夜から朝になり日が昇った、結局あの後レウスは気分転換だと行ったきり帰って来なかったが特に皆は心配と行った様子を見せなかった。普段から彼が確りしているという印象があり心配しなくても帰ってくるという認識を持たれているのと帰ってくる前に一度別れた時に偶には一人でブラブラしたいという発言があったからだ。元から一味のブレーキ役として働かせすぎているレウスには良い休養になるだろうと皆口を揃えて言ったがロビンだけは不安そうな表情を浮かべていた。
そんなこんなで再び前に前進しようとし始める麦わらの一味、その為には造船会社であるガレーラカンパニーに話を通してメリーの無事な部分を新しい船に使って貰えないかと頼んで見る必要がある。先日フランキーと共に船を見たカクという船大工はナミ達が造船区画を訪れた時に取り合ってくれ船の査定を行ってくれた。そしてその時にガレーラの主であるアイスバーグにも会う事が出来た。彼に話を通せば何とかなると思い、その時話を通したナミ、ビビそして船長であるルフィの三人で造船所へと向かう事となった。
「なぁアイスのおっさんはどんな奴なんだ?」
「アイスバーグさんよルフィさん。うーんやり手な人だとは思うんだけどマイペースな感じの人かしら」
「そうねぇ私の目の前で面倒だからって仕事の予定をキャンセルして造船ドッグを案内してくれたぐらいだし」
「ふ~ん、でもなんか話通じそうなおっさんだな!」
それには概ね同感だ。カクが船の査定の結果報告の際にメリー号の事を話していたが大切にされている事を言われるとそれなりに良い顔をしてくれたし普通に話の通じる人物だ。きっとメリーの件も了解してくれるだろうという期待と確信めいた物がある。ヤガラに乗り込みつつ造船区画へと目指していくが如何にも周囲が騒がしい、街を行く人々が慌てているようで行き交っている。
「あ、あの如何したんですかこの騒ぎ?何か事故でも?」
「一大事だよアイスバーグさんが何者かに狙われたんだ!!」
「ええっアイスバーグさんが!?」
「アイスのおっさんが!?おいナミなんかやべぇんじゃねえのか!?」
「と、兎に角造船所まで行ってみましょう!ああもうレウスが居たら一飛びのに!!ヤガラちゃんお願い!」
「ニィィ~!!」
ヤガラはその声を聞いて素直に泳ぐスピードを上げた、基本的に温厚且つ人懐っこい彼らは余程ぞんざいな扱いをしない限り従ってくれる。ヤガラは速度を上げたまま水の都を付き進んでいく、途中ではアイスバーグの件で心配でたまらないという市民で溢れ帰り声も響きまわっている。到着した造船所にも多くの人々が押しかけており一種のパニック状態に陥っている。
「すんげぇ人だなぁ。まるで人の嵐だ」
「その表現がピッタリと合致しそうな位の状態ね……。これじゃあ造船所に入るなんて無理そうね……」
「今聞こえて来ましたけど社員と一部の記者しか入る事は許されてないみたいです」
「そう……一旦戻るしかないかしらね」
「あっちょっとタンマ!」
諦めて一旦戻ろうとヤガラの手綱を叩こうとした時、ルフィがストップを掛けた。遠巻きに一人の男がドックの方を見つめているのを発見した。それを見つめると一目散に其方へと向かって行く、其処に居たのは先日カクと共に船を見てくれたフランキーであった。
「おーいフランキー!」
「んっ?おおっ麦わらの兄ちゃんじゃねえか」
「ちょ、ちょっとルフィ何よこいつ」
「えっと、お知り合いですかルフィさん?」
ルフィは事情を説明すると安心したように二人は安堵する、フランキーは見るからにチンピラという風貌でまともに話が出来るような感じではない。実際は中々話が分かり情に厚い一面があるが第一印象ではさすがにそこまでは見抜けない。
「何かアイスバーグっておっさんが大変ってんで何がどうなってんのか聞きにきたんだ」
「そうか、俺もついさっき話を聞いた所でな。まさかこんな事に……」
「あっそうだねえフランキーって言ったっけ、アンタも船見てくれたんでしょ?」
「んっああそうだが」
「だったらお願いがあるの。アタシ達あのメリー号を使って新しい船を作ってもらうって決めたんだけど造船所もこんな調子だし、船のどの辺りが無事なのか見てくれないかしら」
「どういう事だそりゃ?」
詳しい事情を話して見るとフランキーは何やら考え始める、自分が伝えた船が限界という現実を彼らは自分なりに咀嚼して飲み込んだのだろう。そして最後に残った手段として今の船の魂を次の船に受け継がせようという考えに至ったのだろう。どれだけ船を愛しているのだろう、本当に一人の人間に向けるかのような思いにフランキーは思わず感動する。
「よぉしそれなら俺が請け負ってやろうじゃねえか!!このフランキー様に任せておけってんだ!!」
「おおっ流石スーパーだな!!」
「だろう!!」
ノリノリでポーズをとるフランキーとルフィを尻目にしながら溜息を交じらせてヤガラに乗り込んだナミは早く行くと催促をする。フランキーも自分のヤガラに乗りこみ、ルフィもそちらに乗るとヤガラは足を進めていく。
「おい兄ちゃん、お前の船にはニコ・ロビンって女が乗ってるってのは本当か?」
「ああ本当だぞ、すげえ頭良いんだ!」
「そうか、そいつと少し話してみてもいいか。ちと聞いてみたい事がある」
「ああ良いぞ」
「悪いな(トムさんが一言言っていた禁断の兵器。それもあいつなら知ってるかもしれねぇからな)」
波に揺られながら考えるフランキー、それの影にあったのは欠片のようなスケッチでしかなかった物だが今でも鮮明に覚えている。それを偶然見ていた師を見て声を掛けたが直ぐに笑って誤魔化されてしまった。だがそれを知っているかもしれないという者にもう直ぐ話を聞ける……フランキーはそんな事を考えながらナミ達が乗っているヤガラを追いかける。