしれないから、最低限の付き合いくらいは頼むよ。」

 

あー…もしかして俺、女子苦手とかそういう勘違いされてる?

 

 

「いや、別に関わりたくないってわけじゃなくて、関わりたくても関われないって話であって。

小さい子も好きというか…相手するの得意ですよ?」

 

年の離れた妹がいるからな。

 

 

 

「…やーいロリコン(小声)」

 

「ヤメロォ!」

 

 

独身アラフォーめ!(偏見)

 

 

 

 

 

 

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