ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、冬島を舞う

雪が降頻る道を進んで行く、少し視線を上に上げれば分厚い雪雲が天を高く深く、塗っているように覆い尽くしている。同時にまるで地面から生えている大砲の砲身のように円柱状に高く高く伸び聳えている巨大な山、それがこの島の特徴なのだろうと思いながら積っている雪を踏み締めながら進んで行く。途中巨大な熊に遭遇するが先頭を歩く男、麦わら海賊団の上陸を認めてくれたドルトンはハイキングベアーと言う危険のない熊だと説明する。登山マナーである一礼をすると同じように返してくれハイキングベアーは去って行く。

 

「……くまって言ったら死んだふりだろ……?」

 

但し、ウソップのみは死んだふりをして雪に倒れこんでいたが。

 

「因みにウソップ、死んだふりをしたらそのまま食われるからしない方が良いぞ」

「マジかよ!!!?」

 

 

「ここが私の家だ」

 

ビックホーンと言う村へと辿り着くとドルトンは海賊達は自分達に任せてくれと皆に言った、海賊なのに大丈夫かと心配している声もあったが長年の勘で彼らは大丈夫だと納得させた。かなり信頼が厚いのかドルトンに掛けられる声は純粋な厚意に満ち溢れている。そのままドルトンの家に上がらせてもらいナミを休ませる事となった。

 

「そのベットを使ってくれたまえ、今部屋を暖めよう。申し遅れたが私の名はドルトン、この島の護衛隊長をしている者だ。我々の手荒な歓迎をどうか許して欲しい、皆海賊と言う言葉に敏感になっている」

 

基本的に海賊というのは無法者や凶悪な人間が多い、寧ろその対応は正しいだろう。威嚇とは言えいきなり発砲するのは流石に不味いだろうが、凶悪で凶暴な海賊だったら問答無用で皆殺しだろう。謝罪をし終えると背負っていた武器を降ろしながらビビを見つめた。

 

「一つ聞いていいかね。どうも私は、君を何処かで見た事があるような気がするのだが……」

「き、気のせいですよきっと!私は知りませんし……そ、そんな事よりお医者さんを呼んでください!」

「医者、か……この島には医者はたった一人、魔女と言われている医者しかいないんだ」

「い、医者が一人だけぇ!?おいおい折角ナミさんを見て貰えると思ったのによぉ……!!」

 

歯がゆい思いをしながら歯軋り音を立てながら目を反らすサンジ。無理もない、元から女性を尊重し大切にするようにしている彼にとって苦しんでいるナミは見ていられない状態ですぐにも元気にして上げたい。それなのに医者はたった一人しかないと言う状況はかなり拙い。思わず外を見てしまうと窓の外では元気に雪遊びをしているルフィとウソップが見えた、サンジの怒りのボルテージは一気に上昇し二人をボコボコにして屋内に引っ張ってきた。

 

「この島のたった一人の医者。この村に来る途中、山が見えなかったか?」

「え、ええ。あの凄い山ですよね」

「この国で唯一人の医者、魔女と呼ばれる女、Drくれははあの山(ドラムロッキー)の頂にある城にいる」

「あの山の頂上!?よりにもよってんな所にいるのか!?」

「ああ。加えて通信手段も無く、降りてくるのを待つしかないんだ」

 

医者はたった一人に加えその医者がいるのは雲をも貫かんと伸びる巨大な山ドラムロッキー、更に追い討ちを掛けるように連絡を取る手段も無く本人が自分で降りてくるのを待つしかないと言う事実が待っていた。

 

「糞……」

「うーん、なあどんくらい時間掛かるかな?」

「頂上までか、そうだな……健康な人間が行くとして数時間だな」

「結構かかるなー。あっそうだレウス、お前飛べねえか?」

 

ルフィが何気無く発した言葉はその場にいる全員に希望を齎した。レウスの飛行能力、高い飛行能力を持っている彼ならば普通に行くよりも遥かに早く行く事が出来るのではないか!?とルフィは考えた。それだけ早く着けばナミを見てもらう事も出来ると思ったのだ。

 

「飛ぶ!?君は一体何を言っているんだ?」

「ああ、こいつは悪魔の実の能力者なんだ。こいつはドラゴンに変身出来て空を自由に飛べるんだ」

「なんとドラゴンに………!?では悪魔の実の中でも最も希少とされる動物(ゾオン)系の幻獣種!!?」

「ドルトンさん随分、お詳しいですね」

「ああ、私も同じく悪魔の実の能力者だ。動物系の悪魔の実、ウシウシの実モデルバイソンを食べたバイソン人間だ」

 

一瞬ドルトンが目つきを鋭くするとみるみるうちに姿が変じていく、体格は更に大きくなりながら頭部には二本の角が生え身体はバイソンの黒い毛に覆われていく。ルフィとウソップは目を輝かせビビは何処か見られているような眼をしながらも興味深そうに、サンジはレウス以外の変形を見るのは初めてなので少し驚いている。

 

「うぉぉぉぉすげええ!!!おっさんカッコ良いぞ!逞しくて!!」

「そ、そうかね……?有難う褒め言葉として受け取っておくよ」

「しかし悪魔の実にも色々あるんだなぁ……本当に」

「私の事はさておき空を飛ぶのはお勧めはしない。ドラムロッキーの周辺はかなり吹雪く上に一気に気温が低下する、彼の身体が持たないのもあるが彼女の身体が真っ先に凍えてしまう」

 

ルフィは良い考えだと思ったんだけどなぁとガックリする。

 

「だから彼女は先日下山している、だがひょっとしたら今日も下山するかもしれない。少し待とう、彼女の身体も休めなくては仮に吹雪いていないとしても身体が持つまい」

 

ドルトンの冷静な問いかけに一同はそのまま身体を休める事になった、暖かな暖炉の火を囲みながらナミの病状が少しでも安定するのを待つ。その間もレウスは疲労からか倒れこみそうになっている体を必死に起こしながらナミの為に薬を作り、飲ませていた。2時間がたっただろうか、ルフィはこのまま待ってるのは嫌だから直接山に行ってナミを見て貰えるように頼んでくると言い出した。

 

「だってそれが一番だろ?ナミは動かせないだったら俺が行ってその魔女って医者(ばあさん)を連れてくるしかないだろ?」

「そりゃ、まあそうだけどよ……だけどルフィあの山だぞ!?しかも吹雪いてるんだぞ!?」

「んな事関係ねえよ」

 

仲間の為ならやると言いながら準備運動をしているルフィを見てドルトンはこの少年はどれだけ仲間の事を、大切に思っているのだろうと感動してしまった。この島の嘗ての王国の国王も彼の用に人を思いやれる人物であればどれだけ良かったのだろうかと思わずにはいられなかった。そしてルフィの為に防寒着と食料を別けて上げようとしたその時、ドルトンの家に一人の男が入ってきた。

 

「ドルトンさん、Drくれはが今隣町のココアウィードに来てるらしいんだ。彼女を探してるんだろ?」

「本当かそれは!?待っていて正解だったか!」

「おい医者が降りてるのか!?」

「ああ直ぐにソリを出そう!!」

「否俺に乗れ、そっちの方が速い!!」

 

再び差した光に一同は大喜びだった。大急ぎで隣町なら何とかナミの体力でも大丈夫だろうと言うドルトンの判断でかなり分厚く服を着せるとゴム故に衝撃を吸収し易いルフィが彼女を背負う事が決定した。そしてココアウィードどで素早く話を通す為にドルトンも同行する事になった。

 

「(ぐっ……もう体力が……いや、後一回だけなら……!!)」

 

完全竜化を行いリオレウスへと変形するレウスは己の体力が既に現界を突破している事を理解してしまった。もう意識を保っているのもやっとな状態、しかも低い気温が更に体力を奪い意識を刈り取ろうとして来るのを必死に耐える。背中へと飛び乗った6人を確認すると身体を持ち上げた。

 

「レウス頼むぞぉ~!!大急ぎで!!」

「疲れてるだろうけどお願いレウスさん!」

「道案内は私がする」

「頼むぜドルトンさんよ、さあレウス。ナミさんの為だ!!」

「出発進行だレウスゥ~!!!!」

「しっかり、掴まってろよ……!!」

 

一秒毎に重くなっていくような身体を必死に持ち上げながら翼を羽ばたかせるとその巨体はゆっくりと宙へと上って行き、木の上スレスレを通るように飛びだった。道が解りやすいようという判断からではなくこの高度で飛ぶのが限界なのである。完全竜化するだけでも体力を使うのに極限状態での竜化と飛行は想像以上に精神力をすり減らしていく、それでもナミを助ける為だと身体と意識に鞭を打ちドルドンの言葉通りに翼を動かす。

 

「……!!」

「レウスさん……もう何日も寝てないし何回も変身してるから体力だって、限界な筈なのに……後少し、だから頑張って!!」

「見えたあの町だ!後もう少しだ!」

「レウス頼む頑張ってくれ!後ちょっとで、ナミさんを診せられるんだ!!」

 

必死にレウスを励ますサンジ達、その言葉はしっかりと聞こえているが既に彼の意識は無くなり掛けていた。それでも身体は進んで行く。仲間の為に……そしてココアウィードの中央の広場へとレウスは降りた、その際に住民たちは大騒ぎするがドルトンが必死に呼び掛けパニックを静める。

 

「この町にいるんだな魔女のばあさんは」

「おいルフィもっとそっと降りやがれ!!」

 

雑にジャンプして降りるルフィを咎めるサンジ、それに続くように降りようとした時レウスの身体が一気に傾いた。ビビとウソップがずり落ちドルトンはジャンプして飛び降りる。リオレウスという巨体は重力に引っ張られるように雪が積る地面に没した。

 

「お、おいレウスしっかりしろよ!!?大丈夫か!?」

「レウスさんしっかりしてレウスさん!!」

 

必死に二人は呼び掛けるが全く応答はない、徐々に身体は元の人型に戻っていく。それを見て周囲の人々はドルトンと同じ悪魔の実の能力者とある意味安心したがそんな事は気にならなかった。今新たに仲間が倒れてしまったのだから。

 

「おやなんだか騒がしいと思えば、ドルトンアンタかい」

「ド、Drくれは!!」

 

レウスが倒れこんだ広場に一匹のトナカイを連れた女性が現れた、その姿を見た瞬間にドルトンが叫んだ。それを聞いて一斉にそちらを見た、皆が魔女というのが納得出来てしまった。140近い高齢だと聞いたのに背筋は真っ直ぐに伸び言葉は強くハッキリとしている、しかもこの寒さの中臍だしの服を着ている、正に魔女だ。

 

「あのばあさんが医者か!?」

「ああそうだ、唯一の医者。Drくれはだ。Dr、すみませんが急病人です、熱が42度もあるんです!!」

「何だって……?見せな!」

 

彼女はドルトンの言葉を聞くとすぐさまナミの元へと走り、その顔を見ながら熱を測った。そしてすぐさま彼女が患っている症状を理解し病気の正体まで特定し顔をこわばらせた。

 

「こいつは……確かに拙いね、だがここで治療は出来ない。薬は城だ、付いておいで。それとそっちの奴も病気かい見せな」

 

くれはは倒れこんでいるレウスを仰向けにすると即座に診察を開始する、だがこちらは病気ではなかった。過度に溜まった過労と精神的な負担によるダウンと診断出来たがこちらもこちらで治療は必要になるレベル、どれほどまでに身体を酷使すればこうなるのかと不思議に思える程だ。

 

「その小僧も連れて来な、但し遅れたら置いて行くからね」

「ああ、サンジレウスを頼む!」

「任せろ!」


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