ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、海の黒き城と会う。

偉大なる航路(グランドライン)への入り口は山よ!」

「山!?」

 

進水式も終えて一度室内に入って身体を温めるついでに身体を休める事にした一同。そんな時ナミが偉大なる航路の入り方について口を出した。思わずウソップが聞き直してしまう。

 

「そう!海図を見てまさかとは思ったんだけどね、"導きの灯"が差していたのはここ"赤い土の大陸(レッドライン)"にあるリヴァース・マウンテン」

 

海図に記されているのは4つの海、即ち北の海(ノースブルー)南の海(サウスブルー)東の海(イーストブルー)西の海(ウエストブルー)に繋がっている線。それは運河を表す線でありそれが山へと向かって伸びている。それが頂上で交わり最後に偉大なる航路(グランドライン)へと流れ込んでいる。

 

「運河ぁ!?バカいえ幾ら運河があろうと船で山越えなんて出来るわけねえだろ!?」

「でもそう描いてあるのよ」

「そうだぞお前ら、ナミさんの言うことに間違いがあるかよ!」

「でもそりゃバギーから奪ったやつだろ?その時点で偽物って線もあるんじゃねえか?」

 

それぞれの意見をぶつけ合う、まあ一般常識的に言えば船で山を登るなど考えられない。だがこれから行く海はそんな常識など通用しない魔の海、その入り口が常識を適用出来なくても可笑しくはない。

 

「いや、ナミちゃんの言う通り入り口は山だ」

 

レウスが口を開いた。全員がそちらへと向き一部は同意者がいることに喜び一部はお前もんなこと言ってるのかよっという視線を向けている。

 

「俺も船に戻ってくる間に一応情報を集めてきたんだ。そしたら入り口は山しかないって事になった」

「なんでだよ、こことかこう行けば行けんじゃねえのか?」

 

ゾロが指差している所は山を通るのではなく真っ直ぐ下へと向かって直接行くルート。確かにそれが出来れば一番いいのだが……。それをナミとレウスは否定する。

 

「いや、それは出来ないんだよ。そこは凪の海と呼ばれる凪の帯(カームベルト)で、完全に風がない無風の海域なんだ。風を受けて進む帆船にとってこれは致命的だ」

「んじゃ漕いで行けばいいじゃねえか」

「それが出来れば誰でも偉大なる航路に入れてるのよ」

「ってやばいぞナミちゃん!?外を見ろ嵐から出掛ってる!?」

 

大声で叫ぶレウスに言われて外を見てみると前方は全く雲がない快晴の海が広がっている、それを見て顔を青くするナミ。この船はいつの間にか"凪の帯"に向かってしまっていることに気付いた。

 

「たっ大変急いで反転!?」

「は~いナミさ~ん♡って舵おっも!?か、海流の流れがキツい!!?」

「ああもうしゃねえな!俺が竜化して直接航路を戻す!!きついけどな!!」

「お願いレウス!!」

 

外へと出ていくレウスは即座に全身を完全竜化させ船を足で掴み嵐の海へと戻る、飛び上がる直前に"凪の帯"に入ってしまい海面から超大型の海王類が飛び出してきた。どれもこれもゴーイングメリー号が粒のように思えてしまうような大きさ。

 

「うおおおおおでっけぇええええ!!!?」

「"凪の帯"は海王類の巣なのよ!しかも超大型の!!これが"凪の帯"から入れない理由なの!!」

『おい聞こえるかみんな!?このまま入り口に直行するぞ!!衝撃に備えろ!!』

 

外から聞こえてくるレウスに声を聞きナミが即座に帆を畳むように指示をだしルフィ達は急いで帆を畳む、そして完全竜化したレウスは凄まじい暴風と豪雨に晒されながらも必死に体勢を整えて"赤い土の大陸"の隙間の入り口の直線状になるように船を落とし、自身も甲板に落ちた。

 

「レ、レウス大丈夫!?」

 

元の人間体に戻りながら甲板に落ちたレウスをナミが抱き起すとサムズアップをしながらレウスは起き上がった。

 

「あ、ああ大丈夫だ……だけど海水を浴びすぎた……力が入らねえ……」

「十分よほら見て!!」

「「「「入ったぁああああ!!!!」」」」

 

海水を浴びすぎたために力が身体に入らなくなってしまったが既にゴーイングメリー号が入り口へと突入し、クルー全員が歓声を上げながら偉大なる航路への入り口へと至ったことへ歓喜した。

 

「おいレウスおめぇやっぱりすげえな!!」

「感謝するぜレウス」

「おいレウス何が食いてえ!?好きなもん作ってやるぜ!!」

「お前が仲間でよかった!」

「本当!レウスありがと!」

 

それぞれが自分の行為に感謝し礼を述べてくれている事に喜びを覚えながら抱きついてくるナミに慌てるレウス。

 

「お、おおおいナミちゃん!?だ、抱きつかないでくれよ!?あわわわわ!!」

「何恥ずかしがってるのよ?」

「い、いいいいいいやだって……!!」

「(ふ~んレウスって意外に可愛い所あるのね、良い事知っちゃった♪)きゃ~レウスかっこいい~♪」

「ぎゃあやめて~!!!」

 

更に強く抱きついてくるナミに顔を真っ赤にしながら大慌てするレウス、無人島に一人で住んでいた為か女性と触れ合う機会など一切なくまして抱きつかれた事など前の世界でもなかったので女性に触れ合われるということに対して全く耐性がないレウス。そして限界を超えたのか顔を真っ赤にしたままあわわわわっと言いながら硬直してしまう。

 

「ってやりすぎたかしら……?」

「あわわわわ………」

 

そんなレウスを壁により掛からせてからナミは吹き抜ける風を堪能するように声を上げる、船は頂上から下る海流へと乗り一気に山を駆け下りていく。凄まじい速度で駆け下りていく船に爽快感を感じる一同は叫びながら駆け降りる快感に身をゆだねる。だがそんな時不気味に響く低い音が聞こえてくる。

 

「なぁなんか聞こえてこなかったか?」

「知るかー行け~!!」

「風の音じゃない?変わった地形が多いのよきっと!」

 

気のせいだと思う、と確かに自分でも僅かに聞こえる声をそう割り切ってしまった。

 

「ナミさん!!前方に山が見えるぜ!!!」

「山!?そんなはずないわよこの先の双子岬を超えたら海だらけのはずよ!?」

「でも確かにあるぜ!?」

 

不気味に聞こえてくる音と霧のような水しぶきで悪い視界の奥に見える黒い山のような影、だが海図上では山などない為ナミは勘違いと思ってしまった。そして霧が晴れていくとそこには……巨大な黒い壁があった。

 

―――ブオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!

 

「わああああああああああああああ山じゃねえええええ!!?」

「黒い壁だぁああああ!!!!??」

「ち、違うわ壁じゃないわ!?」

「クククク、クジラだぁあああああ!!!!?」

 

空に向かって大きな声を出しながら待ち構える巨大な壁にしか見えないもの、それはあまりにも巨大すぎる山のようなクジラであった。このままクジラに襲われてしまう!!

 

「どどどどどどうする!?」

「戦うかぁ?」

「バカ言ってんじゃないわよルフィ戦えるレベルを遥かに超えてるでしょうが!?」

「お、おい左に抜けられるぞ取り舵一杯ぃぃぃぃ!!!??」

 

取り乱しまくる中ゾロがクジラの左側に抜けられるスペースを発見した、大急ぎでサンジ、ゾロ、ウソップが舵に齧る付くかのように取りつき力一杯に切ろうとする。三人は渾身の力で舵を動かす。

 

「「「ふんぬわぁあああああああああああ!!!!っておおおお!!?」」」

「って何舵折ってんのよあんたらぁあああ!!?」

 

この強すぎる流れに加えてサンジにウソップ、そして怪力のゾロが一斉に舵を切ろうとした結果逆に舵が耐え切れずに音を立てて折れてしまう。それでも三人は根元を持ってなんとか切ろうとする。が切りにくくなった舵は全く動かない。

 

「あっそうだ!?レレレレウス起きてええええ!!!??」

 

レウスへと飛びつくナミ、先程のように竜化して貰い船を持ち上げて貰い状況を打破して貰おうと考えた。が、レウスは自分が面白がって強く抱きついた結果いまだに放心状態になっていた。

 

「お願いだから起きてえええええ!!!??」

「あっわわわ……ナ、ナミちゃん……?ってなんでまだ抱きついてるのぉおおおお!!!?」

「んなことどうても良いから前見てまえええええ!!!!」

「へっ……?ってうおおおおおおなんじゃありゃあああああああ!!!!???」

 

漸く正気に戻ったレウスは目の前に迫っている巨大な壁を見た。目を覚ましたと思ったら再びナミが抱き付いているし目の前には巨大な壁があるわのダブルショックを受けるレウスは混乱するが抱きついて来るナミの懇願に正気に戻る。

 

「お願いだからまた飛んでぇえええ!!!」

「わ、解った!!」

 

なんとか抱きついてくるナミを引き剥がし再びリオレウスの姿へと変身し船を掴み飛び上がろうとするが―――全く船は持ち上がらない。

 

『ぬおおおおおおお!!!海流が強すぎるぅううう!!?さっき海水浴びすぎて力がぁぁあ!!!!』

「お願い頑張ってぇぇえええ!!!」

『あっそうだ!!進路をずらせばいいんだ!!』

 

必死に飛び上がろうとするレウスだが全く持ちあがらない。そこで船の前部を掴み左へとずらそうと翼を動かそうとした時、船の船首部分の大砲が火を噴きクジラを捉えた。

 

「「「「『た、大砲ぉおおおお!!!??』」」」」

「よぉ~し止まったか?」

 

何時の間にか船首部の大砲部に入ったルフィがそのまま大砲をぶっ放したのだ。しかもその衝撃とクジラにぶつかった砲弾の爆風で船の勢いが著しく低下した。結果としてメリー号の速度はゆっくりとした物になった。これならぶつかっても大した被害には……羊頭の船首が大破したが無事船は止まった。

 

「お、おれの特等席ぃいい!!!?」

「「「「『………』」」」」

 

ルフィ以外の全員が大砲で撃たれた事で怒るのではないかというクジラにビクつきながら完全に停止していたがなにもアクションを起こさないクジラ、そしてゾロが大声を張り上げてレウスに船を引っ張るように指示する。

 

「なんだいったいどうなってんだ!?砲撃に気付いてないのか!?」

『身体がでか過ぎて痛くないのか!?それともトロいだけか!?』

「知るかんな事!!レウス大急ぎで離れろぉ!!」

『言わずもがなぁあああ!!!!??』

 

船を移動させるレウス。必死に船を引っ張る中再びクジラが大声を上げ思わず動きを止めてしまう。全員が大声で耳を押さえている中、ルフィは明確な怒りを表しながらクジラを睨み付けていた。

 

「ル、ルフィ……?」

「お前……!!!俺の特等席に、何してくれてんだァ!!!!」

 

怒りのままに腕を伸ばしてクジラの巨大な目玉を殴りつけた。ルフィ、なんとも怖いもの知らずというかバカというべきなのか……。

 

「「「「『ドあほぉおおおおおお!!!!!』」」」」

 

流石に如何に巨大な身体とはいえ目玉を殴られれば気が付くのかギョロリとこちらを見た。それでも臆さず掛かってこいとルフィは言うのでゾロとウソップが蹴りつけた。そしてクジラは大きな口を開き凄まじい勢いで空気と海水を飲み始めた。

 

「うおおおおおお!!!??」

「やっべえええ飲まれるぞぉおお!!?」

「どうすりゃいいんだこれ!?」

「レウスゥウウウ!!!??」

『ぬおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』

 

もう形振り構ってられなくなった状況になりレウスは全力で羽ばたきなんとか脱出を図ろうとするが空気も共に吸われている為か思うように羽ばたけず脱出不可能という状況になってしまう、更にルフィは振り落とされてしまった。

 

『の、飲まれるぅぅうううう!!!!??』

 

―――――――――。

 

「なあ……これどう思う?」

「い、いやどう思うって……てっきりクジラに飲み込まれたと思ったんだけど……」

「こ、こりゃ夢か……?」

 

完全にクジラに飲み込まれ、もうだめかと思い全員が諦めていた時。視界に広がっていたのは青空だった。あまりに意味不明な状況に全員が呆然としレウスも元の人間体に戻ってしまい海?に落ちかけながら船へと降りた。

 

「夢……か?」

「幻……?」

 

―――ざばっ

 

「じゃあ目の前のこれは?」

「「大王イカだぁああ!!!!」」

「……どうなってんだぁあああああああああああああ!!!!!??」


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