スリラーバークの手直しとか気に入らない部分を直しまくってたらこんなに……後新世界編の方針もある程度も決めました。
「レウス、レウスゥ!!メリーがメリーが!!」
「……チョッパー」
夜中、漸く船へと戻って来たレウスは皆から事情を聞くと静かに買って来たのか手に持っていた酒を飲み始めゾロやサンジにも酒を手渡した。未だに帰らぬロビンを除けば一味の中で最年長の彼でさえ落ち着いているというよりも心此処にあらずという表現が似合うような状態に何も言えなくなってしまいながらも仲の良いチョッパーは縋るように涙を流す。メリー号は麦わら海賊団の船、という単純な物ではない。家であり仲間である、愛情を持って大切に思ってきた船だ。それがもう走る事が出来ない筈なのに自分たちの為に鞭を打って此処まで来てくれた事への感謝ともう旅が出来ない事に対する悲しみが胸を打つ。
「ルフィさん……」
不安げに言葉を紡ぐビビに反応を示さないルフィは無言のまま深く麦わら帽を被りハンモックに寝転んでいる。普段陽気で明るいルフィでさえ言葉を失い何も言えずにいるこの状況、麦わら海賊団ではありえない状況に言葉を失ってしまう。
「それで、これから如何するつもりだ船長」
「……」
「おいルフィ、シカトしねぇで言え。てめぇの海賊団に関わる事だ」
珍しく声を荒げながらレウスが訪ねた、それに対してルフィは答えようとしなかったがハンモックから身体を起こして口を開いた。
「俺、馬鹿だからよ……考えても考えても纏まらねぇんだ……」
「ルフィ……」
「メリーは、俺達の仲間で家で家族なんだ……それを解体するとか買い換えるとか俺には考えられない…。でも、俺にも一味の命を預かってる船長としての責任ってのを感じる……」
頭を抱えながら胸の内にある物を吐露するルフィ、普段からは考えられないような言葉だが彼にも船長としての責任を確りと抱え込んでいた。自分としては仲間を大切にしたい、だがその仲間には当然メリーも含まれておりメリーも守りたい。だが船長としては乗組員の事を考え新たな船に乗り航海をすることも考えなければならない。
「それで、今はこの状況か。辛いな……」
「レウス……」
らしくもないような事を言いながら酒を煽っている彼にウソップは悲しげな目を向ける、ルフィは一味全体の事を考えながらも一人一人の事も考えている。メリーとの旅の出発点にあるウソップのシロップ村、その事も深く考えながらそれを意味している事にウソップは気付いた。この事実を知らされて一番ショックを受けていたのはウソップは自分だと思い込んでいた。
「ルフィ……お前俺の事気にしてるんじゃねえのか、確かにメリーは俺の村で貰った船で大切にしてる…でも俺にとっちゃお前らも大事なんだ。だから……」
「だったらっそんな泣きそうな目で俺を見るなよっ!!!!」
大声が出た、思わず、耐え切れず。ウソップは今にも決壊しそうな涙で溢れ返っており必死に耐えているのが分かる。それを見たレウスは見ていられなくなったのかその場から出て甲板へと身を移した、既に日は暮れて夜に近づきつつある空を見上げながら何を思うのか。
「……」
「あらレウス如何したの?」
「ロビン、遅かったじゃないか」
空を見上げてると荷物を抱えたロビンが返ってきた、彼女曰く途中ヤガラが好き勝手に動いてしまって中々戻って来れなかったとの事。
「皆は?」
「ああ、中だ……ロビン」
「何かしら」
「もう、お前は狙われないぞ」
「ッ!!?」
その言葉に思わずロビンは荷物を落とした、この男は今なんと言ったのだろうか。そう言いたげな表情にレウスは軽く笑いながら酒を煽った。
「何を言ってるのか、分かってるのかしら」
「ああ分かってる……連中はもっとやばい物に標的を定め、そのために動き出そうとしている」
「やばい物……?」
「あるかどうかも分からないがそれでもリターンは計れないような代物だ、お前さんが抱えてるもんよりも、な……」
悲しげに瞼を閉じる男に女は言葉を失った、なぜをそれを知っているのか嫌何をしようとしているのかある意味で理解出来たがしたくもないという感情も沸きあがってくる。
「貴方、まさか……!!」
「良い女が声荒げて驚くな……」
「如何する、気なの……」
「何大した事じゃねえよ、ただ……一匹の竜が巣立ちするだけよ」
そう言いながらレウスは船室にいる皆にロビンが帰って来た事を大声で伝える、中からはチョッパーやビビが駆け出してきた。それにやや驚きつつもロビンは二人を受け止めた。
「良かった俺もうロビンが帰ってこないじゃないかと思った…!!」
「心配してたんですよ?!これから長く外に出るんだったらせめて子電伝虫を持ってでて行ってよ!!」
「ご、ごめんなさいね。色々あって……」
「ロビン来てくれ、大事な話があるんだ……!!」
そう言ってロビンを引っ張って行くチョッパーを追いかけようとするビビは酒を飲み続けているレウスへと目を向けた。如何にも彼らしくないとビビは思い続けている、何かあったのではないかと女の勘が告げている。
「レウスさん直に仰ってください、何かあったんでしょ?」
「……ビビちゃんが何を言ってるのか俺には分からないな。俺はただ……これからの一味の事を考えてるだけさ」
「一味の……」
空になってしまった酒瓶を放り投げる、空中に浮かんだそれは重力に従って落ち割れて砕け散ってしまった。それが何故かただ事ではないように思えるのは自分が狂っているからだろうか。
「これから一味は最大の危機を乗り越えなきゃいけない、それに対して俺が出来る事なんてあるのか。ぶっちゃけ今まで俺は一味にそこまで貢献している気がしなくてな」
「そんな事無いですよ!!!皆レウスさんには感謝してます、それは確実です!!貢献とかそんな如何でも良いじゃないですか、だって私たちは家族なんでしょ!!?」
目を見て告げられる言葉に思わず息が詰まった、家族、そうだ確かにルフィもそう言っていたのに無意識に自分はそれから除外していた。そんな中で言われたビビの言葉に思わず呆然としてしまった。
「俺も、家族……?」
「そうですよ!何時も私達を見守っていざって時は誰よりも身体を張ってくれる人、それがレウスさんでしょ!?貢献!?何が出来るか!?そんな考え捨ててください、何時も通りに居てくれる事が一番なんです」
「そっか……そっか。それが一番か」
その言葉で頭が冷えたのかレウスは表情を作りなおした、確かにそうだ。自分は一々そんな事を考えて居なかった、降りかかってくる事に対して全力で一味の為に行動して共に笑ってきた。それが今更何が貢献だ、笑わせてくれる。
「有難うビビちゃん、ちょっと嬉しかったなその言葉」
「フフフッもう世話が焼ける人ですね」
「悪かったよ。さてと、俺はちょっと出てくるよ」
「えっ何処にですか?」
「そうだな、気分転換。大丈夫、子電伝虫を持っていくから」
そう言いながら身体を変化させて空へと飛び立って行くレウスをビビは見送った。何かあったのは間違い無いだがそれを語りたくないのなら聞かないでおこう、きっとあの人なら話してくれるはずだからと信頼の証のような物を胸にしながらビビは再び船室に戻った。そして改めてルフィが決定を下す、メリー号から新たな船へと乗り換えるが、出来るだけメリー号を使ってもらって船を作ってもらおうというものだった。それに皆賛成しつつその日はそれで話は解散となった……こうして一味に降りかかった危機は回避できた……筈だったのだが
「お待ちしておりました、レウス様」
「―――ああ」
一味へと襲い掛かる本当の危機は
「それで、ご決心はお付きになりましたか」
「決めたよ。だが条件がある」
「まぁそれはなんでしょうか」
「俺はどうなっても良い、仲間には……指一本、手を出すなッ!!」
これから、訪れようとしていた。