がちゃがちゃとガラスや金属が擦れる音がする。誰かの声も同時に聞こえる。それも複数の声が。
女の声が二つ、片方が苦しげで、もう片方は励ましている?男の声も聞こえ、彼も励ましているようだ。
微睡むような、心地良いこの場から離れたくないが、体はここから出なければいけないと感じているようだ。
それもそうだ。此処は、本当の居場所じゃないから。
だから、外に出ないと。
「フラーン?今日は何しているの?」
私に話しかける声が一つ。
「あ、おねぇさま。今日はねーお絵描きしてるの。とりさんとか、猫さんとか!」とはいえ、図鑑で見たものだが。
「フランは動物が好きだものね。よく描けてるわ」緩やかに微笑む姉。
「え、本当!?やったぁ、おねぇさまに褒められた!」釣られて微笑む私。
「ふふふ、何か欲しいものはある?」
「じゃあ、おねぇさまと森にお散歩に行きたい!ずっと此処にいるのたのしくないー!」ピクリと姉が少し揺らいだ。
「そうね、それじゃあ、お父様とお母様に話してくるわ」
そう言って、私に笑いかけた姉は、部屋を出て行った。
少し、悲しそうでもあったけど。
とまぁ、なんやかんや過ごしている私『フランドール・スカーレット』ですが、前世の記憶といいますか、知識があるんだわ、これが。赤ん坊にしてはおかしいくらい考えられる頭。
頭をよぎる様々な知識、感情の起伏も緩やか(多分)で、どうやら両親は吸血鬼みたいなんだよね。私も姉の『レミリア・スカーレット』も、同じく吸血鬼です。
とはいえ、姉とは顔つきがとても似ているけど、背中についてる翼は、七色の宝石が木の枝にぶら下がったかのような風貌。
姉は父親譲りの青みがかった銀髪に、堂々たる黒い翼。
私の髪の色は少し薄い色合いの、いや、透き通った感じの金髪か。
母親譲りなのは髪色とその顔つきぐらいか。
母上にも私のような特殊な形の翼はついていない。どこの遺伝子から出てきたんだ。
まあ、綺麗だから、私は気に入ってるけど。そんな私は現在10歳、姉は15歳。すくすくと成長しています。
っと、話が脱線したけど、いろんな知識があるっていったよね?で、一番多いのが、ゲームの知識。ファイアとか、ブリザドとかの、魔法とか、妖怪とか、魔物の事かな。
好きだったんだねぇ、ゲーム。是非ともやって見たいが、そんな時代でもないようだ。ゲームが産まれるには、もっともっと先じゃないといけないくらい、文明は古いようだ。
まあ、私たちみたいな、寿命の長い生き物には、どうとでもなるだろうけど。
そんな先のことより、今を楽しむか、うん。
おねぇさま、無理言っちゃったけど、早く帰ってこないかなぁ。
紅い、紅い館の廊下を一人歩く。柔らかな絨毯は、私の足音と振動を吸収していく。ちらほらと見える、従者達は、私を見るなり、深く頭を下げ、また、掃除や物を運ぶ作業に戻る。
彼らの私を見る目が、少し怯えを含んでいることを、私は知っている。それもそうでしょうね、この館の主人の娘だもの。無礼は許されない。最悪、血祭りだ。
息苦しいこの館の現状に嫌気がさすが、出ていくわけにもいかない。それ程の力もまだないのだ。私はまだ、子供だ。少なくとも、あの子を、私の愛しい妹を守ってやれないから。
あの子が閉じ込められている部屋の封印なんて解けないし、部屋の前に見張りでいる人狼にさえも勝てない。部屋に入って、話をすることはできるけど、長居は出来ない。
父が、それを許さないのだ。
ーーーアレは厄災だ。生かすことも、本来なら許せるものではない。だが、忌々しくも私の娘だ。ならば、閉じ込めておくことが最善策だ。ーーー
そう言って、あの子を閉じ込めた。その時の顔の父の顔は忘れられない。自分の娘を見るような目つきではなかった。見下し、蔑み、何処か怯えの混じったあの目。
その理由は、あの子の能力。【ありとあらゆるものを壊す】程度の能力。そのままの意味。なんでも壊せる、父も、私も。それは、怖くなんかない。けれど、時折あの子が見せる、黒くて、引き込まれそうな瞳が、どうしようもなく怖い。
...それも知った上で、あの子を抱きしめてあげないと、私は、あの子の、本当の姉にはなれないかもしれない。
だから、私は、今の自分が嫌いだ。もっと、身も心も強くなって、あの子を守ってあげないと。
...父に森に行ってもいいかなんて、言っても、許可はもらえないから、お菓子を持って行きましょう。
本当に、ごめんなさい、フラン。
おねぇさまが、暫くして戻ってきた。手にはクッキーが入っている袋が。やっぱ、今回もダメだったか。
「どうだった?おねぇさま!」
また、部屋を出て行った時みたいな悲しそうな顔をして
「ごめんなさいね、外は危険だと言われちゃって...。代わりと言ってはなんだけど、お菓子持ってきたわ」
「ううん、大丈夫だよ。お菓子、おねぇさまも、一緒に食べよう?」そう言われたからか、少し元気になったおねぇさまは
「えぇ、そうするわ」と、微笑んだ。
分かってるよ、父上が許さない理由なんて。その理由を知っていても、私に近づいてくれる、『お姉様』が、私は大好きだよ。
だから、私のものになって欲しいと、思うこの心はきっと、正しいのだと思う。
お母さんは生きてます、はい。(今後どうなるかは...ねぇ
※少しずつ読みやすく訂正しております。(なお、本当に読みやすいかは自分基準のため、よく分かってない。