さて…
スカベンジャーの目の前に現れたのは…痴女である。
豊満で巨大な美乳は、まるで引力があるかの様に男の目を引くモノだ。
小麦のような焼けた肌は、異国情緒を思わせるように扇情的。
あかがねがかったような焦げ茶色の髪に黒い瞳は、なんともエキゾチック。
そのプロポーションも完璧であり、腰のくびれから尻にかけての曲線は、まるで球の様に美しい。
すべすべの脚は、汗だかなんだかわからない液体に濡れていて、なんともソソる肢体をしている。
下手な人間が使えば臭いとしか言えないかも知れない麝香の香水も、彼女の色香が完璧に調和させている。
そして…裸にマントと言う、最早場末の娼婦も裸足で逃げ出すような格好が、一周突き抜けて台無しにさせているのである。
或いは、男に怯えていたり媚びているような表情や態度を少しでも見せていたら襲われた直後か何かと勘違いしそうだが、彼女はと言うと、スカベンジャーが見ているにも関わらず全く恥じるそぶりも見せず腰に手を充て仁王立ちのドヤ顔の有り様。
なんと言うか、眼のやり場の困る残念な全裸、だった。
その謎の痴女はと言うと、スカベンジャーには目もくれず龍の女の子の方にずかずかと足を運ぶ。
そして、指をビシッと突きつけるなり、痴女はこう続けるのである。
「貴女、私と一夜を共に過ごす気は無いかしら!大丈夫大丈夫、私は女の子相手でも経験有るしリードもしてあげるッ!」
…いきなりの、このレズ宣言である。
「ひっ…ひぇえええええ!!?」
一方の龍娘はと言うと、いきなりのいきなりで、自分の今の立場を忘れて絶叫して腰を抜かす。
まあ、痴女が脈絡無く突然現れて、いきなりエッチしようとかぬかしたら…嫁にも出てない生娘なら、さもありなんと言うことではあるのだが。
対する、件の痴女はと言うと、先っちょだけで良いから等と全く懲りていないことをほざきながら、唇をタコのような形にすぼめてキスを求めながら身体をくっ付け出す。
そして…巻き込まれたスカベンジャーが逃げるに逃げられず、止めるにも止められずおろおろしていると、ザッザッザッと言う規則正しい歩調で数名の男たちがいつの間にか横から出現していた。
恐らく、龍の女の子の悲鳴が聞こえて、追手が追い付いたのであろう。
こりゃヤバい…と、スカベンジャーが思ったのも束の間、追手達は胸から短銃を一斉に取り出してスカベンジャー達をぐるりと囲み、動くなと警告する。
そして…更に続ける、痛い目を見たくないだろう、大人しくその娘を渡せ…と。
龍の娘は逃げられないことを悟り絶望で顔を青くし、巻き込めれたスカベンジャーは冷や汗だらだら流して短銃を突きつけられた恐怖でガタガタ足を震わせる中…
一方の、痴女はと言うと、まるで滑稽歌劇の役者がごときわざとらしい哄笑をあげて、その取引を一蹴する。
その欲求は断じてNOだ、と。
「…侵入者風情が!どんな手をつかったかはおおかた女を使って潜り込んだんだろうが、そのイカれた格好に相応しく、頭もめでたいアマだな!?」
短銃を構えた一人が、件の痴女に怒りを込めて絶叫するが…とうの、その痴女はと言うと、まるで涼しい顔のまま、しかし一転して冷酷な口調に切り替わり、全く無視するようにこう続けるのである。
「ん~、私の目的の軸線の延長線上に、この娘が居た以上…目的を果たすまでは、私が責任もってこの娘を浚わせて貰うわ。この娘の正体の目星も、大体予想はついてるもの。酷いことするのね、こんな『イミテーション』を作るなんて…そして、そのイミテーションの末路も予想つく以上、彼女をあんた達なんかに渡すわけにはいかないのッ!」
そう言って、怯まず睨み返す中…追手達の、更にリーダー格だろう男が、やや焦った様な顔をしながらも。
しかし口調だけは平静を保ちつつ、痴女に向かいこう返すのである。
「ふ…フフ、どこで機密が漏れたかは知らないが、君は、我々の事を深く知りすぎた様だね!最早、問答無用ッ!!」
そう言って、リーダーが右手をあげて合図をかけるなり、残りの短銃を構えていた彼の部下達は一斉に引き金を引く。
ダンダンダンッ!とまるで爆竹がはぜた様に耳障りな銃声が、鼻孔をつく硝煙や弾幕の煙が、痴女の辺りを埋め尽くす。
その様子を見て、一瞬、そのリーダーは勝ち誇った顔をするが…すぐに、それは青ざめた表情へと変わるのである。
「…やれやれ、貴方達は女をダンスに誘いにエスコートするのに硝煙を交わすのかしら?その辺の蜘蛛や蟷螂の方が、もっとましな交尾の誘い方するわよ?」
硝煙の煙が晴れた先から、そう涼やかに告げる彼女は…表情だけは笑顔ではあるモノの、その全身からは怒りのオーラが感じられている様に、まるで撃たれた事を意にかいしてない様に無傷でピンピンしている。
否、『ピンピンしている』と言う提議如何では、或いは彼女は無事ではないのかも知れないだろう。
健康的で美しかった肌は、鋼のブロックで出来ていたり、ミスリル銀の鱗に覆われていたり、あるいはぬるぬるした毒液を吹き出す両生類の様な肌へと変わっていたりする。
腕その物の数も、数えられるだけで九本は有り、毛むくじゃらに筋骨粒々な腕だったり、猛禽類の様な鋭い爪をたたえる腕だったり、あるいは魔法の杖を持っている老人の様な腕だったり千差万別だ。
脚部に至っては、馬の様な立派な四肢の隙間から、触手やらスライムやらが生えていたりと非常にカオス。
背中からは、鳥だったりコウモリだったり虫だったりと、それはそれは異常な数と種類の翼が滅茶苦茶に生えている。
その体躯も、人間大からゆうに、いつの間にか三倍近い4メートル半ぐらいのサイズまで巨大化されていた。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁあああああ!!?」
その様子を見ていた追手の一人が、しょんべんまで垂らし腰を抜かして、その痴女の変貌に恐怖する。
一方、件の化け物と化した痴女はと言うと、頭をポリポリと鎌の様な腕の1つでかきながらはにかみつつこう返す。
命の危険が迫ると、力の制御がまた難しいわねぇ…と。
そうにべもなく告げる彼女は、ぐっと腹に力をこめるなり、シュルシュルと元の姿へと立ち戻る。
そして、巨大化する際に脱げたマントをまた羽織り直しながら、こう続けるのであった。
「私の名前は、コウヤ・ドウメキ…遥かに異国、ワ之国に生まれた陰陽師の末裔!私の目的の1つは、世界中の魔獣と『トモダチ』になることッ!その未来は、あんた達には渡せないんだからッ!!」
そう言って、ビシッと龍女を浚おうとした連中へと宣言する痴女…コウヤ・ドウメキ。
そのコウヤの名を聞いて、追手のリーダー格の男と、今まで目立たないようにしていたスカベンジャーの二人が、揃って同じ悲鳴をあげる羽目になるのであった。
「「『百鬼夜行』…S級ランカーのサバイバー、コウヤ・ドウメキだとォォォ!!!」」
そう、彼女はただの痴女でも、ただの化け物でもない。
帝国でも有数の、ちょっとした有名人なのだ。
それはどういうわけなのか、その辺りはまた次回に語るとしよう…