ONEPIECE 空の王者が海を征す   作:魔女っ子アルト姫

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空の王者、歓迎の町へ

リヴァース・マウンテンの麓、双子岬を出た麦わら海賊団は一路"ウィスキーピーク"を目指す。ゴーイングメリー号が行く今日の天候は冬、時々春。先ほどまで暖かい陽気は鳴りを潜め空からは止め処無く雪が降り続け船の上には雪が積もっていた。

 

「クシュン!うー寒い……さっきまでぽかぽか陽気で暖かったのに」

「ナミちゃん暖かいコンソメスープ作ったけど飲むかい?サンジの作った物ほど美味しくは無いだろうけど」

「ありがとうレウス、いただくわ」

 

舵を取りつつ片手間に作ったスープをナミへと差し出すレウス、雑用係の仕事はそれなりに多い。今は舵取りをしている。ルフィとウソップは降り積もっている雪で雪遊びをしながらはしゃいでいる、ナミはそれを室内から見つつ呆れている。

 

「あっこれ美味しい」

「そう言って貰えると嬉しいよ」

「ナミすわぁ~ん、愛の雪かきいかほどに♡」

「止むまで続けてサンジ君」

「イエスマム♡」

 

サンジはサンジでナミに扱き使われている。本当にそんな扱いで良いのかと疑問に思うが本人が望んでやっているしそれなりに嬉しそうだし放置しておくとしよう。ゾロの姿が見えないが大方雪に埋もれながら寝ているのではないだろうか。

 

「おい君、この船に暖房設備は無いのかね?」

「寒いわっというかそのスープ私も貰っても良いかしら……?」

「うっさいわねあんた達!!客じゃないのに図々しいわよ!」

 

この船がウィスキーピークに向かう原因となった二人、Mr.9とミス・ウェンズデー。毛布に包まりながら震えているので一応レウスはそっとスープを入れたカップを差し出した。風邪を引いて咳き込まれたら煩くて堪らないからだ。

 

「ありがとうえっと」

「レウスだ、好きに呼びな」

「そだねえレウス、確か温風出せるわよね?」

「まあそりゃ出せるけど……」

「んじゃ私のそばにいながら温風出してくれない?」

「俺の存在意義って一体……」

 

軽くエアコン扱いされている事に呆れつつ左手を竜化させ温風をナミに向かって吐き出す、ナミは暖かそうにしつつ嬉しそうな声を出している。まあ役に立てている事を理解しつつ舵を取るレウスである。が次の瞬間レウスの仕事は倍増するのであった。

 

「あっ拙いズレてる!?右へ45度修正!」

「解った!」

「レウス大変だ目の前にでっかい氷山だぁ!!?」

「任せろ竜火球!!!」

「大変だ船底で水漏れだ!!レウスちょっと船持ち上げてくれ!!」

「わ、解った!!」

「レウス頑張れ~!!デカい風が来るぞ~!!」

『だらぁあああしゃい!!』

 

一気に変貌していく偉大なる航路の海や天候。急激に変わる風向きや激しい海流の流れに翻弄されつつ船を操っていく一同だがレウスの仕事量はダントツで多かった。なまじ空を飛べたり火を吐けたりするので迫る氷山を破壊したり船底の穴を塞ぐ為に一時的に船を持ち上げたりと大忙しであった。こんな能力を得た事を(初めて)後悔する(後悔し始める)レウスであった。

 

「んっ~……よく寝た~っておいお前、幾らなんでも気抜きすぎじゃねえか?気候が良いからって」

 

ようやく気候などが安定して来た頃、今の今まで眠りについていたゾロが目を覚ました。目の前でぐったりと倒れ伏しているレウスに小言を垂れるが疲労で何も言う気が起きないレウスはそのまま横になり続けていた。そんなレウスを放置しつつゾロは二人組の前で座り込みじろじろと顔を眺めた。

 

「おーおー悪ィ事考えてる顔だ…名前、何つったかなお前ら」

「ミ、Mr.9と申します」

「ミス・ウェンズデーと申します……」

「そう、どうもその名を初めて聞いた時から引っかかってんだ俺は。どっかで聞いたことがあるような無いような……」

 

身体をビクつかせながら汗をかいている二人に悪い笑みを浮かべながら問いつけて行こうとするゾロだが背後から般若のような恐ろしい形相をしたナミに殴られる。

 

「アンタぁ……よくもまあ今までのんびり寝てたわね……!!レウスがアンタの分以上に働いてくれたから何とかなった物の……!!!」

「ああいいよナミちゃん……取りあえず……俺、寝てて良い?」

「うーん………」

 

正直悩み処であった。今は気候が安定し安全に航海が出来ているがこの後また荒れないとも限らないからレウスには緊急時の最終手段として身体を休めてほしい感じもする。此処まで頼りすぎている感じもする。

 

「……良いわよレウス、ゆっくり身体を休めて。一本目の航海が終わったみたいだし」

「島だァ!!でっけ~サボテンがあるぞぉ!!!」

「ねっ?」

「みたいだね」

 

見えた来た島、目的地であるウィスキーピーク。それを確認するとMr.9とミス・ウェンズデーは海へと飛び込んで泳いでいく。

 

「……んじゃ俺寝てるから、何かあったら起こしてね」

「おうお疲れさんレウス、寝る前にさっきの残りのおにぎり食うか?」

「貰うよ」

 

おにぎりを食べつつ室内に入り、完食するとハンモックに乗っかり瞳を閉じる。徐々に睡魔が襲い掛かり意識を沈めていった……。

 

眠りについているレウス、此処まで身体を酷使してきた為じっくりと身体が自分を休ませようと貪欲に睡眠を貪っている。ただでさえ完全竜化は身体に負担を掛けるのに立て続けに起こる(立て続けて起きる)状況の対処に動いた為かかなり睡眠は深い。体力の回復に勤しんでいた……が

 

「ぐっはっ!!!」

「んあ?」

 

何かの断末魔に目を覚ますと竜化した左腕の竜頭が何か男の頭部を噛み砕こうとしていた。周囲にも数人の男が呻き声を上げながら蹲っている。どうやら無人島時代の寝ている間に誰かに襲われたら反撃するという癖が役に立ったようだ、既に全身をボコボコにした連中を甲板に叩き付けると苦しげに口を開き始めた。

 

「チ、チクショオ……何だこの強さ……?」

「こんな奴が賞金も掛かってないってどうなってんだ……」

「賞金……?ははぁ~ん、そうかこいつら賞金稼ぎか」

 

身体の骨を鳴らしながら重症を負っている男達を外の岸に投げ飛ばしながら大体の状況を察する。この島はあの二人組の目的地→ならその仲間も同じような連中→賞金稼ぎもいるだろ→船の金品狙ってきたけど自分に手を出そうとしたと言った所だろう。

 

「よく寝たし疲れもあらかた取れた、うし飛ぶか」

 

身体を竜化、人獣形態へと変身する。翼を羽ばたかせて島を上から見てみる。石造りの家屋が多く立ち並んでいるが目を引くのがそこら中で倒れている人間たち、恐らく自分を襲ってきた奴らの仲間だろうがゾロかサンジ辺りが倒したに違いない。

 

「あっ!!レウスゥ~!!!」

 

飛行を続けていると下からナミの声がする、その声に従って下へと降下するとそこには血だらけになっている髪を異常にロールさせている男と不機嫌そうなゾロとナミがいた。

 

「どういう状況……?」

「そ、空をっ……!?」

「レウス良く聞いて!これから大急ぎでミス・ウェンズデーを保護して頂戴!ゾロじゃ心配で無理よ!」

「んだとごらぁ!?」

「ええっと詳しい事を聞きたいけど兎に角保護すればいいんだなナミちゃん?」

「ええ。彼女を狙っている奴が居るだろうけどそいつら倒しちゃってかまわないから!!」

「了解、んじゃ行って来るよ」

 

ジャンプで一気に高度を稼ぎつつ上空からミス・ウェンズデーを捜索する。確かにゾロより空を移動出来る自分が捜索からの保護という役目は適任だろう。捜索をしている時巨大な爆音が響く、爆音の方向へと目を向ける。高い飛行力を持つリオレウス、その飛行力を補佐する為に高い視力を持っている。その視力が黄色い鳥に乗ったミス・ウェンズデーとコートを着た男と傘を差した女を捉えた。

 

「見つけた、一気に距離をつめる……!!」

 

一気に空気を切り裂くように降下していくが男が何かをミス・ウェンズデーに飛ばそうとしているのを見ると更に速度を上げる。そしてミス・ウェンズデーの前へと着地し飛んできた物を身体で受け止めた。それは直撃したと同時に爆裂したが火炎に高い耐性を持つ為爆発にも十二分に耐えて見せた。

 

「おい大丈夫か、ミス・ウェンズデー」

「わ、私生きてる……?そ、その声もしかして貴方Mrレウス?!どうしてここに!?というかその姿は!?」

「良く解らないんだがうちの航海士に君を保護するように言われたんでね、それで助けた」

 

思ったよりも爆発のダメージは少なく身体は普通に動いた。流石は火属性に高い耐性を持つリオレウスといった所か。

 

「一体何者だ、てめえ俺たちの邪魔するとは!!」

「ただの海賊さ。お前と同じ悪魔の実を食った、海賊さ」

「その姿……どうやら動物(ゾオン)系の能力者みたいね」

「まあな。さてと、直ぐに終わらせてやるから覚悟してとけよ、ミス・ウェンズデー。君は隠れてな」

 

ミス・ウェンズデーはレウスの言うとおりに黄色いカルガモのカルーと一緒に岩場に身を潜めた。

 

「お前、この町の平社員を切りまくった剣士の仲間か。何故そいつがアラバスタの王女を庇う?」

「航海士に保護しろって言われたから、それだけ」

「はっまあいいさ。いずれにしろ俺達の邪魔をする敵だろ、消すぞ」

「キャハハハ、そうね邪魔ね。地面の下に埋めて上げるわ♪」

「―――出来るならな」

 

刹那、レウスの姿が消えた。Mr.5とミス・バレンタインはその姿を探すがレウスは二人の懐に飛び込んでいた。一気に地面を蹴って一気に加速しながら急激に回転、そしてそのまま二人へと突撃した。

 

「火竜玉!!」

「「ぐっはっ!!!!!」」

 

レウスの技をまともに食らった二人はホームランボールのように吹き飛び巨大なサボテンに突き刺さった。それを見ていたミス・ウェンズデーは呆然としながら戻ってくるレウスを見つめていた。

 

「あ、貴方……何者なの……!?」

「唯の海賊さ、竜人って特徴があるけどね」


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