遊戯王GX 転生したけど原作知識はありません   作:ヤギー

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VS大徳寺 闇のゲーム

「さて、大徳寺先生。たった今優姫様は貴方の秘密を知ってしまいましたが、口止めしなくてもよろしいんですか?」

『うわー、あの人自分でバラしといてあんなこと言ってるよ』

 

 なんだこの状況は。あの人は誰なんだ。夜闇家の使用人とか言ってたけど、敵なの? ていうか敵ってなんだ。

 いや、今は一つずつ処理していこう。

 

「大徳寺先生。大丈夫です、私なにも言いませんから。むしろ大ごとである程口は固くなりますから」

「⋯⋯安心するニャ。君のことは信用しているニャ」

 

 いや、その顔は決めかねている顔だ。生徒と教師という間柄とはいえ、会話するのはほぼ初めてだし信用できるほど私のことは知らないだろう。

 さっき沙夜って人が言ったことは、大徳寺先生が抱える秘密のことだってことはわかる。でも正直あんまり意味は理解できなかった。棺桶にはいっているのは大徳寺先生本人って言ったけど、じゃあこの人は誰なんだって話だ。だからきっと、先生が私を信用するというのは、私が正しく理解できていないと思ったからだ。

 しかしこの後、そこら辺を丁寧に説明されて私がはっきり理解してしまうのはまずい。その前にこの場を去るのが得策だ。

 

「先生、私なにも知らないから今のうちに帰りますよ」

「そうはさせません」

「うぇっ!?」

 

 通路に向かって走り出すと、バチンとなにもないはずの空間に顔をぶつけよろめいた。

 

「なに、これ⋯⋯?」

『結界だね。こんなこともできるなんて、ホントに何者?』

 

 結界? そんな非現実的な。いや、それはあまり問題じゃないな、非現実的なことなんて身近に体現してるひとがそこに浮いてるし。

 きっと、夜闇の人らしいしなんか不思議なアイテムでも使ったんだろう。

 

「ふう、まどろっこしいことは苦手ですね。単刀直入に言います。今からお二人にはデュエルをしていただきます」

「デュエル?」

「私と先生が? なんで、ですか?」

「優姫様、私に敬語など要りません。理由は当主様がそう望まれたからです」

 

 当主様ってお祖父さんのことだよね。これは面倒事の予感がする。

 

「そ、それだけかニャ?」

「沙夜さん。もっと詳しく教えてよ」

「優姫様、私にさんなど要りません。当主様は優姫様の夜闇としての資質を調べろと私に命じられました。ですのでその方法として、優姫様にはこれより五戦、私が指定する方とデュエルしていただきます。ご理解いただけたでしょうか」

 

 つまり完全に家庭の事情で大徳寺先生は関係ないってこと? 棺桶のこととかは別件? まあ、デュエルしたらいいだけなら話しは早い。先生はとばっちりもいいとこだけど。

 

「わかったよ。⋯⋯先生、すいませんけど付き合ってもらえますか。後、棺桶のこととかよく意味がわからなかったんで大丈夫です」

「そういうことならいいですニャ。デュエルしましょうか」

「デュエルディスクはこちらに二つご用意しておりますので」

 

 沙夜は機械の上に置いてあったデュエルディスクを手に取り、仰々しく私に渡す。続いて同じようにもう一つを大徳寺先生に渡した。

 私たちはそれを腕にはめて十分な距離をとる。

 

「それでは始めて下さい」

「「デュエル!」」

 

保科優姫LP4000

大徳寺先生LP4000

 

「ああ、その前に。一つだけ言い忘れていたことがありました。この夜闇家特製の指輪の力により、このデュエルは闇のゲームになっておりますのでどうかご注意下さい、優姫様」

「闇のゲーム?」

「なっ、どういうことだ!」

「ご存知ありませんでしたか。闇のゲームとは命や精神を賭けたゲームのこと。今回のデュエルではライフにダメージが与えられたとき、同等の分だけ精神的ダメージも加わるというものになっております。さあ優姫様。貴女に備わる夜闇の力を私にお見せ下さい」

 

 沙夜は表情を変えずに説明する。そこからは本当のことなのか、からかっているだけなのか判断がつかないけど、大徳寺先生の反応を見るに闇のゲームとやらの存在自体はある可能性が高い。詰まる所、これはただのデュエルじゃないのかもしれないってことだ。

 精神的ダメージがどういうものかわからないけど、フレーズ的に危険なのは想像できるし律儀に言う通りにする必要はないな。

 

「ごめんだけど、そういうことなら私はサレンダーさせてもらうよ」

「それは不可能です。このデュエルに降参という手段は存在しません。⋯⋯どうやら優姫様は乗り気ではないご様子ですね。でしたらこうです」

「ぐぉおお⋯⋯っ!」

「先生!」

 

 大徳寺先生が突然、デュエルディスクを装着した方の腕を押さえつけて呻きだした。

 

「彼のデュエルディスクには、使用者が強制的に全力のデュエルをするようになる呪いがかかっています。ですので優姫様も本気でデュエルすることをお勧めします。でないと大ダメージを受けて死ぬことだって有り得ますよ? 私としては別にそれでも⋯⋯。おっと、口が滑りました」

「始めからこのつもりで⋯⋯っ!」

「私の先攻だ、ドロー!」

 

 大徳寺先生が威勢良くカードをドローした。普段の飄々とした表情は消え去り闘志を剥き出しでこちらを見据えている。こんなにも変わってしまうのか。もしかしたら普段の態度は偽りのものなのかもしれない。

 もう逃げ道はないか。こうなったら仕方ない。

 確かさっきライフダメージと同等の精神ダメージがあるって言ってたっけ。だったらなるべくライフダメージを細かく刻んでどっちかのライフをゼロにするのが最善か。

 

「私は永続魔法《練金釜—カオス・ディスティル》を発動! このカードにより私の墓地に行くカードは全て除外される」

「除外か」

 

 《カオス・ディスティル》は初めて見るカードだけど、除外効果があるということは次元ギミックが含まれるデッキってことだろう。

 

「魔法カード《鉄のランプ》を発動! このカードは《カオス・ディスティル》が場にあるとき《練金獣・鉄のサラマンドラ》を特殊召喚する!」

 

《練金獣・鉄のサラマンドラ》守備力500

 

「《練金獣》は通常召喚できない代わりに、相手へのダイレクトアタックを可能にする」

「ダイレクトアタックを⋯⋯っ」

 

 守備を固めてデッキ切れまで待つ戦法も考えてたけど、このデュエルに置いては無理そうだ。

 

「さらに魔法カード《銀の鍵》、《銅の天秤》を発動! 2枚のカードにより《練金獣・銀のムーンフェイス》、《練金獣・銅のウロボロス》を特殊召喚!」

 

《練金獣・銀のムーンフェイス》守備力500

《練金獣・銅のウロボロス》守備力500

 

 2枚の魔法カードが、ソリッドビジョンに映し出された練金釜に入れられ燃やされる。そしてそこから、それぞれのカードに対応した練金獣がモンスターとなって召喚された。

 

「私はこれでターンエンド」

 

大徳寺先生LP4000 手札2枚

《練金獣・鉄のサラマンドラ》守備力500

《練金獣・銀のムーンフェイス》守備力500

《練金獣・銅のウロボロス》守備力500

永続魔法《練金釜—カオス・ディスティル》

 

「成る程。錬金術のデッキなんだね、面白い。さすがは錬金術の先生だ」

「ふっ。そういえば君はよく熱心に私の授業を受けていたね。だが残念ながら錬金術の素質はないようだ。⋯⋯全く、彼も君のような生徒だったら良かったんだが」

「彼?」

「いや、こちらの話だ。続けなさい」

「はあ。ドロー!」

 

 彼が誰かはさておいて。

 先生のフィールドには弱小モンスターが3体。そのどれもが直接攻撃可能なモンスターだ。デッキ全体の内容がわからないからなんとも言えないけど、個として見た《練金獣》ははっきり言って弱い。

 しかしこれは闇のゲームだ。ダメージを受けたらその分精神にもダメージが入る。今はまだ正しく理解できてないけど、なにかしらの苦痛があると考えていいはずだ。

 直接攻撃可能なモンスターを前に壁モンスターは意味をなさない。それならあのカードだ。

 

「私は《魔界発現世行きデスガイド》を召喚。効果でデッキから《クリッター》を特殊召喚する!」

 

《魔界発現世行きデスガイド》攻撃力1000

《クリッター》攻撃力1000

 

「そして2体のモンスターで《鉄のサラマンドラ》と《銀のムーンフェイス》に攻撃するよ!」

「私の破壊されたモンスターは墓地には行かず除外される」

 

 除外されたモンスターが練金釜の中へと吸い込まれて行った。これはただの演出ではないと思う。なにか意味があるんだ。そこを意識しておこう。

 

「私は魔法カード《二重召喚》を発動。2体のモンスターをリリースして《フレイム・オーガ》を召喚する!」

 

《フレイム・オーガ》攻撃力2400

 

「《フレイム・オーガ》と《クリッター》の効果で1枚ドローとデッキから《バトルフェーダー》を手札に加える。これでターンエンドだよ」

 

保科優姫LP4000 手札6枚

《フレイム・オーガ》攻撃力2400

 

 まずは《バトルフェーダー》を握りつつ様子見だ。《バトルフェーダー》は相手の直接攻撃を条件に発動できるカード。つまり《フレイム・オーガ》以上の攻撃力を持つモンスターが召喚されない限り、ダメージを受ける前に効果を使用できるのだ。この闇のゲームに置いては特に優秀なカードと言えるだろう。

 

「私のターン、ドロー! 《錫の魔法陣》を発動! デッキから《練金獣・錫アエトス》を特殊召喚する!」

 

《練金獣・錫のアエトス》攻撃力500

 

「そして《白の過程—アルベド》を発動! デッキから《黄金のホムンクルス》を特殊召喚だ!」

 

《黄金のホムンクルス》攻撃力1500→3600

 

「攻撃力3600⋯⋯っ! こんなモンスターがこうも簡単に」

「このカードは除外されている自分のカードの数×300ポイント攻撃力がアップする!」

「くっ!」

 

 私の《フレイム・オーガ》の攻撃力は2400。このままだとダメージは1200なる。それは1200の精神ダメージと同義だ。ライフの4分の1強と考えると大きい。

 さっき沙夜は大ダメージを受けたら死ぬことも有り得ると言っていたが、1200は大ダメージになるんだろうか。死を意識するとどうしても身が竦む。でもこれはもう逃れることはできない。覚悟を決めるしかないんだ。

 

「《銅のウロボロス》を攻撃表示にしてバトルフェイズだ! 《黄金のホムンクルス》の攻撃! ゴールデンハーヴェスト!」

 

 《黄金のホムンクルス》が腕を一振りした。すると無数の鋭く尖った石片が《フレイム・オーガ》に降りそそがれ、いとも容易く破壊される。

 立ち込める土煙の中、尚も石片の勢いは止まらず煙幕を飛び出し私に向かってきた。

 そして避けようのない痛みが私に到達する。

 

「あああああああああぁっ!」

 

保科優姫LP4000→2800

 

 ディスクに表示された数字は、いつもの様に淡白に変化を告げるがそれどころじゃない。今までにない痛みに頭が真っ白になっている。現象を理解しようと頭がぐるぐると高速回転している感覚があった。

 

「私は別に君を傷つけたいわけではないんだ。ただ、このデュエルに全力を尽くしたいだけなんだよ。だから攻撃の手を緩めたりはしない⋯⋯! 残りのモンスターでダイレクトアタックだ!」

「っ! さ、させない。手札から《バトルフェーダー》の効果を発動! このモンスターを特殊召喚してバトルフェイズを終わらせる!」

 

 ヤバイ、ヤバイ。呆けてる場合じゃない。

 すんごい痛かった。今でもまだ身体が痛がってる。でも身体に傷はない。不思議な感覚だ。これが精神的ダメージか。

 

「でも耐えられる。恐怖さえ忘れていれば、余裕で戦えるよ!」

「ほう、良い精神力だ。だが勝つのは私だ。魔法カード《黒の過程—ニグレド》を発動! このカードは場に《カオス・ディスティル》が存在し手札がゼロのとき、フィールドの《練金獣》を全て除外しその枚数につき2枚ドローする。私は2体の《練金獣》を除外したことによりデッキから4枚ドロー!」

「手札が一気に回復した⋯⋯っ」

「これこそが錬金術。無から有を創り出すということ。さらに私は自分のカードが4枚以上除外されていて、墓地にカードが存在しないとき魔法カード《カオス・グリード》を発動! 2枚ドローする!」

「また増強か」

「そして魔法カード《鉛のコンパス》と《水銀の砂時計》を発動、デッキから《練金獣・鉛のレオーン》と《練金獣・水銀のエケネイス》を守備表示で特殊召喚する! ここで忘れてはならないのが、ここまでに追加で除外されたカードは6枚、よって《黄金のホムンクルス》の攻撃力が1800アップしている。私はカードを2枚セット、これでターンエンドだ」

 

大徳寺先生LP4000 手札1枚

《黄金のホムンクルス》攻撃5400

《練金獣・鉛のレオーン》守備力500

《練金獣・水銀のエケネイス》守備力500

永続魔法《練金釜—カオス・ディスティル》

セットカード2枚

 

 攻撃力5400か、戦闘破壊は狙うべきじゃないな。ただあのモンスターはただの脳筋モンスターで壁さえあれば怖くない。そういう意味では《練金獣》の方が厄介だ。正直、もうダメージは負いたくないから早々に破壊したい。でもあの伏せカードによって破壊し損ねると、私の負けが決まる可能性があるし慎重に行こう。

 

「私のターン、ドロー! 私は魔法カード《おろかな埋葬》を発動! デッキから《魔サイの戦士》を墓地に送る。そして《魔サイの戦士》の効果でデッキから《暗黒魔族ギルファー・デーモン》墓地に送る。墓地に送られた《ギルファー・デーモン》の効果発動! モンスター1体の装備カードとなり、そのモンスターの攻撃力を500下げる!」

「たったの500でなにが変わる?」

「私は《練金獣・水銀のエネケイス》に装備する! 狙いはそこじゃないよ。私は装備魔法《堕落》を発動! このカードは自分フィールド上に《デーモン》と名のつくカードがなければ破壊される。そしてこのカードを《黄金のホムンクルス》に装備してそのコントロールを得るよ!」

 

《黄金のホムンクルス》攻撃力5400→1500

 

「成る程。だが君の除外されたカードはゼロだ。よって攻撃力は元に戻る」

 

 コントロール奪取に対してなにも動きを見せないってことは、あの2枚の伏せカードは《サイクロン》みたいな魔法、罠を破壊するカードじゃないってことかな。有る上で温存してるのも有り得る。

 不安の芽は早めに潰しておきたかったから、どっちかと言うと使って欲しかったな。

 

「次に私は《憑依するブラッド・ソウル》を召喚! このモンスターをリリースしてその効果発動! 相手のレベル3以下のモンスターのコントロールを全て奪う!」

 

 よし、《練金獣》は処理できた。ここまで妨害されなかったってことは、あの伏せカードは攻撃反応型のカード。少なくとも1枚はそうだろう。

 

「全てのモンスターのコントロールを奪われてしまったか。案外、性格の悪いデッキだな」

「たまたまだよ。それにしても余裕って感じだね。理由はその伏せカード?」

「それもあるが、君はそのモンスターたちでは攻撃しないつもりだろう? 返しのターンで私に攻撃されて、その超過ダメージを受けたくないからまず《練金獣》は攻撃してこない。さらに言えば《黄金のホムンクルス》でも攻撃しない。なぜなら攻撃力1500でも頼りないからだ。それほどに君は精神ダメージに怯えている」

「私がビビってるって? そう思われるのは癪だな」

「そしてダメージを与えることにも怯えているんじゃないか? カードゲームというフィルターを通しているとはいえ、我々がやっていることは傷のつけ合い。いや、殺し合いだ。それを普通の16歳の少女が怖がらないはずがない」

「⋯⋯」

 

 確かに殺し合いか。精神ダメージを加える側でもあるということを失念していた。このデュエルにおいて攻撃を宣言するということは、自分の意思で相手に危害を加えるということに他ならない。

 当然、罪悪感が生まれる。でも。

 

「でも、仕方ないよね。このデュエルは強制されてやってるだけだから! 私は《練金獣・鉛のレオーン》を攻撃表示にして、バトル! ダイレクトアタックだよ!」

 

 そんなことでビビってたりはしない。だって私は悪くないから! 私は自分の身を守るためにデュエルをしているだけなんだ!

 

「怯まないか。ならばこの瞬間、永続罠《マクロコスモス》! 自分フィールドの《カオス・ディスティル》を除外して発動する!」

「《マクロコスモス》?」

 

 《マクロコスモス》が開かれた途端、先生の背後に映し出されていた練金釜が赤く熱を持ちガタガタと震えだした。震えはどんどん激しくなっていき、それに伴う音や時節吹き出す蒸気が私の焦燥感を掻き立てる。

 

「一体なにが⋯⋯」

「これは私が辿り着いた究極の錬金術」

 

 練金釜が限界を迎えたように爆発した。爆風と閃光が放たれ私は腕で目を覆う。

 しばらくして目を開けると周囲の風景が一変していた。

 

「これは、ここは?」

「これより我々のデュエルは宇宙へと転換された」

「宇宙。だからマクロコスモスか。マクロコスモスとミクロコスモスである人間は、互いに影響し合う関係性という錬金術の思想を表すカード」

「そうだ。全は一なり、一は全なり。私たち錬金術師は単に物資を変成しているのではなく、宇宙そのものを変成してきたのだ。⋯⋯ふふふ、しかしよく知っているね。このまま錬金術の授業と行きたい所だが、それは後にしておこう。《マクロコスモス》の効果はまだ終わっていない! 私は効果でデッキから《原始太陽ヘリオス》を特殊召喚する!」

 

《原始太陽ヘリオス》攻撃力400

 

 《原始太陽ヘリオス》が召喚されると、そのモンスターの近くに集まるように大小、色様々な惑星が寄ってきた。

 

「このモンスターの攻撃力、守備力は除外されているモンスターの数×100になる。そして《マクロコスモス》がフィールドにある限り私の墓地に行くカードは除外される」

「でも練金獣はダイレクトアタックできる! 《鉛のレオーン》の攻撃は続行だよ!」

「私は《マクロコスモス》が存在するとき、もう1枚のセットカード《惑星直列》を発動! 相手フィールドのモンスターを全て破壊し、300ポイントのダメージを与える!」

 

 宇宙に漂う惑星が直線上に並ぶように移動した。するとその重力波により私のフィールド全体がモンスターごと歪んだ。それに耐えられずにモンスターたちは破壊され、余波が私を襲いライフを奪う。

 

保科優姫LP2800→2500

 

「私のモンスターと君の《バトルフェーダー》がフィールドを離れ除外されたことにより、《原始太陽ヘリオス》の攻撃力が上がる」

 

 

《原始太陽ヘリオス》攻撃力400→700

 

「全滅か。だったら私は私のフィールドに魔法、罠がないとき、《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》を守備表示で特殊召喚! ターンエンド」

 

保科優姫LP2500 手札3枚

《彼岸の悪鬼グラバースニッチ》守備力1500

 

「私のターン、ドロー。魔法カード《黄色の過程—キトリニクス》を発動! 《原始太陽ヘリオス》をリリースしてデッキから《ヘリオス・デュオ・メギストス》を特殊召喚! さらに魔法カード《赤色化—ルベド》発動! 《ヘリオス・デュオ・メギストス》をリリースしてデッキから《ヘリオス・トリス・メギストス》を特殊召喚だ!」

 

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力2700

 

「このモンスターはお互いの除外されているモンスター×300の攻撃力、守備力になる。バトルだ! 《ヘリオス・トリス・メギストス》で《グラバースニッチ》に攻撃!」

「《グラバースニッチ》の効果発動! このカードが墓地に送られたとき、デッキから《彼岸の悪鬼スカラマリオン》を守備表示で特殊召喚する!」

 

《彼岸の悪鬼スカラマリオン》守備力2000

 

「《ヘリオス・トリス・メギストス》は相手フィールドにモンスターがいるときもう一度攻撃可能だ! 行け! ウルカヌスの炎!」

 

 攻撃力2700の追加攻撃持ちか。

 

「私はこれでターンエンド」

「このとき《スカラマリオン》の効果でデッキから《深淵の暗殺者》を手札に加える」

 

大徳寺先生LP4000 手札0枚

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力3000

 

「私のターンドロー! 私はモンスターとカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 伏せモンスターは《深淵の暗殺者》だ。これは相手モンスター1体を破壊できるリバース効果を持っている。これであのモンスターは処理できるはずだ。

 

保科優姫LP2500 手札3枚

セットモンスター1体

セットカード1枚

 

「私のターン、ドロー。《ヘリオス・トリス・メギストス》でセットモンスターに攻撃!」

「伏せモンスターは《深淵の暗殺者》! よってリバース効果で《ヘリオス・トリス・メギストス》を破壊するよ!」

「無駄だ! このモンスターは破壊されたとき、特殊召喚する! そして復活する度に攻撃力が500ポイントアップする!」

「えっ!?」

 

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力2700→3200

 

「一度破壊されたこのカードに攻撃権が復活する。終わりだ! ウルカヌスの炎!」

「くっ、裏目に出たか! 私は永続罠《闇次元の解放》を発動、除外されている《バトルフェーダー》を守備表示で特殊召喚する!」

 

《バトルフェーダー》守備力0

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力3200→2900

 

「ちっ、攻撃は続行、破壊する。私はカード1枚セットしてターンエンドだ」

 

大徳寺先生LP4000 手札0枚

《ヘリオス・トリス・メギストス》

セットカード1枚

 

 破壊は無意味だったか。となると処理方法がかなり制限されるな。でも先生の手札はゼロ。あのモンスターが最後の砦だろう。手札を回復される前に攻めて行きたい。

 

「ドロー」

 

 これか。⋯⋯これか。いや、使っていいはず。来たってことはそういうことだ。

 

「私は墓地の闇属性モンスターが7体以上のとき、魔法カード《終わりの始まり》を発動する。5体の闇属性モンスターを除外して3枚ドロー」

「5体のモンスターが除外されたことで《ヘリオス・トリス・メギストス》の攻撃力がアップする」

 

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力2900→4400

 

 このカードが来るのか。まさにこの状況で一番輝くカードだ。もしもデッキに意志があるとしたら絶対、このターンで勝て、って言ってると思う。

 

「ドローはいいが、攻撃力を上げてよかったのか?」

「いいんだよ。おかげで良いカードが引けたからね。私は魔法カード《闇の誘惑》を発動。デッキから2枚ドローして闇属性モンスターを1枚除外する。私が除外するのは《ゴーレム》!」

「《ゴーレム》だと!?」

「そう。このカードが勝負を決めるよ。先生はLP4000分のダメージを覚悟しておいてくださいね」

「随分と自信があるようだがそう上手く行くかな?」

「さて、どうでしょう。私は手札を1枚捨てて装備魔法《D・D・R》を発動! 除外されている《ゴーレム》を特殊召喚する!」

 

《ゴーレム》攻撃力2500

 

「このモンスターがフィールドにいる限り、フィールドの光属性モンスターの効果は無効化される。《ヘリオス・トリス・メギストス》は光属性のモンスター。よって効果が無効化され攻撃力はゼロになる!」

 

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力0

 

「⋯⋯」

 

 先生は表情を消しているから反応は窺えないけど、多分まだこれじゃ不十分だ。まだ伏せカードが残ってる。

 行けるとこまで行ってみよう。

 

「私は《D・D・R》のコストで墓地に送った《ヘルウェイ・パトロール》を除外して効果発動! 手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター、《カードガード》を特殊召喚する!」

 

《カードガード》攻撃力1600

 

「そのカードは⋯⋯!」

「特殊召喚時、このモンスターにガードカウンターを一つ置く」

「⋯⋯私はその瞬間、セットカード《グランドクロス》を発動。相手に300のダメージを与え、フィールドの全てのモンスターを破壊する⋯⋯!」

 

保科優姫LP2500→2200

 

「そして《ヘリオス・トリス・メギストス》を500ポイントの攻撃力を上げて復活させる!」

 

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力5200

 

 《ヘルウェイ・パトロール》が除外されたことでさらに300ポイント攻撃力が上がった。

 伏せカードはモンスター全破壊のカードだったか。確かに強力だ。でも使うタイミングは本意じゃなかっただろうな。《カードガード》は乗っているカウンターを他のカード移し替えてそのカード破壊を一度だけ防ぐ効果がある。きっと《ゴーレム》の生存を嫌ってカウンターを移し替える前に《グランドクロス》を発動したんだろう。

 でももう遅い。それだけじゃ私は止まらない。

 

「魔法カード《死者蘇生》。墓地の《ゴーレム》を復活させる!」

「くっ、やはりか⋯⋯ !」

 

《ゴーレム》攻撃力2500

《ヘリオス・トリス・メギストス》攻撃力5200→0

 

「さらに墓地のレベル5以上のモンスターである《フレイム・オーガ》を除外することで手札から《邪帝家臣ルキウス》を特殊召喚する!」

 

《邪帝家臣ルキウス》攻撃力1000

 

「《邪帝家臣ルキウス》をリリースして《軍神ガープ》を召喚!」

 

《軍神ガープ》攻撃力2200

 

「このカードがいる限りモンスターは全て攻撃表示となる。バトル! 《ゴーレム》で《ヘリオス・トリス・メギストス》に攻撃!」

「ぐああああああっ!」

 

大徳寺先生LP4000→1800

 

「《ヘリオス・トリス・メギストス》の効果!」

「無駄だよ。特殊召喚された所で攻撃力ゼロの状態で攻撃表示になる」

「くっ⋯⋯!」

「《軍神ガープ》で攻撃!」

「うわああああああああ!」

 

大徳寺先生LP1800→0

 

 私の勝負を決める一撃を喰らい、地に膝をつけ倒れる先生。

 

「せ、先生、大丈夫ですか?」

 

 デュエルが終わって先生の下に駆け寄り声をかけた。すると先生は顔を上げ口を開く。

 

「大丈夫ニャ。少し休めばすぐに回復するのニャ」

 

 口調や目つきは普段通りに戻ったけど、表情は疲れているようだった。今更ながらに私の罪悪感は膨れて、思わず謝罪の言葉が出る。

 

「君が気にすることじゃないのニャ。悪いのは——」

 

 そう言いかけ視線を彷徨わせる先生。その意図に気づき私も辺りを見回すとやはり沙夜の姿がなくなっていた。もうどこかに行ってしまったんだろうか。

 

「先生、帰りましょうか。帰って休んだ方がいいです」

「いや、私は残るよ。ここは私の実験室でね、休める場所もあるんだ」

「そう、ですか。じゃあ私は行きますけど⋯⋯、その、元気になってくださいね」

「ああ、君も」

 

 ぐったりする先生を放置していくのが申し訳なかったけど、しつこく食い下がると先生の秘密に抵触しそうだったから、私は渋々この場を後にした。その方が先生にとっても良いことだと思うし。

 寮に戻るまでの道中、大徳寺先生とのことを考える。思えば私は、人を傷つけたのはこれが初めてだ。もっと正しく言うなら、痛みを理解していながらなお、痛みを与えるのは初めてだ。無意識のうちに人を傷つけていたことはあるだろうけど、相手に傷を負わせてしまうとわかっていながら人を叩くというのは記憶にない。

 強制されていたとはいえ、さっきの私は我儘で図々しくて、愚かな行為をしていたと感じる。あの瞬間の私は先生と同じように被害者だったけど、デュエルに勝った私は善人とは言えない。先生は傷つけたことを許してくれたけど、だからと言って善人でいられるわけじゃないはずだ。

 私は、どんな理由があっても人を傷つけた人間は善人にはなれないと考える。人に危害を加えておいて許されようなんて、途轍もなく身勝手なことだ。

 でも先生は許してくれた。多分、私と先生の立場が逆転したら私も許すのだろう。それならば私は、身勝手なままでいいんじゃないだろうか。許してもらったら、その分許す。人に我儘だなんだと言われようが、これだって平等だ。

 うん、そういうことにしておこう。先生を傷つけてしまったけど、先生が許してくれたから自身を省みたり反省はしない。

 うだうだ悩んだけどハナから結論は決まっていた。結局、本心では先生にしたことを悪いとは更々思ってなかったんだから。反省なんてできるわけがないしする気もない。

 私とはそういう人間なんだ。そんなことを今になって気づいた。

 

 

 

 黙々と考え込む道のりは、往路よりも短く感じる。今は既に寮内で、目の前には自室の扉が見えてきた。脳内感覚では短く感じた距離だけど、身体は事実をしっかり理解しているようで、それに意識を向けると脚の疲労感が相応の運動量を必死に伝えてくる。

 部屋に入ったらとりあえずソファに座ってゆっくり休む。そう決めて入室したが、どうやらゆっくりはできないことをすぐに悟った。

 

「お帰りなさいませ、優姫様。どうぞこちらにお座り下さい」

 

 なぜなら、そこには姿を消したはずの沙夜がいたからだ。

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