ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、謎の男女と老人とクジラ

「いやお前……何やってんの?」

「とりあえず、殴っておいた!!」

 

 

「―――え~っと……とりあえず状況を整理すると俺たちを飲み込んだこのクジラはラブーンという名前で50年間ずっと仲間を待ち続けている。お爺さん(クロッカスさん)はこのクジラの面倒を見ている。んでルフィが殴ったこの二人は近くの町のゴロツキでこのクジラを食料にしようとしていると……?」

「ああそれでいい」

 

飲み込まれた直後大王イカに襲われかけたメリー号だが、イカは何故か胃袋の内部にあった島のような船から放たれた銛で仕留められた。その銛を放ったのは双子岬で灯台守をしているというクロッカスという老人であった。

 

そして出口を教えて貰い出ようとした時激しく胃袋が揺れた、それはラブーンが"赤い土の大陸(レッドライン)"に頭をぶつけていることで起きている揺れだった。そしてその揺れで胃酸の海に落ちてきたルフィと謎の男女の二人組。一応引き上げると男女は胃袋の壁に向かって砲撃をした。クロッカスはそれを身体を張って死守、そしてルフィが二人組を殴って気絶させた。ここまでが冒頭である。

 

そして今はクロッカスが医者の遊び心と称して制作した鋼鉄の水路を通って外に出ようとしているところである。

 

「にしても良くこんな水路作って生きてるなこのクジラ……どんだけ生命力が強いんだよ」

「これでも治療の痕だ。これだけデカいと外からの治療では有効な手がないのだ」

「どっちにしろアンタの技術すげえよ」

 

クロッカスは以前は医者をしていたらしく今はこのラブーンの治療を行っているらしい。既にキロを超えている体長のラブーンに外側からの治療は無意味に等しい。そのため内部から治療を行っている為今もラブーンは生きている。このような鋼鉄の水路を体内に作ってラブーンが生きているのも彼の腕が良いからである。

 

「なあだったらうちの船医になってくれよ!」

「バカいえ、私は既にお前らのように無茶をやる気力はない」

「でも確かに船医は必要よね、私も出来る事と言ったら応急処置だし」

 

この麦わらの一味は戦闘面ではかなり充実しているが体調面を整えるサポート面が不足しているとも言える。唯一医療面の知識があるナミも専門的な事ではなく応急処置などの最低限の事しか知り得ていない。船医の確保は急務といえるだろう。

 

「ナミちゃん、次の仲間は船医が良いかもね」

「そうね。これから偉大なる航路の本格的な旅が始まるわけだし、次の島で探してみましょうか」

 

完全に一味の雑用係ではなく頭脳であるナミの相談役という立場を確立しつつあるレウス、漸くラブーンの外に出られるとレウスは安心したのか甲板に座り込んでしまった。偉大なる航路突入からラブーンとの遭遇、一気にさまざまなことが起きる中レウスは度々完全竜化をしながら無茶をしていた、そのせいか疲労がたまってしまったのだ。

 

「ごめんナミちゃん……ちょっと休んでていい……?」

「へっああそうね、レウス凄い頑張ってたもんね。いいわよ部屋で休んでて」

「30分位横にならせて貰うよ……」

 

完全な竜化は身体にそれなりに大きな負荷をかける為、疲労はかなり蓄積している為かフラフラと男部屋に入るとドサリと倒れるようにハンモックに横たわりそのまま目を閉じて疲れに身を任せたまま眠りについた………が

 

「……えらい揺れてるなおい」

 

折角いい感じに眠れるかと思いきや船は酷く揺れている。固定されているベットではなくハンモックなせいで揺れは余計に酷く眠れたもんではなかった。まあハンモックが一回転とかしているのに寧ろよく酔いそうになるだけで済んでいるものだ。なんとかハンモックから降りつつ気分を整えていると揺れは収まっていく。外に出るとウソップがメインマストに鉄板を打ち付けていた。

 

「ったくルフィの野郎船をバキバキにしやがって……!!」

「ウソップ何やってんだ……?」

「ああルフィの野郎がマストへし折ってラブーンの傷口にさしやがったんだよ!!」

「……どういう事だよそれ」

 

言葉だけ聞くと全く意味が解らない、何故傷口に塩を塗る所では騒ぎではない事をしたのか。話を聞くと額の傷が開いた部分を塞ごうとしたのだろうが、寧ろさらに傷口が開きそうだ。取りあえず接岸されている岬へと上がるとそこにはラブーンの額になんとも歪んでぐちゃぐちゃな麦わら海賊団のマークが描かれており、それを描いたと思われるルフィはそれを見ながら満足げに見上げていた。

 

「おいおいルフィ……なんだ次の仲間はそのクジラかよ……?」

「おうレウス!どうだ俺とクジラの戦いの約束だ!」

「……?ああうん……いいんじゃね?」

「だろ~!!」

 

もう面倒臭くなったのか適当に答えると満足げに笑うルフィ。酔いが取れずにフラフラしていると椅子に座って海図を広げて航海計画を立てていたと思われるナミが大声を上げた。

 

「コ、コンパスが壊れちゃった……!!方角を示さない……!!」

「お前たちは如何やら本当に何も知らずに来たらしいな、命でも捨てに来たのか?」

 

ぐるぐると針を回し続けているコンパスを見て面白がっている一同を見つつ呆れているクロッカス。自分たちの反応は偉大なる航路の恐ろしさを全く理解していない証拠になっているからだ。

 

「偉大なる航路の島々の多くは磁気を帯びる鉱物を多く含む為に航路全域に異常をきたしている。更に波や風に恒常性は一切なく出鱈目だ。この海では一切の常識が通用しないという意味がそれだ」

「方角を知る術も無くて風も波も出鱈目……知らなかったわ、皆ドンマイ!!」

「いやドンマイじゃねえよ!?」

「そんな偉大なる航路を航海するには『記録指針(ログポース)』が必要となる」

 

記録指針。偉大なる航路専用のコンパスのような物で、それに島の磁気を記録させることで次の島への方角を示すらしい。

 

「こういう奴か?」

「おおっそれだ、なんだ持っているのではないか」

 

ルフィが差し出した腕時計のようにベルトが付けられている球体の中に指針がある特殊なコンパス、それこそが記録指針であった。どうやら先程の二人組がドサマギで逃げた時に落としたものを拾ったらしい。

 

「これを使って航海をするのね……何の字盤もない」

「この海ではその記録指針の示す磁気だけが頼りになる。そしてこの山から一本の磁気を選び旅をするという(っていう)訳だ、だが最後には一本の航路に結びつく。その先にある島の名は"ラフテル"。偉大なる航路の最終地点だ」

 

ラフテル。全ての海賊たちが目指す偉大なる航路の最後の島、そこを確認したのは海賊王の一味だけ。

 

「なあにそこに行ってみれば良いだけだ。行ってみりゃ解るさ、そこに"ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)"があるのかは」

「……だなってルフィ、その空になってる皿は……?」

「お前全部一人で食いやがったのかエレファント・ホンマグロぉぉおお!!!?」

「骨までねえし!!?」

「俺も食いたかったんだぞルフィィィィッッ!!!?」

 

サンジが持ってきてくれた食事、それ全てを平らげたルフィ。これが原因で記録指針が壊れるがラブーンの件のお礼ということでクロッカスから新しい記録指針をもらえるのであった。そして先程の二人組、ミスター9とミス・ウェンズデーと名乗る二人組を町へと送るため、麦わらの一味はウィスキーピークという島を目指す航路を行くのであった。


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