遊戯王GX 転生したけど原作知識はありません   作:ヤギー

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日常の一歩手前

「クククク。カーッハッハッハッハ!」

 

 低い笑い声が地下のデュエルコート中に響き渡り、私たち全員はその声の主であるお祖父さんを見る。

 周囲からの目線に構わず笑い続け、しばらく後満足したように笑い声を納めた。

 

「やはりな。俺の予想は正しかったようだ」

 

 誰に話すでもなく呟くお祖父さん。予想通りの結果がそんなに嬉しかったのだろうか。

 

「ああ、お前たち。もう帰っていいぞ」

「は?」

 

 唐突すぎるその言葉に各々から疑問の声が上がった。

 

「帰っていいと言ったんだ。俺にはもう用はないからな」

 

 淡々と告げるお祖父さんは、踵を返し入り口へ向かう。

 これで本当に解散なんだろうか。それはやはり自分勝手だと思う。格式張る必要はないけど、別れの挨拶のようなものがあってもいいのに。

 

「ああ、そうだ」

 

 お祖父さんが足を止める。

 

「お前たち。俺が渡したカードを大切にしておけよ。⋯⋯それではな」

 

 ニヤリと口角を上げて言うと、お祖父さんはデュエルコートを出て行った。

 

 

 

 これより、私たちはなんとも唐突感はあるけど、館を出てそれぞれの帰路に着いた。本当に行ってしまっていいのかと思ったけどお母さんたちは、お祖父さんの気が変わらないうちにさっさと帰ってしまおう、という風に意見をまとめていたので、それに従うことになった。

 善は急げということで、私たちの行動は早い。そのため、エリカとの別れの挨拶は呼びかけるくらいしかできなかったけど、学校に戻ればまたすぐに会えるし別段気にすることはしてない。

 ただ、エリカのどこか思いつめたような顔が心に引っかかり、離れなかった。

 

 

 

 家に着いたのが金曜日の夕方。一夜明けて土曜日は、家でゆっくりした。

 この日にお母さんが私の復学の手続きをしてくれて、月曜日からは授業に出られるようになった。嬉しいような、もっと休んでいたいような。そんな気分だ。

 そして日曜日になる。昼頃、お母さんとお父さんに挨拶して家を出た。

 電車に乗りバスに乗り換え港まで行き、船で島に着く頃には日が暮れていた。

 だいたい十日ぶりくらいの寮部屋。感慨はあまりないけど、旅疲れが溜まった身体を休めるには心地よい空間だ。

 ベッドに身を倒し、目をつむる。日常が戻ってきた感覚があった。お祖父さんの家とは違い、生温さのようなものを感じる。

 こうしてこことあの場所を比べてみると、あの場所の異常さがよくわかった。よくない空気がどこからか漏れ出てきているかのような空気感。まるで別世界繋がっているような⋯⋯。

 まあ、今日からまた高校生活を享受していく私にとって、関係のないことだ。

 それにしても——。

 それにしても、デュエルがしたい。その欲求が強まってきた。

 今日はもう寝てしまおう。

 

 

 

 次の日、日常は戻ったけど平穏ではなかった。

 私とエリカの同時期の休学、そして同じ日に復学。これをただの偶然ではないと勘ぐったクラスメイトたちが根掘り葉掘り聞いてきたのだ。

 代わる代わる聞いてくるクラスメイトに何回も事情を説明するのは骨が折れたけど、この日を丸ごと回答に費やすことでようやく質問の嵐が止んだ。

 そして復学から二日目、とある男子生徒が私に話しかけてきた。

 

「優姫さん。俺とデュエルしない?」

 

 その人の名前は沢木くん。そういえば前もこんなやり取りをしていたな、と記憶を振り返り、こうなったらエリカが飛んでくるぞと思った。

 しかしエリカが来ることはない。

 

「優姫さん?」

「あ、うん。いいよ」

「じゃあ、デュエル場に移動しようか」

 

 そう言いつつ、エリカに視線を向けると目が合った。エリカは口を開きなにかを言おうとしていたけど、それをやめて顔を伏してしまう。

 まだ負けたことを気にしているんだろうか。

 

 

 

「久しぶりだな、こうしてデュエルするのは」

「そうだね。十日ぶりくらいかな」

 

 前に沢木くんとデュエルしたのは、デッキを六十枚にしたときの調整でやったときか。思えば、あのときを除いてエリカと友だちになってからはエリカ以外、誰ともデュエルしてないな。

 案外このデュエルは珍しいことなのかもしれない。

 

「邪魔が入らないうちに始めようか」

「うん」

「「デュエル!」」

 

沢木龍馬LP4000

保科優姫LP4000

 

「私が先攻だよ、ドロー! 私は《魔界発現世行きデスガイド》を召喚。効果でデッキから《魔犬オクトロス》を特殊召喚する」

 

《魔界発現世行きデスガイド》攻撃力1000

《魔犬オクトロス》攻撃力800

 

「魔法カード《トランスターン》を発動。《魔犬オクトロス》を墓地に送り、そのモンスターと同じ種族、属性でレベルが一つ高いモンスターである《メルキド四面獣》をデッキから特殊召喚」

 

《メルキド四面獣》攻撃力1500

 

「ここで墓地に送られた《魔犬オクトロス》の効果発動だよ。デッキから悪魔族のレベル8モンスター、《仮面魔獣デス・ガーディウス》を手札に加える。そしてフィールドの《メルキド四面獣》を含む二体のモンスターをリリースして《仮面魔獣デス・ガーディウス》を特殊召喚する!」

 

《仮面魔獣デス・ガーディウス》攻撃力3300

 

 私の中の《デスガイド》テンプレその一がこれだ。手札に《デスガイド》と《トランスターン》があるときはいつもこう動くことにしている。こうでもしないと私のでじゃ《デス・ガーディウス》なんて出せないからね。

 

「攻撃力3300⋯⋯」

「私はこれでターンエンド。沢木くんはこれをどう対処する?」

 

保科優姫LP4000 手札4枚

《仮面魔獣デス・ガーディウス》攻撃力3300

 

「1ターン目からこんなモンスターを出してくるなんて、さすがは優姫さんだ。でもなんとかできない俺じゃないぜ! ドロー! 自分フィールド上にモンスターがいないとき、手札から《フォトン・スラッシャー》を特殊召喚だ!」

 

《フォトン・スラッシャー》攻撃力2100

 

「《フォトン・スラッシャー》?」

 

 沢木くんのデッキは《大革命》のデッキだ。このカードって合うのかな。

 

「ああ、優姫さんはまだ知らなかったな。新しいデッキを作ったんだ」

「そうなんだ。どんなデュエルになるか楽しみだよ」

「ああ! 期待していいぜ。俺はフィールドの戦士族モンスターの《フォトン・スラッシャー》をリリースして《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

《ターレット・ウォリアー》攻撃力1200→3300

 

「このカードの攻撃力はリリースしたモンスターの元々の攻撃力分アップする!」

「《デス・ガーディウス》と攻撃力が並んだ!」

「そうだ! 《ターレット・ウォリアー》で《デス・ガーディウス》に攻撃!」

「くっ、相打ちになっちゃったか」

 

 相手フィールドにモンスターがいない状況で破壊されるとコントロールを奪えない。

 

「どうだ。対処したぜ?」

「さすがだね。《ターレット・ウォリアー》ってことは戦士族デッキ?」

「ああ、そうだ。俺は《切り込み隊長》を召喚する。その効果で手札からレベル4以下のモンスター、《切り込み隊長》を守備表示で特殊召喚だ」

 

《切り込み隊長》攻撃力1200

《切り込み隊長》攻撃力1200

 

「俺はこれでターンエンド。このモンスターは攻撃対象を自身に制限する効果をもっている。つまり攻撃できないってことだ。優姫さんはこれをどうする?」

 

沢木龍馬LP4000 手札2枚

《切り込み隊長》攻撃力1200

《切り込み隊長》攻撃力1200

 

 俗に言う切り込みロックってやつか。

 でも簡単、戦闘できないなら効果でどっちかを破壊すればいいんだ。

 

「私のターン、ドロー。こうするよ《戦慄の凶皇—ジェネシス・デーモン》を召喚!」

 

《戦慄の凶皇—ジェネシス・デーモン》攻撃力1500

 

「効果発動! 手札の《デーモン・ソルジャー》を除外して《切り込み隊長》を破壊する!」

「崩されたか!」

「そして《ジェネシス・デーモン》で残った《切り込み隊長》に攻撃!」

 

沢木龍馬LP4000→3700

 

「私はカードを一枚伏せてターンエンドだよ。このとき妥協召喚した《ジェネシス・デーモン》は破壊される」

 

保科優姫LP4000 手札2枚

セットカード1枚

 

「俺のターン、ドロー! 来たぜ! 俺は魔法カード《トレード・イン》を発動、手札の《フェニックス・ギア・フリード》を墓地に送り2枚ドローする!」

 

 来た、とは《フェニックス・ギア・フリード》のことかな。

 墓地に送ったということは蘇生手段があるということだ。

 

「そして《エヴォルテクターシュバリエ》を召喚だ!」

 

《エヴォルテクターシュバリエ》攻撃力1900

 

「さらに装備魔法《スーペルヴィス》を発動! 装備モンスターを再度召喚の状態にする! これにより効果モンスターとなった《エヴォルテクターシュバリエ》の効果発動だ! 《スーペルヴィス》を墓地に送り、セットカードを破壊する!」

 

 これはほっとくとまずいな。

 

「私はその効果にチェーンして伏せカードを発動《悪魔の嘆き》! 沢木くんの墓地にある《フェニックス・ギア・フリード》をデッキに戻して、私のデッキから悪魔族モンスターを墓地に送る!」

「なにっ!?」

「墓地に送るモンスターは《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》! よってこのモンスターの効果を発動する。デッキから《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》を守備表示で特殊召喚!」

 

《彼岸の悪鬼ガトルホッグ》守備力1200

 

「くっそー! 倒せると思ったのになあ!」

 

 《スーペルヴィス》は墓地に送られたとき、墓地の通常モンスターを蘇生する効果がある。デッキに戻した《フェニックス・ギア・フリード》はデュアルモンスターで、墓地にいるときは通常モンスター扱いとなっているから、私に邪魔されなかったら蘇生できていた。

 《エヴォルテクターシュバリエ》の効果で私のフィールドをガラ空きにしてからの一斉攻撃で勝てると踏んだんだろう。

 

「残念だったね」

「まあいいさ! 俺は《エヴォルテクターシュバリエ》で《ガトルホッグ》に攻撃!」

「破壊された《ガトルホッグ》の効果。墓地の《グラバースニッチ》を蘇生させるよ!」

 

《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》守備力1500

 

「俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

沢木龍馬LP3700 手札0枚

《エヴォルテクターシュバリエ》攻撃力1900

セットカード1枚

 

「私のターン、ドロー! よし、魔法カード《儀式の下準備》を発動する! デッキから儀式魔法《善悪の彼岸》とこれに記された《彼岸の鬼神ヘルレイカー》を手札に加える! そして《善悪の彼岸》を発動! フィールドの《グラバースニッチ》と手札の《魔サイの戦士》をリリースして《彼岸の鬼神ヘルレイカー》を儀式召喚!」

 

《彼岸の鬼神ヘルレイカー》攻撃力2700

 

「墓地に送られた《グラバースニッチ》と《魔サイの戦士》の効果発動。デッキから《彼岸の悪鬼スカラマリオン》と《暗黒界の龍神グラファ》を墓地に送る!」

 

 これで準備はできたかな。

 

「バトル。《ヘルレイカー》で《エヴォルテクターシュバリエ》に攻撃!」

「そうはさせない! 罠発動《鎖付きブーメラン》! 《ヘルレイカー》を守備表示にして、このカードを攻撃力500アップの装備カードとして《エヴォルテクターシュバリエ》に装備する!」

 

《彼岸の鬼神ヘルレイカー》守備力2200

《エヴォルテクターシュバリエ》攻撃力1900→2400

 

「《鎖付きブーメラン》⋯⋯。そうか、《エヴォルテクターシュバリエ》の効果を活かすためにか」

「そういうことだぜ!」

「⋯⋯エンドフェイズ時、《スカラマリオン》の効果でデッキから悪魔族、闇属性、レベル3モンスターの《暗黒界の狩人ブラウ》を手札に加えて、ターンエンド」

 

保科優姫LP4000 手札2枚

《彼岸の鬼神ヘルレイカー》守備力2200

 

「俺のターン、ドロー! 《エヴォルテクターシュバリエ》を再度召喚! そして効果! 《鎖付きブーメラン》を墓地に送り《ヘルレイカー》を破壊する!」

「それなら破壊された《ヘルレイカー》の効果発動! 《エヴォルテクターシュバリエ》を墓地に送るよ!」

「くっ、破壊されたか。だったら魔法カード《二重召喚》を発動して《蒼炎の剣士》を召喚だ!」

 

《蒼炎の剣士》攻撃力1800

 

「バトル! 《蒼炎の剣士》でダイレクトアタック!」

「くぅっ!」

 

保科優姫LP4000→2200

 

「ターンエンド!」

 

沢木龍馬LP3700 手札1枚

《蒼炎の剣士》攻撃力1800

 

「私のターン、ドロー!」

 

 うん、いいカード。場も整ってるしそろそろ決着をつけよう。

 

「私は魔法カード《終わりの始まり》を発動! 墓地の闇属性モンスターが7体以上のとき、5体除外して、3枚ドローする! 次に《暗黒界の狩人ブラウ》を召喚、そしてこのカードを手札に戻して墓地の《暗黒界の龍神グラファ》を特殊召喚!」

 

《暗黒界の龍神グラファ》攻撃力2700

 

「続いて装備魔法《D・D・R》を発動する、手札を1枚捨てて除外されている《戦慄の凶皇—ジェネシス・デーモン》にこのカードを装備して特殊召喚!」

 

《戦慄の凶皇—ジェネシス・デーモン》攻撃力3000

 

 後もう1枚!

 

「《死者蘇生》を発動! 墓地の《仮面魔獣デス・ガーディウス》を特殊召喚する!」

 

《仮面魔獣デス・ガーディウス》攻撃力3300

 

「う、うわ⋯⋯。3体も⋯⋯」

「まだ行くよ! 私は自分フィールド上の全てのモンスターをリリースして《真魔獣ガーゼット》を特殊召喚!」

 

《真魔獣ガーゼット》攻撃力9000

 

「やべぇ⋯⋯っ!」

 

 《ガーゼット》は必要なさそうだけど、出したかったんだ。攻撃力9000なんて滅多に見られないからね。ごめんね?

 

「《ガーゼット》で《蒼炎の剣士》に攻撃!」

「ぐわぁあああ!」

 

沢木龍馬LP3700→0

 

 うわあ、凄いな⋯⋯。モンスターとライフが一瞬で消し飛んだよ。リアルダメージがあってもおかしくないくらいの迫力だったな。

 

「沢木くん、大丈夫?」

「ああ、平気だ! いやあ、凄かったな、今の。いい一撃だったよ」

「そう? ありがとう」

 

 なんともないなら良かったよ。

 

「あっ、そろそろ時間だね。教室に戻ろうか」

「そうだな。⋯⋯なあ、良かったらまた今度デュエルしないか?」

「いいよ、エリカに止められなかったらね」

 

 あるいは私はそれを望んでいるのかもしれなかった。

 

 

 

 深夜。

 私は夢の中で目を覚ました。

 目の前にはエリカがいて、私に向けてなにか話している。よく聞こえなかったから耳を傾けたけど、それでも聞こえなかった。

 するとエリカは怒鳴りつけるように口を大きく開けた。その声も聞こえない。でもそれは私が無視したから怒ってるんだと思った。

 しばらくするとエリカは怒りを収め、表情が曇って行く。どんどん沈んで行き、ついには泣き顔になってしまった。

 なぜそうなっているのかわからなかったけど、私のせいなんだと直感した。

 慰めなければいけない。その思いにかられ私はエリカを抱きしめた。

 エリカも私の背中に腕を回す。ギュッと抱くその腕は力強い。その力はどこまでも、どこまでも強くなっていった。

 そして息苦しさを感じる辺りで私は異変を感じた。しかし離れようとしても、エリカがそれを許してくれない。

 圧迫感が極まったそのとき——。

 

『優姫ちゃんっ! 起きて! 目を覚ましてっ!』

 

 デスガイドの叫び声が聞こえた気がした。

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