ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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本来はこの前の話と一緒に投稿する筈の物でした。

次回からは長くなっていきます。


空の王者、愛とは何かと思う。

「これで、貴方は名実共に政府側の人間……そして私の旦那様ですわ♪」

「……まだ結婚したわけではないだろう」

 

窓を横切っていく煙を見据えながら席に付いたレウスは低い唸りのような声を発しながら乱暴に席を付いた、自分を麦わらの一味から引き剥がした元凶が今自分の笑みを浮かべながら恍惚とした言葉を口々にしながら自分を見ているのが非常に嫌だった。何故こんな奴の傍に居ないといけないのかっと考えるより前に答えなんて出る―――守るためにこれといるんだ。

 

「フフフフフフフ……エニエスロビーの後は海軍の本部で正式な手続きをしてその後は教会にゴーでマリッジ&ベットイン&ラブ!!フフフフフフフフ……!!!!」 

「……楽しそうだな、お前」

 

深く、溜息を付いた。隣に嬉しそうな笑みをする姫のような女が座り擦り寄ってくるがこれをレウスは姫とは一ミリも思ってはいない。自分にとっての姫のイメージは完全にビビで固定されているからか目の前の女には姫という言葉は似合わない、寧ろ……毒婦、それこそが一番に合っているだろうとさえ思える。

 

「ええ楽しい、楽しいですわ。夢にまで見て貴方様とこうして二人っきり……夢ごこちですわ♪」

「俺にとっては悪夢心地だ……」

 

胸を苦しく締め付ける光景が瞼から消えない程に強く焼き付いてしまっている、自分へ向けられた視線に込められた困惑の感情と泣きそうなほどに驚いていたナミとビビの表情。嘘だと信じ込みたいと願っているチョッパー、悪い冗談を抜かすなと浮かべながらレディに銃口を向けた事を許そうとしないサンジ。怪訝そうな瞳を向けたまま刀に手を掛けたゾロ、本気なのか問いたそうにするロビンそして―――自分の心をあっさりと見抜いたルフィ。離れたいなんて思うわけがない、ずっと一緒に居たかった……世話に疲れるなんてない、一緒にいる事が喜びだった人達と誰がすき好んで……。

 

「それでも貴方は悪夢を手に取ってくださった、私を選んでくださったでしょう……♡」

「……」

「やっぱり、あんな女なんかより真の伴侶である私こそが貴方のそばにいるのが相応しいのですわ♡」

「ッッ!!!!!」

 

その言葉で一気に頭が沸騰する、瞬時に身体が変化しリオレウスとしての力が剥き出しとなって行く。その絹のような美しい首筋に竜頭を噛ませるように突きつけた。竜のキバが首筋に立てられ捕食の一歩手前の状態とも言えるのに女の表情は青くなる所かより嬉しそうな表情を浮き彫りにさせていく。

 

「お前が…お前さえ居なければ…!!!俺は、ナミちゃんやビビちゃんと一緒に……!!!」

「ァァァァッ……憤怒に燃える貴方もなんて魅力的…貴方の全てに私は愛を感じておりますわ……♡首に食い込んでいるキバも私を睨み付ける貴方の瞳も……これからは全て、私の物になるのですから、でも―――あの女の名前が出るのは不愉快ですわ

 

刹那、レウスは以前感じたような悪寒を感じた。理性は拒絶するが本能自体はそれを求める嫌な感覚、だが今度は理性の拒絶反応が大体を締めていた。その時自分は逆に押し倒され首には自分がやったように竜頭が据えられ首に深くキバが食い込み血が溢れていた、同時に冷たく血が固まりそうな殺気にも似た物は自分を包んでいく。

 

「ガッ……!?ァァァァッッッッ……!!!!」

「レウス様には私が居ますの、このレイアさえ、私さえ居れば良いんですの。他の女なんて必要ありませんの、分かってくださりますわよね……愛しい愛しい旦那様……♡」

 

ギリギリと首を締めつつ食い込んでいくキバ、自分を見下ろす女にレウスは悪い冗談か何かという感情を抱く。彼女が自分に抱いているのは悪意でも敵意でもない、純粋すぎる愛情であった。混じり気がない本当の愛を自分に向けている、自分こそが相応しいと洗脳をするかのように問い掛けて来る。

 

―――お前に相応しい愛を持っているのは私だと。

 

それを、どこか心のどこかで肯定し掛けた自分が居た。そんな思いを抱いたレウスを乗せた海列車は汽笛を鳴らしゆっくりと線路を進んで行く、遠ざかって行く水の都と仲間達。だが皆を救うにはこの手しかない。安全にこの島を出航させ次の島に渡す為には……。

 

「了解して、くださいますね?」

「……ぁぁ」

 

この女に、従うしか、ない……。


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