頭を包む固い感覚。
そして、背中から足先までにかけて感じる柔らかい感覚。
……俺、ベッドの上で寝ていたのか。
VR装置を頭から外して見れば、確かに俺は横たわっていた。
はて、ログイン前はベッドで寝ている状態だっただろうか。あまり覚えていない。
まあ、それはどうでも良いか。
自分の手を見てみると、それは無機物な
流石に現実でもマネキンであるワケがなかった。まあ当然だ。
「……」
ベッドから起き上がり、床に足をつけて立ち上がると、俺は数秒ぐらいの間欠伸をしてから周囲を見渡した。
そうして目的の
良い子は既に寝ている時間だが、俺はゲーム内で睡眠をとる代わりにログアウトすることにした。
その目的が、このノートだ。
母にこのノートを見つけられてしまう前までは、このノートの中身を一切見ることがなかった。出来なかった。
恥ずかしいと言う気持ちが大きかったのが理由の一つ。他には、奥底に封印していたのもあるか。
しかし、今じゃ違う。
今やこのノートは、俺にとっては記憶の資料となってしまっている。
よく考えれば、この黒歴史ノートが俺の過去の記憶に繋がるという思考は馬鹿げているし、ものすごく現実的ではない。
もしかしたら、海へと繋がる川に小石を放り投げて、数日後にそれを探しに旅をする程に現実的ではないのかもしれない。
ともすれば、今の俺の行動は分の悪い賭けをやっているに近い。
「……」
けれども、だとしても。
その賭けに相応しい
・
・
・
ラノベが書き連ねられているページを斜め読みしつつ、かつ重要な場面を見逃さぬようにページをめくる。
ケイとは別のキャラクターを中心に描写されている。主人公が、神器と呼ばれる武器や防具を手に入れる為に旅をするという内容だった。
読んでいくと、覚えきれない程の登場人物がたくさん出てくる。しかも、そこからとんでもないハーレムを構築されている。
これを書いた過去の俺は全ての人物を把握していたのだろうか? 少なくとも8人は居るのだが……。
「……」
結構読み進めたところで区切りをつけ、ページに適当な物を挟んでから閉じる。
ケイに繋がる情報は得られなかったが、気になることはいくつかあった。
魔法やら世界やらの設定と、あのゲームの設定が食い違っている所が多々ある。
勿論、作っている人物が違えば設定も違う。物語も全く違う。
しかし、そんな全く違う世界に訪れた彼女は、一体どんな反応をするのだろうか?
少し考えると、適当な紙を取り出してから、携帯で例のゲームの公式ページやWiki等を開き、魔法の仕様辺りが書かれたページを見つつメモを取る。
次に、黒歴史ノートから魔法辺りの設定を読み取り、それをまたメモに取る。
それをある程度まで進めて、俺はふと携帯の時間をみる。
……もう少しでタイムリミットだ。
あのゲームは『1日1時間』である。簡単に計算すれば、俺が現実で活動している間、ゲーム内の時間は24倍で進んでいる事がわかる。
丁度いい、2つの世界の魔法を大体メモした所だ。
ケイと会う約束があるのだし、そろそろまた行くとしよう。
俺はVR装置を頭に被ると、沈んでゆく意識に身を委ねた。
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『ゲーム・VFの魔法
火・水・雷・風・土の5つの属性が存在する。
時間を掛けて詠唱をするほど、より多くの魔力を空気中から取り込むことが出来る。
しかし、空気中の魔力だけでは魔法を制御できない。自分の中の魔力を引き出すことで、初めてコントロールできる。
強力な魔種のモンスターは、魔結晶を内包している。それらは魔道具の制作に利用されている。』
『黒歴史ノートの魔法
火・水・雷・土の4つと、光・闇の2つの属性が存在する。
それぞれの属性に「象徴」があるらしい。
火:技術
水:生命
雷:力・エネルギー
土:創造
光:時間
闇:空間
神聖なる魔力と、邪悪なる魔力の2種類があるらしい?
別に神聖=光属性、邪悪=闇属性、というわけでもなさそう。
魔力は空気中に存在せず、生き物や物の中に溜まっている。食事をすることで魔力を回復するやらなんやら』
現実で活動する話は決まって幕間。
モチロン例外アリ。というかあった。