遊戯王GX 転生したけど原作知識はありません   作:ヤギー

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セブンスターズ カミューラ

「優姫様、お話しが御座います」

 

 沙夜は湯気が立つコーヒーカップを私に手渡すと、そう切り出した。面倒臭そうな感じがしたけど、聞かない選択肢はないから素直に先を促す。

 

「以前にも話しに出てきたセブンスターズについてです。覚えていますか?」

「ああ、それか。確か、天上院吹雪って人とか大徳寺先生が関係してるんだっけ」

「はい。その軍勢が動き始めたので彼らの全容を前もって説明します。とはいえ難しい事はありません。まず彼らの目的ですが——各々の意図は別として——三幻魔を封印している七精門の鍵をデュエルにより奪い、それにより封印を解く事にあります。そして彼らの雇い主であるこの学園の理事長の影丸は、この三幻魔の力で若返り、さらには世界支配を図ろうとしているようです。⋯⋯まずはここまで理解出来ましたか?」

「⋯⋯はあ」

「気の無い返答ですね」

「いや、わかったけどさ。なんか現実的じゃないことが多すぎるなって」

 

 突拍子もない所に目をつむり、言ったことをそのまま受け入れればわかる。

 

「ですが言葉の通りです。続いて学園側の動きですが、本日、実力ある教師や生徒七人に学校長から七精門の鍵が託され、それぞれ一つずつ所持しています」

「そういえば授業終わりに呼ばれてたよ。確か、十代くんと、三沢くん、明日香と黒い制服を着た人と大徳寺先生だったっけ」

「はい。守護者はその五人と丸藤亮、クロノス教諭ですね」

 

 この七人か。一年生ばっかりだな。

 

「ていうか、黒幕がこの学校の理事長だったり鍵の守護者に敵であるセブンスターズの大徳寺先生が選ばれてたり、守護者側が不利過ぎて守れないんじゃない?」

「確かにそうかもしれませんね。ですがたとえ鍵を守り抜いたとしても守れなかったとしても、三幻魔の封印は解けるようになっています。理由は封印解除には鍵の他に、この島にデュエリストの闘志を満たす事が必要であり、この条件をクリアしたら、自動的に鍵が封印地へと向かうようになっているからです」

「デュエリストの闘志を満たすってのは、つまりデュエルさえしてればセブンスターズの思惑通りになるってこと?」

「はい」

 

 簡単に言い切る沙夜。それならばと私は疑問をぶつけた。

 

「それって、もう三幻魔復活は決まってるようなものってこと? さすがにやばいんじゃない? 三幻魔が復活したら世界征服とかできるんだったよね」

「そうですがあまり危険視するようなことではありません。封印が解けたら親玉である影丸が登場し、そのカードを手に入れるでしょう。そうなったら彼をデュエルで倒せば良いし、もしくは手に渡る前に横から掠め取れば難なく対処出来ます」

 

 後者とか邪道っぽいけど、それが一番手っ取り早いか。沙夜なら簡単にできそうな気もするし。

 いや、違う。そもそも手を出すべきじゃないのかもしれない。だって、これって多分物語の一部だ。サブタイトルをつけるとしたら『セブンスターズ編』か。下手に介入すると人物の成長の妨げになって、巡り巡って不利益を被ることもあるのが予想できる。だとしたら私はなにもするべきじゃない。

 

「じゃあ、とりあえずは様子見?」

「そうですね。此方からわざわざ助ける必要はありません。三幻魔のカードは魅力的ですが面倒事の種でもありますから、彼らの手に負えない場合にのみ手を出すのが最善かと」

「そうだね」

 

 関わってはいけないというわけではないとは思う。でも首を突っ込むのなら物語に最後まで付き合う責任が生まれるし、それは私の未来、将来をこの時点で決定付けることでもあるんだ。特別やりたい事があるわけでもないけど、今限定してしまうのは勿体無い気がする。

 責任感を度外視にして開き直るなら話しは別だけど。

 

「それはそれとして、此方側の事情にセブンスターズの誰かを巻き込むという可能性は大いにありますので」

「試練の話しか。誰彼構わないね」

 

 悪い奴だっていうなら、少しは気を使わなくていいから助かるけど。

 

 

 

 セブンスターズはその名の通り、七人いる。

  その内の一人は、洗脳状態にある天上院吹雪だった。この前沙夜からセブンスターズについて聞いていたときに十代くんがデュエルしていたらしい。——火山の中で。

 なにやってんの? とか思ったけど、結果は十代くんの勝ちで天上院吹雪は今保健室で意識不明の状態。意識がないのは彼らも闇のゲームのデュエルをしていたからだそうだ。

 そして息をつく間もなく(多分、鍵の守護者的にはそうだ)二人目が現れた。名前はカミューラ、その正体は吸血鬼だ。沙夜曰く、その昔、人間によって滅ぼされた吸血鬼の生き残りで、人間に対する復讐と吸血鬼再興のために三幻魔復活に加担しているらしい。

 その彼女とデュエルしたのはクロノス先生だ。結果、クロノス先生は負け、鍵を奪われた後人形にされた。私は現場にいたわけじゃないから詳しくは知らないけど、人形にされたというのは比喩でもなんでもなく言葉通りの意味だそうだ。吸血鬼による復讐劇の第一歩が踏み出されたってことなのかもしれない。

 

「優姫様、試練の三戦目の対戦相手が決まりました」

「誰?」

「カミューラにしました。ですので今夜、あの城に見学しに行きますよ」

 

 そして今では湖の上に立派な城が建っている。

 

 

 

 空は曇天、湖上には霧がかかっている。夜だということも相まって、湖に浮かぶ西洋風の城は不気味な様相で佇んでいた。

 湖のほとりからは、レッドカーペットが湖の中央にある城まで誘うように伸びている。それは沈むことなく、かと言って漂うように浮かんでいるわけでもない。板のごとく架かるそれに思い切って乗ってみると、絨毯特有の柔らかさを残しつつ、しっかりと私と沙夜を支えてくれた。どうやらきちんと橋の役割は果たしているようだ。

 長い道を歩き城内に入るとまた一直線の回廊が続いていたので、気を引き締めて進む。

 しばらく行くと視界の先には広そうな空間があった。そこには十代くん達鍵の守護者と他数名がいて、皆、上を見ている。回廊を抜けこっそりと同じように見上げると、吹き抜けになっている二階部分にはモンスターと二人の人物がいた。

 カイザーこと丸藤亮とカミューラだ。どうやら既にデュエル中だったらしい。それも、フィールドを見るに佳境だ。

 

「少し遅かったようですね。ですが肝心なところには間に合いました」

「肝心なところ?」

 

 十代くん達とはそんなに距離は離れてない。今の会話も十分聞こえる声量と距離だけど、夢中になっているのか聞こえなかったみたいだ。彼らにとってはこのデュエルがとても重要なものだから、それでいいと思う。

 

「ターンエンド」

 

 カイザーのターン終了宣言。

 カイザーのフィールドには相手の攻撃を一度だけ無効にできる《サイバー・バリア・ドラゴン》と自身より高い攻撃力を持つモンスターを破壊できる《サイバー・レーザー・ドラゴン》に伏せカードが一枚。対してカミューラのフィールドにはなにもない。ライフもカイザーが4000、カミューラは800で、戦況は圧倒的にカイザーが有利だ。観戦してる皆からも安心感が伺える。

 

「可愛さ余って憎さ百倍だわ! 私のターン、ドロー!」

 

 カミューラは裂けるほどに口を開き言うと、尖った歯と赤い舌が露出する。彼女は明らかに怒っていた。それほどこの状況が屈辱的だということが伝わって来る。

 

「手札から魔法カード《幻魔の扉》発動!」

 

 そう宣言すると首に着けている金色のチョーカーが赤く光り出した。そして音を立ててカミューラの背後に石でできた扉がせり上がる。

 見たことも聞いたこともないカードだ。それは私だけでなくカミューラ以外のこの場にいる全員が同じ意見だった。

 

「このカードの効果でまず相手のモンスターを全て破壊する!」

「くっ!」

 

 扉が開く。すると光が漏れ出しその閃光でカイザーのモンスターが全て消え去った。

 

「もっと良いことを教えて差し上げますわ! このカードはデュエル中に使用したモンスターを条件無しに特殊召喚することができる!」

「バカな! モンスター全滅に加えて、モンスターを無条件に特殊召喚を行えるカードだと!」

 

 カイザーが驚愕するけど無理もない。私だって驚いた。だって、つまりあのカードは禁止カードの《サンダーボルト》と制限カードの《死者蘇生》を合わせたカードなんだから。

 普通はあり得ない。

 

「もちろん、その代償は高いわよ。このカードの発動条件は私の魂! デュエルに負けたら私の魂は幻魔のもの!」

 

 魂が条件⋯⋯。デュエル外にデメリットを設けたカード。これはおかしい。異質だ。

 

「なんだけど、せっかくの闇のカードなんだからもっと闇のカードらしく使わせてもらうわ。例えば、貴方の弟に私の身代わりに頼むとか?」

「なっ!? 逃げろ、翔!」

 

 カイザーが叫ぶ。しかしそれよりも速くカミューラは二人になり、一人が一階に向かって跳んだ。

 

「遅い!」

 

 もう一人のカミューラは翔くんの後ろに回り首に噛み付く。そしてそのまま抱きすくめ元にいた位置まで飛び去り翔くんを攫った。

 

「この子の魂を生贄に《サイバー・エンド・ドラゴン》を召喚!」

「うああああぁあっ!」

 

 《サイバー・エンド・ドラゴン》が出現すると翔くんが苦しそうに呻き出す。翔くんと《サイバー・エンド・ドラゴン》は薄い光のようなもので繋がれ、それが《サイバー・エンド・ドラゴン》の方にどんどん流れているようだった。

 光が全て行き切ったのか発光が収まると、翔くんは首をガクッと下げ意識を失う。

 

「この《サイバー・エンド・ドラゴン》を倒してご覧なさい。蘇るために生贄にされたこの子の魂はもう二度と戻れなくなる。それでも良いかしら」

「くっ⋯⋯!」

 

 こうなってしまってはもうカイザーは手が出せない。もう勝負はついたようなものだ。《サイバー・エンド・ドラゴン》が生存した上での勝機はないわけじゃないけど、自発的に《サイバー・エンド・ドラゴン》を破壊できるカードを握られたらもうアウト。人質は殺され勝負にも負けるという最悪の未来だってある可能性もある。

 

「卑怯だぞカミューラ! なんで正々堂々と勝負しないんだ!」

 

 十代くんが吠えると、

 

「やぁねぇ。正々堂々なんて聞くと虫唾が走るわぁ」

 

 カミューラは煽るように見返す。

 多分これは、カミューラにとってはただの勝敗を決めるデュエルじゃないんだ。復讐。人間が自分たちにしてきた仕打ちに対する恨みが籠っている。

 その思いの丈は想像もつかないけど、吸血鬼の背景を教えられた身としては、十代くんのようには怒るに怒れない。

 

「行くわよ! 《サイバー・エンド・ドラゴン》でダイレクトアタック!」

 

 カミューラに命じられ《サイバー・エンド・ドラゴン》は攻撃動作に入る。

 

「さて優姫様。決着がついたようですし、帰りましょうか」

「えっ? うん、そうだね」

 

 このタイミングで? と思ったけど、そうした方が良いと判断して頷いた。別にこそこそしてるわけじゃないけど、私たちがここにいることがバレたら説明が面倒臭い。

 変な風に勘ぐられても困るし、私たちは見つからないように踵を返しこの場を後にする。

 しばらくすると、後方でカミューラの高笑いが響いた。勝負が決まったのだろう。ということは今カイザーは人形になってるってことだ。それを見てみたくはあるけど、その欲求を打ち消して城を出た。

 

「あれ、今日はカミューラと戦わなくていいの?」

 

 ふと気づく。

 確かに沙夜は見学するとだけ言っていたが、その後にデュエルするものだと思っていた。

 

「はい。デュエルはカミューラが負けた後にします。その方が都合が良いので」

「そうなんだ」

 

 まあ確かに今行けば、鍵取り合戦にちょっかいを出す形になるからその通りだ。それに《幻魔の扉》の対策のために入れたいカードがあったし、こっちとしてもちょうど良い。

 

「でも、ああやって他人の魂を人質に取れるならカミューラに負けはないんじゃない?」

「さて、どうでしょう。守護者の中に薄情者がいたらその限りではないですよ。それにたとえ全滅しようが私達には関係ありません。そうなった後にデュエルしたら良いだけのことです」

「わあ、沙夜が一番薄情者だ」

「優姫様こそ、何とも思ってないのでは?」

「私はなんとかなるって信じてるんだよ」

 

 なぜならここはアニメの中だから。捻くれた粗筋じゃない限り、誰かが死んでしまうなんてことはない。

 

 

 

 翌日。昨日よりも少し早い時刻。今日もまた湖上の城にやって来た。

 私たち以外にまだ誰も来ていない。城に入り、先日デュエルをしていた所の二階部分に行くと、城の主にばったりと出くわした。

 出くわす、というのは語弊があるかもしれない。私視点では問題はないけど、向こうはどうやら私たちの存在を知っていて、待ち構えていたっぽいからだ。

 

「今日も見学に来たのかしら?」

 

 カミューラが尋ねる。露出度が高く身体のラインが出るドレスを着こなす彼女は、妙に艶かしい。その様は正にこの城の女王といったところだ。

 

「それもありますが、一つ忠告があります。今のままデュエルに臨むと貴女はデュエルに負けて死んでしまいますよ」

 

 そう沙夜は告げた。その根拠は私も聞いてない。でも沙夜がそう言うなら、なにかしらの理屈があっての言葉なんだろう。

 

「私が負ける? まさか。そんなことはあり得ないわ。ましてや死ぬですって? 貴女は私が誰なのか知らないようね」

「全て知っています。貴女は吸血鬼。誇り高き吸血鬼。貴女方一族は有象無象の人間よりも遥かに高い身体能力があり、人には無い力を持っている」

「ええ、その通りね」

「しかしその強い力故に人間によって数の力で滅ぼされた。貴女は悪。最低の異端者。半端な力しか持たない劣等種族なのです」

 

 辛辣。淡々と人の弱みを抉る沙夜は、笑いも怒りも悲しんでもいない。

 でも、なぜだかそこに沙夜の心の機微を感じた。意図的に薄められ、感情の種類は分からない。それでも、隠されてはいたが強い想いが確かにそこにあったんだと確信した。

 

「貴女、死にたいのかしら。そこまで言っておいて、まさかただで済むとは思ってないでしょうね?」

 

 けどそれは、カミューラにとってはどうでも良いことだ。カミューラは馬鹿にされ、本気で怒っていた。ひりひりとした殺気が空間に広がる。

 

「貴女に私は殺せません」

 

 ぴしゃりと沙夜は言う。それはまるで眼前に見えない壁を張り、カミューラのなにもかもを否定しているようだった。

 

「貴女が数の力に劣る者なのは事実ですが、今は置いておきましょう。本題です。貴女の肉体の一部を貸しなさい」

 

 唐突な要求だった。それに意味がわからない。たとえ言葉通りの意味だったとしても理由が不明だ。

 

「当然、嫌よ。たとえ真っ当な理由があろうとも、貴女に協力するのはお断りよ」

「でしょうね。それならば力尽くで戴くとします」

「はっ。ただの人間に出来るとでも? もういい。殺すわ」

「戴きました」

 

 一触即発。その中で言葉の食い違いが気になった。なにが起こったかわからない。と言うより、なにも起こってないと思っていた所に沙夜の目的完遂の言葉があったので、場違い感が湧いた。

 すかさず私の脳内はズレを修正しようと自動的に思い直し、隣にいる沙夜を見る。

 沙夜の手には、血が垂れる手首が握られていた。

 それさえわかったら、私の理解は速い。私が認知できなかった数秒の間になにがあったのか、想像で補い事実を理解するのは難しくはなかった。

 カミューラの右手首をなんらかの方法で切断し奪い取った、これが現状の有様だ。

 と、思っていたが、カミューラの手を見るときちんとそれが備わってある。ならば沙夜が持つものはなんなのか、その段階で私の思考は行き詰まった。

 

「流石に初めて見ました、人体が再生する所は。とはいえ、一瞬過ぎてよく見えませんでしたね」

 

 驚いた素ぶりもなく呟く沙夜の言葉で合点がいく。吸血鬼の特性により、切られたその足で再生したんだ。手だけど。

 

「あ、あ、あ、貴女! 今何をしたの!」

 

 私の下らない思議はカミューラの狼狽する声に吹き飛ばされる。

 

「見たままの通り、貴女の手首を切り取ったのですよ。見てなかったんですか?」

 

 事も無げに言う沙夜。カミューラは再生した右手を胸に抱き、警戒している。

 

「⋯⋯ただの人間ではないのね。目的は何なの?」

「貴女に対する要求は、優姫様とデュエルしていただくことです」

「そこの小娘と? だったら手首を切った理由は?」

「貴女が鍵の守護者に負けてしまったときの為の保険ですよ。いずれ分かります」

「いずれ、ね。まあいいわ。どうやら次の獲物が来たようだし、貴女たちについては後回しにしてあげる。でも一つだけ良いかしら?」

「何でしょう」

「貴女は何者?」

 

 その問いは私も気になる所だ。沙夜の有能さは人並みを遥かに外れている。加えて闇のゲームを作り出す法外なアイテムや、今の理解不能な攻撃。吸血鬼でさえ欺く沙夜は、人によっては恐怖の対象にもなり得る。

 

「ただの人間ですよ。ある意味では貴女と同じではありますが」

 

 笑いも怒りも、悲しみも見当たらない顔。でもそこには確かに、さっきと同種の感情の変化が表れているのが、私には解った。

 

 

 程なくして十代くんを先頭に、カイザーを除く昨日と同じメンバーがやって来た。私と沙夜は彼らの死角となる通路に引っ込み様子を見る。

 

「来たぜ、カミューラ!」

「坊やよく来たわね。勇気を讃えて、可愛い人形にしてあげるわ!」

 

 威勢がいい十代くんに対して、同じく肩を怒らせるカミューラ。どうやら手首を切られたことによる不調はなさそうだ。

 

「御託はいい。お前は俺が倒す!」

「「デュエル!」」

 

 十代くんの先攻でデュエルが始まった。

 

「闇のゲームを操って、仲間の命を弄ぶ。俺はお前を許さない!」

「どう許さないのかしら。楽しみね」

 

 怒りの籠る言葉は届かない。カミューラは不敵に笑うばかりだ。

 

「行くぜ、魔法カード《融合》を発動! 手札の《フェザーマン》《スパークマン》《バブルマン》を融合して《E・HEROテンペスター》を召喚! 一枚カードを伏せてターンエンドだ!」

 

 《テンペスター》の攻撃力は2800。最初から比較的高めの攻撃力を持つモンスターを召喚したのは、強気な姿勢の証拠だ。

 

「元気があるのね。カード、ドロー! フフッ。《幻魔の扉》を発動!」

 

 カミューラは早速あのカードを使ってきた。

 石の扉が出現する。

 

「いきなりそれかよ⋯⋯!」

「説明するまでもないわね。カードの発動後、デュエルに負けたら私の魂は幻魔のものとなる! でも私、慎しみ深いから生贄の役割をお前の仲間に譲ってあげる。さあ、誰の魂を代わりにしようかしら」

 

 扉が開かれ、カミューラのチョーカーが光る。すると扉から黒い瘴気が漂い、十代くんの友人全員が苦しみの声を上げた。

 

「どうせなら、仲間たち皆を犠牲にしてあげてもいいわね。そして一気に鍵をいただくわ!」

「そんな、卑怯だぞ!」

「お前が負ければいいだけ。お前が勝ちに走れば、仲間たちはまた人形になるのよ!」

 

 十代くんには為すすべがない。そう思っていたとき。突如部屋中に光が満ちる。

 光でなにも見えない中、カミューラの叫び声が聞こえた。その後、がしん、と《幻魔の扉》が閉まったであろう音がした所で光が収まる。

 

「これ、なに?」

 

 沙夜なら知っているかもしれないと思い、聞く。

 

「彼の首に下げてある半分に割れた円石版が見えますか。光を起こしたのはアレです。アレは闇のアイテムで、カミューラの持つ闇のアイテムを無効化したようですね」

「流石、よく知ってる。頼りになるよ」

「有難う御座います」

 

 なんで知ってるのか、いつ調べたのか。そんなのの理由は、とうに私の中では『沙夜だから』になってるから特に驚きはない。それよりも今後の行方が気になった。

 

「お前の闇の力は破られた! もう仲間たちが犠牲になることはない!」

「くっ!」

「一度発動してしまった《幻魔の扉》は止める術はない。幻魔との契約は自分の魂でするんだな!」

 

 そう。これでカミューラは負けられなくなった。たとえ吸血鬼であっても、魂を抜かれたら再生能力は意味をなさない。カミューラにとっては、一瞬の内にして断崖絶壁の縁に立たされたようなものだ。

 カミューラがチラリとこちらを見る。正確には沙夜をだ。沙夜はこの事態を予期していた。だからこそカミューラが負けて死ぬと言ったんだ。

 

「でもデュエルに勝てば何のことはない」

 

 気が気ではないだろう。沙夜の言葉は多分正しい。カミューラはそれを自分自身のデュエルの実力のみで否定しなければならないのだ。

 

「このターンで終わらせる! 私は誇り高き吸血鬼一族の魂を、幻魔に預け発動! 相手フィールド上のモンスターを全て破壊する! さらに、その能力によって《テンペスター》を特殊召喚する! 手札から《不死のワーウルフ》を召喚!」

 

《テンペスター》の攻撃力は2800、《不死のワーウルフ》は1200。攻撃が通るなら、この二体でライフを削りきれる。

 

「《テンペスター》ダイレクトアタックよ! カオス・テンペスト!」

「ぐううぅっ!」

 

 闇のゲームによるダメージが十代くんを襲う。これでライフは1200だ。

 

「罠カード《交差する心》発動! このカードは相手モンスターの攻撃を受けたときに発動するカード。攻撃モンスターのコントロールを得るぜ!」

「何!?」

 

 つまり《テンペスター》のコントロールを取り返すってことだ。

 《幻魔の扉》が消え《テンペスター》が十代くんのフィールドへと飛びうつる。

 

「この裏切り者! ターンエンド!」

 

 カミューラは捨て台詞と共にターンの終了宣言する。十代くんに凌がれる形でターンが移った。

 

「俺のターン、ドロー! バトルだ。《テンペスター》で《不死のワーウルフ》を攻撃。カオス・テンペスト!」

 

《不死のワーウルフ》は容易く破壊され、その超過ダメージがカミューラに与えられる。ライフは残り2400になった。

 

「お前、忘れたわけじゃないでしょうね。《ワーウルフ》のモンスター効果で同名カードを攻撃力500アップさせて、デッキから特殊召喚!」

 

 《不死のワーウルフ》がその攻撃力を1700にしてリクルートされる。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 ライフは1200と2400でカミューラが有利。でもフィールドの状況は十代くんの方が現状強い。

 カミューラのターンになり、その手札とドローカードでどう動くのかが重要な所だ。

 でもそれ以上に言及したいのは、本当ならカミューラはさっきの自身のターンで勝てていたということ。攻撃の順番を《テンペスター》からじゃなく《不死のワーウルフ》からにしていたら、たとえ《交差する心》を使われていたとしても勝っていたんだ。これは明らかなミス。

 これが動揺によるものなのか、単に実力不足だからなのかはわからないけど、このままだとカミューラは負ける。なぜならそれほどに十代くんは勝利を掴むなにかを持っているからだ。半端な力では勝てない。

 

「ドロー! 《強欲な壺》を発動! デッキよりカードを2枚ドロー。《不死のワーウルフ》を生贄に《ヴァンパイア・ロード》を召喚! さらに《ヴァンパイア・ロード》をゲームから除外して《ヴァンパイア・ジェネシス》を特殊召喚!」

 

 ヴァンパイア。カミューラの切り札だろうか。または思入れ深いカードか。そういうカードをこのタイミングで登場させることができたのは、カミューラにとってとても心強いことだろう。

 

「永続魔法《ジェネシス・クライシス》発動! このカードにより1ターンに1度、デッキからアンデッド族モンスターを1枚手札に加える。さらに《ヴァンパイア・ジェネシス》は手札のアンデッド族モンスター1体を墓地に送ることで、同族のレベルの低いモンスターを墓地から特殊召喚できる! 手札の《龍骨鬼》を捨て《不死のワーウルフ》を特殊召喚させる!」

 

 《不死のワーウルフ》が攻撃表示でフィールドに出現する。比較的強いとは言えないモンスターを攻撃表示ということは、このターンで決める勝算があるか、返しのターンに備えた守りのカードがあるということ、もしくはその両方か。十代くんのフィールドには伏せカードがあるし《テンペスター》の効果もある。この後カミューラはその二つを対処するつもりだろう。

 

「《テンペスター》はフィールド上のカード1枚を墓地に送ることで、戦闘での破壊を免れる効果があったわね。今お前の場にはカードが1枚伏せられてある。ならその効果、潰させてもらうわ! 手札から《ハリケーン》を発動!」

 

 上手い。《ハリケーン》はフィールド上の魔法、罠を全て手札に戻す魔法カード。これなら《テンペスター》の効果を封じられるし、1ターンに1度の制限がある《ジェネシス・クライシス》を使い回しすることができる。アドバンテージを取りまくりだ。

 

「バトルよ! 《ヴァンパイア・ジェネシス》で《テンペスター》に攻撃! ヘルビシャス・ブラッド!」

 

 《テンペスター》は破壊され十代くんは、差分200のダメージを受ける。ターン開始時のライフは1200だったからこれで1000か。このままだと《不死のワーウルフ》の攻撃で終わる。

 

「これで止めよ! 《ワーウルフ》でダイレクトアタック!」

 

 爪を掲げて突撃する狼。瞬きする間もなく十代くんの眼前に到達し、その腕が振り下ろされ切り裂いた。

 それはダメージを受けた証。攻撃が通ったことで起こるソリッドビジョンの演出だ。

 カミューラは勝ちを確信し、昨日と同じ高笑いを上げる。しかしそれはすぐに止まった。

 

「なぜ。なぜお前は人形になっていないのよ!」

 

 カミューラが勝利することで、対戦相手は人形になるというのがこのデュエル。それなら確かにこの状況はおかしい。

 

「ははは。面白いデュエルだぜ」

「なに?」

「罠カード《インシュランス》が場から手札に戻ったとき、俺のライフはその効果で500回復してたのさ」

 

 つまり今の十代くんのライフは300。ギリギリではあるが生存させたあのカードは、正にインシュランスということか。

 

「ちっ、しぶといわね。でも苦しみが長引いただけよ。《ジェネシス・クライシス》を手札から発動! デッキより1枚のアンデッド族モンスターを手札に加えてターンエンド!」

 

 カミューラが決めきれずにターンを終了する。フィールドは1ターン前とは打って変わってカミューラが優勢だ。ライフも半分以上残ってる。さらに十代くんの手札はドローを入れると3枚。その内1枚は《インシュランス》だから有用なのは2枚だ。十代くんが攻撃力3000の《ヴァンパイア・ジェネシス》を倒すには融合モンスターに頼るしかないけど、融合モンスターは基本的に《融合》と2体以上のモンスターの計3枚のカードを使うから、十代くんにとって現状かなりきつい。

 でも。圧倒的有利なこの状況を鑑みたとしても、カミューラはなんとしてもこのターンで決めるべきだった。勝つに至らないにしても、防御用の伏せカードがないのは致命的だ。

 きっと十代くんは巻き返しのカードを引く。ともすれば勝利まで持っていけるカードを。それが強者の証だと私は思う。

 

「俺のターン、ドロー! 《強欲な壺》を発動! その効果でデッキより2枚加える! さらに《闇の量産工場》発動! このカードの効果により、墓地の通常モンスター2体を選択して手札に加える! 選択するのは《フェザーマン》と《スパークマン》だ!」

 

 ほら来た。あからさまな手札増強と墓地回収。これは決めに入ってる。

 

「俺はフィールド魔法《フュージョン・ゲート》発動! このカードがフィールドにある限り、《融合》なしで融合召喚可能だ! 《フェザーマン》と《バーストレディ》を融合! 《フレイム・ウィングマン》を召喚! さらに《フレイム・ウィングマン》と《スパークマン》を融合し《E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン》を召喚!」

 

 二段階融合により召喚された《シャイニング・フレア・ウィングマン》は、その輝きでフィールド中の隅から隅まで照らした。

 以前、十代くんと戦い、あのモンスターで止めを刺されたから、その強さはよくわかってる。

 

「《シャイニング・フレア・ウィングマン》は俺の墓地にある《E・HERO》と名のつくカード1枚につき、攻撃力を300ポイントアップする!」

 

 効果は二つあり、一つは攻撃力増強。これにより現在の攻撃力は3100になった。

 

「《シャイニング・フレア・ウィングマン》で《ヴァンパイア・ジェネシス》に攻撃! シャイニング・シュート!」

 

 《シャイニング・フレア・ウィングマン》の拳が突き刺さり、爆散する。その余波がカミューラに微々たるダメージを与えた。

 大したことはない、とカミューラは息巻く。でも、それは違う。

 

「《シャイニング・フレア・ウィングマン》の効果は、戦闘で破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを、相手プレイヤーに与える」

「なん、ですって⋯⋯っ」

 

 それが二つ目の効果だ。ライフ4000のデュエルにおいて、《シャイニング・フレア・ウィングマン》の高い攻撃力と効果は、相手に予期させないままに勝負を決めることができる。

 《ヴァンパイア・ジェネシス》の攻撃力は3000。だから3000のダメージを受けるということ。

 つまり、これはカミューラの負けを意味する。

 

「うわああああああぁっ!」

 

 強烈な閃光が、吸血鬼を焼いた。

 

 

 

 




デュエル中の原作キャラの台詞が丸パクリなんですけど、利用規約にある原作の大幅コピーってのに引っかかるのかな
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