前方には見渡すかぎりの海と快晴の青空。
私は今、船に乗っていた。その理由はデュエルアカデミアに行くためだ。
人生で初めての船。波の音や風、匂い、全てが新鮮で清々しい気分だ。
こんなに気持ち良いのなんて今まで経験したことないっ。
「ああ、やっぱりデュエルアカデミアに入学して良かった」
感嘆の言葉が漏れたが、返答はなかった。
デスガイドは精霊界で仕事があるらしくて、今ここにはいない。⋯⋯なんだかちょっと寂しい。
「おー、いたいた。ここにいたのか!」
どこかで聞き覚えのある声がして振り向くと、昨日ぶつかった少年と、ちょっと小さいのと、すごく大きいのがいた。
と言ってもそれは私目線の話しで、男の子としてなら小さい方はすごく小さいし、大きい方は普通くらいだろう。
「俺、遊城十代っていうんだ。この前は悪かったな、押し倒しちゃって」
「ん、大丈夫だから、気にしないで。私は保科優姫だよ」
ちゃんと会話できるかな。
実は私、男の子との会話ってあまりしたことないから、上手くできるか自信ない。
しかも、3対1。デスガイドが居てくれたら、ちょっとは落ち着くかもしれないのに。
「俺は三沢大地だ。よろしく頼む」
「ぼ、僕は丸藤翔ッス。よよよよろしくっス!」
「う、うん。こちらこそよろしくね」
すごくテンパってるけど、どうしたんだろう。
「どうしたんだ、翔? そんなに動揺して」
「だって、アニキ! 優姫ち⋯⋯、さんは、有名人なんだよ!」
「へえー、優姫って有名人だったのか」
「私って有名人だったの?」
そんな自覚全然なかったけど。
「ははっ、翔は実技試験のことを言ってるんだろう? 保科君のデュエルの盛り上がりはとてつもなかったからな」
「アニキは遅刻していなかったけど、凄かったんスからね!」
「そんなに言うんなら、俺も見てみたかったなー。あっ、そうだ! 優姫、今からデュエルしよう! そしたら優姫の凄さが俺にもわかる!」
「ええっ、今から?」
なんか、おかしな展開になってきた。
「みたいっス!」
「俺も同感だ。船も出たばかりだし。アカデミアに着くにはまだ時間がある」
これはもしかして、逃げられない感じか。
「そこまで言うなら、やる?」
「よっしゃー! そうこなくっちゃな!」
「「デュエル!」」
保科優姫LP4000
遊城十代LP4000
「俺から行かせてもらうぜ! ドロー!」
あっ、またとられちゃった。
「俺は、魔法カード《強欲な壺》を発動して、2枚ドローする。さらに《融合》を発動! 《E・HEROフェザーマン》と《E・HEROバーストレディ》を融合して、《E・HEROフレイム・ウイングマン》を攻撃表示で召喚する! そして、カードを3枚伏せて、魔法カード《悪夢の蜃気楼》を発動。相手のスタンバイフェイズに手札が4枚になるようにドローするぜ! ターンエンドだ。さあ、優姫! お前のデュエルを見せてくれ!」
遊戯十代LP4000 手札0枚
《E・HEROフレイム・ウイングマン》攻撃力2100
永続魔法《悪夢の蜃気楼》
セットカード3枚
「私のターン、ドロー!」
「このとき、俺は《悪夢の蜃気楼》の効果で4枚ドロー。さらに速攻魔法《サイクロン》で《悪夢の蜃気楼》を破壊だ」
「うん」
ヒーローか。
あんまり詳しくないな。
いやいやいや、そんなことよりだよ!
4枚ドローってズルくない? デメリットも消してきたしさ。
「手札から《封印の黄金櫃》を発動! デッキから《エンド・オブ・アヌビス》を除外する」
でもヒーローといえば融合だ。
エンドオブアヌビスなら、墓地を封じて、その再利用をできなくすることができる。
手札には《D・D・R》があり、今すぐにでも召喚できるけど⋯⋯。
まだそのときじゃないね。
「さらに《魔界発現世行きデスガイド》を召喚! その効果でデッキから、《クリッター》を守備表示で特殊召喚!」
《魔界発現世行きデスガイド》攻撃力1000
《クリッター》守備力600
どうでもいい話しだけど、クリッターとクリボーってちょっと似てない?
そのうち羽クリッターとか出てこないかな。
⋯⋯出てこないか。
『デスガイドっ、召喚されましたぁー!』
「うわっ、喋った!」
あっ、ヤバっ。
「すごいっ! デスガイドちゃんが喋ったッス!」
「ソリッドビジョンにしては自己主張が強すぎないか?」
あれ、2人にも見えるんだ。ソリッドビジョンだから?
「そいつが優姫の精霊かー、よろしくな!」
『ヨーロシクッ!』
十代くんとデスガイドはグッと親指を立てた。
ていうか今、精霊って言った。十代くんもやっぱり見える人なんだね。
『優姫ちゃんっ。2人でデュエル、頑張ろうね?』
「あ、うん。フフッ。頑張ろう」
なんかデスガイドがすごく頼もしく見える。
「よし、私はカードを2枚伏せてターンエンドだよ」
保科優姫LP4000 手札2枚
《魔界発現世行きデスガイド》攻撃力1000
《クリッター》守備力600
セットカード2枚
「案外消極的なんだな」
文面だけだと皮肉っぽいけど、すごい、ワクワクって顔だ。
「フフッ。勝負はまだこれからだよ?」
「それもそうだな。俺のターン、ドロー。俺は《カード・ガンナー》を召喚!」
《カード・ガンナー》攻撃力400
「《カード・ガンナー》の効果発動! デッキの上から、3枚墓地に送って攻撃力このターンのみ1500アップさせる!」
《カード・ガンナー》攻撃力400→1900
良いカードだ。墓地肥やしできるし、破壊されたときドローもできる。
ここからじゃ、なにが落ちたか見えないな。
「バトルだ! 《カード・ガンナー》で《クリッター》に攻撃!」
クリッターは守備表示だからダメージは入らない。
「《クリッター》の効果! デッキから《バトルフェーダー》を手札に加える!」
「次はフレイム・ウイングマンでデスガイドを攻撃!」
ヤバい。
フレイム・ウイングマンはダメだ。
アレは絶対ダイレクトするマンだから、通さないよっ。
ライフが4000でそれはしんどすぎる。
「罠発動! 《強制脱出装置》。フレイム・ウイングマンを手札に戻す!」
「くっ、防がれたか。やるな、優姫! ターンエンドだ」
遊城十代LP4000 手札4枚
《カード・ガンナー》攻撃力400
セットカード2枚
「今度はこっちから攻めるよ! 私のターン、ドロー!」
十代くんのモンスターは《カード・ガンナー》だけ。伏せカードが2枚あるけど、こっちには《バトルフェーダー》がある。返しのターンは問題ない。
攻めどきだ。
「私は《闇の誘惑》を発動! 2枚ドローし、《闇の侯爵ベリアル》を除外する! さらに《デーモン・ソルジャー》を召喚」
《デーモン・ソルジャー》攻撃力1900
サイクロンが引きたかったけど、こないなら仕方ない。
こんなところじゃ立ち止まらないよっ。
「手札を1枚捨てて装備魔法《D・D・R》を発動! さっき除外したベリアルを特殊召喚する!」
《闇の侯爵ベリアル》攻撃力2800
「えーと、優姫さんのモンスターの攻撃力の合計が5700で、アニキが400。アニキっ。このままだと負けちゃうッスよ!」
「いや、それはどうだろうな。十代にはまだ伏せカードが2枚ある。それにあの十代の楽しそうな顔を見てみろ。絶対なにかある」
それは私もわかってた。私が展開していくほど、ワクワク顔は深まっていくばかりだ。
つい、もっと楽しませてあげたくなってしまう。
「フフッ。でも勝つのはわたしだよっ」
「おっ、言ったな! だったら攻めてこいよ、返り討ちにしてやるぜ!」
良し、行こう。
「バトル! まずは——」
まずは、どうする。
そう。されて困ることはなにかだ。
伏せカードがミラーフォースとかだったらまだいい。《バトルフェーダー》があれば、直接攻撃はされず、バトルフェイズを強制終了できる。その後はこの手札と次のドローでどうとでもできる。
けど、下手に私のモンスターが残って、バスガイドとかを素で立たせておいてもいいんだろうか。
上から殴られてそのままライフが尽きるかも。その場合、直接攻撃じゃないから、《バトルフェーダー》じゃふせげない。
⋯⋯ヒーローについてもっと知っとけばよかった。
知らないことは考えてもわからないし、とりあえず攻撃してみよう。
「まず、《ベリアル》で《カードガンナー》に攻撃するよ」
「ああ、いいぜ、通す」
遊戯十代LP4000→1600
「このとき、カードガンナーの効果発動! さらに罠発動《ヒーロー・シグナル》! 1枚ドローとデッキから《E・HEROスパークマン》を守備表示で召喚だ!」
《E・HEROスパークマン》守備力1400
「だったら、《デーモン・ソルジャー》で《スパークマン》を攻撃!」
「それはさせない! 罠発動! 《ヒーロー・バリア》《デーモン・ソルジャー》の攻撃を無効にする!」
「防がれたか。じゃあ仕方ない。永続罠発動!《闇次元の解放》。除外されている、《エンド・オブ・アヌビス》を特殊召喚! 《スパークマン》に攻撃!」
「くっ、スパークマンは破壊される」
倒せなかった⋯⋯。《デスガイド》で攻撃しても600残る。
なら攻撃しない。
「メインフェイズ、《デスガイド》を守備表示にしてターンエンド」
保科優姫LP4000 手札2枚
《闇の侯爵ベリアル》攻撃力2800
《エンド・オブ・アヌビス》攻撃力2500
《デーモン・ソルジャー》攻撃力1900
《魔界発現世行きデスガイド》守備力600
「俺のターン。ドロー! ハハッ、優姫。どうやらこのデュエル、このターンで終わりみたいだぜ!」
「その6枚目の手札で私を倒すまでいけるって言うの? 一応言っておくけど、《ベリアル》の効果で《ベリアル》以外には攻撃も、効果の対象にもできないから。それに、《エンド・オブ・アヌビス》の効果で、墓地で発動する効果も、墓地に及ぶ効果も無効になるけど、それでも?」
「ああ、それでもだ。知らなかったか? ヒーローにできないことなんてないんだぜ?」
それは⋯⋯。そうまで言うんなら。
「見てみたいな」
「見せてやる! まずは《E—エマージェンシーコール》を発動。デッキから《E・HEROスパークマン》手札に加え、召喚する。ヒーローがいなきゃ始まらないってな。そして、《R—ライトジャスティス》だ。《闇次元の解放》を破壊!」
《E・HEROスパークマン》攻撃力1600
「《闇次元の解放》を破壊ってことは、《エンド・オブ・アヌビス》も除外ってことッスね」
「ああ、対象がモンスターではなく罠カードだから《ベリアル》の効果は発動されない。良い手だ」
「でも、破壊するなら《ベリアル》の方が良かったんじゃないっスか? あっちの方が攻撃力が高いし」
「違うな、融合使いの十代にとっては《エンド・オブ・アヌビス》の方が厄介なんだよ。墓地が使えないってのは、それだけで痛手だからな」
その通りだ。墓地は第2の手札とも言われている。
「そういうもんスかねぇ」
「ま、見てればわかるさ」
ここまでは想定している。十代くんなら普通にやってのけるとわかっていた。
問題はここから。墓地が解放されてからだ。
「俺は手札から《融合回収》を発動! 墓地の《融合》と、融合素材となった《E・HEROフェザーマン》を手札に加え、手札から《O—オーバーソウル》を発動。墓地の《E・HEROバーストレディ》を特殊召喚する」
「な?」
「アニキ⋯⋯、すごいっス! 墓地をこんなに活用するなんて!」
「手札の《フェザーマン》とフィールドの《バーストレディ》で融合! 《E・HEROフレイム・ウイングマン》を融合召喚!」
《E・HEROフレイム・ウイングマン》攻撃力2100
《E・HEROスパークマン》攻撃力1600
「まだまだ行くぜ! 《フレイム・ウイングマン》と《スパークマン》を融合だ! 《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》
!」
《E・HEROシャイニング・フレア・ウイングマン》攻撃力3700
フレイム・ウイングマンが素材か。嫌な予感しかしない。
「《シャイニング・フレア・ウイングマン》の効果は、墓地のヒーローに1体につき300アップする。そして、戦闘で破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えるぜ!」
やっぱりか。
「でも、攻撃力3700なら私のライフは削りきれないよ」
このターンさえ終われば、まだ勝機はある。
「仕上げはこの最後の手札さ。魔法発動! 《H—ヒートハート》《シャイニング・フレア・ウイングマン》の攻撃力を500アップさせ、貫通効果を与える!」
負け、か。
「攻撃!」
保科優姫LP4000→0
手札枚数の勘違いで後から無理やり捻じ曲げたりしたんで、不自然なとことかあるかもしれないけど、スルーでお願いします。